日本耳鼻咽喉科学会会報
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118 巻 , 12 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
総説
  • 石川 仁, 大西 かよ子, 粟飯原 輝人, 熊田 博明, 水本 斉志, 斎藤 高, 奥村 敏之, 櫻井 英幸
    2015 年 118 巻 12 号 p. 1399-1405
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
     近年, わが国ではがん患者数の増加と人口の急速な高齢化によって, 手術困難な症例に対する根治療法として放射線治療の期待は高まっている. 特に頭頸部癌は高齢者に多く, 治療後に生じる機能障害は患者の生活の質を著しく低下し社会復帰を難しくする. それ故, 根治性を高める集学療法の一つとしてだけでなく, 低侵襲治療としての役割も放射線治療は期待されている.
     安全で効果的な放射線治療を提供するための戦略として放射線治療の「治療可能比」を高めることが重要であり, 線量分割法の工夫, 化学療法の併用による照射効果の増強, あるいは放射線防護剤の開発など, これまでにさまざまな研究と臨床応用が試みられてきた. 中でも, 90年代後半から画像診断学と照射技術が革新的に進歩し高精度放射線治療が日常臨床として導入されたことで, 有害事象を軽減しつつ病巣に集中した高線量照射が可能となった. とりわけ強度変調照射法 (IMRT) はリスク臓器に対する線量制約を規定できるため, 複雑で大きな標的を有する頭頸部癌の放射線治療法として積極的に用いられ, 中枢神経障害,視力喪失, 骨壊死などの重篤な有害事象だけでなく, 口腔乾燥症や白内障などの発生を避けつつ, 高線量照射による腫瘍制御を高めることが可能となった. 近年, 陽子線や炭素イオン線による粒子線治療も注目されている. 荷電粒子線はある深さで止まることと, 止まる直前で強い効果を発揮することができる線量集中性の高い放射線であり, IMRT と比較すると正常組織に対する低~中線量領域を大幅に減らすことができる. また, 照射後の再発腫瘍に対する根治的な救済療法として中性子捕捉療法が期待されている. これまでは原子炉を用いていたため, 実地医療への導入は困難であったが, 粒子線治療に用いられる加速器を利用した治療技術について国内の数施設で開発中であり, 臨床応用に向けて準備が進められている.
  • 児玉 悟
    2015 年 118 巻 12 号 p. 1406-1413
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
     鼻閉の改善は鼻科手術の重要なアウトカムであり, 鼻閉の改善のためには, その原因や病態を的確に捉え, 鼻腔形態の矯正を行うことが重要である. 鼻中隔弯曲症は鼻閉を来す代表的な疾患であり, 鼻中隔矯正術は耳鼻咽喉科医にとってはごく一般的な手術である. しかし前弯が顕著な症例や外鼻変形を伴っている症例では, 通常の鼻内法による鼻中隔矯正術では,弯曲の矯正が困難なことが多く, 満足する結果が得られないこともある. このような鼻中隔弯曲症に対しては, 外鼻と鼻中隔を立体的な一つの構造物と考え, 矯正を行う septorhinoplasty (鼻中隔外鼻形成術) が有効である. 外鼻手術はいまだにわが国の鼻科臨床においてはマイナーな分野であり, 外鼻への手術操作に対しては, 耳鼻咽喉科医自身も抵抗を感じるものも少なくないのが現状であるが, 正確な鼻内所見の把握と鼻閉の評価ができるのは, おそらく耳鼻咽喉科医のみである. 患者の QOL 向上のためにも鼻閉改善のための外鼻手術においては鼻閉治療の中心であるべき耳鼻咽喉科医が積極的に関与すべきであると思われる.
  • 堀 龍介, 庄司 和彦
    2015 年 118 巻 12 号 p. 1414-1421
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
     画像診断法などが未発達で手術以外の有効な治療法がなかった時代の頸部郭清術は, 安全域を大きくとることで根治性の向上を図った. しかし画像診断や放射線療法などの医療技術は進歩しており, その結果頭頸部癌治療の方向性は低侵襲化し, 機能温存や郭清範囲を縮小するべくさまざまな術式が提唱されるようになった. 現在の頸部郭清術は, 通常は機能温存のために胸鎖乳突筋, 内頸静脈, 副神経の一部もしくは全部を温存する保存的頸部郭清術が行われる. さらに症例に応じて郭清範囲, 予防郭清の有無などが検討されるようになったので, 頭頸部癌低侵襲治療を目指す上で頸部郭清の適応と郭清範囲, 手術手技について再考することは重要である. 本稿では, まず早期舌癌 N0 症例などを念頭に置いた予防的頸部郭清術の適応について, そして化学放射線同時併用療法後の頸部郭清術での郭清範囲について述べる. 次いで頸部郭清術での使用器具, 手術手技と手順について述べる.
     機能温存で化学放射線同時併用療法に劣る場合があっても頭頸部癌の種類や進展度によっては手術治療が治癒率や侵襲性で勝っている. 頸部郭清術においても, 最新の画像診断や病理学的検索などで頸部リンパ節転移の範囲を正確に把握することで郭清範囲の縮小を図り, 術式の改良や最新手術機器を積極的に導入するなどしてわれわれ頭頸部外科医が低侵襲手術を追求すれば, 頸部郭清術を含めた手術治療は今後も頭頸部癌治療の主役であり続けるであろう.
原著
  • 木村 百合香, 大野 慶子, 本庄 需
    2015 年 118 巻 12 号 p. 1422-1428
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
     厚生労働省は, 平成26年度の診療報酬改定で胃瘻造設時嚥下機能評価加算を新設した. 倫理的側面からだけでなく医療経済的な側面からも胃瘻の適応には厳格な判断を要することは明らかだが, 胃瘻造設時の全例の嚥下機能評価の必要性には検討の余地がある. そこで, 高齢者専門急性期病院における本加算導入前の胃瘻造設症例と嚥下機能評価についての検討を行い, 胃瘻造設時の嚥下機能評価の位置づけに関する考察を行った.
     東京都健康長寿医療センターで胃瘻造設術を施行した114例を対象とした. 背景疾患, 胃瘻造設理由, 造設前の嚥下機能検査の有無, 嚥下内視鏡検査の施行症例の嚥下内視鏡スコア評価 (兵頭スコア), 兵頭スコアの重症度を検討した.
     背景疾患は, 脳血管障害が33%, パーキンソン症候群が26%, アルツハイマー型認知症が11%であった. 胃瘻造設理由は, 嚥下障害が38%, 他院からの造設依頼24%, 食思不振・拒食による栄養障害が18%であった. 嚥下内視鏡施行例の兵頭スコアの分布は, 軽症が28%, 中等症が47%, 重症が25%であった.
     嚥下障害は胃瘻造設理由の過半数に満たず, 背景疾患には進行性神経疾患も多く, 全例に胃瘻造設前嚥下機能評価を行うことの意義には疑問を呈さざるを得ない. 胃瘻造設の適応症例中に兵頭スコア軽症群も存在し, 病態や社会的背景を踏まえた総合的な評価を要することから, 本加算の算定に当たっては耳鼻咽喉科医の積極的な取り組みが求められる.
  • 小川 由起子, 湯田 厚司, 有方 雅彦, 神前 英明, 太田 伸男, 鈴木 祐輔, 清水 猛史
    2015 年 118 巻 12 号 p. 1429-1435
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
     スギ花粉症の舌下免疫療法は効果的な治療であるが, 副反応へも注意が必要である.
     【目的】スギ花粉症の舌下免疫療法の副反応を明確にする.
     【方法】筆頭著者施設で治療したスギ花粉症の舌下免疫療法207例の副反応を問診票と対面での確認で詳細に検討した.
     【結果】207例中84例 (40.5%) に副反応があり, 口腔内・のど症状が56例 (27.1%) で最も多かった. 特に, かゆみやピリピリした違和感が多かった. 局所腫脹は16例 (7.9%) に認めたが, 長期間持続する例はなかった. 花粉症症状もあり, 鼻症状29例 (14.0%), 眼症状14例 (6.8%), 耳症状 (痒み) 20例 (9.7%) であった. これらの副反応により治療を中断した例はなく, いずれも軽度の副反応であった. 副反応が出現した時期は増量期に52例 (25.0%) と維持期に61例 (29.3%) であり, ほぼ同等に出現したが, スギ花粉飛散期にはわずか4例 (2.5%) であった. 維持期の61例も維持期初期に集中していた. 持続期間は2週間以内が約60%であり, 5例 (6%) で2カ月以上継続した. 性別, 年齢による差はなく, スギ特異的 IgE 抗体 (CAP法) の程度や薬剤の服用率 (アドヒアランス) にも差はなかった.
     【結論】スギ花粉症の舌下免疫療法には副反応も多いが, いずれも軽く, 治療に支障となるものはなかった.
  • 吉福 孝介, 西元 謙吾, 松崎 勉, 松下 茂人
    2015 年 118 巻 12 号 p. 1436-1442
    発行日: 2015/05/13
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
     Stevens-Johnson syndrome (以下 SJS) は, 発熱を伴う口唇, 眼粘膜, 外陰部などの皮膚粘膜移行部における重症の粘膜疹および皮膚の紅斑を呈し, しばしば水疱, 表皮剥離など表皮の壊死性障害を認め, 早期診断・治療がなされなければ致死的となる重篤な皮膚疾患である. 今回われわれは, 56歳女性の上顎洞癌症例に対して化学療法併用放射線治療中に口腔粘膜炎を来し, 当初, 治療による急性期有害事象によるものと考えていたが, 全身皮膚症状が出現後に SJS と診断し得た1症例を経験した. 本症例では, 皮膚科専門医に診察を依頼し, 早急にステロイドミニパルス療法を施行し重症化することを免れた. 頭頸部癌照射治療中の患者において, 照射範囲外に至る口腔粘膜炎や, 全身皮膚症状を伴う重症な口腔粘膜炎が出現した際には SJS の可能性も念頭に置くことが必要であると考えられた.
  • 古田 康, 対馬 那由多, 中薗 彬, 福田 篤, 木村 将吾, 高橋 紘樹, 津布久 崇, 松村 道哉
    2015 年 118 巻 12 号 p. 1443-1448
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
     当科においては, 一時的な気道確保を目的に気管切開術を併施する症例を中心に経皮的気管切開術 (PDT) を導入し, 専門医取得前の研修医教育を行ってきた. 過去5年2カ月間において21例に対して PDT を施行した. 術中・術後の大きな合併症を認めず, 原病で死亡した3例を除く18例中, 気管孔を閉鎖できなかったのは1例のみであった. PDT を経験した研修医に対するアンケート調査においては, 2~5例程度の経験を積むことによって, PDT に関する知識が深まることが示唆された. 気道管理のエキスパートとしての耳鼻咽喉科専門研修において PDT をとり入れる意義は大きいと考えられた.
  • 土井 勝美, 神崎 晶, 熊川 孝三, 宇佐美 真一, 岩崎 聡, 山中 昇, 内藤 泰, 暁 清文, 東野 哲也, 髙橋 晴雄, 神田 幸 ...
    2015 年 118 巻 12 号 p. 1449-1458
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/01/15
    ジャーナル フリー
     2011~2014年, 国内で VSB (Vibrant Soundbridge® VSB; MedEl 社) 臨床治験が行われ, 伝音・混合性難聴25例に対して13施設で VSB の埋め込み手術が施行された. 現在, 保険適応を目指して PMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency; 独立行政法人医薬品医療機器総合機構) への申請手続きが開始されていて, 早期の臨床導入が期待されている.
     臨床治験23症例の手術前 (裸耳) と手術後20週 (VSB 装用下) での音場閾値の比較では, 250~8,000Hz のすべての周波数で統計学的に有意な改善が確認された (p<0.001). 特に, 1,000~4,000Hz の中音域~高音域での音場閾値の改善が著明で, 変化量は各周波数で35~40dB に入った. 語音明瞭度検査, 語音了解閾値検査では, 手術前 (裸耳) と比較して手術後20週 (VSB 装用下) での語音聴取能は著明に改善し, 手術前後で統計学的に有意な差が確認された (p<0.001). 静寂下のみならず, 雑音下での語音聴取能も VSB 装用下で統計学的に有意に改善を示した (p<0.001). VSB の高い有効性が確認された一方で, VSB 自体に関連する有害事象の発症は手術後ほとんど観察されず, VSB の安全性についても, 欧米からの報告と同様, 十分に評価できる内容になった.
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