日本耳鼻咽喉科学会会報
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123 巻, 8 号
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総説
  • ―2008年と2018年との比較および自由記載欄から見えたこと―
    丸山 裕美子, 森田 由香, 小林 一女, 濵田 昌史, 吉崎 智一
    原稿種別: 総説
    2020 年 123 巻 8 号 p. 715-721
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

     日本耳鼻咽喉科学会において2008年および2018年に女性会員に対し就業の実態と改善点の確認を目的にアンケート調査がなされた. 10年前と今回の調査結果を比較検討し現状の課題点につき考察を行ったので報告する.

     対象は日本耳鼻咽喉科学会女性会員であり, 2008年は1,434名, 2018年は1,424名より回答を得た. 8割以上に女性医師としての悩みの経験がありその内容の上位は両調査共に「仕事と育児や家庭との両立」や「十分な研修時間の確保困難」であった. 最多を占める就労形態は2008年が開業医 (37%) であったのに対し2018年は勤務医 (42%) へと変化していた. 勤務医に今後の希望を問うたところ「勤務医継続」を選択する医師は10年前より16%増加し73%であった. 開業のタイミングは卒後10年未満および20年未満が減少し20年以上が増加傾向にあった. 非常勤や休職中の医師に以後の希望を問うたところ, 復職希望は減少しており働き方の二極化が示唆された. 延べ700件あまりの後輩へのアドバイスのうち最多を占めたのは前回同様, 仕事の継続を勧める声であった. 女性医師, 特に勤務医が増加する中, ライフイベントと医師としての任務を両立し継続できる体制の推進, 男女すべての医療者が互いを認め長所を活かし働き続けられる環境づくりが重要と考えられた.

原著
  • 榎本 美紀, 北嶋 諒, 福本 和彦
    原稿種別: 原著
    2020 年 123 巻 8 号 p. 722-728
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

     看取りを含めた在宅医療の推進が図られる中, 今後在宅診療を受ける頭頸部がん患者も増えていくと予想される. しかしながら, 頭頸部がん患者の在宅療養についての報告はほとんどない. そこで, 当院で在宅訪問診療を行った頭頸部がん患者15例における経過や転帰を明らかにし, 在宅看取り群と病院看取り群の比較検討を含めその実情を報告する. 患者背景は, 男女比12: 3, 平均年齢73.7歳, 原発部位: 中咽頭・下咽頭・喉頭・口腔・甲状腺, 紹介元は急性期病院耳鼻咽喉科13例 (86.7%), 診療所内科2例であった. 15例の平均訪問診療期間73.4日, 平均定期訪問回数10.6回, 平均緊急往診回数2.0回, 緊急往診理由は看取り・せん妄/意識障害・経鼻胃管閉塞・出血・気管カニューレ詰まり等が挙げられた. 転帰は, 在宅看取り9例 (在宅看取り率60.0%) で, 当院における原発臓器領域別在宅看取り率の中で最も低い値であった. 病院看取り6例中5例は介護者が在宅療養継続の限界を訴え, うち3例は耳鼻科的処置の必要性などから紹介元病院耳鼻咽喉科に入院を依頼した (逆紹介率: 23.1%. 当院介入期間平均34.3日). 耳鼻咽喉科医がかかわることにより, 頭頸部がん患者の在宅療養の困難感を減少させ, 在宅診療の導入や継続および急性期病院の入院日数減少に貢献することが, 今後の展望であり課題である.

  • 岸野 毅日人, 森 照茂, 宮下 武憲, 大内 陽平, 寒川 泰, 福村 崇, 高橋 幸稔, 三谷 知生, 星川 広史
    原稿種別: 原著
    2020 年 123 巻 8 号 p. 729-736
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

     当科で経験した頭頸部扁平上皮癌終末期症例に対する palliative prognostic index (以下, PPI), Glasgow prognostic score (以下, GPS) を用いた予後予測について検討した. 対象は2013年4月~2019年3月に当科にて積極的治療を終了または適応外と判断し Best supportive care (以下, BSC)を行うことを決定した頭頸部扁平上皮癌70例のうち, データが不十分である23例を除いた47例である.

     PPI において生存期間は Group A, B が Group C より有意に長かった (中央値と四分位範囲は64日 (31~117日) vs. 20日 (11~30日)). GPS において生存期間は Score 0,1 が Score 2 より有意に長かった (中央値と四分位範囲は105日 (57~152日) vs. 26日 (17~47日)). 生存曲線においても PPI における2群と GPS における2群の間に有意な差を認めた. BSC 決定日から14日と30日生存予測における PPI と GPS の精度を検討した. 対象症例ではまず GPS が悪化し, その後 PPI が悪化すると考えられ, まずは GPS にて30日生存の可能性を推測し, GPS Score 2 となる症例に対し PPI を算出し, 14日生存の可能性を推測するのが簡便かつ有用と考えられた.

  • 杉浦 彩子, 文堂 昌彦, 鈴木 宏和, 中田 隆文, 内田 育恵, 曾根 三千彦, 中島 務
    原稿種別: 原著
    2020 年 123 巻 8 号 p. 737-744
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

     水頭症患者における聴力変化がしばしば報告されており, 相対的内リンパ水腫によると推測されている. 今回われわれは2012年1月~2018年3月の間に正常圧水頭症に対するシャント手術を受け, 術前後で聴力検査を行った高齢者53名において聴力変化についての検討を行った. 術前の聴力は半数以上に中等度以上の感音難聴を認めた. 術後の聴力は53名全体では一部の低音域において有意な低下を認めたが, 250~4,000Hz の5周波数平均聴力が 10dB 以上変動した症例は12例あり, 聴力悪化が8例 (15.1%), 聴力改善が4例 (7.5%) であった. 聴力の変化無群と悪化群, 改善群でそれぞれ年齢, 性, シャント部位, シャントシステム, バルブ圧, 認知機能, 身体機能等を比較したが, 有意差を認めるような特性はなかった. 悪化群では術前の聴力は変化無群と違いがなかったものの, 術後の左低音域の聴力が有意に悪かった. また, 改善群では術前の聴力が低音域・中音域・高音域とも変化無群より悪く, 術後には差がなくなっていた. 相対的内リンパ圧上昇による聴力悪化と, 相対的外リンパ圧上昇による聴力悪化の解除と, 両方の病態が考えられた. 高齢者ではもともとあった加齢性難聴にこのような聴力変化が伴うことで, 術後補聴器装用となった例もあり, シャント術のリスクの一つとして留意する必要があると考えた.

  • 児嶋 圭介, 宮崎 拓也, 玉木 久信, 佐藤 進一, 大森 孝一
    原稿種別: 原著
    2020 年 123 巻 8 号 p. 745-750
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

     耳下腺腫瘍摘出術の皮膚切開は S 字状に行うことが一般的である. S 字状皮膚切開では耳前部や頸部に皮膚切開痕が残るため審美性の面で課題が残る. 審美性の面から Facelift incision (以下 FI) を用いた手術や耳前部に切開を行わない Retroauricular hairline incision (以下 RAHI) を用いた手術が行われているが, 依然として報告は少ない. 2017年3月1日~6月30日までの期間にわれわれはこの RAHI を用いた耳下腺腫瘍摘出術を8例経験した. 術後創部の経過はいずれの症例でも良好であり, 審美的に良好な結果を得られた.

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