【目的】食道ESDにおける糸付きクリップ牽引法(Thread-Traction-method:TT法)の有用性を検討する.
【方法】2012年5月~2013年2月に食道ESDを施行した連続40病変を対象とした.TT法を用いた20病変(TT群)と従来のESD20病変(Conventional group:C群)に無作為に割付けた.TT群では,全周切開後に病変を含んだ標本側の粘膜の口側縁に糸付きクリップを付けた.ESDは2名の医師が担当し,全例Hook Knifeで行った.剥離時間を主要評価項目として成績を評価した.
【結果】ESDは全例で完遂された.TT群はC群に比べ,有意に剥離時間の短縮が得られた(19.8 VS 31.8分,p=0.044).局注回数はTT群がC群に比べ有意に少なく(0.6 VS 2.2回,p<0.001),局注量はTT群がC群に比べ有意に少なかった(2.6 VS 7.5ml,p<0.01).本検討で偶発症はなかった.
【結論】食道ESDにおけるTT法は,剥離時間の短縮に寄与していた.安全性にも大きな問題はなく,積極的に取り入れられるべき有用な手技と考えられる.
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