日本耳鼻咽喉科学会会報
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103 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 鈴木 豊
    2000 年 103 巻 3 号 p. 177-187
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    (背景)周波数特異性の高正弦波的振幅変調音(SAM音)を刺激音として得られる聴性定常反応は変調周波数追随反応(AMFR)と呼ばれている.聴性定常反応の刺激頻度としては40Hzを用いた報告がほとんどあり,40HzAMFRは睡眠時に検査を行う乳幼児への他覚的聴力検査としての臨床応用は困難とされてきた.一方睡眠時の被験者を対象とした場合,変調周波数を80から100Hzにすると聴力レベル付近まで反応の検出が可能である.AMFRの起源は確定されていないが40HzAMFRは覚醒時,80HzAMFRは睡眠時に良好な反応が得られることから,変調周波数の違いや意識レベルはり起源が異なる可能性がある.蝸牛神経核および下丘中心核には振幅変調音に同期発火する細胞が多数分布しており,こ
    れらとAMFRとの関連について言されているが,本研究の目的は80HzAM-FRの形成に蝸牛神経核が関与しているかどうかを検討することにある.(方法)麻酔時のネコを用いクリック短音及びSAMに対する反応の蝸牛神経核内とその周辺における電位分布を検討した.次いで蝸牛神経核内の反応がfar fieldpotentialとして記録可能かを確認する目的で,蝸牛神経核を含む脳断面とで一定間隔の位置で変調周波数80HzのSAM音に対する反応波形を記録し,脳内においてnear field potentialからfar field potentialに移行していく過程における記録波形の位相の変化を検討した.(結果)蝸牛神経核内で,発生源の異なると推定される2つの電位,すなわち変調波様の波形と刺激音様の波形の重畳した波形が記録され,前者はAMFRとの関係が示唆された.この変調波様反応波形は蝸牛神経核周囲では急激な位相の変動を示したが,小脳表面に近づくにつれて安定した固定電位を形成していた.(結論)以上より蝸牛神経核は変調周波数追髄反応の起源の1つであることが示された.
  • 野瀬 善夫, 向井 將, 新田 暢圭
    2000 年 103 巻 3 号 p. 188-192
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    新強児•乳児(0ヵ月~6ヵ月)173例の後鼻孔の形態的発育発達についてデジタルビデオに接続されたファイバースコープを前鼻孔より挿入,経鼻的に観察を行った.記録した画像について数値的解析(発達度数算出)および流体学的解析を行った.
    後鼻孔は,0~1ヵ月では横に扁平な楕円形をしていた.月齢2ヵ月以降から4ヵ月までの発達は著しく3ヵ月間の内に横軸半径と縦軸半径の比率は0.6から1.0まで飛躍的に成長していた.その後,月齢4ヵ月以降の形状の発達は緩やかとなり,6ヵ月で後鼻孔発達指数は2倍となっていた.後鼻孔の形状発達は楕円形から真円に近い楕円形と縦方向により速く成長していた.後鼻孔の片鼻を1本の楕円管と見立てて,そこを流れる気流を理想的条件として,発達による気流量および管内抵抗変化をナヴィエ•ストークスの方程式の近似解により求めた.その結果,生後6ヵ月で後鼻孔の抵抗は5分の1,流量は5倍強となっていた.
  • 今手 祐二, 大上 研二, 下郡 博明, 池田 卓生, 清水 徳雄, 小野 信周, 遠藤 史郎, 中野 智子
    2000 年 103 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    遊離組織による再建技術が頭蓋底外科を含めた頭頸部腫瘍治療に占める役割はきわめて大きい.最近では遊離組織による再建手術の成功率も95%前後とする報告も多い.しかし裹を返せば,現時点でもいずれの施設においても数%の失敗例は回避し得ないということである.これまで遊離組織再建失敗については主にその原因やリスクに関する検討がなされてきた.今回,これまで当科において行った遊離組織再建一次手術失敗例の二次手術について,特に遊離組織全壊死の場合の処置について検討した.対象は1990年8月より1999年5月までに,山口大学医学部耳鼻咽喉科において頭頸部手術時に遊離組織再建を行った74症例である.再手術を必要とした8列中3例は血管の再吻合や移植などにより救済可能であったが,5例は遊離組織全壌死に陥った.全体での生着率は93.2%であった.遊離組織全壊死5例中4例に二次再建手術を行つた.原発巣の再建において,2例に有
    茎筋皮弁を,2例に遊離組織を用いた.二次再建手術を行う場合,壊死再建組織摘出時期,二次再建の有無,再建時期,再建組織選択,血管選択などの項目を検討する必要がある.特に両頸部郭清後に重症感染を伴う場合など,頸部での栄養血管選択が困難な場合,橈側皮静脈の一部をtransposition並びに一部をveingraftとして使用する方法が有用であった.
  • 石田 孝, 村井 和夫, 安田 豊稔, 佐藤 貴恵, 瀬島 尊之, 喜多 村健
    2000 年 103 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    花粉症患者のうち,新鮮な果実や野菜を摂取後に口唇の発赤•浮腫や咽頭掻痒感などを生じることがある.これをoral allergy syndrome(OAS)とよび,北欧ではシラカンバ花粉症にリンゴなどのバラ科果実によるOASの合併が知られている.一方,日本でもっとも多いスギ花粉症との関係についての報告はほとんどない.今回スギ花粉症患者の中で,問診からOASと診断された23例を対象に検討を行った.
    症状は个例,咽頭の掻痒感やイガイガ感であり,喉頭浮腫やアナフィラキシー症状を訴える例は認めなかった.

    原因果実としては,メロンがもつとも多く,次いでリンゴ,モモ,キウイの順であった.シラカンバ花粉症とバラ科果実のような明らかな関係は認められなかった.多くの例で2個以上の果実に過敏性を認めた.
    特異IgE抗体価の測定では,スギ花粉の他にシラカンバ花粉に対する特異IgE抗体価陽性例を多く認めた.一方,果実に対するIgE抗体価では,リンゴの陽性率が高いのに比べ,メロンでは全例陰性であり,新鮮な果汁を用いた皮膚テストでの確認が必要と思われた.
    スギ花粉症患者でOASの合併が疑われた場合にはシラカンバ花粉とリンゴに対するIgE抗体価の測定が有用と思われた.
    今回,問診ではじめてOASに気づいた例もあり,問診を注意深く行うことでOASを合併した患者の頻度が高くなるものと思われた.
  • 北村 拓朗, 吉田 雅文, 黒田 嘉紀, 渡利 昭彦, 牧嶋 和見
    2000 年 103 巻 3 号 p. 206-211
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群患者において,睡眠体位指導は簡便に行える有効な治療法の一つとされているが,すべての患者で体位変換による呼吸障害の改善がみられるわけではない.体位変換の効果を認めない症例には,減量や手術など他の治療法を選択する必要があるが,にれらの治療が体位変換の効果に与える影響についての報告は少ない,今回我々は,体位変換によりapnea-hypopnea index (AHI)が改善する群としない群の臨床的特徴について比較を行うとともに,手術的加療が休位変換による呼吸障害の改善に与える影響について検討を行った.AHIが10以よで睡眠時無呼吸症候群と診断された18歳以上の45例のうち,非仰臥位での睡眠が30分以上あると判断された41例(男性35例,女性6例)を対象とした.体位変換によるAHIの改善率が50%以上のものと50%末満のものに分類し,前者をgood responder (GR)群,後者をpoor responder (PR)群とした.GR群は32例(78%),PR群9例(22%)であり,PR群はGR群に比べ,呼吸障害の程度が有意に高く,肥満度も高い傾向を示した.PR群における手術的加療の効果は,仰臥位よりも非仰臥位において著明であり,術後に体位変換による効果の増大を認めた.また,術後にもAHIが10以上であった6例のうち4例がPR群からGR群に移行していた.今回の結果から,体位変換による改善が明らかでない症例においても,他の治療と組み台わせることにより改善率が上がることが期待された.睡眠時無呼吸の治療においては,十分な睡眠体位の指導を行うとともに,手術などの適切な治療を選択していくことが重要であると考えられた.
  • 鼻内操作について
    多田 雄一郎, 小池 修治, 太田 伸男, 中村 正, 青柳 優
    2000 年 103 巻 3 号 p. 212-218
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    当科ではこれまで約20年来,脳神経外科の顕微鏡下経鼻中隔下垂体手術における鼻内操作と術後鼻処置に関わってきた.この術式は現在,比較的安全で侵襲の少ない方法であるため下垂体腫瘍に対する標準的術式として確立されている.しかし,近年では光学機器の発達により内視鏡下手術の適応が拡大し,国内外でいくつかの術式による内視鏡下鼻内下垂体手術の報告がなされるようになった.今回われわれは顕微鏡よりもさらに広い視野を確保でき,かつ歯齦部切開,鼻中隔粘膜の剥離も不要でより低侵襲の内視鏡下鼻内下垂体手術を31例(34回)に試みた.このうち5例は顕微鏡下手術後の再発症例である.トルコ鞍底へのアプローチは,32回で一側鼻腔より経蝶形骨洞的に行い,両側鼻腔経蝶形骨洞的アプローチ.経篩骨洞経蝶形骨洞的アブローチが各1回であった.その結累,視野,鼻内操作,手術時間,術後の鼻呼吸などの点で,顕微鏡下手術よりすぐれていた.
  • 内田 真哉, 宇野 敏行
    2000 年 103 巻 3 号 p. 219-222
    発行日: 2000/03/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    慢性肉芽腫症(chronic granulomatous disease,CGDと略す)は食細胞の殺菌作用の主体である活性酸素の産生に障害をもつ食細胞機能不全症である.細胞内殺菌機構を障害されるため,乳幼児期よりカタラーゼ陽性,H2O2非産生性の細菌(ブドウ球菌,Gram陰性桿菌,結核菌.真菌など)による反復性,遷延性の感染症を引き起こす原発性免疫不全症候群の一つである.難治性疾患であり感染症に対する一般的治療以外に,骨髄移植や遺伝子治療等が試みられてはいるが,いまだ治療法は確立していない.本例は難治性深頸部腫瘍のため免疫不全を疑われた1歳7ヵ月の幼児で,各種の免疫能検査にて異常を示さず,NBT還元試験においてもCGDと診断できなかった症例であった.確定診断のために過酸化水素産生能試験を行い,同時に家系の検索を行った.その結果,患児は常染色体劣性遺伝でチトクロームb陽性のCGDと考えられた.頸部外切開による下レナージ手術を中心とした治療を行い,感染を制御することができた.
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