側頭骨は鱗部 (squamous part), 岩様部 (petrous part), 鼓室部 (tympanic part) から構成され, 岩様部は錐体部 (pyramid part) と乳突部 (mastoid part) に分けられている. 側頭骨内に発生する疾患には急性・慢性の中耳炎をはじめ, 真珠腫, 耳小骨奇形, 骨折, 顔面神経鞘腫や聴神経腫瘍などの良性腫瘍, 外耳道癌や中耳癌などの悪性腫瘍などがあり, いずれも手術治療の対象となることが多い. そして, 側頭骨内には中耳, 内耳, 顔面神経などヒトが生きるためにも, また, 社会生活を営むのに必要不可欠な器官や組織が内包されている. これらの器官や組織の解剖学的な構造は複雑で, その3次元的配置や走行を正確に理解することが側頭骨手術の基本であり, かつ成功の鍵を握っていると言っても過言ではない. また, 内耳, 顔面神経は精密かつデリケートな組織であり, 側頭骨手術においては病変の全摘だけでなく, これらの機能をいかに保存するかが大きな課題となる.
近年, 画像診断や手術支援機器の進歩はめざましく, 画像診断では小型で簡便かつ高画質が得られるコーンビームCT (3D Accuitomo
TM) が開発されている. 本装置はオフィスに設置でき, 耳鼻咽喉科医でも簡単に撮影できる. 撮影画像からはあらゆる方向の3次元画像が作成できるため, 側頭骨の3次元的解剖を理解するのに便利である. また, 手術支援機器としてはナビゲーションや術中モニタリングの進歩がめざましい. ここでは聴覚 (Viking Select
TM) と顔面神経のモニタリング (NIM-Response
TM) を取り上げて解説するが, これら神経モニタリングは側頭骨外科における聴覚や顔面神経の機能保存手術のために必要不可欠な手術支援機器になると思われる.
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