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西村 滋生
1988 年 30 巻 12 号 p.
3013-3021
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)における基礎的検討として,家兎の耳静脈に食道静脈瘤硬化剤を注入し,組織学的変化について比較検討した.硬化剤は血栓形成能の強い順に40U/kg thrombin>5% ethanolamine oleate>2% sodium tetradecyl sulfate≧absolute ethanol>1% Aethoxysklerol>50% glucoseであった. 次にEOを用いたEISについて臨床的検討を行った.完全に静脈瘤内注入となった155例のうちで,bronze varicesからbronze spotに変化し,静脈瘤の消失に至るという典型例を150例(96.8%)に認めた.この経過以外に,bronze varicesからの壊死・脱落例を4例(2.6%),bronze varicesからの再発例を1例(0.6%)に認めた. EIS後の静脈瘤の経時的変化を把握することは,治療効果の判定のみならず,予後を知る上においても重要であると考えられた.
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斉藤 裕
1988 年 30 巻 12 号 p.
3023-3034
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃集検で発見され,5年以上連続して内視鏡的に追跡できた胃潰瘍241例から,胃潰瘍の自然史を追求する目的で,その長期経過がいかなるものかを,病院例139例を対照として検討した.発見潰瘍は単発が3/4を占め,部位は胃角部が多く(病院例の胃体部と対照的に),内視鏡的に8割がH,Sstageで発見されていた.無愁訴率は39.4%,無治療率は64.3%であった.経過別では,再発群46.5%,開放持続群9.5%,瘢痕群26.1%,瘢痕持続群17.8%で半数は再発を繰り返し,1/5は瘢痕を続けた.再発・難治化するものは男性,有愁訴者,胃角部,多発性の4つが考えられた.再発率は追跡年数が長期になるほど高くなる傾向があった.また有治療例の方が無治療例より再発率が高かった.症状からみて重症例が少ないのが集検例の特徴であり,病院例と本質的には違いはなく,集検・臨床いずれにおいても治療のあり方,生活指導は個々に考慮されるべきであり,かつ,できるだけ長期の個人的経過の特徴をふまえたものであることが必要と考えられた.
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広田 和子
1988 年 30 巻 12 号 p.
3035-3045
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
胃の腸上皮化生の診断のための内視鏡的メチレンブルー染色法と,生検標本と手術標本についてのLAP染色,ALP染色,A.B.染色の関連性を明らかにするために,内視鏡的メチレンブルー染色後に,染色部をstrip biopsyにより切除したのちにLAP染色,ALP染色,A.B.染色を行い,それぞれの染色状態を実体顕微鏡下にて観察し比較検討した.さらに,その関連性を刷子縁および細胞内粘液から検討するため,PAS,A.B.重染色を行った.その結果,A.B.染色法において,最も広範囲に腸上皮化生粘膜が杯細胞化生として認められた.また,M.B.吸収領域は,LAP,ALP陽性領域よりもやや広い範囲に認められ,M.B.吸収能はmicrovilliがPAS陽性刷子縁として識別される以前に出現し,LAP,ALP酵素活性はPAS陽性刷子縁が識別される時期になってはじめて酵素活性をもつようになった.また,これら腸上皮化生粘膜の胃内分布は,酵素学的,粘液学的に完全型の腸上皮化生粘膜が,中間帯の胃粘膜に多く認められ,粘液組織学的に完全な吸収上皮だけからなる腸上皮化生粘膜も中間帯粘膜に認められた.
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秋山 哲司
1988 年 30 巻 12 号 p.
3046-3053
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
山口大学第1内科において,1987年1月から同年10月までに施行したERCPのうち,ERC所見がえられた症例221例中28例(12.7%)が胆嚢不影で,二重造影ができていた症例は221例中68例(30.8%)であった.そこで,胆嚢不影例の精査ならびに胆嚢隆起性病変の精査の目的で,ダブルバルーンカテーテルを新しく開発し,それを用いた胆嚢精査法を考案した.ダブルバルーンカテーテル法による胆嚢精査を,ERCPによる胆嚢不影症例7例,胆嚢隆起性病変3例について施行したところ,胆嚢不影例7例の全例の胆嚢が造影され,胆嚢隆起性病変3例中2例に病変の形態および性状をより明瞭に描出しえた.本論文において,ダブルバルーンカテーテル法の手技を詳述し,さらに症例を呈示してその臨床的意義について検討を加えた.結論として,ダブルバルーンカテーテル法は胆嚢が選択的に造影でき,ERCで胆嚢不影の症例における胆嚢造影や胆嚢隆起性病変の質的診断法として有用であることを強調した.
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鋤柄 稔, 下地 克典, 大畑 昌彦, 松本 隆, 駒崎 敏郎, 松村 誠, 亀田 千里, 伊藤 進, 杉本 映一, 尾本 良三
1988 年 30 巻 12 号 p.
3055-3061
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
半侵襲的検査法である超音波(ドップラ断層)内視鏡EUS2DDによって算出された奇静脈血流量(BFV-2DD)の信頼度を知るために,それを,熱希釈法(CTD)で求めた血流量(BFV-CTD)と比較した.18例の肝硬変症例と1例の非肝硬変症例の計19例に対して,短時日の間に両検査を施行した.EUS2DDでは奇静脈の上縁に近い斜走部を観察し,その直径2rと平均血流速度v.meanから,(2r)
2×v.meanを血流指数BFVI,一方,πr
2×v.mean×60を1分間あたりの血流量BFV-2DDと定義して,これらを算出した.CTDでは7FrのWebsterカテーテルを奇静脈内に挿入して血流量BFV-CTDを算出した.EUS-2DDで算出されたBFVI,並びにBFV-2DD両値と,CTDで算出されたBFV-CTDとの相関の有無を分析したところ,そのいずれにおいても有意(r=0.79,P<0.01)の相関が認められた.EUS2DDによって得られる奇静脈血流量は十分信頼に足るものと思われた.
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大坂 直文, 芦田 潔, 折野 真哉, 鄭 鳳鉉, 平田 一郎, 大柴 三郎
1988 年 30 巻 12 号 p.
3062-3066_1
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
臨床的に早期胃癌と診断された37例を電子内視鏡で観察し,病変部と周囲正常粘膜との肉眼的判別根拠をA:niveau difference, B:disappearance of capillary transparence, C:discoloration, D:spotty rednessの4群に分類した.その所見を基に病変と正常粘膜との境界線を設定し,その病変側と正常側と思われた粘膜から生検を施行して上記の所見の診断精度を検討した.その結果,病変側の正診率すなわち,癌を癌と認識できた率は97.0%(32/33)であり,一方,非癌部を非癌部と判定できた率は75.6%(25/33)であった.分化型癌と低分化型癌に2分した場合の正診率を比較すると,それぞれ89.5%(17/19)と50.0%(7/14)であり,低分化型癌は電子内視鏡的に認識された境界線よりもより広く浸潤している事が多く,これは境界部の粘膜固有層内に癌細胞がまばらに存在していたためであった.A,B,C,Dの4群の所見別による各々の境界認識正診率はそれぞれ,33.3%(1/3),100.0%(3/3),61.5%(8/13),85.7%(12/14)であった.A,Cの正常側と思われた粘膜からの生検ではそれぞれ66.7%(2/3),30.8%(4/13)に癌細胞が認められ注意を要すると思われた.
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石川 秀樹, 今西 清, 竜田 正晴, 大谷 透, 奥田 茂, 亀山 雅男, 福田 一郎, 石黒 信吾, 谷口 春生
1988 年 30 巻 12 号 p.
3067-3074_1
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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当院でこれまでに経験された直腸カルチノイド23例を対象とし,病理組織学的検索並びに臨床的経過追跡により直腸カルチノイドの内視鏡的治療の適応に関する検討を行った.病理組織学的には直径15mm以下で,形態的には表面平滑,広基性で,さらに組織学的には曾我分類AまたはB型の直腸カルチノイドはすべて深達度はsmであった.これらの条件を同時に満たす8病変に対し内視鏡的ポリペクトミーを施行した.ポリペクトミー後手術を施行した2例では組織学的にカルチノイドの遺残は全く認められなかった.また,ポリペクトミー施行後平均1年5カ月間の経過を内視鏡的に追跡した6例でも再発は全く認められていない.以上より,上述の条件を同時に満たし深達度smと考えられる直腸カルチノイドに対しては,直腸超音波検査にて深達度診断及び傍直腸リンパ節への転移のないことを診断すれば,内視鏡的ポリペクトミー施行時に熱効果を十分に活用することにより根治的治療が可能と考えられる.
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鈴木 潤一, 白峰 克彦, 赤司 憲治, 佐々木 香織, 伊藤 利道, 若林 修, 竹内 文英, 斎藤 俊平, 高井 重紀, 久村 正也, ...
1988 年 30 巻 12 号 p.
3077-3083
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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喫煙による胃粘膜血流量変化を検討する目的で,非喫煙者11例を対象に電解式水素ガスクリアランス法で胃体部粘膜血流量を測定した.その結果,水を通過させた喫煙条件(低ニコチン喫煙)では胃粘膜血流量に変化を認めなかったが,通常喫煙では血中ニコチン濃度,心拍数の増加とともに,胃粘膜血流量は平均93±標準偏差25.5ml/min/100gから138±44.7ml/min/100gと約50%増加した.しかし同時に測定した血中カテコールアミンには変化を認めなかった.以上のことより喫煙での胃粘膜血流量に影響を与えるのは,多くの煙中物質の中でニコチンを中心とする易水溶性物質であることが確認された.また胃粘膜血流量増加の機序としては,ニコチンの神経節刺激効果,心拍出量の増加が関与し,内因性カテコールアミンは関与していないことがわかった.今回の検討では喫煙の消化性潰瘍に与える影響として,粘膜血流はそれほど重要でないものと思われた.
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鳥谷 裕, 真栄城 兼清, 吉村 茂昭, 白井 善太郎, 樋口 恒夫, 有馬 純孝, 志村 秀彦, 小山 洋一, 中岡 幸一, 古川 浩, ...
1988 年 30 巻 12 号 p.
3084-3091_1
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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1983年11月以降食道胃静脈瘤破裂症例に対する緊急治療として内視鏡的硬化療法(EIS)または経回盲静脈的塞栓術(TIO)を導入して以来,41症例に施行したのでその治療成績につき臨床的検討を加え以下の結論を得た. 初回治療による止血率は,出血点が胃小彎または胃穹隆部に認められた症例では43%であり,食道胃接合部より口側に認められた症例の90%に比べ不良であった.また,食道・胃静脈瘤を内視鏡的形態からI型(食道静脈瘤のみの症例),II型(食道静脈瘤と胃小彎静脈瘤が連続する症例),III型(胃穹隆部に孤立する巨大な静脈瘤を有する症例)に分類し,各型の初回治療成績を検討すると,EIS単独治療例の止血率は1型(100%)>I型(77%)>III型(57%)の順であったが,EISおよびTIO併用例ではII型・III型ともに100%であった.以上の成績から,食道静脈瘤よりの出血症例ではEISが有効であるが,胃静脈瘤よりの出血例ではEIS単独治療に頼ることなく,TIOの併用も試みるべきであろうと思われた.
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―鹿児島県における678症例について―
山下 行博, 渋江 正, 田中 啓三, 橋本 修治
1988 年 30 巻 12 号 p.
3092-3098_1
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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鹿児島県において1982年1月から1987年12月の6年間に経験された胃アニサキス症678例について臨床的検討を加えた. 月別発生頻度は2~5月と9~10月に多くみられ,摂取魚類はサバが約73%で圧倒的に多く,ついでイワシ,アジなどであった.年齢性別は30歳代男子に多く,主症状は激しい上腹部痛でほとんどの症例にみられた.摂取より発症までの時間は6~8時間が最も多く12時間までに83.4%が発症していた.アニサキス幼虫の穿入部位は約半数が胃体部から胃角部の大彎側で,複数穿入例も約10%にみられた.内視鏡下に摘出された虫体のうち同定された158例は,アニサキス1型幼虫のみであった.これらの事実のうち,発生のピークが3月と9月であることは鹿児島県に特徴的であった.
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隅岡 正昭, 今川 勝, 小坂 大策, 平田 研, 石田 正典, 山本 昌弘, 春間 賢, 隅井 浩治, 梶山 梧朗
1988 年 30 巻 12 号 p.
3099-3105
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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大腸内視鏡検査前処置法として,Golytelyを用いた方法の有用性が報告されているが,服用量が41前後と多いこと,腸管内に多量の液体貯留が認められることから,われわれは大腸内視鏡検査を施行した53症例に対して服用量を出来るだけ少なくし,短時間で服用させ,腸管洗浄効果,安全性について検討した. Golytelyの服用量は1,000mlを基本量とし,約1時間後に排便がみられない症例に500mlを追加服用させた.服用は出来るだけ短時間で行わせた. 腸管洗浄効果は盲腸,上行結腸の深部大腸においては,従来より行っているBrown変法に比し有意にすぐれていた.下部大腸では差はなかった. 安全性に関しては,24例にGolytely服用前後で血液生化学検査を行った.ヘマトクリット値,血清ナトリウム,クロール値は変化がなかったが,血清カリウム,BUN,クレアチニン値は,服用後有意に低下した.しかし,重篤な合併症はみられなかった. 本法は簡便で,被検者の苦痛も少なく,腸管洗浄効果もすぐれ,有用な大腸内視鏡検査前処置法と思われた.
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荒川 正一, 上野 文昭, 岩村 健一郎, 六倉 俊哉, 明石 恒浩, 相沢 信行
1988 年 30 巻 12 号 p.
3106-3115
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
最近われわれは,ほぼ同様な臨床症状,内視鏡像,生検病理組織像を呈した急性大腸疾患患者7例に遭遇した.すなわち,これらの症例では便秘傾向があり,強い排便努力を契機に腹痛を覚え,血便を来した.発症後できるだけ早期に内視鏡検査を行い,比較的浅く,縦走にはじまり地図状の広がりを示し,しかもその表面が白苔をもって覆われている潰瘍が明らかにされた.潰瘍部からの生検による組織像では粘膜上皮層の剥離脱落,粘膜筋板を越えて漿膜側寄りの深層へ達している腺管上皮の存在,従って粘膜筋板の乱れがみられ,剥離した粘膜上皮層内には時として糞塊由来と思われる異物が認められた. 成因としては便秘が重視されなければならず,その限りではKaufmannらによって整理されている"Sterkoraltraumen"の概念にいれられるべきものであろう.主としてS状結腸ないし直腸に起こるものであるが,便秘の際,糞塊による粘膜面を通じての腸管への圧迫が静脈の還流を妨げ,その結果,うっ血,充血,血栓形成,出血,粘膜壊死,潰瘍形成に連なると理解されている.しかし便塊による粘膜面の病変が終極的に潰瘍形成の準備状態をなすとしても,発病への直接の引き金として排便のための怒積による腹圧の急激な上昇をも無視する訳には行かない.そのような意味で軌を一にすると思われる最近の自験7例を整理してのべた.
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谷口 英人, 中村 正樹, 菊地 直人, 星野 清志, 小泉 浩一, 山本 仁志, 梅谷 薫, 並木 真生
1988 年 30 巻 12 号 p.
3117-3120_1
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は73歳男性で昭和61年5月検診にて食道静脈瘤を指摘され,計4回にわたり内視鏡的硬化療法(EIS)を施行した.2カ所に潰瘍形成を認めたが静脈瘤は消失した.約1年後の昭和62年6月上部内視鏡検査において食道Mucosal bridgeが発見された.Mucosal bridgeはImよりEiに至り長径12cmにも及ぶ細長いH型をしており,両端は食道粘膜に固着し中心部の可動性は良好であった.内視鏡的に電気メスを用い固着部近傍を切離しMucosal bridgeを切除した.組織学的には中等度の炎症細胞浸潤を認めるroll状扁平上皮組織であった.Mucosal bridgeは炎症の修復過程における肉芽の癒着が原因とされ全消化管に発生するが食道では稀である.しかし近年EISの普及によりEIS後の報告もみられるようになった.本例は無症状であったが,文献的には狭窄症状を認めたとの報告もありわれわれは内視鏡的切除を施行し,併せて組織学的検索を施行した.
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西村 浩一, 老子 善康, 野田 隆, 卜部 健, 野ツ俣 和夫, 元雄 良治, 米島 学, 鵜浦 雅志, 小林 健一, 服部 信, 松井 ...
1988 年 30 巻 12 号 p.
3121-3124_1
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
食道静脈瘤の多くは,門脈圧亢進症あるいは上大静脈系の異常に基ずいて形成されるがこれとは別に,いずれの原因も認められない特発性食道静脈瘤が存在する.われわれは直接門脈圧を測定し得た特発性食道静脈瘤の1例を経験したので報告する. 症例は35歳の男性で,上腹部痛を認め当科初診し,内視鏡検査にて食道静脈瘤を指摘された.血液学的検査では肝機能検査を含めてすべて正常,腹腔鏡では大白色肝,肝生検では門脈域の軽度の線維化を認めるにすぎなかった.腹部血管造影では側副血行路は認められず,経皮経肝的直接門脈造影でも門脈像は正常であり,門脈圧も8cmと正常で門脈圧亢進は認められなかった。一方,胸部CTでは上大静脈系の異常は認められなかった. これまで本例の如く,直接門脈圧を測定し完全に門脈圧亢進症の存在を否定し得た特発性食道静脈瘤の例は報告されていない.
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藤本 秀明, 山中 昭良, 藤木 和彦, 武永 強, 山田 昌弘, 佐々部 正孝, 高清水 一善, 山本 信彦, 田村 裕子, 黒沢 弘之進 ...
1988 年 30 巻 12 号 p.
3127-3131_1
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
われわれは最近7年間に2例の食道fibrovascular polypを経験することができた.2例とも男性で,年齢は66歳と25歳,主訴はそれぞれ胸やけ,心窩部痛であった.部位は下部食道で,ポリープは7×6mm,6×5mm大でともに内視鏡的ポリペクトミーを行った.組織学的には,ポリープは正常な重層扁平上皮に被われており,粘膜下の線維成分と血管成分の増生が認められるStoutらの診断基準を満たすfibrovascular polypであった. 食道の良性腫瘍は稀な疾患とされており,その報告例もきわめて少数である.最近10年間に本邦で報告された食道fibrovascular polypはわれわれが調べた限りでは18例であり,海外での報告例も60例に満たない.
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木村 昌之, 林 伸行, 榊原 真肇, 斎藤 祐一郎, 堀内 洋, 稲垣 貴史, 森瀬 公友
1988 年 30 巻 12 号 p.
3132-3137_1
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
表層浸潤型のIgM-x産生胃形質細胞腫の1例を経験したので報告する.患者は60歳の女性で,感冒様症状から持続した嘔気を主訴に来院した.内視鏡検査,胃X線検査にて体上部から前庭部に広範な多発びらん,不整形小潰瘍を認め,生検にて胃悪性リンパ腫が疑われ,胃全摘術を施行した.組織学的には腫瘍は形質細胞の集簇からなっており,体上部から前庭部にかけての粘膜下層に広範な浸潤を認めた.酵素抗体間接法による免疫組織化学的検討では,腫瘍細胞はIgM,xchain陽性であった.胃形質細胞腫の本邦報告例は,1965年から1987年までに自験例を含め38例を認め,その中で5例が,表層浸潤型を示していた.従来のRemigioの分類では,これら5例は分類出来ず,浸潤度から考慮して表層浸潤型をRemigioの分類に加えて評価することを提唱した.
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中村 常哉, 林 繁和, 栗田 恭充, 古川 剛, 佐竹 立成, 中沢 三郎, 芳野 純治
1988 年 30 巻 12 号 p.
3138-3145
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
症例は51歳,男性.主訴は動悸,タール便.入院時検査所見で赤血球195万/mm
3,Hb4.9g/dlの高度貧血と総蛋白5.8g/d1の低蛋白血症を認めた.上部消化管レントゲン検査では胃体上部後壁に大きな半球状の隆起性病変を認め,隆起の表面には小顆粒の集簇した部分が認められた.上部消化管内視鏡検査では胃体上部後壁に正常粘膜に被われた大きな隆起性病変を認め,頂上付近に発赤した顆粒状の粘膜面を認めた.発赤部よりの生検は悪性所見は認められず,炎症性細胞の浸潤の所見であった.超音波内視鏡検査では腫瘍は胃粘膜下層から固有筋層に存在する低エコーの腫瘤像として描出され,腫瘤の内部には不整なcystic lesionが認められた.以上より,平滑筋肉腫と診断し,胃全摘術を施行した.腫瘍の大きさは65×55×50mm,表面は多くは正常粘膜に被われているが,頂上付近は発赤し,小~粗大顆粒状の粘膜を呈していた.HE染色では,腫瘍細胞は紡錘形で密に増生し,核の棚状配列が随所に認められた.酵素抗体法によるS100蛋白の染色では腫瘍細胞が褐色に染まっていた.以上の所見から本腫瘍をAntoni A型の神経鞘腫と診断した.腫瘍の粘膜面の発赤した顆粒状の部分では粘膜固有層内に,出血,浮腫,炎症性細胞の浸潤が認められ,腫瘍が粘膜筋板直下まで粘膜を圧排するように発育した結果,血行循環不全をきたしたことにより生じたものと考えられ,粘膜下腫瘍の表面形態として興味深い所見と思われる.
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―本邦報告例の集計を含めて―
野村 昌史, 奥山 修兒, 柴田 好, 辻 和之, 黒川 洋, 男澤 伸一, 小原 剛, 高井 幸裕, 原田 一道, 岡村 毅與志, 並木 ...
1988 年 30 巻 12 号 p.
3146-3156_1
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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潰瘍性大腸炎の発症から20年を経て早期直腸癌を合併した1例を経験したので報告する.症例は40歳男性,20歳のとき粘血下痢便と下腹部痛で発症し,潰瘍性大腸炎と診断された.当初は再燃・緩解を繰り返していたが,1978年からは慢性持続性となり,直腸炎型から全大腸炎型へと進展した.1987年5月に注腸X線検査および大腸内視鏡検査を施行したところ,直腸後壁に直径5.0cm大の2つの隆起性病変とその周囲に多数の扁平隆起が発見された.全大腸切除術後の病理組織学的検索では,隆起性病変は4つの腫瘍からなり,うち2つは中分化腺癌で深達度sm,残りは腺管絨毛腺腫と腺腫内癌であった.扁平隆起はdysplasiaであり,直腸からS状結腸にかけて全く平坦な粘膜内にもdysplasiaがみられた. 本症例は約2年間大腸内視鏡検査および注腸X線検査が施行されておらず,潰瘍性大腸炎の長期経過例における定期的surveillanceの必要性を感じた教訓的症例である.
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1988 年 30 巻 12 号 p.
3157-3331
発行日: 1988/12/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー