日本耳鼻咽喉科学会会報
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118 巻, 7 号
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総説
  • 土岐 茂, 山脇 成人
    2015 年 118 巻 7 号 p. 829-832
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
     うつ病は気分の落ち込みや興味・関心の喪失を主症状とする臨床症候群である. 近年の臨床研究の蓄積から, うつ病は慢性的な全身性疾患であるという考えが定着しつつある. 本稿では対象喪失という心理モデルから, 報酬系システムの不全という生物モデルへと発展した歴史を振り返り, 最新の診断基準や科学的知見, 臨床研究を総合的に捉えなおすように試みる. 多岐に渡る研究の概要を俯瞰することは困難であるが, 今後, こうした研究の積み重ねが意味のある知見に結びつくことを期待したい.
  • 三輪 高喜
    2015 年 118 巻 7 号 p. 833-840
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
     頭痛, 顔面痛を訴える患者が, 第一に耳鼻咽喉科を受診することは少ないが, 他科において原因が分からない場合に, 原因診断のために紹介されることは少なくない. 耳鼻咽喉科疾患の中でも鼻副鼻腔の炎症をはじめとする疾患では, 頭痛, 顔面痛を生じることが少なくないため, 耳鼻咽喉科医としては鼻副鼻腔の疾患を見落としてはならない. 副鼻腔疾患による疼痛は, 三叉神経の分枝である眼神経 (V1) と上顎神経 (V2) に関連することが多く, 支配領域に応じた部位の疼痛が生じる. したがって, 三叉神経の分枝の走行と支配領域を理解することは重要であり, さらに分枝と各副鼻腔との位置関係を理解することも必要である. 特に蝶形骨洞は, 多くの分枝と関連しており, その支配領域も広範に及び, なおかつ洞の発育により症状の表れ方が異なっている. 診断には画像診断, 特に CT が副鼻腔と三叉神経との関連を把握するために有用である. 本論文では, 副鼻腔と三叉神経との関連を解剖学的ならびに画像診断的に解説するとともに, 頭痛, 顔面痛を来す代表的疾患を提示した.
  • 余田 敬子
    2015 年 118 巻 7 号 p. 841-853
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
     梅毒は, 口腔・咽頭に初期硬結, 硬性下疳, 粘膜斑, 口角炎が生じる. 性器や皮膚の病変を伴わない場合が多く, 特徴的な口腔咽頭病変は梅毒診断の契機になりやすい. DEBCPCG 40万単位または AMPC 500mg を1日3回, PC アレルギーの場合は MINO 100mg を1日2回, 第1期は2~4週間, 第2期は4~8週間, 感染後1年以上または感染時期不明の場合は8~12週間投与する.
     HIV 感染者の口腔粘膜病変には感染症, 腫瘍, 炎症性疾患, 非特異的潰瘍などがあり, 無症候期以降の初発症状として現れやすい. 特に HIV 感染を強く示唆するものに, カンジダ症, 口腔毛様白板症, HIV 関連歯肉炎・歯周炎, カポジ肉腫, 非ホジキンリンパ腫, ドライマウスがある.
     淋菌とクラミジアの咽頭感染は無症候の場合が多く, 少数の感染者に非特異的咽頭炎, 扁桃炎, 上咽頭炎を発症する. 診断には核酸増幅法を用いる. 当科では, 淋菌には CTRX 2g 1回/日を1~3日間, クラミジアには CAM 200mg を1日2回14日間, 投与している. 淋菌もクラミジアも性器感染は不妊の原因となり得るため, 治療終了後から2週間以上あけて, 核酸増幅法による治癒確認検査を実施する.
     HSV 性咽頭・扁桃炎は10~30歳代の初感染者の一部に発症する. アフタ・びらん・白苔を伴う咽頭炎と偽膜を伴う扁桃炎がみられ, 強い咽頭痛と高熱を伴う. 治療には, 経口でバラシクロビル1回500mg, 1日2回を5日間, またはアシクロビル1回200mg, 1日5回を5日間, 経口摂取困難例ではアシクロビル注5mg/kg/回を1日3回8時間ごとに7日間投与する.
     HPV は中咽頭癌の約半数から検出される. HPV 感染そのものは無症候性で, 診断は腫瘍性病変からの HPV の検出による. HPV 感染への治療法は確立していないが, ワクチン接種の普及により HPV 関連癌患者が減少することが期待される.
原著
  • 鈴木 基之, 藤井 隆, 喜井 正士, 音在 信治, 貴田 紘太, 須川 敏光, 北村 公二, 金村 亮, 小池 良典
    2015 年 118 巻 7 号 p. 854-859
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
     頭頸部癌術後の嚥下機能評価として多く用いられる嚥下造影検査 (以下 VF) は定性的評価としては多様な情報が得られる一方, 定量的評価として用いるのは煩雑であった. われわれはこれまでVFの定量的評価法として AsR スコアを用いてきた. その有用性を知ることを目的に, 皮弁再建を要する拡大切除を行った口腔癌146例を対象に検討を行った.
     術後初回 VF と入院最終回 VF の AsR スコアを測定し, 初回スコアと初回 VF 後の直接訓練開始や中断の有無との相関を検討した. また, 最終回スコアと退院時の栄養摂取形態との相関を検討した. ROC 曲線を用いて ROC 曲線下面積 (AUC) と各スコアの至適カットオフ値, 精度を算出した.
     初回 VF 後に直接訓練を開始し訓練継続が可能であった群 (以下, 「訓練継続群」) が131例であった. 「訓練継続群」であることを予測する初回スコアの精度は AUC=0.946で, 至適カットオフ値5では感度96.2%, 特異度86.6%, 陽性的中率98.4%, 陰性的中率72.2%であった. 退院時の栄養摂取形態は「経口摂取群」が138例であった. 「経口摂取群」であることを予測する最終回スコアの精度は AUC=0.925で, 至適カットオフ値6では感度82.6%, 特異度87.5%, 陽性的中率99.1%, 陰性的中率22.6%であった.
     AsR スコアが口腔癌術後の嚥下機能と非常に相関することが示唆された. VF の簡易的な定量的評価法として有用である.
  • 五島 史行, 鈴木 法臣, 原 真理子, 土橋 奈々, 守本 倫子
    2015 年 118 巻 7 号 p. 860-866
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
     本論文は取り下げられました。詳細については本文PDFをご覧ください。
  • 河野 敏朗, 松浦 省己, 湯田 恵子, 松島 明美, 石戸谷 淳一, 佐久間 康徳, 山下 ゆき子, 生駒 亮, 高橋 優宏, 折舘 伸彦
    2015 年 118 巻 7 号 p. 867-874
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
     【目的】Grade 3, 4の突発性難聴に対する3者併用療法 (全身ステロイド療法+高気圧酸素療法+鼓室内ステロイド療法) の有効性を検討した.
     【対象と方法】当科で1次治療を行った Grade 3, 4の突発性難聴172例を対象とした. 2007年4月から2010年7月までは1次治療として2者併用療法 (全身ステロイド療法+高気圧酸素療法) を行い, 2010年8月から2013年10月まで3者併用療法を行った. Grade 別に治療効果と周波数別の平均聴力レベル改善を比較した. さらに治療効果に影響を与える因子を多重ロジスティック回帰分析で検討した.
     【結果】Grade 3では2者併用療法と3者併用療法の治療効果に有意差はなかった. 一方, Grade 4では3者併用療法が2者併用療法より治療効果が良好で, 2,000Hz 以外の全周波数で平均聴力レベルが有意に改善した.
     【結論】3者併用療法により Grade 4の突発性難聴の治療成績が改善した.
  • 南 和彦, 久場 潔実, 松村 聡子, 林 崇弘, 中平 光彦, 菅澤 正, 山口 浩, 高柳 奈津子
    2015 年 118 巻 7 号 p. 875-881
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
     孤立性線維性腫瘍 (Solitary fibrous tumor: 以下 SFT) は, その多くが胸膜に発生する. 鼻副鼻腔から発生した SFT はまれで, 確認し得た限りでは自験例も含めて39例である. 今回, われわれは鼻副鼻腔に発生した SFT 3例を経験したので報告する. 2例は初回治療例で1例は術前組織診断がついていたが, 1例は血管原性腫瘍と術前診断していた. この2例は血管塞栓術後に鼻内内視鏡下に腫瘍を切除した. 1例は腫瘍切除術後4年7カ月経過してから頭蓋内再発し, 開頭前頭腫瘍切除術, 鼻内内視鏡下前頭蓋底手術を施行した. 再発時には悪性所見を認めたため術後に放射線照射を施行した. いずれの症例もその後は再発や転移を認めていない.
  • 平位 知久, 福島 典之, 宮原 伸之, 三好 綾子, 有木 雅彦
    2015 年 118 巻 7 号 p. 882-887
    発行日: 2015/07/20
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
     内視鏡下鼻副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery, 以下 ESS と略) における一部の症例に対して, 下鼻甲介骨が上顎洞内側壁に連続している基部のみを外して上顎洞を開放する粘膜下下鼻甲介骨部分切除術 (submucosal partial-turbinectomy, 以下 SPT と略) を先行して施行した. この術式により, ESS の初期段階で上顎洞の開放が容易となるだけでなく, 中鼻道が十分に開大するため, その後の副鼻腔に対する手術操作が容易となった. SPT を施行した ESS 症例の術後成績について検討した.
     対象は, 2012年1月から2014年6月までの2年6カ月間に ESS を施行した268例のうち, SPT を施行した140例261側とした. 疾患の内訳は, 慢性副鼻腔炎が129例, 上顎洞真菌症が10例, 上顎洞乳頭腫が1例であった. また, 鼻中隔彎曲症を認めた125例に対して鼻中隔矯正術を併施した.
     検討項目は, SPT を施行した症例の術後1カ月, 3カ月, 6カ月の各時点における中鼻道狭窄率および上顎洞膜様部開放部の閉鎖率 (以下,「上顎洞開口部閉鎖率」と略) とした.
     中鼻道狭窄率は, 術後1カ月の時点で14.2%であり, 3カ月で7.4%, 6カ月で3.7%と低下した. 狭窄した症例はいずれも, 鼻中隔彎曲症に対して鼻中隔矯正術を施行した症例であった. なお, 中鼻道が閉鎖した症例は認めなかった. 上顎洞開口部閉鎖率は, 術後1カ月の時点で1.5%であり, 3カ月で2.9%,6カ月で6.7%と増加した. 閉鎖した要因は, 上顎洞粘膜の肥厚によるものであった. いずれも, ESS 術後の状態としては許容できる成績であり, 本術式は, ESS 術後の粘膜の創傷治癒において, 換気ルートの確保という点で, 大きなメリットとなり得ると考えた.
     また, SPT では, 下鼻甲介骨を基部以外の大部分で温存するため, 将来的な萎縮性鼻炎や empty nose syndrome 発症のリスクを減らすことにもつながる.
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