日本耳鼻咽喉科学会会報
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108 巻, 12 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 鼻出血―止血治療までの流れ―
    川浦 光弘
    2005 年 108 巻 12 号 p. 1129-1134
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科医にとって扱う救急疾患のひとつに鼻出血があげられるが, 外来の簡単な処置で止血できる場合と止血に難渋して入院を余儀なくさせられ, 外科的治療が必要になる場合と千差万別である. 患者の状態もさることながら鼻出血の治療はそれを扱う医師の技量と施設設備によってばらばらであり, きちんとしたガイドラインがないのが現状である. 耳鼻咽喉科医としてすべきことは確実な止血と原因となる疾患があればその的確な診断が必要で, そうすることにより患者を重篤な状態に陥ることを防ぐことが出来る. 止血に必要な知識である鼻腔の解剖と原因疾患を示し, 鼻出血患者がきた場合の対応と出血部位別の止血治療の流れをフローチャートに示し保存的治療と外科的治療の方法を述べた. 保存的治療はガーゼタンポンとバルーンタンボンが主であまり変化がないと思われるが外科的治療は今後内視鏡下の止血術が主流になると思われ, 当院で行った再出血を繰り返した鼻出血に内視鏡下止血術を施行した1例を報告した.
  • 気道・食道異物の取り扱い方
    佐野 光仁
    2005 年 108 巻 12 号 p. 1135-1143
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    気道・食道異物に対して我々耳鼻咽喉科医が担う役割は迅速・的確な診断, 安全な摘出方法, 異物症の予防と啓蒙と考えられる.
    診断にはまず患者を診察し, 問診で異物症を疑ってみる必要がある. 次に検査では単純X線検査が一番有用である. それもX線検査の撮影部位は胸部だけでなく, 頸部・腹部を含める必要がある. またX線の撮影方向は頸部に介在している異物に対しては前後方向だけでなく側面方向も重要である. 気道異物では胸部の吸気時, 呼気時の撮影により異物の介在側が判明する. さらに気道異物の発見にはラリンゲアルマスクの全身麻酔下でファイバースコープを挿入し, 気道内を観察し異物の介在部位, 種類, 状態を詳細に観察できる. またファイバースコープにCCDカメラを装着しモニター画面に映し麻酔科医, 看護師などの他のスタッフに異物を示すことにより異物摘出時の緊急な場面に遭遇した際の対応が可能である. 異物を摘出するには硬性鏡, 軟性鏡の二つの方法があるが, 耳鼻科医は硬性鏡を多く使用している. 最近はテレスコープの先端に異物鉗子が装着されたものが発売されビデオモニターをのぞきながら, より安全に異物を摘出できるようになった. 異物症は事故であり危険性を啓蒙する必要がある. ながら食事 (泣きながら, 走りながら, 笑いながら) をさせない. 乳幼児に豆類 (ピーナツ, ピーナツ入りのチョコレートなど) を食べさせない. 安全な玩具を与えるなどの注意が必要である.
  • 近藤 千雅, 松代 直樹, 佐藤 崇, 倉増 俊宏, 久保 武
    2005 年 108 巻 12 号 p. 1144-1151
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は6症例にBAHA (Bone-Anchored Hearing Aid, 埋め込み型骨導補聴器) 埋め込み術を施行し, 従来患者が使用していた補聴器 (HA) とBAHAそれぞれについて, 自由音場閾値聴力検査, 語音弁別検査, 語音了解 (聴取) 閾値検査, および装用に関するアンケート調査を行った. 自由音場閾値聴力検査の結果からHA, BAHAそれぞれの補聴機器のファンクショナルゲインを算出し比較したところ, BAHAは各周波数において利得が高いという傾向がみられた. また, 静寂下における語音弁別スコアに関して, BAHAの装用効果が非常に高い症例が2例存在し, 同様に静寂下での語音了解 (聴取) 閾値 (SRT) では, 全例においてHAよりもBAHAのほうが成績が良かった. 雑音下での語音弁別検査および語音了解 (聴取) 閾値検査では, 従来の補聴器とBAHAとの間には補聴効果の差異を認めなかった. BAHA装用に関するアンケートでは, 審美性, 装用感, 明瞭度, 音量など, 全般的に満足度が高かった.
  • 徳丸 裕, 八幡 有紀子, 藤井 正人
    2005 年 108 巻 12 号 p. 1152-1157
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    (目的) 遺伝子のプロモーター領域における異常DNAメチル化は多くの癌において報告されており, 癌抑制遺伝子, もしくは癌抑制に関わるpathwayの不活化に関わっていると考えられる. 今回我々は頭頸部癌におけるTazarotineinduced gene 1 (TIG1) 遺伝子のメチル化について細胞株および臨床検体を用いて解析を行い, また腫瘍マーカーとしての可能性についても検討した.
    (方法) 頭頸部扁平上皮癌細胞株6株, および頭頸部癌手術検体50例を用いてMethylation specifie PCR (MSP) およびBisulfite処理後のシークエンス解析によりメチル化の有無を検討した. また末梢血サンプルについては癌患者群55例, 正常群32例に対してQuantitative MSP (QMSP) を用いた.
    (結果) 細胞株では6株すべてのTIG1遺伝子がメチル化されていた. 臨床検体では, 50例中31例 (62%) にメチル化を認めた. また末梢血からのDNA解析では癌患者群では, 55例中30例 (54%) にメチル化が認められたが, 健常者の血液においては8例 (25%) でのみ軽度のメチル化が検出された.
    (結論) 頭頸部扁平上皮癌においてTIG1遺伝子のメチル化が重要な働きをしている可能性が示唆された. 頭頸部癌患者の末梢血においてもTIG1遺伝子のメチル化が検出され, molecular markerとしての役割が期待できると考えられた.
  • HHIA (Hearing Handicap Inventory for Adults) による両側性感音難聴症例との比較
    佐藤 美奈子, 小川 郁, 斎藤 秀行, 山下 大介, 弓削 勇, 増田 正次, 岡本 康秀, 栗田 昭宏
    2005 年 108 巻 12 号 p. 1158-1164
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    発症後半年以上経過した陳旧性突発性難聴症例に対し, 日本語版HHIA1) (Hearing Handicap Inventory for Adults, 以下HHIA) と, 治療後の状態を尋ねるアンケートを施行し, 聴力固定後の突発性難聴患者のQOLについて検討した.
    両側性感音難聴症例との比較では, 突発性難聴症例のHHIA点数は合計点, 社会面, 感情面とも有意に低かった (p<0.01). 聴力レベルとの関係, 罹患期間との関係においても, 両側性感音難聴症例と突発性難聴症例は, 異なる傾向を示した.
    補聴器の使用は3例のみであったが適応外の1例も含まれていた. HHIAの点数が0点の症例は, 1例が難聴, 約1/3が耳鳴で困ると答えたのみであったが, 0点以外の症例は, 1/2以上の症例が難聴で困ると答え, 44点以上の症例は全例, 難聴と耳鳴を訴えていた. 約半数の症例が聴力固定後も難聴, 耳鳴に悩まされており. めまい, 耳閉塞感に比して高率であった. 中には, 症状は残っているが困ってはいない, とコメントをつけた症例も見られた. 治療後の自覚的聴力変化について悪くなったと答えた症例 (13%), 当科の治療後に他院を受診したことがある症例 (16%) は, HHIAが有意に高かった.
    これらの結果から, 陳旧性突発性難聴におけるQOL改善のためには, 治療後のインフォームドコンセント, 定期的聴力検査など, ニーズに応じたフォローアップが重要であると考えられた.
  • 中村 一博, 吉田 知之, 鈴木 伸弘, 渡嘉敷 亮二, 鈴木 衛
    2005 年 108 巻 12 号 p. 1165-1170
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌症例では喉頭摘出術後の永久気管孔が縮小し気管孔開大術または気管カニューレ装着が必要となることも少なくない. しかし永久気管孔にカニユーレを使用する際, 汎用気管切開用カニューレでは不都合が生じることも多い.
    今回われわれは汎用永久気管孔用ストレートカニューレを開発し, 14症例の頭頸部癌術後症例に使用し良好な結果を得たので報告する.
    汎用気管切開用カニューレは彎曲が強く, 永久気管孔に使用すると前壁に刺激を与え肉芽形成をきたすことがあった. そのため気管の矢状断CTを撮影し胸壁と気管前壁の角度を測定し, 設計した. 自己装着管理が容易となるように従来のものより軟らかいシリコン素材を用いた. やや太めとすることにより紐固定を不要とした.
    装着した全例でカニューレは良好に適合し呼吸苦は改善した.
    永久気管孔には従来の汎用気管切開用カニューレが適合しにくいこともある. そのような際にわれわれの考案した汎用永久気管孔用ストレートカニューレが有用であることが示唆された.
  • 五島 史行, 浅間 洋二, 中井 貴美子
    2005 年 108 巻 12 号 p. 1171-1174
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    線維筋痛症とは, 全身に強い痛みを起こす原因不明の疾患である. めまい, 耳鳴などの蝸牛前庭症状を主訴として耳鼻咽喉科を初診することがある. 症例は38歳女性, 主訴はめまい, 全身の痛み. 聴覚, 平衡機能検査では明らかな異常を認めなかった. 外来加療中に痛みが増悪し, カウンセリング, 自律訓練法を導入した. 入院し, A型ボツリヌス毒素注射, プレドニゾロン点滴などの治療を行い軽快退院となった. 入院中も嘔吐を伴う回転性めまい発作が定期的に認められたが, 明らかな眼振は観察されなかった. 神経の統合異常, 体性感覚の異常などがめまいの原因と考えられた. 薬物治療や心理的治療により疼痛を緩和することが結果的にめまいを抑制したと考えられた.
  • 薬物相互作用
    澤田 康文
    2005 年 108 巻 12 号 p. 1175-1179
    発行日: 2005/12/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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