日本耳鼻咽喉科学会会報
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102 巻, 3 号
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  • 10年間, 241例の検討
    朝隈 真一郎
    1999 年 102 巻 3 号 p. 299-304
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    急性低音障害型感音難聴の診断基準として多く採用されてきたのは, 125-500Hzの聴力域値の合計が100dB以上, 2-8KHzの聴力域値の合計が60dB以下というものである. しかし日常の臨床の中ではこの基準から外れるものも多いようである. またこの疾患が近年増加しつつあるのではないかという印象もある. これらの推測を検証するために, 今回の調査を行った. 対象は過去10年間に当医院を受診した患者で, 耳閉感, 難聴, 音が響くなどの異常を訴え, 同側に低音域の感音難聴を認めた241例である. 先に示した基準に合う症例は110例であった. 基準から外れる症例は131例で, かなり多いことが分かった. この中で, 低音域聴力域値の合計が100dB以下の症例は69例と少なかった. 過去10年間の患者数の変遷を見ると, 徐々に患者数が増加していることが分かった. 増加しているのは女性患者で, 男性患者数はほとんど変化がなかった. 予後について見ると, 全体で82.7%が治癒, 改善しており予後のよいことが確認された. 低音域聴力の低下が小さい群と大きい群との間に予後の差はなかった. 全症例で低音域聴力域値の度数分布を調べた. そのヒストグラムは, 正規分布に近いパターンを示した. このことは, 今回の調査した集団が多様な病態が混在したものではなく, 単一の病態を持つ集団であることを示唆する. 低音域聴力域値低下の小さい症例が少ないこと, また予後を比較した結果から, 低音域の聴力低下の程度は病態の程度を意味するのではなく, この病態が40dB程度の聴力低下を起こしやすい, そういう特徴を有するものと考えた.
  • 赤木 博文, 小坂 道也, 土井 彰, 服部 謙志, 西崎 和則, 増田 游
    1999 年 102 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科以外の施設に所属する医師が, 扁桃とIgA腎症との関係をどのように考えているかを知る目的で, アンケート調査を行った.
    対象は, IgA腎症診療指針作成合同委員会の委員の方々, および最近の日本腎臓学会学術総会においてIgA腎症に関する報告を行っている, 耳鼻咽喉科以外の施設に所属する医師とした. 154名の対象医師のうち回答を得られたのは93名 (内科医79名, 小児科医12名, 病理医2名) で, 回答率は60.4%であった.
    結果は, IgA腎症の予後予測に最重視しているのは腎組織障害度 (72.0%), 最も有効な治療法 (薬) は副腎皮質ステロイド薬 (73.1%), 治療効果判定に最も有用なのは尿蛋白 (37.6%) という回答が最多であった. 最も有効な治療法が口蓋扁桃摘出術 (以下, 扁摘) と回答した医師は, 1名のみであった. IgA腎症発症に扁桃の関与が考えられる症例の割合は50%未満 (51.6%), 扁桃誘発試験はほとんど施行されていないが, 施行する場合の最重視項目は尿蛋白 (51.6%), 扁摘効果がある症例の割合は50%未満 (57.0%) という回答が最多であった.
    IgA腎症に対する扁摘効果は, 耳鼻咽喉科以外の医師にはまだまだ知られておらず, 啓蒙の必要があると考えた.
  • 最近経験した副咽頭間隙の傍神経節腫の3例から
    河合 敏, 佃 守, 持松 いづみ, 河野 英浩, 榎本 浩幸, 池間 陽子, 廣瀬 肇, 平田 佳代子
    1999 年 102 巻 3 号 p. 311-316
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    一側性の咽頭麻痺あるいは喉頭麻痺に伴う嚥下障害症例に対し, 患側方向へHead Rotation下に嚥下を行うことの有用性が指摘されている.
    われわれは腫瘍摘出術後に強い嚥下障害を生じた副咽頭間隙の巨大なparagangliomaの3例 (迷走神経傍神経節腫2例, 頸動脈小体腫瘍1例) を経験した. 腫瘍は下顎骨を側方離断して摘出し, また術後の気道確保の目的で全例で同時に気管切開術を施行した. これら3例の咽頭期の嚥下における嚥下障害に対し, Head Rotation下の嚥下訓練が有効であった.
    咽頭期の嚥下障害が一側の咽頭または喉頭のトラブルに起因する症例に対しては, 安易に経口摂取を禁止するのではなく, 患側にHead Rotationさせて積極的に直接的嚥下訓練を行うことは意義のあることと思われた. 複雑な一連の動作である嚥下運動の再獲得には実際に繰り返し嚥下動作を行うことが重要であり, また健側の梨状陥凹から食塊を流すことにより健側の輪状咽頭筋の廃用性の弛緩不全が予防されるからである. そして健側披裂部の代償性過内転を獲得できれば, さらに嚥下障害は改善されるであろう.
    以上, 一側性の咽頭あるいは喉頭の麻痺に伴う咽頭期の嚥下障害に対して, Head Rotation下の嚥下訓練は簡易な方法であるにもかかわらず有効なリハビリ法であることを強調した.
  • 数量化理論による解析
    白石 君男, 江浦 陽一, 末田 尚之, 坂田 俊文, 加藤 寿彦, 曽田 豊二, 福與 和正
    1999 年 102 巻 3 号 p. 317-323
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳鳴患者の耳鳴の気になり方におよぼす要因について, 定性データの判別分析を行う数量化理論II類を用いて検討した. 対象は標準耳鳴検査法1993を施行した一側性で1種類耳鳴の耳鳴患者91名とした.
    その結果, 耳鳴の気になり方には, 自覚的な耳鳴の大きさ, 年齢, 聴力レベルで表示されたラウドネス (HL), ピッチマッチ周波数, 耳鳴音の清濁, 耳鳴音の高低などが強い要因であった. 気になる方に影響する要因のカテゴリー内容は, 年齢では30歳代と40歳代, 耳鳴のラウドネス (HL) が25-50dB未満の軽度なもの, 耳鳴のラウドネス (SL) が15dB以上, 耳鳴音の清濁では濁っている, 自覚的な耳鳴の大きさが大きい, 耳鳴音の高低では低い音, ピッチマッチ周波数が4kHz以上の高調性の耳鳴であった. 一方気にならない方に影響していたのは, 自覚的な耳鳴の大きさが小さい, 耳鳴のラウドネス (HL) が25dB未満, ピッチマッチ周波数が250Hz以下の低音で同定された耳鳴, 検査音がノイズであった. 個々で耳鳴の気になり方が異なるのは, これらの要因が複雑に関係しているためと考えられた.
  • 松井 真人, 太田 史一, 部坂 弘彦
    1999 年 102 巻 3 号 p. 324-338
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    反回神経麻痺による嗄声や誤嚥により, 日常生活に問題を抱えている患者は少なくない.
    我々は反回神経麻痺による一側性喉頭麻痺患者に対し, 外来において軟性ファイバースコープ下に声帯内アテロコラーゲン注入術 (高研社製, 3%非架橋型) を施行している. しかし1回の注入では効果が不十分な場合もあり, 反復注入することで比較的良好な治療効果が得られている.
    そこで, 一側の反回神経を処置した成犬8匹の声帯を用いて, 注入アテロコラーゲンの声帯における組織内動態を, 特に反復注入術の必要性について検討した. 同時に当科喉頭外来における声帯内アテロコラーゲン注入術施行例のうち, 96例 (男性57例, 女性39例, 平均年齢54.5歳) の臨床データについて併せて検討した.
    組織学的検討からは, アテロコラーゲン注入術は, 反復注入することにより比較的良好な残存量が保たれ, 蓄積の効果が期待できるものと思われた. また注入部周囲の異物反応は, 反復注入においてもほとんど認められなかった. 臨床的には, 49%の患者において反復注入を施行した. また注入術の効果については, 最長発声持続時間 (MPT) に関しデータの得られた75例で検討したところ, 術前の平均値は3.27秒だったが, 1回注入後, 及び全注入終了後の最終MPTは, それぞれ6.67秒, 7.16秒と増加しており, 対応のあるt検定において有意な改善 (p<0.001) を認めた.
    アテロコラーゲン注入術は, 外来での内視鏡下注入術を施行することで患者の負担を軽減でき, ある程度の期間をあけての反復注入が容易であるため, その臨床的効果は十分期待できると考えられた.
  • 小島 博己, 青木 和博, 宮崎 日出海, 森山 寛
    1999 年 102 巻 3 号 p. 339-346
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳かきによる外傷性耳小骨離断の診断で耳小骨形成術を施行した10例10耳についてその病態, 手術成績について検討した. 手術所見ではキヌタ・アブミ関節の離断が5例にみられたが, キヌタ・アブミ関節の単独の離断は少なかった. 9例にアブミ骨の異常がみられ, うち6例にアブミ骨底板の陥入がみられた. 外リンパ瘻の合併は5例にみられた. めまいを呈した6例中5例に外リンパ瘻が認められたが, 耳鳴を伴った症例は必ずしも外リンパ瘻を合併していなかった. 術前検査ではティンパノグラムだけでは耳小骨離断の診断は困難であると考えられたが, アブミ骨筋反射は, 診断の参考になると考えられた. 手術はアブミ骨底板に異常のない症例ではアブミ骨頭, 底板を利用した耳小骨再建を行い, アブミ骨陥入例ではアブミ骨の位置を整復, 外リンパ瘻を閉鎖し, 必要に応じて耳小骨再建を行った. 手術成績は良好で, 聴力の改善率は90%であった.
  • 斎藤 武久, 木村 有一, 山田 武千代, 河野 陽子, 田中 信之, 柴森 良之, 山本 健人, 大坪 俊雄, 斎藤 等
    1999 年 102 巻 3 号 p. 347-353
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    6年6ヵ月間に福井医科大学で同一術者によって行われた聴力改善手術356症例のうち, 中耳疾患を有する気導補聴器装用者30例 (8.4%) について検討を行った. 原疾患は慢性中耳炎22例, 真珠腫性中耳炎5例, 耳硬化症1例, 耳小骨奇形2例であり, 初診時の主訴 (重複あり) は耳漏17例, 難聴28例, めまい2例, 耳鳴2例であった. 両耳手術を施行したのは19耳, 片側耳の手術は11耳でこのうちの5耳は良聴耳の手術であった. 術式は鼓室形成術I型15例, III型変法8例, IV型変法3例, アブミ骨手術2例, 人工中耳植え込み術2例であった. 術後に補聴器が不要となったのは16例, 術後も補聴器が必要であったのは14例であった. 全症例の術前平均聴力は64.1dBであり, 術後に補聴器を必要としなくなった症例の術後1年目の平均聴力は35.4±14.1dB, 術後も補聴器が必要であった症例では58.1±18.4dBであり, 両者の間に有意差を認めた. 術後の自覚症状改善率は耳漏100%, 難聴82%, めまい100%, 耳鳴50%であった. 以上の結果から, 中耳疾患を有する補聴器装用者に対しては, 聴力改善のみならず耳漏の停止や内耳性難聴の進行予防をはかるためにも, 積極的な手術の働きかけが重要であることを強調した.
  • 高速度ディジタル撮影法を用いて
    宮地 麻美子, 岩本 容武, 小田 恂, 新美 成二
    1999 年 102 巻 3 号 p. 354-367
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    病的音声の分析から声帯病変を診断しようとする試みとして, 音響学的方法, 聴覚心理学的方法を用い, 多くの報告がなされている. しかしながら, 声帯疾患が同一であっても, 結果としての音声には, その疾患に典型的なものとそうでないものがあり, 非典型的な声の場合は診断が難しい. そのため, 疾患名にこだわらず声帯振動パターンから病的音声を分析していくことが検討されている. 我々は, コンピューターを用いた高速度ディジタル撮影法を開発し, 病的声帯振動の解析を試みている. 今回の研究では, 声帯の器質的疾患患者に対し高速度ディジタル撮影による解析を行い, 声帯の病的振動様式と声質との関連について検討した. まず画像集録時に同時録音した音声をGRBAS尺度により聴覚的評価し, 声帯振動パターンとの関連につき検討し, 次いで粗ぞう性の強い嗄声 (R≧2.5) ・二重声Vocal Fry発声と声帯振動との関連につき考察した. 評価者内の再現性は尺度GRBで高く, 評価者間の評点の変動はGで最も小さかった. 高速度ディジタル撮影による病的声帯振動のパターンと音声の聴覚的印象には, 1対1の対応はなかった. しかし, 振動パターンとGRBAS評価との関連につき検討した結果, 声門閉鎖が一定せず声帯の左右または前後で振動周期に違いがある例は有意にG・Rの値が高く, 声門閉鎖が不完全な例は有意にBの値が高かった. またR≧2.5の症例および二重声を聴取した例の振動パターンは, 声門閉鎖が一定せず, 声帯の前後や左右で振動周期の違いがあるという振動パターンの特徴があった. Vocal Fry発声時の振動パターンは, 非対称で2ないし3の開放相が連続して現れ, その後の声門閉鎖区間が長いというものであった.
  • 鼻茸手術
    森山 寛
    1999 年 102 巻 3 号 p. 368-371
    発行日: 1999/03/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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