1) 病期分類(経過良好群,有腫瘍者群,治療直後群,進展群,末期群,対照群)に対し,多変量解析の手法を用いた結果,臨床的病期が一般臨床検査成績ならびに遅延型皮膚反応(PPD, Candida, SK•SD, Mumps,Varicella, PHA, DNCB)成績によって,ある程度裏付けられていることが分った.その際正準軸の2軸を検討し,第I軸は細胞性免疫に関するもの,第II軸は炎症に関するものと推論した.
2) 遅延型皮膚反応検査7種の平均評点で表わした成績が,頭頸部悪性腫瘍患者における日常一般臨床検査成績といかなる関連を有するかについて検討した.その結果,皮膚反応成績はリンパ球数,蛋白分画のような免疫機能に関係する項目以外に,貧血,体重減少,行動性弱化などのような全身衰弱に関係する項目に相関することが明らかとなった.
3) 遅延型皮膚反応と腫瘍の進展度との関係を検討すると,局所進展が進む程,また転移があるもの程,皮膚反応の平均評点が減少することを認めた.
4) 各患者の臨床病期が推移すると皮膚反応成績が,それに平行して変動するが,中にはかえって逆行する傾向を示す症例もあり,平均値として有意差は見られなかった.
5) 腫瘍の制御率(非再発率)を指標として,遅延型皮膚反応成績から予後予測の可能性を検討した,6ヵ月以上再発なく経過した経過良好時に検査した者を皮膚反応成績正常者群と反応不全群とに分け,その予後の差を見たが有意差は得られなかった.また治療中検査した者を皮膚反応成績正常者群と反応不全群に分け,その予後の差を見ると2年後の制御率において約10%の差が得られた.したがって遅延型皮膚反応検査のみによる予後予測は困難であるが,その参考資料とすることができる.
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