日本耳鼻咽喉科学会会報
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99 巻, 7 号
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  • 阪上 雅史, 小笠原 寛, 野出 美知子, 瀬尾 徹, 三代 康雄, 奥村 新一
    1996 年 99 巻 7 号 p. 973-977,1073
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1986年より1994年の9年間に2施設で手術したonly hearing car症例は11症例であった. 全中耳手術数 (1619例) の0.68%. 平均年齢47.6歳 (13-68歳), 平均経過観察期間2年7カ月 (6カ月4年), 真珠腫5例・慢性中耳炎5例・コレステリン肉芽腫1例であった. 術後聴力成績は, 日本耳科学会の判定基準 (案) に從えば成功例は11例中9例 (81.8%) で, 耳内は全例乾燥していた. 実際の術後気導聴力は, 改善3例, 不変7例 (±5.8dB), 悪化1例 (10~15dB) であった. only hearing earの手術適応については議論のあるところであるが, 真珠腫性中耳炎では積極的に手術するが慢性中耳炎では鼓膜形成に留める方針が良いと考えられた. いずれの場合にしても, 熟練した術者が細心の注意を払って行うことが必要である.
  • 高橋 辰, 池田 勝久, 高坂 知節, 大山 健二, 小林 俊光, 和田 仁
    1996 年 99 巻 7 号 p. 978-984,1073
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    DPOAE (Distortion Product Otoacoustic Emission) は蝸牛外有毛細胞の機能を反映する客観的検査方法である. 本論文では, DPOAEに及ぼす加齢の影響を検討する目的で耳症状, 耳疾患の既往のない10歳から69歳までの58耳についてDPOAEの計測を行った. DPOAEレベルは, 加齢に伴い高い周波数領域よりノイズレベル以下に低下する傾向があり, 入出力特性では, 加齢とともに検出域値の上昇, 最大値の低下が認められた. これらから, DPOAEは加齢とともに低下することが明らかとなり, 本検査法によって加齢に伴う蝸牛機能低下を早期より鋭敏に検出できる可能性が示された.
  • 高松 一郎, 小河原 昇, 藤本 眞奈美, 長原 太郎, 佃 守
    1996 年 99 巻 7 号 p. 985-990,1073
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1983年1月から1994年3月までに神奈川県立こども医療センター耳鼻咽喉科を受診した顔面神経麻痺症例は31例で, そのうち隠蔽性中耳炎が原因の2症例につき検討した.
    年齢はともに1歳3カ月, 男児. 女児各1名. 2症例とも, 鼓膜に穿孔はなく発赤, 肥厚, 膨隆のみであり, 保存療法や鼓膜切開で麻痺は改善しなかった. 経乳突的に鼓室を開放すると, 顔面神経水平部の周囲には多量の肉芽が見られた. 肉芽を除去後, 顔面神経を一部減荷し鼓室チユーブ留置術を施行したところ, 2カ月以内に顔面神経麻痺は完全に回復した. 幼小児の顔面神経麻痺では隠蔽性中耳炎によるものがあり, 経乳突的鼓室開放術, 顔面神経減荷術などの手術的治療が必要となる症例が存在する.
  • 田辺 勉, 小塚 誠, 福田 成司, 柳田 則之
    1996 年 99 巻 7 号 p. 991-998,1073
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    モルモットを用い低気圧実験用chamber内で減圧, 加圧の気圧負荷を加えて, 負荷直後に断頭し, 走査電子顕微鏡にて蝸牛有毛細胞を観察した. 耳管閉塞を施行していないモルモットでは形態学的には気圧外傷は認められなかったことにより低気圧負荷による気圧外傷は高気圧負荷に比べ惹起されにくいことが判明した. 耳管閉塞を施行したモルモットでは低気圧負荷後, 有毛細胞に障害を認め, 特に急速減圧を負荷した群に障害程度が有意差をもって強く認められた. このことより, 耳管機能低下により発生した中耳腔内の相対的陽圧が内耳窓膜の運動により外リンパに伝わり, これが内リンパで満たされている蓋膜下腔に及んで, 物理的な作用により有毛細胞聴毛に変化を引き起こすと推察した.
  • 樋口 哲, 牧嶋 和見, 杉本 卓矢, 黒田 嘉紀, 藤村 武之
    1996 年 99 巻 7 号 p. 999-1003,1075
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2009/03/19
    ジャーナル フリー
    唾液腺悪性腫瘍は, 高齢者に発生することが多い. 幼小児においては粘表皮癌の頻度が最も高く, 扁平上皮癌の報告は今までに数件のみである. 我々は, 5歳男児に発症した耳下腺扁平上皮癌を経験した. 本症例は顔面神経麻痺をきたしており, 病理診断を確定するために試験切除術を施行した. 治療としては化学療法, 手術 (左耳下腺全摘出術, 左頸部郭清術), 放射線照射を施行した. 耳下腺扁平上皮癌は高悪性群の腫瘍であり, また顔面神経麻痺をきたした悪性腫瘍の予後は悪く, 今後厳重な経過観察が必要と思われる.
  • 瀬尾 達, 小笠原 寛, 阪上 雅史
    1996 年 99 巻 7 号 p. 1004-1009,1075
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部領域に原発する悪性黒色腫は極めて予後不良である. 頭頸部領域においてはその解剖学的特性や腫瘍の播種の問題があり外科的切除が不可能な場合が多く, いまだ有効な治療法は確定されていない. 私たちは過去3年間に経験した6例の頭頸部領域の悪性黒色腫において抗エストロゲン剤であるTAM (Tamoxifen) を併用する化学ホルモン療法を行った. その結果, 3例がCR, 2例がPR, 1例がNCであった. 副作用はごく軽微であり, 化学ホルモン療法は有効であると考えられた. そして, その作用機序についても検討を加えた.
  • 稲上 憲一, 佐藤 武男, 吉野 邦俊, 藤井 隆, 橋本 典子, 上村 裕和, 長原 昌萬, 馬谷 克則
    1996 年 99 巻 7 号 p. 1010-1015,1075
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1979年から1992年までに当科で経験した中咽頭扁平上皮癌前壁型の27例について検討した. 年齢範囲は42~87歳, 平均年齢は60,1歳, 男性22例, 女性5例 (4.4: 1) であった. Stage I, II 7例 (26%), Stage III, IV 20例 (74%) でリンパ節転移率は63%と高率であり, 5年粗生存率は59%であった. 局所制御率 (最小観察期間2年) は放射線治療では88%, 手術は80%と良好な制御率が得られた. 表在性, 外向発育型に対して照射は有効であった. 頸部に対しては放射線治療はN1までなら制御可能でN2a以上になると照射後頸部郭清を必要とした. N2b以上の症例で健側の予防的郭清を行った3/7 (43%) に潜在性転移を認めた. QOLを考慮すればT3以上あるいはN2以上なら手術が望ましいと考えられた.
  • 松浦 宏司, 東野 哲也, 原 由起代, 植木 義裕, 牛迫 泰明, 森満 保
    1996 年 99 巻 7 号 p. 1016-1025,1075
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    鼓膜蝸電図用の使い捨て法を新たに考案し, 正常聴力者ならびに感音難聴症例についてその有用性, 実用性を検討した. 鼓膜蝸電図においては電極装置における鼓膜麻酔の影響や, 伝音系に及ぼす影響は無視できた. 正常聴力者においては良好なAP入出力曲線が得られ, 鼓室誘導法に劣らぬ結果であった. また感音難聴症例において従来の方法に劣らぬ情報が得られ, また波形の比較を正常聴力者のデータのみならず, 健側耳と比較することで内耳障害の存在を診断できる可能性が示唆された. 鼓膜蝸電図法はその簡便性, 侵襲の低さ, 安全性の面で臨床現場において非常に有益な情報を得られる手段となると考えられた.
  • 中井 茂
    1996 年 99 巻 7 号 p. 1026-1035,1077
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    舌癌の染色体異常をFISHとDNA顕微測光で検討した. 1, 7, 11, 17, X, Y染色体の特異的セントロメアDNAプローブを用いて, DNA-diploid癌6例中4例に染色体の数的異常を認めた. 特定の染色体に異常が集中することはなかった. この4例はDNA顕微測光ですべてに多倍体を認め, DNA diploid癌の中でも染色体の不安定な群と考えられた. DNA aneuploid癌では染色体の増加がしばしばみられたが, それらは癌進展の後期に起こるDNA量の倍化 (多倍体化) に付随した変化と考えられた. むしろダイソミーを示す染色体に初期からみられる変化がマスクされている可能性が指摘でき, 1番と11番染色体のLOHが関与した可能性が示唆された.
  • 小脳・脳幹障害のめまい
    喜多村 健
    1996 年 99 巻 7 号 p. 1036-1039
    発行日: 1996/07/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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