1. 外耳に異常のない耳小骨奇形18耳のうち先天性キヌタ•アブミ関節離断症(仮称)の8耳を紹介した.
2. キヌタ骨についてみると,キヌタ骨長脚欠損は7耳,豆状突起欠損は1耳であった.またアブミ骨では不完全ながら上部構造のあるもの5耳,底板のみ存在しているもの3耳であった.また底板はすべて可動性であった.
3. 発生学的見地からみて本症は胎生6週後に生じたsecondary continuityの発達阻害によるものと推定した.したがってこの種の先天性耳小骨奇形をキヌタアブミ関節離断症と呼称し一つの群として取り扱うのが妥当であろう.
4. 本症の手術成績は良好で,平均して35.4dBの聴力改善を見ており,また術後平均聴力はすべて30dB以内であった.この点は他の範疇に属する耳小骨奇形とくらべて一特色となっており,臨床的にも本症を耳小骨奇形の一分類単位とするのは有意義である.
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