自己免疫性膵炎(AIP)は,びまん性の膵腫大と主膵管の不整狭細像を特徴とする.AIPにしばしば合併するIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)は,胆管の狭窄を呈する.したがって,AIPは膵癌と,IgG4-SCは胆管癌や原発性硬化性胆管炎と鑑別することが重要である.内視鏡検査は,主膵管の狭細像や胆管の狭窄像を描出し,病理組織学的診断における組織標本を採取できるため,AIPとIgG4-SCの診断における中心的な役割を担っている.内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)による膵管のびまん性不整狭細像は,AIPに特徴的であり診断も比較的容易であるが,限局的な主膵管狭細像を呈するAIPと主膵管の途絶像を呈する膵癌を鑑別することは難しい.尾側の膵管拡張を伴わない主膵管全長の1/3より長い狭細像がERCPにおけるAIPの膵管像の特徴である.限局的な狭窄や下部胆管の狭窄,狭窄より肝側の拡張を伴う長い狭窄といった胆管像の所見は,胆管癌よりIgG4-SCに認められることが多い.ERCPに引き続いて行われる管腔内超音波検査による胆管壁の所見は,IgG4-SCと胆管癌の鑑別に有用である.超音波内視鏡検査(EUS)では,膵臓はびまん性の低エコー腫大を示す.また,Elastographyや造影EUSなど近年開発された新規診断法による診断能の向上が期待されている.さらに,EUSガイド下穿刺吸引法を用いたAIPの組織学的診断の有用性が報告されている.内視鏡検査と機器のさらなる発展により,AIPおよびIgG4-SCの診断能の向上が期待される.
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