甲状腺乳頭癌の全摘例66例(年齢24∼73歳•平均51歳,男11例,女56例)を対象に,対側腺内転移の分布を主病巣の大きさ,および占居部位との関連から検討した.最も大きな病巣を主病巣とし,その最大径を計測した.ついで,その占居部位を甲状腺外科検討会の甲状腺癌取扱い規約に準じて,腺葉の上•中•下(1亜部位)あるいは,上中,中下及び全体(2亜部位以上)として分類した.
対側腺葉の占拠部位を上•中•下•上中•上下•中下•上中下と同様に分け,組織型が同じで,それぞれ独立した病巣を対側腺内転移とし,その分布をみた.対側腺内転移の頻度は67%(44/66)であった.1亜部位を占める主病巣(A)と2亜部位以上を占める主病巣(B)の別にみると,転移率はそれぞれ64%(14/22),68%(30/44)で,差がなかった.
転移陽性例について,腺内転移が4つの亜部位占拠様式(上,上中,上下,上中下)のいずれかで上まで分布する例は61%(27/44),AとBの別には,それぞれ,29%(4/14),76%(23/30)で,両者の間に有意差があった(p=0.003).さらにAの亜部位別では,上のとき0%(0/2),中のとき22%(2/9),下のとき67%(2/3),またBの亜部位別では,上中のとき82%(9/11),中下のとき56%(5/9),全体のとき90%(9/10)であった.なお上下に分布して中にはない飛び石転移は全体で7%(3/44)であった.主病巣の大きさ(平均)はA:21mm, B:36mmであった.
以上,甲状腺乳頭癌における対側腺内転移は,主病巣の大きさにかかわらず発生するが,その分布は主病巣が大きくなるほど対側上を占拠する率が高くなることを明らかにした.
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