日本耳鼻咽喉科学会会報
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99 巻, 11 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 八木沼 裕司, 小林 俊光, 斎 由美子, 高坂 知節
    1996 年 99 巻 11 号 p. 1635-1640,1725
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    中耳術前診断における電気味覚検査の有用性を調べるため, 97名106耳について疾患別および術中所見と鼓索神経領域の電気味覚閾値を対比検討した. 慢性中耳炎では味覚閾値は正常例とほぼ同じであったが, 弛緩部型真珠腫, 緊張部型真珠腫および癒着性中耳炎, 既手術例の順で上昇し, 特に既手術例では高度障害例が多かった. また電気味覚閾値は鼓室後上部の術中所見とよく相関していた. 電気味覚検査により鼓索神経の状態を術前に予測することは術式選択の上でも重要であり, 本検査は中耳術前検査として有用と考えられた.
  • 武 浩太郎
    1996 年 99 巻 11 号 p. 1641-1647,1725
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    小胞体Ca2+-ATPase選択的阻害剤で小胞体へのCa2+の再吸収を阻害する作用を持つthapsigarginおよび, 小胞体のCICRチャネルに結合し, 開口状態に固定する作用を持つryanodineを, 各々, 外リンパ灌流することにより蝸牛マイクロフォン電位 (CM), 蝸牛内直流電位 (EP) への影響を計測し検討した結果, 両薬剤共にCMの減少を認めた. EPの変化は認めなかった. これらの結果より有毛細胞の細胞機能の保持には細胞外からのCa2+の流入だけでなく, 細胞内Ca2+貯蔵部位である小胞体からのCa2+放出が重要な役割を果たしていると考えられた.
  • 肥後 隆三郎, 市村 恵一, 太田 康, 石塚 鉄男, 嶋崎 雄一
    1996 年 99 巻 11 号 p. 1648-1652,1725
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    1992年4月より1995年3月までの当科嗅覚外来受診者のうち, アレルギー性鼻炎を嗅覚障害の主因とした27例を検討した. T&Tオルファクトグラムにおいて8例に嗅素A, D, Eで検知・認知間の乖離が認められた. 特定のニオイに対して嗅覚の減退がみられた点は, Douekの提唱したアレルギー性鼻炎におけるAnosmic zonesに該当するものと思われ, 呼吸性障害とは異なる要因による嗅覚障害の存在が示唆された. その原因として嗅上皮の病理学的変化に伴う嗅粘膜上粘液の異常, 嗅神経細胞のニオイ分子に対する特異的応答の障害, また嗅神経細胞内のシグナル伝達系の異常などが考えられた.
  • 宮脇 浩紀
    1996 年 99 巻 11 号 p. 1653-1661,1725
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    モルモットの前庭から細胞単離を行い, フラスコ型の1型, 円柱型のII型と円形の支持細胞が採取された.
    有毛細胞は高濃度K+, 低浸透圧, ATPを含む外液環境で感覚毛束及び頸部が傾く運動を示した. F-アクチンは感覚毛束, cuticular plate及び細胞質にびまん性に存在するが, 高濃度K+負荷に伴う運動により局在に変化が認められた.
    前庭感覚上皮において, この細胞の運動性が受容体構造のstiffnessやcomplianceに変化を起こし, 細胞の刺激に対する感受性を変化させ, 平衡覚域値レベルでの感受性の増強あるいは低下といったactiveな調節機構に関与すると考えられる.
  • 鶴丸 浩士
    1996 年 99 巻 11 号 p. 1662-1675,1727
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    上気道慢性炎症において, 局所粘膜における免疫応答の解明は, その遷延化の原因解明や治療に結びつく重要な問題である. そこで今回, 慢性副鼻腔炎上顎洞粘膜に認められるリンパ濾胞形成という現象に着目し, その頻度, 構造, 形成過程について免疫組織化学的手法を用いて検討した. 結果, 上顎洞粘膜にはリンパ濾胞が高率に存在し, その成立には繊毛上皮のリンパ上皮共生様変化や, 高内皮細静脈に導かれたリンパ球集簇が重要であり, 樹状細胞の出現とT, Bリンパ球の相互作用が不可欠であることが判明した. これらの事実より, 慢性副鼻腔炎におけるリンパ濾胞の存在は, その慢性化病態に密接に関連しているものと考えられた.
  • 北村 健, 土井 勝美, 武田 憲昭, 三代 康雄, 大草 方子, 久保 武
    1996 年 99 巻 11 号 p. 1676-1683,1727
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    突発性難聴患者の発症から治療開始までの期間別の治療成績では, 発症日から6日までに治療を開始した群が7日目以降から治療を開始した群と比べ良好な治療効果を認めた. 各治療法ごとに発症から治療開始までの期間, 初診時平均聴力で分類し泰地らの聴力改善率で検定した結果, ステロイド治療群の中で発症0-6日までの群で初診時聴力レベルが60-90dBの群と91dB以上の群の間で有意差を認め, 初診時聴力レベルが60-90dBの群の聴力改善率が高かった. DF治療群の中で治療開始までの期間が0日から6日までの群で初診時聴力レベルが60-90dBの群と治療開始期間までの期間が7日以上で60-90dBの群間では, 治療開始までの期間が0日から6日までの群が7日以上の群に比べ高かった.
  • 高橋 辰, 高坂 知節, 大山 健二, 和田 仁
    1996 年 99 巻 11 号 p. 1684-1693,1727
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    レーザードップラー振動計を使用してモルモット蝸牛基底板の振動様式を計測した. このシステムでは, 実験操作による蝸牛基底板への負荷を軽減することで, 比較的安定した生理的状態での基底板振動計測が可能になった. 基底板振動の速度振幅の計測では, 過去のモルモットでの報告と同等かそれ以上に鋭いピークを示す蝸牛基底板振動の周波数選択性と特徴周波数付近で明らかな非線形性が示された. 基底板振動の位相の計測では, 基底板の進行波は蝸牛基部より頂回転へと伝播し, その速度は基底板上の部位によって連続的に変化することが示された. 今回の計測結果より, 生理的状態の蝸牛基底板上には何らかの能動的機構が存在する可能性が示された.
  • 中村 良博
    1996 年 99 巻 11 号 p. 1694-1704,1727
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
    ヒト扁平上皮癌3株 [上顎癌株 (MC-1, MC-3), 中咽頭癌株 (MPC-2)] を用いて, 5-fluorouracil (5 FU) の抗腫瘍効果に対するLeucovorin (LV) のbiochemical modulationについてその併用効果と投与法を検討した. その結果は, ヌードマウス皮下移植法では, MC-1, MPC-2株でLVによる5-FUの効果の増強が得られた. LVの先行投与では同時投与に比べ効果の増強が得られ, LVの投与量では0.15-0.45mg/bodyの間に至適投与量であることが示唆された. HTCAでは, MC-1, MPC-2株の2週間接触法でLVによる5-FUの抗腫瘍効果の増強傾向が見られた. 以上よりLV併用による5-FUの抗腫瘍効果の増強ならびにLVの投与時期, 至適投与量についての指針が得られた.
  • 嗅覚機能検査と嗅覚経路のMRI所見
    古川 仭
    1996 年 99 巻 11 号 p. 1706-1709
    発行日: 1996/11/20
    公開日: 2010/10/22
    ジャーナル フリー
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