本研究では, モルモット内耳における前庭球形のうの組織学的構造が, 光学顕微鏡を用いて観察された. 内耳の取出し標本に, 銀反応 (硝酸銀染色) を施した後, 観察に供された. 鐙骨を除去した後, 卵円窓周囲の骨壁を, 鋭利な針, および剃刃をもつて取りはずした. まず側頭骨をごく短時間, 蒸溜水にて洗い, 0.5% AgNO
3溶液に約2分間浸した. その後すぐに, 蒸溜水で再び洗い, たゞちに10%ホルマリン溶液に入れ, 約20ルックスの螢光燈の下において, 骨壁が薄黄色になるまで, 約24時間固定した.
1. 球形のう膜様壁後半部は, ほゞ扁平な, より大きな上皮細胞から構成されている.
2. これらの, より大きな上皮細胞は, 内リンバ管に近づくにつれて, 小さくなり, 形も紡錘形となり, しばしば渦状配列をなすことがある.
3. 球形のう膜様壁前半部, および球形のう斑周囲は, より小さな, しかし柱状の上皮細胞より構成されている.
4. 球形のう斑感覚上皮は, 支持細胞, および Type-I と Type-II の二つの型の感覚細胞とより構成されている. この Type-I と Type-II 細胞の分布比率は, Striola および, ごく狭い範囲の球形のう斑末梢部を除けば, どの部分でも, ほゞ同一である.
5. 球形のう斑を表面から観察する場合, 光学顕微鏡の焦点を, 感覚上皮全体の厚さの, 上部1/3の所に合わせると, フラスコ形の Type-I 感覚細胞, および柱状の Type-II 感覚細胞が, かなり明瞭に区別されるようになる. Type-I 細胞は, ふくらんだ部分があるので, 大きな円として, Type-II 細胞は, 小さな円として観察される. しかし正確には, 神経終末の差異により区別されるべきであり, 電子顕微鏡的観察が必要であると思われる.
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