日本耳鼻咽喉科学会会報
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117 巻 , 3 号
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総説
  • 橋本 淳, 田村 研治, 藤原 康弘
    2014 年 117 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    がん治療領域において, 分子標的治療が臨床現場に導入され10年以上が経過した. その間にヒトの遺伝子配列の解読や新たな治療標的分子の発見など, 個々人に最適な医療を提供する個別化医療の研究も進み, その成果が発揮され始めている. 個別化医療においてカギを握るのがコンパニオン診断薬という体外診断薬である. 1990年代にその概念が提唱され, 欧米では2011年にコンパニオン診断薬についてのガイダンスが発表され, 本邦では現在作成中である. 乳がん領域においては, HER2を標的としたトラスツズマブが国内の個別化医療として最初に登場し, コンパニオン診断は脚光を浴びた. トラスツズマブは投与前にHER2蛋白の過剰発現やHER2遺伝子の増幅を調べることにより, トラスツズマブの効果が期待できる患者層を選定することが可能である. 蛋白発現判定のための免疫染色, 遺伝子増幅判定のためのFISH法がコンパニオン診断薬として承認されている. 最近では, 複数の遺伝子をチェックし, そのパターンから再発可能性や治療効果を予測する診断法も開発されている. 乳がん領域においても, 21種類の遺伝子の発現を調べてスコア化し, 早期乳がん患者に対する化学療法の効果および再発可能性を予測する診断検査であるOncotype Dx® の開発が進んでいる. これからの展望としては, 感度や精度の高い診断法が, 対象となる新薬とともに整合性よく市場に提供されることが望まれ, 今後もさらにコンパニオン診断薬の研究開発が進んでいく一方で, 新薬が次々と開発される状況, 診断検査の精度管理, コストといった取り組むべき課題も多く存在する. コンパニオン診断薬の開発は個別化医療の推進において非常に重要であり, 産官学を挙げて研究開発を進めていくことが必要である.
  • 林 達哉
    2014 年 117 巻 3 号 p. 168-174
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    2013年, 日米両国で小児急性中耳炎のガイドラインが改訂された. 本邦のガイドラインの基本骨格に変更はなかった. すなわち, 年齢, 症状, 鼓膜所見により疾患の重症度を決定し, 重症度に応じた一次抗菌薬選択と治療効果の有無による二次および三次抗菌薬へのスイッチが, 2006年の初版以来変わらぬ要点である. 一方, 米国のガイドラインは骨格にかかわる部分に大きな変更があった. すなわち, 従来と異なり, 急性中耳炎の診断は厳格な鼓膜所見が必須となった. 診断が抗菌薬治療に直結する構造となっているため, 本邦と同様, 厳格な鼓膜所見が治療選択に必須になったといえる.
    本邦2013年版の主な変更点は, 治療効果判定時期が抗菌薬投与後3日に短縮された点と, 新規抗菌薬が中等症の三次治療および重症の二次と三次治療の選択抗菌薬候補に明示された点であろう.
    何故, 米国のガイドラインは本邦のガイドラインに近い形に姿を変える必要があったのか, 本邦のガイドラインの変更点, 非変更点の意味するところは何かを理解することが, ガイドラインの最も重要な目的である抗菌薬の適正使用につながると期待される.
原著
  • 大田 隆之, 松井 和夫, 呉 晃一, 久保田 亘, 江洲 欣彦, 木下 佳奈, 林 泰広
    2014 年 117 巻 3 号 p. 175-183
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    耳小骨奇形は, 種々の伝音難聴の中でも手術により聴力改善が大いに期待できる疾患であり, 積極的に手術加療を行うことが推奨されている. われわれも耳小骨奇形に対し, 積極的に手術加療を行っている. 今回, 2004年3月から2011年4月までの7年2カ月間に手術を行った耳小骨奇形の症例で, 聖隷横浜病院26例26耳, 聖隷浜松病院14例18耳の計40例44耳について検討した. 男性13例14耳, 女性27例30耳で, 年齢は7~64歳 (平均19.0歳) であった. 発生学的見地に基づいた舩坂らの分類にて類別すると, monofocal奇形I群24耳, II群6耳, III群7耳, multifocal奇形I+II群1耳, I+III群4耳, I+II+III群2耳であった. 術式は, IIIc 21耳, IIIi-M 1耳, IIIi-I 3耳, IVc 5耳, IVi-I 2耳, total stapedectomy9耳, partial stapedectomy2耳, 試験的鼓室開放術1耳であった.
    術前のティンパノグラム, 音響性耳小骨筋反射, 鼓膜所見, CT所見から, 術前診断予測が可能かどうかも検討し, その結果, 病態予測の助けにはなり得るが, 術前診断を完全に行うことは不可能と考えられた. また, 日本耳科学会「伝音再建後の術後聴力成績判定基準 (2010) 」に従い, 聴力成績を判定した結果, 成功率は92.3% (36/39耳) であり良好であった.
  • 松本 吉史, 小柏 靖直, 甲能 直幸
    2014 年 117 巻 3 号 p. 184-190
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    日本人の結核罹患率は人口10万人対21.0 (2010年) であり, 先進国と比較すると高く, 結核の中等度蔓延国といえる. また, 全結核症中における頸部リンパ節結核などの肺外結核症の比率は上昇傾向にある. 耳鼻咽喉科領域の結核症, 特に頸部リンパ節結核は肺外結核の中で胸膜炎の次に多い. 耳鼻咽喉科医が肺外結核症を診断する機会は決してまれではなく, 多彩な臨床像を呈することから診断に苦慮することも多い. そこで今回われわれは, 当科で経験した頸部リンパ節結核9例について, 診断に至るまでの臨床経過を詳細に検討し文献的な考察を加えた.
    頸部リンパ節結核の9例の画像所見では膿瘍型が5例, 腫脹型が4例で認められた. クオンティフェロンを施行した4例に関しては全例で陽性であった. 9例中8例に穿刺吸引細胞診が施行され, 半数の4例に類上皮細胞がみられた.
    結核症は多彩な臨床像を呈することがあるため, 非定型的な所見をみた場合にはまず本症を疑うことが重要である. 周囲への感染拡大を防止する観点から, 胃液や喀痰の培養検査やPCR, クオンティフェロン検査により周囲への拡散のリスクを十分に評価した上で超音波ガイド下の穿刺吸引細胞診を行い, 診断に難渋する場合にはリンパ節の開放生検を考慮することが重要である.
  • 野々山 宏, 有元 真理子, 稲川 俊太郎, 内田 育恵, 谷川 徹, 小川 徹也, 植田 広海
    2014 年 117 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    急性喉頭蓋炎は高度な気道狭窄から致命的となる疾患であるため, ときに迅速かつ的確な処置が必要とされる.
    われわれは成人の急性喉頭蓋炎患者において性別, 年齢, 発症季節, 初診施設, 受診時期, 症状, 喉頭所見, 血液検査, 既往歴につき気道確保に関連する因子を中心に検討した. 気道確保を行ったのは216例中, 39例 (18.1%) であった.
    急性喉頭蓋炎患者の男女比は1.9: 1, 平均年齢は53歳で発症の季節性は認められなかった. 受診時期の検討では, 気道確保群が有意差をもって早期に受診をしていた. 症状は咽頭痛を88%, 発熱を30%, 嚥下時痛・嚥下困難を28%, 呼吸苦を19%, 声の変化を10%に認め, 呼吸苦のみが気道確保との関連に有意差があった. 喉頭内視鏡検査所見では, 一側の仮声帯に炎症が波及し腫脹していた症例 (52.6%) は, 披裂喉頭蓋ヒダ, 披裂部までに留まったもの (12.9%) に比べ, 気道確保率は大きく上回った. 血液検査では, WBC, CRPともに, 気道確保群において有意に高値であった. 既往歴では糖尿病の有病者に気道確保との関連に有意差を認めた.
    早期の受診, 呼吸苦, 喉頭内視鏡検査所見での仮声帯の腫脹, WBC, CRPの上昇, 糖尿病の既往がある症例では気道の確保を考慮する必要性があると考えられた.
  • 小川 真, 細川 清人, 猪原 秀典
    2014 年 117 巻 3 号 p. 196-205
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 睡眠時呼吸障害を有する小児症例におけるアデノイド・扁桃手術 (AT) 後の呼吸合併症のリスク因子を同定することである. 睡眠時呼吸障害の初回治療としてATを施行された小児症例186例 (男児131例, 女児55例) 中, 周術期において換気不全が生じ, cyanosisを呈して血中酸素飽和度が90%未満となり, かつ迅速挿管, continuous positive airway pressure あるいはエアウェイ挿入などの医学的介入を要する呼吸合併症を生じた症例は14例 (男児9例, 女児5例) であった. うち9例が3歳未満であり, 8例に筋緊張低下が, 7例に-1.5SD以上の低身長が認められた. 統計学的解析により, 3歳未満の年齢, 筋緊張低下あるいは低身長症を有する症例で呼吸合併症の発生率が有意に高く, さらに, 低体重, 術前 apnea-hypopnea index 高値がリスク因子であることが示唆された. 一方, これらの14例の個々を検討すると, 3歳未満の症例は, 筋緊張低下あるいは低身長のいずれかを有していた. また14例中13例において, 呼吸合併症が全身麻酔に関連して発生しており, 10例が集中管理を必要とした. 以上の結果から, 小児睡眠時呼吸障害症例のAT施行に関して, 筋緊張低下あるいは低身長を伴う3歳未満症例は, 呼吸合併症の発生リスクが高いため, ICUを有する施設において施行されることが推奨される.
  • 本間 博臣, 竹村 栄毅, 油井 健史, 小野 智裕, 渡邉 彩, 林 武史
    2014 年 117 巻 3 号 p. 206-208
    発行日: 2014/03/20
    公開日: 2014/04/20
    ジャーナル フリー
    頭蓋内感染症の半数が副鼻腔炎や中耳炎から発生するとされている. 歯性感染症からの発生頻度は2%とされており, 原因としてはまれである. 本例は歯周囲感染症から頬部→翼突下顎隙→翼口蓋窩→側頭下窩へと進展し, 化膿性顎関節炎を発症し卵円孔, 棘孔を介し頭蓋内膿瘍を発症した. 脳神経外科と合同で全身麻酔下に側頭下窩のデブリドマン・開頭穿刺吸引術を同一の皮膚切開にて行った. 側頭下窩への到達方法として, 頬骨弓を離断し側頭筋を上方より前下方に翻転することで低侵襲なアプローチが可能であった.
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