日本消化器内視鏡学会雑誌
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58 巻, 5 号
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総説
  • 久津見 弘, 吉中 勇人, 坪井 博史, 川島 弓枝
    2016 年 58 巻 5 号 p. 1035-1043
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    最近,日本の臨床研究の信頼性を損ねるような事件が相次ぎ明るみになり,倫理指針が改定され,産業界からも産学連携の在り方についての声明が出された.臨床研究を実施するに当たり,その研究は科学的妥当性,倫理性が担保される必要がある.そのために,研究者は臨床研究に関する研修を受ける必要があり,被験者保護,利益相反の管理,データの信頼性の担保に努めなければならない.また,質の良い臨床研究を推進するには,臨床研究を支援する体制整備が必要となる.研究者は研究遂行には被験者の善意に基づく協力があることを決して忘れてはならない.
症例
  • 木山 輝郎, 塩澤 邦久, 金島 研大, 澤 宗寛, 玉木 雅子, 多田 祐輔, 藤田 竜一, 村田 順, 吉野 守彦, 河合 俊明
    2016 年 58 巻 5 号 p. 1044-1049
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は59歳男性.脱力感,腹痛のため当院に入院した.38年前に虫垂切除,腸閉塞手術の既往がある.貧血のため大腸内視鏡検査が行われ,横行結腸に多発潰瘍と長軸方向に並ぶ瘻孔を2カ所みとめた.注腸造影では横行結腸の内腔拡張と瘻孔開口部から拡張した回腸と収縮する回腸が造影された.回腸横行結腸吻合による盲係蹄症候群の診断にて開腹手術を行った.側々吻合部を切除し,短絡の解除を行った.回腸横行結腸吻合部の回腸近位側および遠位側は輪状狭窄し,組織学的に吻合部回腸には粘膜のびらんと急性腹膜炎をみとめた.小腸結腸短絡による盲係蹄症候群は短絡解除の手術適応となるため回腸狭窄など内視鏡診断が重要である.
  • 鄭 哲臣, 石田 紹敬, 井上 香織, 金政 秀俊, 辰巳 陽一
    2016 年 58 巻 5 号 p. 1050-1055
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.2週間前から続く発熱と下腹部痛を訴え当院を受診した.身体所見では,下腹部に圧痛を認めた.血液検査で白血球,CRPの上昇,腹部CT検査でS状結腸から直腸にかけてびまん性の壁肥厚を認めた.入院にて下部消化管内視鏡検査を施行したところ直腸からS状結腸にかけて粘膜浮腫と多発する白色点を認めた.白色点からの生検時に膿の排出を確認した.また,直腸の暗赤色調粘膜から膿の自然排出を認めた.以上より蜂窩織炎性大腸炎と診断した.抗生物質投与により軽快し第27病日に退院となった.本症は稀な疾患で症例報告は少なく,内視鏡所見も興味深く貴重な症例を経験した.
  • 虻江 誠, 塚本 啓祐, 宮崎 武文, 及川 智之, 相澤 宏樹, 内海 潔, 野口 哲也, 鈴木 眞一
    2016 年 58 巻 5 号 p. 1056-1062
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した.術後約4カ月後に肝胆道系酵素の上昇と肝内胆管拡張および胆泥所見を認め,バルーン内視鏡で確認したところ,胆管空腸吻合部にpinhole状の高度な狭窄を認めた.ガイドワイヤーを通過させた後,拡張デバイスの通過が困難であったため,6Fr通電ダイレーターで狭窄部を突破し,その後の処置を完遂した.狭窄部突破における通電ダイレーターの使用は安全性が確立されておらず,現時点で推奨される方法ではないが,短時間に施行可能で十分な拡張効果を有することから,内視鏡操作が限られる特殊な状況下においては,選択肢の一つと考えられた.
  • 山端 朋子, 辰巳 菜津子, 荻田 和幸, 鳥井 貴司, 辻 和宏, 伴 尚美, 前田 利郎, 丸山 恭平, 伊藤 義人
    2016 年 58 巻 5 号 p. 1063-1068
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    症例は89歳男性,1週間前からの嘔吐と食欲不振を主訴に来院し入院となった.血液検査で貧血の進行を認めたため上部消化管内視鏡検査を行ったところ,十二指腸球部に広汎に潰瘍性病変があり,径30mmの結石がはまり込んでいる状態であった.6年前の腹部CTと見比べると,胆嚢内にあった結石が十二指腸球部に移動し嵌頓している可能性が高いと考えられた.内視鏡下に結石をスネアや胆石用砕石鉗子を用いて除去した.結石除去後のCT検査で胆嚢十二指腸瘻が疑われ,更にガストログラフィン造影検査で十二指腸結腸瘻を認めたことから,十二指腸結腸瘻を合併したBouveret症候群であると診断した.内視鏡的治療が有用であると考えられたため報告する.
経験
  • 高田 昌史, 上田 弘, 石川 洋一, 永田 友梨, 矢野 有佳里, 沖 裕昌, 宮本 敬子, 川村 昌史, 澤田 晴生
    2016 年 58 巻 5 号 p. 1069-1074
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    われわれは通常の処置具では摘出不能の巨大柿胃石に対し,ガイドワイヤーを用いた自作砕石器による内視鏡的摘出法:ELG(Endoscopic Lithotripsy using a Guidewire)法を考案した.自作砕石器は2チャンネルスコープを用い,2本の高周波スネアのシースと胆道用ガイドワイヤーを通して作成した.2例の巨大柿胃石に対して使用し,多分割に分断しすべてを体外に回収しえた.ELG法は通常用いる内視鏡処置具で容易に作成可能,スネアサイズを自在に設定可能,スネアリングが容易,破砕力が強い,スネアリング後嵌頓する危険性がないなどのメリットがある.
手技の解説
  • 大圃 研, 港 洋平, 里舘 均, 山崎 公靖, 村上 雅彦
    2016 年 58 巻 5 号 p. 1075-1082
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    表在性非乳頭部十二指腸腫瘍における治療法は確立しておらず,内視鏡治療や外科切除,LECSなどの選択肢が乱立しているのが現状である.内視鏡治療は技術的難易度が高い事に加え,胆汁・膵液曝露を回避する方策がないため遅発性穿孔等の致死的偶発症の危険性を孕んでいる.一方で,外科切除は腫瘍部位の正確な同定が困難であり,局所切除が難しい場合には膵頭十二指腸切除を含めた過大侵襲な施術を要する場合がある.われわれはこれらの問題点を解決すべく,LECSの一手技として,内視鏡補助下腹腔鏡下十二指腸全層切除術(endoscopy-assisted laparoscopic full-thickness resection;EALFTR)を考案した.胆汁膵液暴露は回避され,病変境界は正確に同定可能となり鏡視下手術で対応可能となった.腫瘍の腹腔内暴露の問題があるが,治療法の選択肢の一つとなりえると考え,これまで蓄積した症例をもとに,その手技の実際を中心に概説した.
資料
  • 菅野 敦, 正宗 淳, 下瀬川 徹
    2016 年 58 巻 5 号 p. 1083-1093
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎(AIP)は,びまん性の膵腫大と主膵管の不整狭細像を特徴とする.AIPにしばしば合併するIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)は,胆管の狭窄を呈する.したがって,AIPは膵癌と,IgG4-SCは胆管癌や原発性硬化性胆管炎と鑑別することが重要である.内視鏡検査は,主膵管の狭細像や胆管の狭窄像を描出し,病理組織学的診断における組織標本を採取できるため,AIPとIgG4-SCの診断における中心的な役割を担っている.内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)による膵管のびまん性不整狭細像は,AIPに特徴的であり診断も比較的容易であるが,限局的な主膵管狭細像を呈するAIPと主膵管の途絶像を呈する膵癌を鑑別することは難しい.尾側の膵管拡張を伴わない主膵管全長の1/3より長い狭細像がERCPにおけるAIPの膵管像の特徴である.限局的な狭窄や下部胆管の狭窄,狭窄より肝側の拡張を伴う長い狭窄といった胆管像の所見は,胆管癌よりIgG4-SCに認められることが多い.ERCPに引き続いて行われる管腔内超音波検査による胆管壁の所見は,IgG4-SCと胆管癌の鑑別に有用である.超音波内視鏡検査(EUS)では,膵臓はびまん性の低エコー腫大を示す.また,Elastographyや造影EUSなど近年開発された新規診断法による診断能の向上が期待されている.さらに,EUSガイド下穿刺吸引法を用いたAIPの組織学的診断の有用性が報告されている.内視鏡検査と機器のさらなる発展により,AIPおよびIgG4-SCの診断能の向上が期待される.
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