消化器内視鏡治療法の発達がもたらした効果に関する社会医学的な考察を試みた.現在までに,消化管出血の内視鏡止血により,患者の在院日数の短縮と治療費の削減効果が明らかであることを報告した.1990年代より,食道表在癌と早期胃癌に対する内視鏡的切除術(EMR)が広く臨床応用され,医学的評価が明らかにされた.筆者らはEMRにより,従来の外科切除に比較して,低侵襲であり,重症併存疾病により切除適応外であった患者に対する治療適応の拡大,さらに患者のQOL(quality of life)においても有効であることを報告した.一方,治療期間(平均在院日数)の短縮および治療費の削減効果などが明らかであった.現在,わが国の少子高齢化ならびに,経済状況の逼迫により,現行の医療保険制度の改革が進行している. 今同検討した,消化器内視鏡治療は医学的有効性と社会的有用性が客観的に評価しうる領域である.現在,欧米の医療保険制度(DRG/PPS)を参考として,医療保険制度の検討が進められているが,わが国独白の制度を保持しながら改革を実施するには,現状に対応した評価基準が必要である.最近,注目されているクリティカル・パス(パス法)やE.B.M.などの観点より,消化器内視鏡における診療評価基準(ガイドライン)を専門の学会が主導権を発揮して作成する意義があると考えられる.
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