日本耳鼻咽喉科学会会報
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116 巻, 9 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
総説
  • ―鼻内視鏡手術を中心に―
    春名 眞一
    2013 年 116 巻 9 号 p. 1007-1015
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2013/10/24
    ジャーナル フリー
    鼻副鼻腔乳頭腫 (IP) の手術療法は, 従来, 悪性腫瘍に準じて一塊で切除するのが原則であった. 最近では, 内視鏡下鼻副鼻腔手術が良性腫瘍に拡大適応され, IPの報告が多数認められる. 内視鏡下乳頭腫摘出術の特徴は, 斜視鏡を多用し基部を明視下で確認して確実に切除する. 一塊切除は難しく, piecemealでの摘出をすることになる. 当施設での術後1年以上の経過で, 再発例は11% (7/77例) であり, 従来の一塊切除の結果に劣らない. しかし, すべての鼻副鼻腔IPを経鼻内視鏡手術で摘出することはできず, 前頭洞内や上顎洞前壁を基部にもつIPでは, 躊躇せずに鼻外アプローチを併用した術式の選択をしなくてはいけない.
原著
  • 五島 史行, 新井 基洋, 小川 郁
    2013 年 116 巻 9 号 p. 1016-1023
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2013/10/24
    ジャーナル フリー
    めまいのリハビリテーションの継続には十分な動機付けが必要である. その有効性の機序については, 純粋に前庭機能改善による効果なのか, 心理的な効果なのかまだ不明な点が多い. 施行に当たって医師以外の職種の関与も必要である. 今回臨床心理士, 臨床検査技師と協力し, めまいリハビリテーションを行った. 最低6カ月以上めまい症状を訴える慢性のめまい患者16例を対象として, 初回は動機付けセッションとして個別に臨床心理士がめまいのリハビリテーションの意義, 方法を十分に説明し, 動機付けした. その後リハビリテーションを自宅で継続させた. 介入前, 介入後1, 2, 3カ月の時点でDHI日本語版 (dizziness handicap inventory), 抑うつ尺度, 不安尺度などの質問紙を用いて評価を行った. また静的平衡機能評価として重心動揺計, フォーム重心動揺計, および動的平衡機能評価として頭振りなどの動作に必要な時間を測定した. 15例 (93.8%) で継続可能であった. 不安, 抑うつレベルは介入後変化を認めなかったがDHI日本語版は介入後1, 2, 3カ月の時点で介入前と比べ改善を示した. 開閉眼での頭振り, および固視点を注視したまま行う頭振り動作の所要時間は横方向, 縦方向ともに改善を認めた. 重心動揺計の開眼の矩形面積 (REC AREA) は2カ月後に改善を認めた. フォーム重心動揺計の閉眼軌跡長 (LNG) は2カ月後, 3カ月後, および開閉眼のREC AREAは3カ月後に改善を認めた. これらより患者のめまいの自覚症状の改善は抑うつ, 不安といった心理面での変化ではなく静的, 動的平衡機能が改善した結果得られたものであることが示された.
  • 大塚 邦憲, 今西 順久, 羽生 昇, 佐藤 陽一郎, 重冨 征爾, 藤井 良一, 坂本 耕二, 冨田 俊樹, 藤井 正人, 亀山 香織, ...
    2013 年 116 巻 9 号 p. 1024-1032
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2013/10/24
    ジャーナル フリー
    背景: 唾液腺導管癌 (SDC) はその罹患率の低さゆえに多数症例による臨床像の検討が不十分なままで, 補助全身療法を含め有効な治療法の標準化がいまだ困難である.
    目的: SDCの予後因子の解析と治療標的候補分子の発現の評価
    方法: 1996年から2010年までの15年間に慶應義塾大学耳鼻咽喉科で初回治療を行ったSDC16症例を対象に, 臨床統計学的および免疫組織化学的検討を行った.
    結果: 全体の無病3年生存率は29.2%, 疾患特異的3年生存率は72.7%であった. 年齢, 性別, T分類, N分類, Stage分類, 原発部位, 多型腺腫由来の有無の各臨床病理学的因子の影響を検討した結果, 単変量解析ではDFSにおいて年齢, T分類, Stage分類に有意差が認められ, 多変量解析により年齢とT分類が本疾患の独立予後因子と考えられた. HER-2, エストロゲン受容体 (ER), プロゲステロン受容体 (PR), アンドロゲン受容体 (AR) およびMIB-1 (index>20%) の発現陽性率は各々50%, 6%, 13%, 100%, 69%で, 各分子の発現と予後との相関は認められなかった.
    結語: 遠隔転移が生存率向上の最大の障壁であるSDCにおいて, 高い陽性率を示すHER-2とARは全身療法の治療標的候補になり得る. 各々の陽性症例に対する抗HER-2療法や抗アンドロゲン療法の有効性を評価するためには, 今後多施設共同研究体制の構築が不可欠である.
  • 富山 要一郎, 山中 伸, 前田 陽平, 文珠 正大, 佐野 奨
    2013 年 116 巻 9 号 p. 1033-1040
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2013/10/24
    ジャーナル フリー
    小唾液腺由来の粘表皮癌は時に遭遇する疾患であるが, 上咽頭に発生するものは非常にまれである. 今回, Maxillary swing approach (以下, MSA) により摘出した上咽頭粘表皮癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する. 症例は42歳男性. 1カ月前よりの左耳閉感を主訴に当科を受診した. 左上咽頭側壁に基部を有する表面不整で易出血性の腫瘍を認めた. 画像検査では左上咽頭側壁に境界不明瞭で不均一に造影効果を認める30×27×26mmの腫瘤を認めた. 生検により粘表皮癌の診断を得てMSAによる摘出術を行った. 術後の経過は良好で, 顔面神経麻痺や開口障害は認めなかった. 頭頸部領域の粘表皮癌に対しては手術主体の治療を推奨する報告が多く, 上咽頭粘表皮癌においても例外ではないと考えられた. 本邦における上咽頭粘表皮癌の論文報告は少なく非常にまれな疾患と思われた. またMSAは, 比較的低侵襲で術後の顔面形態の変化や機能障害が少なく, 上咽頭などの顔面深部へのアプローチ法の一つとして有用であると考えられた.
  • 北村 貴裕, 山本 佳史, 富山 要一郎, 喜井 正士, 竹中 幸則, 猪原 秀典
    2013 年 116 巻 9 号 p. 1041-1045
    発行日: 2013/09/20
    公開日: 2013/10/24
    ジャーナル フリー
    下咽頭梨状窩癌cT4bN2cM0に対して化学放射線同時併用療法 (concurrent chemoradiotherapy, 以下CRT) を開始した. 粘膜炎に伴う嚥下障害に対して経鼻胃管を留置した. 輪状後部への物理的圧迫が誘因となったと思われる喉頭壊死を来した. そのため, 喉頭摘出を余儀なくされた. 経鼻胃管の物理的圧迫が誘因と考えられた喉頭壊死のまれな1例を経験した. 粘膜炎に伴う経口摂取不良のため, 経鼻胃管の留置期間は約2カ月におよび, 粘膜炎の合併とともに喉頭壊死を来すには十分な期間であったと考えられる. 当科でのCRTではこのような合併症を避ける意味でも治療前に胃瘻造設を行うほうがよいと考える.
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