日本耳鼻咽喉科学会会報
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72 巻, 4 号
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  • 中島 礼士, 坂本 正邦
    1969 年 72 巻 4 号 p. 851-856
    発行日: 1969/04/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
    著者は5例のPseudo-otcsclerosisについて報告した.
    症例1 36才♀ 2年前よりの難聴, 鼓膜両側共軽度の瘢痕を有する. レントゲンで両側乳突蜂巣の発育不良. 聴力検査では右60dB左50dBの伝音障碍を認める. 鼓室開放術でキヌタ骨が瘢痕と硬化線維で固定されていることがわつた.
    症例2 23才♂ 18年前より右耳難聴を自覚していた. 鼓膜は正常であるが乳突蜂巣の含気化は不良であり50dBの伝音障碍を示す. 鼓室開放術でキヌタ骨とアブミ骨脚の萎縮がわかつた.
    症例3 20才♀ 6年前より両側難聴を訴えていた. 鼓膜は正常であるが乳突蜂巣は両側含気化不良であり35dBの伝音障碍を認める. 鼓室開放術で両側中耳は膠様分泌物と線維性組織で充満していた.
    症例4 45才♂長期間左難聴を訴えていた. 鼓膜は正常で可動性良好であつた. レントゲンで両側乳突蜂巣の発育は良好であつた. 聴力は60dBの伝音障害を示した. 鼓室開放術でアブミ骨が転移しアブミキヌタ関節が離断していることが判明した.
    症例5 19才♀ 10年前より両側難聴あり. 鼓膜は正常で乳突蜂巣の含気化も良好である. 聴力は右65dB左35dBの伝音障害を示した. 鼓室開放術でアブミ骨の萎縮が見られた.
    術後の聴力は症例3をのぞき著るしく改善した. 仮性耳硬化症の原因は症例により異なるが. 我国では中耳炎に由来するものが最も多い. 仮性耳硬化症の聴力像は耳硬化症と異なり, 左右差が大きく, Carhartのnotchのないものが多い. 大部分中耳粘膜の病変やあぶみ骨の運動障害が慢性中耳炎に比し軽度であるため術後聴力改善は満足すべきものが多い.
  • 附 乾酪性上顎洞炎について
    石倉 武雄, 河村 正三, 岡田 博允, 土屋 寛, 住田 邦夫, 飯村 晃彦, 桑原 紀之
    1969 年 72 巻 4 号 p. 857-867
    発行日: 1969/04/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1) 真菌性上顎洞炎の症例を経験し, その臨床症状及び病理組織学的所見を記載し, 従来の文献記載例と比較検討した.
    2) 症例は男性3例, 女性2例にして, その中, 女性1例のみ29才, 他の4例は全て50才以上であつた.
    3) 主訴は全例が鼻閉塞, 鼻漏過多, 頭重感であつた. 尚, 鼻出血1例, 頬部腫脹2例, 視力障害1例が見られた.
    4) 4例に上顎洞開放手術を施行し, 手術時の所見より乾酪性上顎洞炎と推定されたが, 病理組織学的検索により真菌感染症と診断された.
    5) 剔出せる上顎洞粘膜について, 螢光抗体法により組織内真菌の同定を行つた結果, 3例はaspergilloisis, 2例はmucormycosisと診断された.
    6) 病理組織学的所見は, 所謂慢性副鼻腔炎粘膜の組織像を示し, 浮腫型, 浸潤型各々1例, 混合型3例であつた. 而して慢性上顎洞炎に罹患せる上顎洞粘膜の局所抵抗性の減弱を, 真菌症発生の主因子と推論した.
    7) 乾酪性上顎洞炎の発症には, 真菌感染が主要な因子と推察した.
  • 2, 3の基礎的問題
    冨田 寛, 少名子 正彬, 山田 登, 都川 紀正
    1969 年 72 巻 4 号 p. 868-875
    発行日: 1969/04/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    電気味覚検査法は, 耳鼻咽喉科, 脳外科など多くの分野において, 常用の検査法として利用度の高いものである.
    電気味覚計の出現によつて, 従来の味覚溶液による検査の弱点であつた検査液の拡散, 刺激の強さの不定, 長い検査時間などの問題が解決され, また, より軽微な異常を摘発出来るようになつた.
    電気味覚計設計上の基本は, およそ300μA以下の小電流を, 臨床的計器として危険のない程度の電圧で, 変動する身体抵抗に影響されることなく, 舌に流すようにするのである.
    実際に舌に刺激導子を当て, 手に無刺激導子を持たせて測定すると, 総負荷抵抗値は, 電極の面積と材質により異なるが, 特に電流量とは逆の関係が成り立つて変動する.
    5mm直径の円形ステンレス鋼電極では, 総負荷抵抗は, 10μA以上の電流量では20~30kΩの間の値を示した.
    臨床的には, 閾値の読みとりが簡単なので, 被検者に与える電流をあらかじめ正確に調節しうる計器の方が, 回路にセットした電流計を直読する計器よりも便利である. 前者の測定誤差をなくすためには, その内部抵抗を負荷抵抗の40倍にする必要がある, 即ち1~50μA並びに400μAの出力電流の場合, それぞれ8MΩ並びに1MΩの内部抵抗が必要である.
    この論文において, 我々は, 閾値の読みとり, 刺激時間, 回路抵抗, 導子, 電源, 刺激波形, フットスィッチ, 応答用ブザーなど, 電気味覚計の基本的な要素について検討した.
    交流電源による, 高い内部抵抗を負荷した定電圧定電流回路をもつた電気味覚計の新型が紹介された.
  • 三宅 弘
    1969 年 72 巻 4 号 p. 876-883
    発行日: 1969/04/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    咽喉頭部異常感を有する女性患者では, その異常感が更年期障害によるか否かを明らかにするため先づ996名の患者の統計的観察を行なつた. その結果は, 更年期ばかりでなく, 更に若年の, 30才以後の女性にも異常感患者が多いことを知り, またmenopauseを過ぎた患者について異常感の発生とmenopauseが一致したかどうかを調べて僅か15%のものに一致を認めた. しかしその中には単なる偶然の一致によるものも含まれているであろうから, 咽喉頭異常感と更年期とは余り関係が無さそうと先づ考えた.
    そこで次に咽喉頭異常感患者の尿中のestrogen, pregnanediol, gonadotropinの量を測定して, 更年期との関係の有無を確実にしようとした. そしてその測定結果に見出された特徴の一つには尿中のgonadotropinの低下があつた. この現象は更年期のホルモン異常とは全く相反する現象であるので, 咽喉頭異常感は更年期とほとんど関係がないだろうと判断した.
    而してこのgonadotropinの低下は咽喉頭異常感の原因となりうるものと考える. 何故ならば, 一般的に立つて, ホルモン異常は多くの臨床的症状を呈するのが普通であり, 同時にpsychoneurosisやvegetative Stigmataを伴うものであるから. 而してこのgonadotrpin量の低下の原因としては, estrogenの濃度の上昇や, 視床下部のneurosecreetionの異常や, 下垂体前葉機能障害が考えられるが, emotionが形成されるlimbic syatemからの影響も見逃すことは出来ない.
    以上の諸成績から私は結論的に, 咽喉頭異常感は更年期とは直接関係がないが, 尿中ホルモンに異常があることから, 咽喉頭部異常感の治療には, 局所的治療, 自律神経系に対する治療や, tranquilizerなどのほか, ホルモン療法も必要だと主張した.
  • 広戸 幾一郎, 豊住 頼一, 富田 英寿, 宮城 平, 黒木 康二, 小池 祐一, 松下 英明
    1969 年 72 巻 4 号 p. 884-888
    発行日: 1969/04/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    声帯における循環について, 発声機構の面から研究を行った. 発声時には, 声帯粘膜は毎秒数百回の波状運動を行っている.
    振動している声帯の血行動態は, 声帯の病理を理解する上で重要であると考えられる. そこで次の如き3つの実験を行った.
    実験1
    犬摘出喉頭を使用して, 動脈又は静脈をその声帯粘膜直下に挿入した上で, 声帯を副正中位に固定して, 吹鳴実験を行った. 挿入した血管にはその一端より生理食塩水の灌流を行い, その他端より落下する灌流液の滴数変化を, 声帯振動のおこる前と振動中とで記録した. 液の滴数は声帯振動時には著明に減少した. その減少の程度は動脈より静脈使用の場合の方がより顕著であった.
    実験2
    犬を用いて, 両側声帯を副正中位に固定した後, 気管下方から吹鳴実験を行った. ゲラチン加墨汁を喉頭の血管へ灌流させると声帯粘膜の毛細血管は黒染される.
    このような操作を振動している声帯と静止している声帯とについて行ってみると, 振動声帯は静止声帯よりその黒染の程度が軽度であった. 以上の二つの実験結果から, 声帯の血流は発声時には減少することが想像される. そしてこのことが, 粘膜の一時的hypoxiaを招来し, ために毛細血管の透過性の亢進の結果, 声帯の浮腫状の腫脹は惹起されるものと考えられる.
    実験3
    実験1と同様の実験を挿入血管壁に側孔を穿って行ってみると, 声帯の非振動時には, 灌流液は血管から漏出することはないが, 一旦振動が開始すると瞬間的に液は側孔から漏れて, 声帯は著明に浮腫状に腫脹する. 以上の結果から, 声帯ポリープの成因が説明出来るように思われる. 声帯の血管が発声時に破綻を起すと, 血液は直ちに声帯間質内に漏出する. ところが声帯の重層上皮は非常に強靱であるため, 出血は喉頭内腔へ生じることはなく, その結果突出した粘膜下血腫を形成する. こうしてポリープは発生すると考えられる.
  • 久保田 肇
    1969 年 72 巻 4 号 p. 889-901
    発行日: 1969/04/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    声帯ポリープ125症例に関して, 臨床的並びに病理組織学的検討がなされた.
    我々の症例では声帯ポリープは40才代に最も多くみられ, 性別では6対4と男性が女性に比べて多かった. これ等症例の半数即ち63例が, 声帯の前・中1/3の境界部に認められた. 声帯ポリープの大きさは多くは粟粒大或いは米粒大のものが多かった. 障害の側に関してみると, 63例が右声帯に, 44例が左声帯に, 13例が両側にそして5例が前連合に認められた. 嗄声出現より手術までの期間は, 症例のほとんどが6カ月以内であった. ポリープ発生の誘因に関してみると, 75例は音声の過剰使用, 急性喉頭炎等がその誘因として考えられたが, 他の50例はその誘因がはつきりとしなかった.
    病理組織学的検索では, 声帯ポリープの上皮層は上皮下層に比較して組織学的変化が少なかった. それに対して, 上皮下層は多彩な変化が認められた. 即ち出血, 血漿浸潤, 毛細血管の拡張並びに血栓の形成等の局所の循環障害によって生じた多様な所見が認められた. これ等の組織像を検索した結果, 声帯ポリーブの病理組織像を次の様な4つの型に分類した. 即ち滲出型 (71例), 増殖型 (25例), 混合型 (12例) 並びに肉芽型 (7例) の4型である.
    障害の期間と組織像との関係では, 期間の長い症例でも短い症例でも滲出型も存在すれば増殖型も存在した. しかし4年以上の長い期間の症例では滲出型よりは増殖型の方が多く存在した. このことから我々は初期の滲出性病変が時間の経過と共に増殖型えと移行するものと考えた.
    我々は声帯ポリーブ発生の成因について, 局所の循環障害と炎症とが重要な役割をはたしているものと考えた. なぜならば声帯ポリープは病理組織学的に多種多様な血管性病変がみられたということ, また肉芽型という炎症が強く考えられる症例が存在したということから, 我々はポリープ発生の成因を以上の様に考えたのである.
  • 斉藤 成司, 村上 泰, 宇津見 瑞雄
    1969 年 72 巻 4 号 p. 902-912
    発行日: 1969/04/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    頸部下部, Mediastinum上部の原発性悪性腫瘍や, 喉頭全摘, 頸部廓清術後の, この領域への再発は, 通常の外科的療法の適応外と考えられてきた. 頸部廓清術と放射線療法の併用が, この様な状態の適応と考えられてきたが, その結果は通常不幸なものであることが多い.
    最近我々は, この領域の悪性腫瘍で頸部手術につづいて, 縦隔廓清術を施行した4症例を経験したのでここに報告し, 若干の考察を加えた.
    第1例は, 32才の男子で, 右声帯の線維肉腫であり, 喉頭全摘術を行なうも, 気管断端に再三局所再発をくり返し, 当手術を試みた. 術後4カ月気管断端よりの大出血にて死亡した.
    第2例は, 24才男性, 気管の〓腫様類腺癌であり, 当手術を行なうも, 術後8カ月, 気管断端に再発を認め, 放射線療法を加えるも左総頸動脈の気管壁への穿孔による大出血にて死亡した.
    第3例は, 65才男性で, 右側声門下より仮声帯に至る癌腫, 右頸上部リンパ節転移にて喉頭全摘, 右頸部廓清術後4カ月, 左頸部リンパ節及び, 左甲状腺部に転移を認め, 下方への癌の進展が予想されたので, 本術式を施行したが, 術前より脳血管系の障害もあった為, 術後10日死亡した.
    第4例は, 58才女性の頸部食道癌にて, 喉頭, 頸部食道全剔除, 並びに左頸部廓清術を行ない, 同時に本術式も加えた. 術前より投与していた抗癌剤の副作用も加わり. 術後40日全身衰弱の為死亡した.
    我々の症例では, その予後に関する成績は良好とは云えないが, 今後手術手枝の問題, 術後管理の問題など, 今後症例を重ねて改善されねばならぬと考える.
  • 佐藤 玄二
    1969 年 72 巻 4 号 p. 913-926_12
    発行日: 1969/04/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    著者は人口蓋扁桃の水平断と前頭断, 家兎扁桃の矢状断と前頭断による連続切片標本を作製し, 銀染色を行った. 人および家兎の口蓋扁桃に分布する神経線維と, その進入路, 走行経過, 終末枝の存在部位などを立体的に解明した. 更に家兎の埋没扁桃についても, 種々の検討を加えた. それらの所見から, 実地臨床上, 口蓋扁桃摘出術に最も安全で合理的な, しかも必要で十分な局所麻酔法を知ることが出来た. 以上の研究成績をまとめると次の通りである.
    口蓋扁桃の上・下の両極より扁桃中隔根部に進入する混合線維は, 被膜の近くで上, 下両極よりの線維によって第一次神経叢をつくり, 以後血管に纏絡して走行するほか, 小血管やリンパ管に終網を作る. また一部は扁桃中隔内を進む途中, リンパ小節内に終末枝を送り, 或いは分枝を形成し, 扁桃遊離面に近い中隔の末梢部に達して, ここに第二次神経叢を構成する. ここより更に進んだ分枝は粘膜上皮下に叢状纏絡を作つたり, 拡散したりして, 上皮基底部の結合織に到達する. しかし, この第一次神経叢, 第二次神経叢には神経細胞は存在しない.
    家兎の口蓋扁桃は埋没扁桃であり, 支配神経は扁桃の前後両側の浅層と深層の両方より進入するものが多い. 口蓋扁桃中隔を作る結合織をもたないので, 神経は実質内で細網をつくるほか, 小血管やリンパ管にも終網をつくり, 更に末梢は粘膜下の結合織層に叢状纏絡をつくつて終るが, 神経細胞は存在しない.
    口蓋扁桃摘出術の際の局所麻酔の要所は, 神経線維の進入経路から考察して, 神経線維を遮断することである. この目的のために前口蓋弓の口蓋扁桃への移行部は最も重要である. ここの丁度粘膜下に, 上極および下極からHilusへ向う神経線維が非常に浅く走行しているので, 麻酔液は, 表面麻酔を施した後に, Hilusに向って前口蓋弓に沿った上極と下極からゆつくりと浅く注射する. これは, 口蓋扁桃への主要線維の進入経路にあたっているからである. 注射液が十分吸収されるまで待ち, Hilusへの深部直接注射は, ここがショックを引きおこし易いTrigger Zoneにあたっているために非常に危険である.
  • 1969 年 72 巻 4 号 p. 927-940
    発行日: 1969/04/20
    公開日: 2010/12/22
    ジャーナル フリー
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