日本耳鼻咽喉科学会会報
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106 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 弘前市における検討
    安田 京, 松原 篤, 王子 佳澄, 二井 一則, 新川 秀一
    2003 年 106 巻 2 号 p. 135-142
    発行日: 2003/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    本邦における花粉症のアレルゲンはスギ花粉が最も多く,スギ花粉総飛散数や飛散開始日の予測はスギ花粉症患者にとって有益である.この調査の目的は,弘前市におけるスギ花粉総飛散数と飛散開始日の予測方法を確立することである.
    1996年から2002年の弘前市におけるスギ花粉飛散状況を調査し,スギ花粉総飛散数をスギ雄花の着花指数と比較した.着花指数は前年の秋にスギ雄花の着生状況を観測し求めた.回帰分析により着花指数とスギ花粉総飛散数とは有意な正の相関があの,着花指数は花粉総飛散数の予測に適していると考えられた.また,1月1日から飛散開始日までの日数とその間の累積最高気温との間には相関は認められなかったが,初観測日から飛散開始日までの日数とその間の累積最高気温,累積降雪量との間にはそれぞれ高い相関が認められた.スギ花粉初観測後に日々の最高気温を累積していくことで,より正確な飛散開始日の予測が可能であると考えられた.
  • visual analogue scaleを用いた検討
    山本 俊宏, 山中 敏彰, 畠山 好央, 北奥 恵之, 細井 裕司
    2003 年 106 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2003/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    患者が実際に自覚しためまいの強さとその苦痛度をvlsual analogue scale(VAS)を用いて数値化することで客観化するとともに,どのような要因がそれらに関与するのかを調べるため,受診のきっかけとなるめまいの問診事項,検査成績,心理状態などを選び重回帰分析を用いて検討した.
    平成12年6月から平成13年5月までの1年間に日生病院耳鼻咽喉科を受診しためまい患者197例(男性74例,女性123例,平均年齢52.5歳)を対象として,VASを用いてめまいの強さ,苦痛度の数値化を行った.さらに数値化しためまいの強さや苦痛度を目的変数とし,説明変数として年齢,性別,初診までの日数,めまいの起こり方,めまいの性状,持続時間,既往の有無,反復の有無,随伴症状,平衡機能検査,CMI (Cornell Medical Index), SDS (Self-rating depression scale)を選びステップワイズ重回婦分析を行った.
    めまいの強さに影響を与える要因として嘔気/嘔吐の随伴,既往の有無,持続時間が選択された.めまいの苦痛度に影響を与える要因としてめまいの強さ,SDS値,性別が選択された.
    めまいの苦痛度を軽減させるためにはめまいの発作の持続および嘔気 嘔吐などの自律神経症状を抑制すること,初発発作のめまいについては特に患者の訴えを傾聴したり,病状や予後についての説明をできる限り十分に行うこと,うつ傾向など心理面に配慮し必要に応じて心理療法を適切に行うこと,これらを特に女性に対して念入りに行うことが大切であると考えられる.
  • 耳鼻咽喉科医としての取り組み
    佐藤 公則
    2003 年 106 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 2003/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    OSASに対する集学的治療の一環として,耳鼻咽喉科医が口腔装具治療の適応を決定し口腔装具を作製し,OSASの治療を行う治療法について報告した.対象は最近2年間に,当院で口腔装具の装着を行った患者28例である.1)本法にょりOSASに対する集学的治療の選択肢が拡がった.2)歯科に依頼しなくても,耳鼻咽喉科で口腔装具による治療が行えた.3)耳鼻咽喉科の無床診療所でも,外業で行える治療法であった.4)口腔装具の装着は,適応を選べば手術的侵襲がなく簡便で有用な治療法であり,単独あるいは他の治療法と組み合わせてOSASの治療に用いるべきであった.5)OSASの集学的治療を行うためにも,耳鼻咽喉科医が口腔装具による治療に携わることが望まれた.
  • 須田 佳人, 花牟 礼豊, 笠野 藤彦, 鹿島 直子
    2003 年 106 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 2003/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    本邦では初めての鼻腔から生じた疣状癌(Verrucous carcinoma)を経験した.症例は53歳男性で左鼻閉•左鼻腔腫瘤の自覚を主訴に受診した.左鼻腔より乳白色のポリーブ状の腫瘤が突出しており,画像にて左鼻腔から上顎洞に腫瘍を認めた.Denker手術にて鼻腔側壁と共に腫瘍を摘出した.疣状癌は悪性度の低い扁平上皮癌の一亜型であるが,扁平上皮癌が混在することがある(hybrid tumor).本症例は典型的なhybrid tumorであった.病理診断が困難な場合が多く,生検は大きく深部まで組織を摘出し,病理医との連携が重要である.
  • 古宇田 寛子, 合津 和央, 杉本 太郎, 石川 紀彦, 岸本 誠司
    2003 年 106 巻 2 号 p. 160-163
    発行日: 2003/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    頸部郭清術後リンパ漏は比較的まれな合併症であるが,効果的な治療法がないため,難治例では治療に難渋する場合がある.我々は局所圧迫および脂肪食制限の保存的療法で軽快をみない症例を対象としてミノサイクリン局所注入療法を施行し,良好な結果を得ている.ミノサイクリン局所注入はミノサイクリンの高い酸性度および細胞毒性を利用し,癒着を目的として他科領域でも多く用いられており,重大な副作用の報告もみられていない.今回我々の経験より,術後頸部リンパ漏難治例に対し積極的な応用が可能であると考えられた.
  • 第1報:発生部位とその背景を中心に
    大倉 隆弘, 長谷 川聡, 川名 正博, 佐藤 克郎, 高橋 姿, 五十嵐 文雄
    2003 年 106 巻 2 号 p. 164-172
    発行日: 2003/02/20
    公開日: 2008/03/19
    ジャーナル フリー
    新潟県では1986年に耳鼻咽喉科専門医が新潟県頭頸部悪性腫瘍登録委員会を設立し,県内全域を対象とした頭頸部悪性腫瘍症例の登録を始めた.今回1986年から1999年までの14年間の集計を行い,全症例の年代分布,部位別の症例数,粗罹患率,男女比,平均年齢および年代分布について分析を行った.症例は4,053例で,男性は2,866例(70.7%),女性は1,187例(29.3%),平均年齢は男性63.4歳,女性59.5歳であった.部位別には男性では喉頭(1,154例),口腔(360例),下咽頭(273例),中咽頭(239例),上顎洞(154例)の順に多かった.女性では甲状腺(416例),口腔(214例),(上顎洞を除いた)鼻副鼻腔(76例),唾液腺(72例),中咽頭(71例)の順であった.粗罹患率(人口10万人あたり)は男性では全体で17.06,最も多い喉頭は6.87であった.女性では全体で6.68,甲状腺が2.34であった.全国との比較では本登録で口腔,甲状腺の罹患率が低かったが,耳鼻咽喉科以外で治療された症例が多かったためと考えた.男女比(男性/女性)は喉頭(22.2)で最も高く,下咽頭(4.3),中咽頭(3.4)と続いた.甲状腺(0.3)のみ女性が多かった.口腔,唾液腺,頸部(リンパ腫),聴器,鼻副鼻腔は男女比が2に満たず性差が少ない部位といえた.部位別に平均年齢が最も高いのは男性では口唇(71.3歳),女性では喉頭(68.7歳),最も低いのは男女とも甲状腺(男性56.7歳,女性53.6歳)で,女性では甲状腺が全体の平均年齢を大きく下げた.
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