日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
41 巻, 11 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 木下 博明, 大杉 治司, 井上 清俊, 塚本 忠司, 田中 宏, 徳原 太豪
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2341-2349
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    近年,消化器における悪性狭窄の治療にステント療法が応用されている.このステントの種類にはプラスティック製のものと金属製のexpandable metallic stent (EMS)とに大別される.もともと動脈の狭窄性病変に対して開発されたEMSはその材質,材型の改良によって消化器の狭窄・閉塞に対しても広く応用されるようになった.すなわちEMSは静脈のみならず胆管,消化管,気管などの狭窄性病変にまでその適応を拡大している. これまでに教室において悪性胆道狭窄24例,良性狭窄2例,悪性食道狭窄34例,幽門狭窄1例,気管・気管支狭窄9例,悪性門脈狭窄4例,門脈圧亢進症3例の計77例にステント療法を行ったので,それら症例を中心にステント療法の成績と問題点を述べた. ステント療法は消化器における悪性狭窄・閉塞の開存性確保にすぐれた効果をもたす.しかしステント療法に良好な長期劾果を期待するためには局所制御に有効な併用療法を加えるとともにEMS長期留置の生体に及ぼす影響を検討することが必要である.
  • 片桐 正人
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2350-2357
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    著者の施設では,食道静脈瘤に対しO-ringを平均40個使用する撲滅結紮術を施行している.今回,撲滅結紮術前後に経皮経肝門脈造影(PTP)と超音波内視鏡(EUS)を施行し,治療前後の左胃静脈を中心とした供給路の血行動態の変化を検討した.治療前のPTPでは全例で左胃静脈より遠肝性に噴門静脈叢を経由し食道静脈瘤が造影された.左胃静脈後枝が噴門静脈叢の手前で分岐し傍食道静脈へ流出するものをType 1とすると13/20例(65%),傍食道静脈が噴門静脈叢を通るものをType 2とすると2/20例(10%),および左胃静脈前枝のみで後枝の造影されないものをType 3とすると5/20例(25%)であった(Figure 1).治療後のPTPでType別に血行動態の変化を検討した.Type 1で噴門静脈叢の手前まで造影されている症例は9/13例(70%)であり,Type 2,Type 3では左胃静脈基部まで造影されている症例はそれぞれ2/2例,および4/5例と良好な血行遮断効果を示し,Type 1では後枝が消失した症例は1例のみであった. EUSはType 1の10例で検討し,噴門部および胃食道接合部(EGJ)より5cm口側で,治療後の壁内血管は有意に減少し,壁外血管は有意な差を認めなかった.撲滅結紮法は静脈瘤の供血路の遮断効果があり,傍食道静脈に影響を及ぼさない治療法であると考えられた.
  • 永田 信二, 田中 信治, 春間 賢, 日山 亨, 北台 靖彦, 吉原 正治, 隅井 浩治, 梶山 梧朗, 嶋本 文雄, 平賀 裕子
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2358-2367
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    最大径10mm以下の小進行大腸癌9例を臨床病理学的に検討した.肉眼型を早期大腸癌に準じて分類すると,IIc型4例, IIa型2例,Is型3例であった.大腸内分布では, S状結腸に4例と最も多かったが,直腸には1例もみられなかった.深達度はmp6例,ss3例であった.発育様式は,NPGが8例で, PCR-SSCP法ではK-rasのpoint mutationを1例にも認めなかった.リンパ節転移はMw 2例,Mp 1例の計3例で陽性で,深達度別の脈管侵襲率,リンパ節転移率は最大径11mm以上の進行大腸癌と同様に,転移能が高く,最大径10mm以下の小進行大腸癌は単なる進行癌の小型病変ではなく,深部浸潤傾向の強い平坦陥凹型起源病変を多く含んでおり,その悪性度を反映する特殊な病変であると考えられた.また,最大径10mm以下の小進行大腸癌は,通常内視鏡観察で全例にヒダ集中を認め,pit pattern観察が可能であった7例は全例VN型のわずかに浅い陥凹面を有しており,術前sm-rnassive以深の深達度診断は可能であった
  • 伊井 和成, 平野 雅弘, 喜多嶋 和晃, 沖田 敬, 渡邊 泰樹, 月山 雅之, 秋月 真一郎, 津田 富康
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2368-2373
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性,嚥下困難を主訴に来院.上部消化管内視鏡検査で中部食道に,立ち上がり急峻な周堤を有した不整な潰瘍性病変を認めた.生検の結果,小細胞型未分化癌と診断された.既に大動脈周囲のリンパ節転移と肝転移を認めたため全身の化学療法を施行した.治療効果は有効であったが第79病日に死亡した.食道原発小細胞型未分化癌は本邦では約200例程報告されている.自験例を含め,その内視鏡所見を中心に臨床的特徴を検討した.腫瘍径の増大に伴って,粘膜下腫瘍様の形態をとる隆起型から立ち上がり急峻な周提を有する潰瘍限局型,さらに陥凹型,潰瘍浸潤型の形態をとる傾向にあった.
  • 上田 重彦, 松本 昌美, 安辰 一, 足立 聡, 奥 和美, 高木 正博, 吉川 正英, 福井 博
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2374-2381
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,男性.主訴は熱い飲食物摂取後の前胸部痛,嚥下障害.内視鏡検査で,食道全長にわたって浮腫と多発する浅い潰瘍性病変,さらに粘膜剥離を認め,剥離性食道炎と診断,下部食道の狭窄を合併していた.超音波内視鏡像では,全周性に壁肥厚と層構造の不明瞭化を認めた.H2プロッカーと粘膜保護剤の投与,また狭窄に対してバルーン拡張術を行い,自覚症状は著明に改善,治療後1および4カ月の内視鏡所見も改善した.
  • 渡辺 学, 谷川 佳世子, 石井 邦彦, 菅野 茂男
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2382-2387
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性.発熱,咳嗽を主訴に来院した.臨床的には食道癌が直接右胸腔に穿孔したために生じた膿気胸と診断した.抗菌薬投与,胸腔ドレナージにて全身状態改善後,内視鏡的にcovered self-expanding metallic stentを食道瘻孔部に挿入した.ステント留置後嚥下困難,嘔気などの消化器症状も消失し経口摂取可能となった.現在約7カ月を経過しているが膿気胸の再燃はなく経過は良好である.食道癌穿孔に対するステント治療は,患者のquality of lifeを高め,有効な治療法と思われた.
  • 中村 斉, 光藤 章二, 若林 直樹, 下村 哲也, 柿原 瑞穂, 山下 靖英, 児島 謙作, 時田 和彦, 瀧川 和彦, 加嶋 敬
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2388-2391
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の男性.サバを生食した翌日に胃部不快感を自覚し,4日後吐血にて当科入院.入院時の胃内視鏡検査では残渣多量のため明らかな出血点を確認出来ず,入院後の同検査で,胃穹窿部に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様隆起を認めた.その後,再度吐血し,内視鏡下の止血が困難なため,緊急手術を行い,病理検査でアニサキスの虫体を認め,アニサキス症と診断した.吐血で発症し,粘膜下腫瘍様隆起を呈した胃アニサキス症は稀である.
  • 永田 夏織, 村田 育夫, 久米 恵一郎, 芳川 一郎, 中野 重一, 平田 敬治, 伊藤 英明, 大槻 眞
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2392-2397
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は83歳の女性.左上腹部痛と腫瘤触知を主訴として来院.注腸造影で下行結腸に片側性,一部全周性狭窄を,大腸内視鏡検査では同部に不整狭窄を認めた.小腸X線,内視鏡検査では,空腸入口部に周堤を伴う潰瘍を認め,両病変の生検組織診は腺癌であった.画像診断上,空腸と下行結腸間に10cm大の腫瘍が認められ,原発巣の術前診断が困難であったが,手術標本の肉眼的,組織学的所見より腸管外発育を呈し空腸に浸潤した下行結腸原発癌と診断した.
  • 兒嶋 弘泰, 赤星 和也, 藤丸 竜哉, 近藤 淳, 古野 徹志, 近藤 信夫, 久保 茂, 原田 直彦
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2398-2402
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の女性.平成9年12月17日,タール便を主訴に当院を受診した.末梢血でHb7.29/dlと貧血が認められた.上部消化管内視鏡検査では,十二指腸下行脚の巨大な傍乳頭部憩窒内のびらんからの湧出性出血を確認した.内視鏡下にクリップ止血術を施行し止血を得た.十二指腸憩室出血は,本邦では自験例を含め67例の報告があるが,その内クリップ止血術による止血は3例(4.5%)のみである.
  • 砥石 政幸, 小出 直彦, 平栗 学, 西尾 秋人, 五十嵐 淳, 渡辺 洋行, 矢澤 和虎, 二村 好憲, 安達 亙, 天野 純, 中山 ...
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2403-2407
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    大腿平滑筋肉腫摘出2年9カ月後に多発性腸管転移を来した稀な症例を経験した.症例は58歳,男性である.1994年8月30日に右大腿平滑筋肉腫の摘出術,1997年6月9日に単発性肺転移に対し左肺下葉部分切除術を施行した.肺切除後タール便と貧血の進行が認められたため消化管の精査を行った.大腸内視鏡検査では盲腸から直腸に散在性に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,小腸造影検査でも上部空腸に約3cmの隆起性病変を2個認めた.大腿平滑筋肉腫の多発性腸管転移と診断し手術を施行した.術中内視鏡検査を併用し,術前指摘された大腸病変を確認し,腸管切開にて腫瘍切除を行い,また小腸では術前指摘されなかった病変をも確認して切除範囲を決定した.径3cmの小腸病変の1つにdelleを認め,今回の出血源と考えられた.下血は消失し退院が可能となったが,術後6カ月後,脳転移にて死亡した.
  • 宮川 明子, 中島 滋美, 安岡 貴志, 坂部 秀明, 松田 博, 藤山 佳秀, 馬場 忠雄
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2408-2412
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性.非寛解悪性リンパ腫に対し,etoposide内服治療中,腹痛・発熱・食欲不振・下痢・著明な低蛋白血症が出現.大腸内視鏡検査で,回腸に円形から不整形の多発小潰瘍を,上行結腸に数個の小潰瘍を認め,回腸潰瘍部生検組織に巨細胞封入体と抗サイトメガ「ロウイルス(CMV)抗体陽性細胞」を認めた.CMV腸炎と診断しganciclovirを投与,下痢と低蛋白血症は軽快したが,原疾患が悪化し死亡した.
  • 小沢 俊文, 長南 明道, 安藤 正夫, 三島 利之, 熱海 稔, 望月 福治
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2413-2419
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例はneurofibromatosis-1と診断された63歳の男性である.胃では胃角部にIIc型早期胃癌を認め,内視鏡的粘膜切除術を施行した.また,胃前庭部に表面平滑な隆起性病変を認め,生検では炎症性線維性ポリープに類似する所見であった.空腸には表面平滑な2個の隆起性病変を認めた.大腸では盲腸から横行結腸にかけて山田1型の立上がりを呈する隆起性病変が多発していた.大腸病変からの生検では神経線維腫であり,S-100蛋白陽性であった.本疾患では大腸に非上皮性腫瘍が多発することは極めて稀である.
  • 田端 晃博, 清水 泰夫, 畑山 充, 澤田 隆吾, 田中 肇
    1999 年 41 巻 11 号 p. 2420-2425
    発行日: 1999/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    悪性下部胆道閉塞の4症例に経皮経肝的にself-expandable metallic stent(以下EMS)挿入を試み,内視鏡下で位置決めを行い良好な結果を得たので報告する. 患者は全例男性で平均78歳,内訳は胆管癌2例,膵頭部癌2例.全例,経皮経肝的にドレナージ後EMSを留置した.今回使用したEMSはBoston Scientific社製のSymphonyTMとWallstentTMで,経皮経肝的に十二指腸内に挿入後,露出部分の長さを内視鏡で確認して留置した.4例とも重篤な合併症はなかった.従来の透視下での位置決めではEMSを長めに十二指腸内に露出させがちで,粘膜損傷や出血を起こす例もあったが,内視鏡下に位置決めをするという簡便な方法で,露出部分の微妙な調節が可能となり,安全にEMSが留置できた.本法により,EMSによる粘膜損傷や消化管出血などの術後合併症を減らせ得ると考えられた.
feedback
Top