日本消化器内視鏡学会雑誌
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57 巻, 1 号
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総説
  • 栗林 志行, 川田 晃世, 保坂 浩子, 富澤 琢, 安岡 秀敏, 佐川 俊彦, 水出 雅文, 下山 康之, 河村 修, 山田 正信, 草野 ...
    2015 年 57 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    Barrett食道は食道腺癌の危険因子であり,Barrett食道の内視鏡観察ではBarrett腺癌の早期発見が重要である.Barrett食道では胃食道逆流症に伴う炎症が認められることが多く,異型上皮の検出は必ずしも容易ではない.Barrett食道内の癌が疑わしい部位の拾い上げ診断や範囲診断に,拡大内視鏡に加えて,メチレンブルー,クリスタルバイオレット,インジゴカルミンなどを用いた色素内視鏡,酢酸撒布法,種々の画像強調内観察などが行われている.
    Barrett食道では粘膜筋板の2層構造が認められ,深層の粘膜筋板が本来の粘膜筋板と考えられており,Barrett腺癌の治療適応は深達度が粘膜固有層に留まっているものとされている.Barrett腺癌に対する内視鏡治療としては,内視鏡的切除術や焼灼術が行われているが,本邦では正確な病理診断ができることを重視して内視鏡的切除術が行われている.
症例
  • 山口 太輔, 二尾 健太, 吉岡 智美, 坂田 資尚, 下田 良, 水口 昌伸, 岩切 龍一, 高瀬 ゆかり
    2015 年 57 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性.関節リウマチにて当院通院中に発熱,下腹部痛あり,精査目的に腹部CTを施行し,上行結腸から横行結腸に著明な浮腫性の壁肥厚を認め,下部消化管内視鏡検査では上行結腸から横行結腸右側にかけて亜全周性に粘膜の浮腫と区域性のある浅い多発潰瘍を認めた.入院時の血液培養よりBrachyspira pilosicoliB.pilosicoli)が検出され,腸管からのbacterial translocationによりB.pilosicoli敗血症を来したと考えられた.B.pilosicoli感染は非常に稀であるが,本症例の様な免疫低下患者においては日和見感染の一つとして考慮すべきであると考えられた.
  • 三長 孝輔, 籔内 洋平, 岩上 裕吉, 幡丸 景一, 中谷 泰樹, 赤松 拓司, 瀬田 剛史, 浦井 俊二, 上野山 義人, 山下 幸孝
    2015 年 57 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は86歳,男性.2カ月前に十二指腸癌からの腫瘍出血に対し,姑息的胃空腸バイパス術(Billroth-II法再建)が施行された.皮膚黄染,心窩部痛にて当科を受診し,画像検査から十二指腸癌浸潤による胆管閉塞が疑われた.細径大腸内視鏡を用いてERCPを試みたが胆管挿管できず,内視鏡の乳頭到達は比較的容易であったことよりEUSランデブー法による胆道ドレナージを行った.EUSガイド下に拡張した肝内胆管を経胃的に穿刺し,狭窄部を超えてガイドワイヤーを十二指腸内に留置し,細径大腸内視鏡を挿入し経乳頭的にプラスチックステントを留置し減黄し得た.本法は術後再建腸管における胆管挿管困難例で乳頭到達可能な場合の閉塞性黄疸の治療選択肢として有用と思われた.
  • 西田 淳史, 塩谷 淳, 大原 真理子, 長谷川 大, 大崎 理英, 伴 宏充, 西村 貴士, 稲富 理, 馬場 重樹, 安藤 朗
    2015 年 57 巻 1 号 p. 30-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.胆管細胞癌術後のリンパ節再発に対して化学治療を施行され,経過観察中に膵鉤部近傍のリンパ節に再発が認められたため,放射線治療が施行された.リンパ節再発に対しては治療効果が認められたが,放射線治療の終了後,約4カ月で放射線治療に伴う出血性十二指腸炎を併発した.アルゴンプラズマ凝固法による治療を5回施行したが,内視鏡治療のみによる出血のコントロールが困難であると判断したため,ソマトスタチンアナログであるオクトレオチドの併用投与を行った.オクトレオチドは,用量300μg/日で持続的に皮下投与した.オクトレオチド併用後より,黒色便の回数が減少し,貧血の進行も止まり,さらに,オクトレオチド投与後から退院までにアルゴンプラズマ凝固法による治療を3回追加するにとどまった.アルゴンプラズマ凝固法による出血コントロールが困難な放射線性十二指腸炎に対してオクトレオチドの併用が有用であった1例を経験したので報告する.
  • 松田 暁子, 牧野 直彦, 戸澤 智浩, 池田 祐之, 佐藤 英之, 伊藤 美保, 柿崎 泰明, 赤松 学, 齋藤 吉彦, 上野 義之
    2015 年 57 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性.胆道感染を契機に肝膿瘍を発症し入院.第1病日にERCPを施行し多発胆管結石を認め5Fr経鼻胆管ドレナージチューブを留置した.第6病日の腹部MRI T2強調像で肝外側区の肝膿瘍は増大し,肝表面に腹水貯留を認めた.呼吸状態は進行性に悪化し,第7病日より持続陽圧換気を開始した.肝膿瘍の治療が急務であったが経皮ルートは多量腹水のため穿刺困難であり,第13病日にEUS下肝膿瘍穿刺を施行し7Fr経鼻肝膿瘍ドレナージチューブを留置した.呼吸状態は改善し,第40病日のMRIで著明な膿瘍縮小を確認した.EUSによる経消化管的肝膿瘍ドレナージが奏功した貴重な症例と考え報告する.
  • 磯野 功明, 松崎 晋平, 田中 宏樹, 栃尾 智正, 熊澤 広朗, 佐瀬 友博, 岡野 宏, 齊藤 知規, 馬場 洋一郎, 向 克巳
    2015 年 57 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は90歳,女性.総胆管結石による急性胆管炎で入院し,内視鏡的胆管ドレナージを試みた.食道入口部に膜様狭窄を認め,十二指腸スコープ(外径13.5mm)は通過しなかったが,細径内視鏡(外径5.5mm)は狭窄部を通過した.胆管造影で胆管拡張と18mmの胆管結石を認めた.5Fr pig tail型の内視鏡的経鼻胆管ドレナージチューブを切断し,先端側を胆管ステントとして細径内視鏡下に留置することで,胆管炎は軽快した.十二指腸スコープが通過しない消化管狭窄例に対する細径内視鏡下胆管ドレナージの報告は稀であり,文献的考察を加え報告する.
注目の画像
手技の解説
  • 林 毅, 小野 道洋, 石渡 裕俊, 植村 尚貴, 荻野 次郎, 長谷川 匡, 加藤 淳二
    2015 年 57 巻 1 号 p. 54-65
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    Endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration(EUS-FNA)は膵病変,腫大リンパ節,粘膜下腫瘍の確定診断法として欠かせない手技であり,本邦でも市中病院にまで普及しつつある.しかし,十分量の検体を得ることの困難性と診断能の低さに戸惑っている内視鏡医は多いと思われる.その克服には,病変描出能,穿刺技術,および検体の取扱い技術の向上が重要となるが,さらに迅速病理診断(rapid on-site evaluation:ROSE)の導入の有無が診断能を大きく左右する.
資料
  • 小池 良樹, 平澤 大, 藤田 直孝, 前田 有紀, 大平 哲也, 原田 喜博, 鈴木 憲次郎, 山形 拓, 田中 恵
    2015 年 57 巻 1 号 p. 66-74
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/13
    ジャーナル フリー
    【目的】食道ESDにおける糸付きクリップ牽引法(Thread-Traction-method:TT法)の有用性を検討する.
    【方法】2012年5月~2013年2月に食道ESDを施行した連続40病変を対象とした.TT法を用いた20病変(TT群)と従来のESD20病変(Conventional group:C群)に無作為に割付けた.TT群では,全周切開後に病変を含んだ標本側の粘膜の口側縁に糸付きクリップを付けた.ESDは2名の医師が担当し,全例Hook Knifeで行った.剥離時間を主要評価項目として成績を評価した.
    【結果】ESDは全例で完遂された.TT群はC群に比べ,有意に剥離時間の短縮が得られた(19.8 VS 31.8分,p=0.044).局注回数はTT群がC群に比べ有意に少なく(0.6 VS 2.2回,p<0.001),局注量はTT群がC群に比べ有意に少なかった(2.6 VS 7.5ml,p<0.01).本検討で偶発症はなかった.
    【結論】食道ESDにおけるTT法は,剥離時間の短縮に寄与していた.安全性にも大きな問題はなく,積極的に取り入れられるべき有用な手技と考えられる.
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