日本消化器内視鏡学会雑誌
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55 巻, 9 号
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総説
  • 岡田 裕之, 吉野 正, 品川 克至, 山本 和秀
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3067-3078
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    マントル細胞リンパ腫(MCL)はリンパ濾胞のマントル層を構成するB細胞性リンパ腫である.免疫組織学的検査ではCD5陽性,CD10陰性およびcyclin D1陽性を示し確定診断に有用である.遺伝子異常としてはt(11;14)(q13;q32)転座がある.約75%が診断時にすでにIII/IV期の進行期であると報告されており,消化管浸潤は高率に認められる.本邦における消化管浸潤71例のレビューでは約68%が診断時にすでにIV期であった.消化管病変では胃病変が2/3を占め,結腸病変も2/5に認められ,一方,食道病変は稀であった(4例).胃病変は多様であり,腫瘤型,潰瘍型,雛襞腫大,そしてmultiple lymphomatous polyposis(MLP)を呈するものもあり,一方,十二指腸から大腸にかけてはMLPとして認められる場合が多かった.
    MCLの予後はB細胞性リンパ腫のなかでも不良であり,生存率の中央値は48-68カ月と報告されている.通常のCHOP(cyclophospamide, doxorubicin, vincristine, and prednisone)療法,あるいはrituximab併用CHOPの治療強度を高めるためにhyper-CVAD/MA(cyclophosphamide, vincristine, doxorubicin, dexamethasoneによる化学療法とmethotrexate, cytarabineによる化学療法の交替療法)が考案され,長期生存がみられている.また,本治療後に自己末梢血幹細胞移植併用の大量化学療法を行うことにより,完全寛解率,無再発生存率が向上することが報告されている.
原著
  • 岡野 均, 小西 英幸, 福本 晃平, 堀江 秀樹, 冨樫 弘一, 福井 康雄, 光藤 章二, 吉川 敏一
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3079-3084
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    背景・目的:われわれは,胃瘻カテーテル交換の際,カテーテル内腔より細径硬性鏡を用いた胃内観察の有用性と安全性を報告した.今回,直視型と斜視型の二種類の硬性鏡を用いて,本法の安全性を再確認し,両者を比較・検討した.方法:使用した硬性鏡は,ニスコ社製直視型E02700および斜視型E02770である.胃瘻カテーテル交換前後に胃内観察を行い,操作性,ガイドワイヤ確認,胃粘膜の視認,バンパー確認,バンパー周囲粘膜の視認,瘻孔観察の6項目について検討した.結果:対象の30例全例で,いずれの硬性鏡でも胃内観察が可能で,安全かつ確実にカテーテルが交換できた.直視型は瘻孔内観察とガイドワイヤのバンパー内通過の確認に,斜視型はバンパーの隙間を通した周囲粘膜の観察に優れていた.結論:胃瘻カテーテル内腔を通しての硬性鏡による胃内観察は安全かつ有用で,なかでも直視型が,その汎用性から優れていると考えられた.
  • 中路 聡, 平田 信人, 土屋 寧子, 山内 健司, 小林 正佳, 白鳥 俊康, 平井 満, 角 一弥, 岩木 宏介, 稲瀬 誠実, 玉置 ...
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3085-3094
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    「背景・目的」亜型分類までの悪性リンパ腫の診断においてEUS-FNAの有用性は確立されていない現状であり,当院におけるEUS-FNAを用いた悪性リンパ腫診断について検証した.「方法」2008年2月から2012年5月までの期間に悪性リンパ腫と診断された症例の内EUS-FNAを施行された50例を対象とし後ろ向きに検証した.他部位から組織を得ていた27例に対し亜型分類診断の一致率を検討した.また,EUS-FNAにおけるMFCM,G-banding,FISH,Southern blottingの解析率を検証した.「結果」他部位診断とEUS-FNA診断の一致率は100%であった.MFCMは87.2%,Southern blottingは87.0%,G-bandingは57.6%,FISHは85.3%で解析可能であった.「結論」悪性リンパ腫の診断は細胞表面マーカー・免疫組織化学染色・染色体検査・遺伝子検査を総合的に判断することでEUS-FNAの少ない検体量でもその診断に迫ることが可能であった.安全かつ低侵襲な検査法として従来の開腹または経皮的生検に代わりうる可能性がある.
症例
  • 紺野 直紀, 石幡 良一, 高住 美香, 渡辺 研也, 高野 真, 猪狩 弘之, 内海 康文, 引地 拓人, 小原 勝敏, 大平 弘正
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3095-3101
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代,女性.胃体中部大弯前壁側の3cm大の深達度Mの0-IIc型分化型腺癌と診断され,ESDを施行された.病理組織は,深達度Mの高分化型腺癌で治癒切除であり,免疫染色の結果から胃型分化型腺癌と診断された.また,鏡検法,血清Helicobacter. pyloriH. pylori)抗体,尿素呼気試験いずれも陰性であり,H. pylori除菌歴もなく,H. pylori未感染と考えられた.ESDで治療し得たH. pylori陰性の胃型分化型腺癌の稀な1例を経験した.
  • 大林 倫子, 富永 和作, 福永 周生, 永見 康明, 杉森 聖司, 谷川 徹也, 斯波 将次, 渡辺 俊雄, 藤原 靖弘, 荒川 哲男
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3102-3108
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性.腹部膨満感を主訴に近医を受診,上部消化管内視鏡検査(EGD)による胃粘膜生検にて非乾酪性肉芽腫性病変を認めた.全身精査にて胃サルコイドーシスと診断した.翌年経過観察のEGDにて胃体下部から体上部小弯にかけて出血を伴う多数の粘膜裂創を認め同日緊急入院となった.絶食後3日目のEGDにて粘膜裂創は治癒傾向であった.消化管サルコイドーシス患者の内視鏡操作は粘膜の脆弱性を考慮することが重要であると思われた.
  • 馬場 洋一郎, 齊藤 知規, 向 克巳, 岡野 宏, 佐瀬 友博, 松崎 晋平, 田中 宏樹, 磯野 功明, 石原 禎子, 渡辺 玄
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3109-3115
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    症例は59歳女性.健診での上部消化管内視鏡検査において,胃体下部前壁に4mmの0-IIb型印環細胞癌を指摘された.病変は周囲粘膜に比し淡褪色を示す類円形病変として特徴的な肉眼像を呈していた.鉗子生検後,病変確認困難となったがNBI併用拡大内視鏡観察により病変を再度確認することができた.ESDが施行され,2年6カ月経過したが再発は認めていない.本症例は印環細胞癌であり,稀な疾患ではないが,その微小病変の報告は極めて少ない.今回,われわれは印環細胞癌の初期病変の一つと考えられる微小病変を内視鏡的に観察し得たためここに報告した.
  • 門 輝, 大島 忠, 水口 靖文, 岡野 尚弘, 熊谷 純一郎, 鎮西 亮, 塩屋 雄史, 笹島 圭太, 高屋 俊樹, 甲嶋 洋平
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3116-3122
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の男性.アルコール性の慢性膵炎にて通院中だった.入院数日前より心窩部痛が出現し,軽快しないため緊急入院となった.血液検査で肝胆道系酵素とアミラーゼの上昇を認め,腹部造影CT検査では膵仮性嚢胞と嚢胞内の動脈瘤を認めた.また膵内胆管の狭窄とその上流の拡張も認められた.動脈瘤に対して経カテーテル的コイル塞栓術を施行して,引き続き閉塞性黄疸に対してPercutaneous Transhepatic Biliary Drainage(以下PTBD)を施行した.後日のERCPで膵頭部主膵管と膵内胆管に狭窄を認めた.選択的膵管造影により瘻孔を介して胆管が描出され,胆管膵管瘻と診断した.胆管と膵管にステントを留置し,外来で1~2カ月ごとにステント交換を繰り返した.発症13カ月後には胆管膵管両方の狭窄が改善し,胆管膵管瘻を認めなくなったため,ステントを抜去した.半年経った現在でも再発なく経過している.内視鏡的ステント留置により胆管膵管瘻が閉鎖した稀な症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 小泉 一也, 河本 徹, 杉山 祥晃, 高橋 慶太郎, 藤林 周吾, 野村 好紀, 後藤 拓磨, 笹島 順平, 藤谷 幹浩, 高後 裕
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3123-3129
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,女性.膵癌に対する膵頭十二指腸切除術IIA再建後に胆管空腸吻合部から肝門部にかけての再発による閉塞性黄疸を発症した.ダブルバルーン小腸内視鏡(Double balloon enteroscopy;DBE)を用いることで,再発部の組織学的評価,胆管造影による狭窄の確認のみならず,吻合部をまたいで金属ステント(Metallic stent;MS)を肝門部に複数本留置することが可能であり,術後良好な減黄が得られた.一般に,DBEを用いて胆管造影を行う場合には挿管が困難なことや,特に胆管吻合部癌浸潤例などでは開口部の確認さえも困難なことがあるが,本例のように狭窄した吻合部をまたぐようにMSを留置すると大開口が得られ,次のアプローチが容易となる.これにより閉塞した際の再処置が容易になるばかりでなく,ステント内から他の枝へアプローチすることで複数枝のドレナージが容易になる場合がある.
  • 吹田 洋將, 浅木 努史, 豊水 道史, 足立 清太郎, 安田 伊久磨, 片倉 芳樹, 千葉 佐和子
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3130-3136
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,女性.主訴は下腹部痛.81歳時に肺塞栓症ありワーファリン内服中であった.今回突然の下腹部痛あり受診.下腹部に軽度圧痛を認めるも腹膜刺激症状は認めず.入院2時間後に血便が出現したため緊急内視鏡検査を施行.直腸に巨大な深掘れ潰瘍様の陥凹を認め,陥凹底には腸間膜の組織が観察された.内視鏡的止血は困難と判断し,外科的治療が施行された.手術で直腸S状部の腸間膜側に大きさ3cmの穿通を認め,病理所見では憩室穿通が示唆された.結腸直腸の腸間膜や後腹膜への穿通症例では,診断に注意が必要であると考えられた.またショック症状を呈する程の大量出血を来した症例は稀である.
経験
  • 冨永 直之, 樋口 徹, 山口 太輔, 宮原 貢一, 緒方 伸一, 梶原 哲郎
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3137-3141
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    食道のESD後の狭窄予防として,近年ではステロイド内服が使用されつつあるが,副作用の危惧から,糖尿病・ウイルス性肝炎などの患者は除外されている.
    ブデソニドはアンテドラッグステロイドで,局所での抗炎症反応効果が高く,全身作用が極めて低いとされているため,従来は除外されてきた症例の対象拡大が期待できる.内服であり,投薬も簡便である.今回われわれは,ブデソニドを用いて狭窄予防を試みた,食道2/3周以上剥離した5例について検討を行った.
    全周剥離症例に対しては効果不十分であるが,現在のところ4/5周までは狭窄予防できている.症例を重ね,今後も更なる検討を行う予定である.
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手技の解説
  • 川口 義明, 小川 真実, 丸野 敦子, 峯 徹哉
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3144-3159
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    様々な胆膵疾患に対する内視鏡的診断・治療は近年目覚しい進歩を遂げている.一方で膵管への侵襲ある処置は慎むべきという立場もあり,内視鏡的膵管アプローチの治療を敬遠してきた施設も少なくない.しかしながら,経乳頭的な内視鏡的アプローチが劇的に奏功する膵疾患も少なくないのが現状である.本年4月から内視鏡的膵管ステント留置術が保険収載され,低侵襲な方法として普及しつつあるがいくつかの問題点がある.膵管ステントを留置する前に,膵管狭窄病変の良悪性診断を行うことが重要であり,安易な膵管ステント留置は厳禁である.またステント留置に伴った偶発症を十分理解する必要がある.膵管ステント留置は,その適応,留置期間,留置ステントの形状や口径など課題の多い手技ではあるが,膵疾患の症状コントロール,予防に非常に有用である.
  • 江副 康正, 青山 育雄, 武藤 学
    2013 年 55 巻 9 号 p. 3160-3166
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/28
    ジャーナル フリー
    食道癌に対する各種治療後に発生する良性狭窄は,嚥下障害を来し患者のQOLを著しく低下させるため,治療後も患者とその家族に肉体的・精神的苦痛を与える重要な問題である.食道良性狭窄に対する一般的な対処法は内視鏡的バルーン拡張術(endoscopic balloon dilation:EBD)であるが,EBD抵抗性の難治性狭窄に対する有効な治療は存在しないのが現状である.
    われわれは,難治性食道良性狭窄に対する新しい狭窄解除術として,狭窄部の瘢痕組織をInsulation Tip(IT)Knifeを用いて切除するradial incision and cutting method(RIC法)を開発した.その方法をわかりやすく紹介すると共に,有効性・安全性のデータも提示し,RIC法の今後の課題についても考察する.
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