アデノイド増殖症,口蓋扁桃肥大による小児睡眠時無呼吸症候群の検査として,睡眠中の経皮的酸素飽和度(SpO2)の有用性を検討した.普段いびきをかかず,その他の呼吸器疾患を持たない小児22例と,いびき,口呼吸などの睡眠時無呼吸症候群を疑わせる症状を呈する小児163例について検討した.また,163例のうちアデノイド切除術,口蓋扁桃摘出術を行い.術前術後に検査を施行し得た67例につき,従前検査と術後の成績について検討した.検討する項目は,SpO2の最低値(LSpO2),睡眠1時間あたりSpO2が平均値より4%以上低下したか,89%以下に低下した回数(Oxygen desaturation index: ODI),睡眠1時間あたりSpO2が95%以下に低下した総時間量(Total Duration of desaturation: TDD95)とした.正常例ではほとんどの症例で酸素飽和度の低下を認めず,その結果はこれまでの報告と相違なかった.正常例の平均値から標準偏差の2倍離れた値を暫定的に正常異常の境界値としたところ,全163例の検査結果はLSpO2では105例,ODIでは75例が,TDD95では76例が正常と判定された.また,検査値の分布を検討したところ,最頻値は境界値周辺に認められた.術前の検査値と術後の値を検討したところ,術前の検査値と手術による改善度は非常に強い相関を示した.そこで,手術により改善した症例を陽性として,それぞれの検査値ごとの感度と特異度を検討した結果,手術の成功率100%を目標にした場合LSpO2=87%, ODI=3.5, TDD95=30.0を適応基準とし90%を目標とした場合LSpO2=90%, ODI=2.0, TDD95=7.0を適応基準とすればよいことが判明した.以上より睡眠中のSpO2の測定は小児OSASのスクリーニング検査として有用であると考えられた.
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