2006年にがん対策基本法が制定され, 重要な取り組むべき課題の一つに, 精神面のケアを含む緩和ケアの実施が「がん対策推進基本計画」に盛り込まれた. しかし, すべてのがん患者に精神腫瘍医が直接関与することはできない. 今後も, 患者の心理面に配慮したがん告知や再発の告知, 緩和医療への移行時などバッドニュースを伝えるときの心のケアや, 術前や化学療法前の不安なときのサポート, 睡眠薬や抗不安薬の処方は主治医と看護師を中心に精神腫瘍科が介入することなく行われるであろう. したがって, 患者やその家族の精神的苦痛やQOLの改善を目標として, 精神症状を認識し, 診断する能力ががんに携わるすべての医師に求められている. また, 手術をはじめ, 抗がん剤治療, 放射線治療, 緩和医療をスムーズに行っていく上で, 精神症状の早期発見, 早期介入は非常に重要である. 症状が進行するにつれ, 適応障害やうつ病, せん妄といったがん診療においてよく目にする精神障害を合併することが多くなり, 精神腫瘍医と連携をとる必要も増えてくる. 本稿では適応障害, うつ病, せん妄といったがん診療において一般的によく目にする精神障害に加え, アルコールやタバコといった頭頸部がん患者と関連が深い物質依存や離脱におけるその特徴についても述べていくことにする.
抄録全体を表示