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長谷川 かをり
1982 年 24 巻 6 号 p.
865-872
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
過去10年間の大腸癌に対するコロノスコピーを検討し,その適応と問題点を考察した. コロノスコピーではスコープが病変に到達しさえすれば特別なものを除いて確実に癌の診断を下しうる.左側大腸癌では高率に癌に到達したが,右側大腸癌では病変への到達率が良くなかった.この点からもtotal colonoscopyが大腸癌のスクリーニング法としては必ずしも最高のものではないといえる.大腸癌に対するコロノスコピーの適応は,注腸X線検査で質的診断のできない症例,注腸X線検査で異常がないが血便などの臨床症状が続く症例に対してである.更に40歳以上の血便を主訴とする患者のできるだけ多くに対し,最初から脾彎曲部までのコロノスコピーを行なうことが大腸癌発見に重要である. 右側大腸癌に対する内視鏡挿入率の良くない原因として,腹膜播種,癌によるS状結腸,横行結腸の可動性の制限,腹壁への癌の浸潤,などが要因となっていることが推測された.この様なlimited colonoscopyの症例や,出血源の明らかではない症例に対しては注腸X線検査を行なう.
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平山 洋二, 丹羽 寛文, 三木 一正, 木村 正儀, 張 景明, 半井 英夫
1982 年 24 巻 6 号 p.
873-877
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
水素ガスクリアランス法による胃粘膜血流測定用針電極は,測定時の先端の位置が常に問題とされて来た.今回われわれは,長さの異なる2本の針からなり,二層を同時に測定できる電極を作成した.2本の針の長さは1.5mmの差があり,長い方の針電極を粘膜面から2mm刺入させると、短い方の針電極は粘膜面から0.5mm内外に位置し,後者によって得られた水素ガスクリアランスカーブは粘膜血流を反映することになる.本電極を用い,顕著な胃病変のない8例で胃血流測定を試みた.症例によって値にばらつきがあっても,同一症例においては幽門前庭部,胃体部とも深さの異なる2点での測定値間に有意の差がみられなかった.また,全例胃体部血流量は幽門前庭部に比べ多い傾向が認められた.従来の針電極はその先端の位置に多少のずれがあっても,その成績には影響がなく,胃粘膜血流量を反映するクリアランスカーブが得られることが判明した.
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林 繁和, 江間 幸雄, 市川 和男, 小林 英治, 小池 光正, 中村 常哉
1982 年 24 巻 6 号 p.
878-883_1
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
最近2年6カ月間に下部消化管出血に対して出血後72時間以内に施行した緊急大腸内視鏡検査を54例経験した.前処置は46例は微温湯による高圧浣腸を,8例は下剤投与を行なった.疾患別頻度は薬剤性大腸炎15例27.7%,分類不能の出血性大腸炎8例14.8%,虚血性大腸炎5例9.3%,感染性腸炎4例7.4%などで,急性大腸疾患が数多く診断された.これらの疾患は経過が速く,検査がおくれると出血源が不明となることが多いので緊急に内視鏡を施行する意義は大きい.出血部位の検討では直腸鏡の到達範囲を越えるものが多く,深部大腸にも相当みられるので,緊急大腸内視鏡検査に際しては回盲部まで観察可能な器種を用い,出血源を確認するまで深部大腸を観察することが診断率を高めるのに重要である.本検査は早期診断,治療方針の決定にはもちろん急性腸病変の病態解明にも極めて有意義であり,慎重に行なえば安全に施行できるので,今後積極的に行われるべきと考える.
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小田 正隆, 児玉 隆浩, 江崎 隆朗, 相部 剛, 坪田 若子, 安藤 啓次郎, 沼 義則, 渡辺 精四郎, 野田 健一, 福本 陽平, ...
1982 年 24 巻 6 号 p.
884-893
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
腹腔鏡検査において,肝表面の照診範囲に限界があることを,われわれも既に報告してきた.また画診断の中でも,近年,特に目ざましい進歩をとげている腹部超音波検査法(以下US)にも盲点があることが知られている.これらの盲点を互いに補うために今回,われわれは,町田製作所ならびに東芝メディカル株式会社の開発した超音波腹腔鏡をはじめて試用した.本機の特徴として,(1)リニア型電子スキャン方式,(2)前方直視型,(3)flexible fiberscopeの内蔵,(4)パニング方式があげられる.これらの特徴をもつため,従来体外操作によるUSでは描出が困難といわれている横隔膜下病変に対しても描出が可能となった.また,体外操作でえられるエコー像に比較してその解像力は,はるかに向上した. このように,本機は,腹腔鏡検査の盲点であった肝内病変の診断能を高めるばかりでなく,腹腔鏡下で探触子の接触可能な臓器への応用も考えられ,腹部臓器診断に関して有用な器機と思われる.
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久山 泰, 林 正孝, 大草 敏史, 西浦 政代, 玉城 信明, 別所 博子, 中村 理恵子, 岡田 弘, 岡本 真郎, 桃井 宏直
1982 年 24 巻 6 号 p.
894-901
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
最近,レーザー内視鏡の基礎的研究,および臨床への応用が注目され,消化管出血に対する止血効果は勿論のこと,胃隆起性病変に対する治療効果に関しても報告がなされている.われわれも従来は高周波ポリペクトミーを施行していたが,1980年11月より,早期胃癌2例,胃adenoma 1例と胃ポリープ24例の計27例の隆起性病変に対して,YAGレーザー治療を試みた.レーザーはフランスALM社製,YAG Medical 100を使用した.本治療法による偶発症は一例も経験していない.レーザー内視鏡治療の利点は止血対策をしながら必要に応じて何度でも追加治療ができる点であるが,反面,ポリープにおいては茎が太いもの,大きいものでは切断,焼灼に時間がかかり,高周波ポリペクトミーの方が簡単であると考えられる.したがってポリープのうち小ポリープや,その多発例がレーザー治療の適応と考えられる.早期胃癌の1例は手術拒否例であり,レーザー治療後の生検も3カ月経過後も陰性であり,さらに経過観察中である.早期癌においては,何らかの併存疾患による手術不能例や,拒否例では,今後レーザー治療が有効な治療法と考えられる.
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―右側大腸内圧及び形態学的検討―
杉原 健一, 武藤 徹一郎, 沢田 俊夫, 小西 文雄, 上谷 潤二郎, 森岡 恭彦
1982 年 24 巻 6 号 p.
902-910
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
大腸内視鏡を用いてMikro-Tipトランスデューサーを上行結腸内に留置し,上行結腸内圧を測定した.対象は正常例7例,多発性右側大腸憩室症10例である.安静時,憩室群は正常群に比べ高い運動指数を有したが有意差はなかった.Vagostigmin 0.5mg静注後,憩室群の運動指数は正常群の5倍で有意に高い値を示し,正常群には極めて少ない50mmHg以上の波が多発した.これは憩室群の上行結腸の運動亢進及び腸管内圧の上昇を示していると考えられる.また右側大腸憩室症15例の切除標本の組織学的検索では48個の憩室はすべて仮性憩室であり,切除標本のマイクロアンギオグラフィーでは動脈が憩室を乗り越えて走っている像が観察された.これらの結果は欧米での左側大腸憩室症における生理的並びに組織学的異常と類似しており,右側大腸憩室症の発生には腸運動異常による腸管内圧上昇が重要な役割を演じていると考えられる.
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船富 亨, 三室 淳, 土谷 幸弘, 桜井 幸弘, 北村 明, 池上 文詔, 多賀須 幸男
1982 年 24 巻 6 号 p.
911-921
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
29歳男性が発熱を伴った心窩部痛,胸骨下端痛を主訴に入院.発症後2日目の内視鏡検査で食道潰瘍と小胃潰瘍がみられた.発症8日後の透視によってはじめてバリウムの縦隔内への漏出を発見しBoerhaaves syndromeと診断された.抗生物質の静注と制酸剤の経口投与のみで外科的処置は行わなかった.内視鏡検査は19日目,42日目にくりかえし行われたが,最後の内視鏡所見では瘢痕すらみられなかった. 本邦では現在迄117例のBoerhaaves syndromeが報告されているが,そのうち,22例が内視鏡的観察を行っている.22例中8例(36%)は外科的処置なしに治癒し,外科的処置をした14例のうち4例は死亡している.Boerhaaves syndromeの救命的な治療のためには発症後24時間内に診断する必要がある.早期に注意深く内視鏡を行い破裂の位置,大きさを確めることの意義と安全性を強調した.
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谷口 徹志, 神津 照雄, 高橋 敏信, 荻野 幸伸, 谷 ロベルト・ダニエル, 円山 正博, 山崎 義和, 久賀 克也, 小野田 昌一, ...
1982 年 24 巻 6 号 p.
922-929_1
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
下部食道手術後,最短4年7カ月,最長14年8カ月の長期経過例にBarrett様上皮の発生を5例経験:した.年齢は33歳より75歳,性別は男性1人,女性4人である.原疾患は,胃癌3例,アカラジア2例であり,手術術式は胃全摘β吻合術3例,胃弁移植術2例であった.胃全摘例では,Barrett様上皮は吻合部より,それぞれ8cm,6cm,4cm口側まで見られ,胃弁移植術例では,Barrett様上皮はgastric patch先端より2cm,1cm口側まで見られ,5例全例に食道炎を併発していた.内科的治療により,生検で胃噴門型を示した症例にBarrett様上皮の退縮が確認された.Barrett上皮の腺癌発生が高率な点よりも,下部食道手術後症例においても,5年以上,あるいは10数年にわたる長期経過観察が必要である.
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和田 英利, 秋山 俊夫, 井本 一郎, 南 昭治, 岸本 幸彦, 宮地 一馬
1982 年 24 巻 6 号 p.
930-937
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
高ガストリン血症,高ヒスタミン血症随伴胃カルチノイドと原発性胆汁性肝硬変を合併した1症例を経験したので報告する.患者は56歳,女性で昭和51年悪心を訴えて,三重大学第3内科を受診し,肝機能検査値異常を指摘され,胃X線検査,胃内視鏡で胃体上部前壁に山田III型隆起性病変を認めた.4年間過形成性ポリープとして経過観察され,昭和55年11月に内視鏡的ポリペクトミーで胃カルチノイドと確診された.切除胃では他に4個の小カルチノイド病変と数カ所に好銀性細胞の過形成を認めた.銀還元性反応陰性・好銀性反応陽性であった.血中ホルモン検査ではガストリン,ヒスタミンが高値であり,術後正常化した・生化学検査では,ALP,T-choが高値であり,抗ミトコンドリア抗体陽性であった。外科的生検肝で原発性胆汁性肝硬変と診断された.高ガストリン血症,高ヒスタミン血症随伴胃カルチノイドと原発性胆汁性肝硬変の合併例の報告はなく,興味ある症例と考え報告した。
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加藤 修, 湯浅 友代, 館野 文美雄, 倉下 隆, 鈴木 孝, 服部 和彦
1982 年 24 巻 6 号 p.
938-941_1
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
直接浸潤を除く消化管への転移性癌は稀である.症例は59歳の女性で,直視型内視鏡検査にて,食道・胃転移癌を生前に発見し得たものである.上部消化管X線検査では疣状胃炎を疑わしめる所見をみ,内視鏡検査にて中心陥凹を有する扁平隆起性病変が中部食道に1個,胃に数個観察された.これらの病変部よりの生検にて印環細胞癌が証明され,内視鏡所見より食道・胃への転移癌と診断したが生前に原発巣の同定はできなかった.剖検にて胆嚢癌が原発巣であると考えられた.一方,食道・胃の病変は主に粘膜下層に印環細胞癌の集簇がみられ,その1部が粘膜固有層に浸潤していた.胃転移癌はX線・内視鏡的に特徴ある所見を呈するが,他の病変との鑑別には生検が不可欠である.また本例の如き直接浸潤ではない食道転移癌も同様に他の食道疾患との鑑別に生検が有効であることは論を待たない.
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武田 正彦, 矢部 英幸, 花房 英二, 河内 文子, 国近 啓三, 三島 邦基, 原田 英雄, 木村 郁郎
1982 年 24 巻 6 号 p.
942-948_1
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
近年,各種画像診断法の普及に伴い膵胆道系の早期癌と思われる報告が増加しつつあるが,未だ十分とは云い難い.われわれは最近3例のいわゆる早期胆嚢癌を経験したので報告するとともに,診断過程を振り返る事により胆嚢癌の早期診断へのアプローチの方法を検討した. 症例(1)は78歳の女性で,発熱・右季肋部痛・黄疸の胆石様症状で発症し,ERCPで胆嚢癌と診断した.術後,癌は粘膜内に限局している事が確認され,胆石様症状は凝血壊死塊によると考えられた.症例(2)は58歳男性で,心窩部痛と食欲不振の原因検索中に腹部超音波検査(US)で胆嚢体部の狭窄と腫瘤を発見しERCPにて癌の確定診断を得た.癌の浸潤はわずかにsmに及んでいた.症例(3)は43歳男性.心窩部痛と体重減少の精査中にUSで胆嚢内に結石と腫瘤の存在を認めERCPにて確診を得た.術後,癌の浸潤はわずかにpmに及んでいた. 3例とも転移は全く認められず,いわゆる早期胆嚢癌と考えられた.診断過程ではUSが癌発見の糸口となり,ERCPで確定診断を得る事ができた.
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内田 善仁, 渡辺 正俊, 河野 裕, 藤川 佳範, 野村 幸治, 宮原 妙子, 青山 栄, 小田原 満, 針間 喬, 藤田 潔, 竹本 忠 ...
1982 年 24 巻 6 号 p.
949-954_1
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
アフタ様びらんとタコイボ状病変,それに両者の移行型とも考えられるような潰瘍性病変など,多彩な内視鏡所見を示したアメーバ性大腸炎の1症例を呈示した.そして,アメーバ性大腸炎における内視鏡所見について,文献的考察を加えた. アメーバ性大腸炎の内視鏡所見は多様であり,また,特徴的な所見もないので,アメーバ性大腸炎の内視鏡診断は困難である.したがって,大腸炎症性疾患に遭遇したときには,常に本症の可能性も念頭におき,慎重に対処する必要がある.
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大島 博
1982 年 24 巻 6 号 p.
957-962
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
これまでわが国の消化器内視鏡学の発展は著しかった.今後もそれが一層進展し,世界をリードし続けなくてはならない.そのためにも,またますます専門化するこの領域の診療,研究,教育の立場からも,内視鏡部が臨床上の一診療単位として独立することが望まれている.1980年には,日本消化器内視鏡学会に内視鏡設置委員会が設けられ,それが促進されようとしている. 著者は10数年間西ドイツで勤務した経験があるため,最近のヨーロッパにおける内視鏡部の実情を調査してみた.ヨーロッパ諸国においても,内視鏡学は近年ますます発展しつつあるが,今回調査した13力国のうち,西ドイツ,イタリア,ハンガリーには,すでに独立した内視鏡科が存在していた.他施設においても,内視鏡部の構成人員等から,ヨーロッパでは今後急速に,独立した内視鏡科の増加する気運にあることが認められた.
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1982 年 24 巻 6 号 p.
963-967
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
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1982 年 24 巻 6 号 p.
967-978
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
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1982 年 24 巻 6 号 p.
979-1005
発行日: 1982/06/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー