日本耳鼻咽喉科学会会報
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106 巻, 10 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 市村 恵一
    2003 年 106 巻 10 号 p. 1015-1022
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    近年導入され,あるいはされつつある新たな教育方法について触れたが,これらの導入は耳鼻咽喉科にとってプラスになるのか?授業時間数と臨床実習の時間数の減少が耳鼻咽喉科を襲っている.耳鼻咽喉科で学習する項目を厳選するのは理に叶ってはいるが,問題は教官との接触である.すなわち,将来何を専門として選ぶかにおいて大きな位置を占めるのが,良い教育者,すばらしい人生の先輩との巡り合いである.教育スタッフと密接な時間を過ごすことでそのチャンスが生まれるのであるが,物理的時間減少はそのチャンスを減らしてしまう.耳鼻咽喉科は大きく,聴覚,単衡覚,嗅覚,味覚といった感覚,あるいは言語といったコミュニケーション面から個人のQOLに関係する,また,呼吸,嚥下といった生命維持に密接に関係した項目から成り,総合診療分野においても大きなウエイトを占める.その知識や技術の習得は重要性が高い.このまま教育時間数が減少することは問題であり,歯止めをかける必要がある.この点に関しては教育機関同士の連携が必要である上に,学会主導のプラン作成が急務と思われる.
    その基盤作りの上からも,耳鼻咽喉科で何を教えるかについて,本稿で示したように耳鼻咽喉科医以外からの視点の導入も必要である.その上で,重点的に取り上げるべき項目を厳選する必要がある.例えば,短期間の臨床実習では従来金科玉条のように扱われてきた間接喉頭鏡や後鼻鏡を覚えさせることは廃止して,ファイバースコピーの指導に移行すべきであろう.「見えた」という実感は学習の動機付けの重要な要素である.
  • 辻 富彦, 山口 展正, 森山 寛
    2003 年 106 巻 10 号 p. 1023-1029
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    耳管開放症の成因として体重の減少,脱水,妊娠,疲労,中耳炎などが指摘されているが,詳細は明らかでない.我々は中耳炎に引き続いて起こる耳管開放症の症例につき検討を行い,中耳炎と耳管開放症との関連につき考察を加えた.
    当科受診の中耳炎罹患後に発症した耳管開放症12症例につき検討したところ,BMI低値,体重減少,基礎疾患を有する症例がそれぞれ数例ずつ認められた.しかしBMI低値,体重減少,基礎疾患有り.のいずれにも含まれない中耳炎後の耳管開放症症例が12例中5例存在した.先行する中耳疾患は2例が急性中耳炎から移行した滲出性中耳炎,1例は急性中耳炎,1例は急性乳突洞炎,その他の8症例は滲出性中耳炎であった.
    また当科で診察した耳管開放症症例の119例に対して,過去に耳鼻咽喉科を受診した際に中耳炎(急性中耳炎,滲出性中耳炎など)と診断されたことがあるかを検討したところ42例35.3%で中耳炎の既往がみられた.
    急性中耳炎や滲出性中耳炎の際は鼓室の炎症とともに,耳管粘膜にも炎症が生じ,耳管は狭窄傾向にある.中耳炎の治癒に伴って耳管粘膜の炎症も改善するが,その際炎症の消退の仕方によっては耳管粘膜の線維化が起こり病的な耳管の開放状態が生じると推測される.耳管開放症の成因についてはまだ不明な点が多いが,耳管開放症発症や顕在化の誘因の一つとして中耳炎が関与していることが強く示唆された.
  • 柳 清, 石井 彩子, 宇田 川友克, 春名 眞一, 森山 寛
    2003 年 106 巻 10 号 p. 1030-1037
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. SBS症例12例において鼻症状,気管支症状の発現時期につき検討したところ鼻症状が全例で先行していた.
    2. ESSによりSBS症例は上気道,下気道とも著明に改善した.
    3. 過去の成績に比べ手術成績が良好な理由は内視鏡の使用による病的粘膜の正確な処置,鼻副鼻腔形態を保存したことによる鼻呼吸障害の改善,そしてマクロライドの少量長期投与の使用が考えられた.
    4. 今回の我々の経験からSBSに対してはESSを積極的に施行すべきであり,手術の際,病変のある副鼻腔はすべて開放すべきと考えた.
    5. DPBはSBSの中でも特殊な病態と考えられ,術後マクロライドの投与を中断できない可能性がある.
  • 小海 弘美, 大橋 正實, 石川 和郎, 原田 幸二, 平塚 仁志, 小笠 原誠, 宮下 宗治, 寺山 吉彦
    2003 年 106 巻 10 号 p. 1038-1044
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 最近6年間に耳CTから内耳奇形と診断された症例が126例(199耳)認められ,これらの症例をJacklerらの分類を参考にして分類し,その臨床所見について検討した.
    2. 最も多かった奇形は外側半規管単独異常であったが,臨床的にこの奇形に特異的と考えられる症状は見いだせなかった.
    3. 蝸牛奇形や前庭水管拡大症など臨床上注意すべき内耳奇形か診断するため先天性感音難聴を持つ症例には積極的に耳CTを撮る必要があると考えられた.
  • 大竹 祐輔
    2003 年 106 巻 10 号 p. 1045-1054
    発行日: 2003/10/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    1. 複合SAM音によるAMFR閾値と単独SAM音によるAMFR閾値の間には,臨床的に問題となるような差は認められず,また,複合SAM音を構成する4種のSAM音のCFとMFの組み合わせを変えてもAMFR閾値に影響は認められなかった.
    2. 難聴症例において各刺激音のCFに対応したAMFR閾値と聴力像は,ほぼ一致し,複合SAM音を用いた場合でもAMFRの周波数特異性には問題のないことが示された.
    3. 片耳の4周波数のAMFR閾値判定に要する時間は約24分であり,各SAM音を単独で提示した場合に比べて検査時間の著しい短縮となった.
    4. 複合SAM音によるAMFRは,周波数特異性の高い他覚的聴力検査法として臨床応用が十分に可能であると考えられた.
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