日本耳鼻咽喉科学会会報
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112 巻, 12 号
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総説
  • 友田 幸一
    2009 年 112 巻 12 号 p. 777-782
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    Balloon sinuplastyは, 特殊なバルーンカテーテルを用いて副鼻腔自然口を低侵襲に開大する新しい治療法で, 2005年に米国で開始され2008年9月までに全世界で約43,000例に施行されている. 最近その長期成績が報告され内視鏡による評価では, 1年後の洞全体の開存率85% (172/202例), またLund-MacKay CTスコアーでは, 1年目で術前後の差が4.83 (23例), 2年目で3.92 (12例) と改善がみられている. 再手術が必要となった割合は, 1年目で5.7% (4/70例), 2年目で9.7% (6/62例), またSNOT-20による副鼻腔症状およびQOLスコアーの変化では, 1年目でその差が1.02 (28例), 2年目で0.92 (32例) と0.8以上を示し臨床的に有意とみなされる. 副鼻腔手術のコンセプトは, 自然口の閉塞を改善することにあり, これまでの手術では病変組織を鉗除する侵襲的なものであったが, 本手技はその閉塞部位をバルーンカテーテルを用いて開大するだけで, 簡便に行え, 手術法と同等の効果が期待できること, また短時間で行え患者への負担も少なく外来治療も可能である.
    Short endoscope (Semi-rigid型, ENF-Y0002) は, 従来の直視型硬性内視鏡とフレキシブルな軟性内視鏡の両方の機能を兼ね備えた電子内視鏡で, Olympus社と共同で開発した. 規格は有効長150mm, 外径3.2mmで, 尖端部のみが上下90度屈曲する. この内視鏡のコンセプトは, 耳, 鼻, 咽・喉頭を1本で観察できることと, 先端部を固定することで観察下での鉗子操作も可能である. また最近注目されているNBIにも対応可能である. 主として外来診療で用いられるが, 内視鏡下鼻副鼻腔手術で斜視鏡に持ちかえることなく手術も可能である.
原著
  • 飯村 慈朗, 鴻 信義, 波多野 篤, 森山 寛
    2009 年 112 巻 12 号 p. 783-790
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    2003年から2007年の間に東京慈恵会医科大学附属病院にて手術を施行した上顎洞内反性乳頭腫28症例を対象に, 術式についての臨床的検討を行った. 当施設では, 鼻副鼻腔内反性乳頭腫に対しては術前画像から腫瘍基部を推定し, 基部を処置することが可能な手術法を選択して, 手術を施行してきた. 28症例中, 17例に対しては内視鏡下鼻内摘出術が行われ, 11例に対しては内視鏡下鼻内摘出術に加え経上顎洞的腫瘍摘出術が施行された. 上顎洞後方に腫瘍基部がある場合には, 内視鏡下鼻内摘出術で完全摘出が可能であった. 上顎洞前方に腫瘍基部がある場合は, 歯齦部切開を行い, 内視鏡下経上顎洞的腫瘍摘出術を施行した. 再発した症例は, 上壁から外壁・後壁の広範囲に腫瘍基部を有し, 内視鏡下鼻内摘出術を行った1例のみであった. 再発時には, 内視鏡下経上顎洞的腫瘍摘出術を施行することにより摘出し得た. 上顎洞の内反性乳頭腫に外科治療を施行する際には, 腫瘍基部を確実に摘出することが肝要であるため, 術式は腫瘍基部を推定した上で選択することが有用である.
  • 水田 啓介, 時田 喬, 伊藤 八次, 青木 光広, 久世 文也
    2009 年 112 巻 12 号 p. 791-800
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    われわれは一側迷路障害例の重心動揺における最大リアプノフ指数の特徴・意義を検討した. 最大リアプノフ指数はカオス時系列解析による, 軌道に不安定性を評価できる一つの指標である. 対象は, 健常成人55名と一側迷路障害例73例 (前庭神経炎例11例, めまいを伴う突発性難聴例6名, メニエール病例23例, 遅発性内リンパ水腫例8例, 良性発作性頭位めまい症11例, 他の迷路疾患14例) である. 開閉眼閉足で, 60秒間の重心動揺検査を行い, 従来の面積軌跡長検査成績と最大リアプノフ指数 (開閉眼, X方向・Y方向) を検討した. 迷路障害例は健常人と比較して, 最大リアプノフ指数が閉眼Y方向で有意に大きかった. 迷路障害例の動揺の大きさ (外周面積・単位軌跡長) が大きい例では最大リアプノフ指数が健常人より大きな値をとる例は少なかった. 迷路障害の経過と最大リアプノフ指数の変化を検討すると, 障害の早期で動揺の大きな時期では最大リアプノフ指数が小さい例があった. また障害の早期で動揺が安定化している例と晩期で動揺が安定した例を比較すると, 早期例では有意に最大リアプノフ指数が大きかった. 以上の結果から身体動揺の大きさと軌道不安定を示す最大リアプノフ指数は異なる指標であることが示された. また迷路障害の経過による変動の結果から, 最大リアプノフ指数を従来の面積軌跡長検査結果と合わせ評価することで, 姿勢制御をより明らかにできる可能性が示唆された.
  • 都築 建三, 深澤 啓二郎, 竹林 宏記, 岡 秀樹, 阪上 雅史
    2009 年 112 巻 12 号 p. 801-808
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/26
    ジャーナル フリー
    当科における過去13年間 (1995~2007年度) に, 入院して手術を行った鼻・副鼻腔手術1920例のうち, 原発性および術後性副鼻腔嚢胞218例 (11.4%), 男性125例, 女性93例, 平均年齢57.5歳 (17~85歳) の臨床的特徴を検討した. 副鼻腔嚢胞の診断は, 問診, 術前の画像所見と術中所見に基づいた.
    対象218例における嚢胞の成因は, 原発性45例 (20.6%), 術後性173例 (79.4%) であった. 受診経路に関して, 最初の受診科は, 原発性は眼科 (46.7%, 21/45例), 術後性は耳鼻咽喉科 (67.6%, 117/173例) が最多であった. 嚢胞の発生部位は, 原発性は前篩骨洞 (42.2%, 19/45例), 術後性は上顎洞 (71.7%, 124/173例) が最多であった. 症状は, 原発性は眼症状 (53.3%, 24/45例), 術後性は頬部症状 (53.8%, 93/173例) が最多であった. 術式は鼻内法 (内視鏡下副鼻腔手術, ESS) が第一選択で, 必要に応じて鼻外法 (10.6%, 23/218例) が行われた. 再発 (嚢胞の再閉塞) は平均2.1年 (6カ月~6年4カ月) 経過して2.3% (5/218例) に認め, 再手術を行い現在も嚢胞は開存している.
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