日本消化器内視鏡学会雑誌
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55 巻, 10 号
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原著
  • 石川 茂直, 稲葉 知己, 水川 翔, 高嶋 志保, 泉川 孝一, 田岡 伸朗, 三好 正嗣, 和唐 正樹, 中村 聡子, 間野 正平, 十 ...
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3357-3367
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】経鼻内視鏡として主に用いられる極細径内視鏡用の小型生検鉗子による抗血小板薬非休薬下での上部消化管生検の現況を報告する.
    【対象と方法】通常上部内視鏡検査時には抗血栓薬の休薬をせず,抗血小板薬服用者には生検を行う方針とした.連続5,374例を対象に,生検施行者の後出血を前向きに調査した.また,小型鉗子による適正材料採取と粘膜筋板採取率に関して調査した.
    【結果】胃生検1,128例中抗血小板薬服用者は65例で,抗血栓薬非服用者で1例の後出血を認めたが,抗血小板薬服用者に後出血は認めなかった.胃検体2,025中,適正検体は99.3%(2,010/2,025)で,粘膜筋板採取率は27.8%(538/1,932)で胃上部と中部は下部より高い割合であった(いずれもp<0.00001).
    【結論】抗血小板薬非休薬下での小型生検鉗子による胃生検は,十分な止血確認を行うことで安全に施行できている.
症例
  • 坂牧 僚, 小林 正明, 今井 径卓, 水野 研一, 上村 顕也, 竹内 学, 成澤 林太郎, 青柳 豊
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3368-3374
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.長期のアルコール多飲・喫煙歴がある.嚥下困難を主訴に当院を紹介受診した.食道造影では,食道全体に多発する突出像を認めた.上部消化管内視鏡検査では,多発するピンホール状陥凹の周囲に白色調の付着物質を認め,生検組織でカンジダ感染が検出された.食道壁内偽憩室症と診断し,節酒指導および狭窄に対する内視鏡的拡張術を行い,症状は改善傾向にある.食道カンジダ感染を伴い,典型的な内視鏡像,食道造影像を呈した食道壁内偽憩室症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 須原 寛樹, 竹内 真実子, 小屋 敏也, 鈴木 悠土, 市川 雄平, 富田 英臣, 岡田 明久, 馬渕 龍彦, 細井 努, 山田 雅彦
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3375-3381
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    症例1は1歳5カ月女児.上部消化管内視鏡検査(EGD)にて十二指腸潰瘍と診断された.再検時に仮性動脈瘤を認め,コイル塞栓術を施行した.症例2は1歳0カ月女児.EGD,腹部CT検査にて十二指腸潰瘍穿孔と診断し,十二指腸潰瘍穿孔大網充填術,腹腔ドレナージ術を施行した.症例3は2歳10カ月男児.EGDにて露出血管を伴う十二指腸潰瘍を認め,局注法とクリップ法にて止血術を施行した.再検時に露出血管は瘤状に変化しており,十二指腸穿孔部縫縮,胃十二指腸動脈結紮,大網被覆術を施行した.3例ともに術後経過も良好であった.乳幼児消化性潰瘍は重篤化することもあり,集学的治療も念頭に置く必要がある.
  • 林 武弘, 鷹取 元, 北村 和哉, 加賀谷 尚史, 酒井 佳夫, 中村 慶史, 藤田 秀人, 藤村 隆, 北村 星子, 金子 周一
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3382-3388
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は62歳女性.新鮮血下血にて受診した.小腸造影,経肛門的ダブルバルーン内視鏡にてMeckel憩室と診断し,回腸部分切除術を施行した.術後の病理組織において憩室壁内に紡錘形細胞の増殖を認めた.免疫染色においてc-kit陽性,CD34陽性,desmin陰性,S-100陰性でありGastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.Meckel憩室壁内にGISTを合併することはまれであるが,Meckel憩室の診断に至った際には,随伴する腫瘍合併の可能性も念頭に置き,検索を進める必要がある.
  • 野嵜 昌, 森 昭裕, 伏見 宣俊, 大橋 憲嗣, 吉田 篤生
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3389-3393
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性で,30歳代に開腹手術を受けて以来,腸閉塞を繰り返している.腹痛を主訴に来院し,腹部CTで小腸に40mm大の腫瘤像を認め,サブイレウスと診断され入院精査となった.受診の約半年前に肝機能異常が指摘されウルソデオキシコール酸を内服し経過観察中であった.この時に施行した腹部CTでは小腸に異常を認めていなかった.ダブルバルーン小腸内視鏡で,Bauhin弁から約150cmの部位にびらんを伴う輪状狭窄がありその口側に40mm大の腸石を認めた.スネアなどを用い破砕した.回収した結石分析より胆汁酸を主成分とする真性腸石と診断した.内視鏡治療によって外科的治療を回避しえた腸石の症例は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 松井 哲平, 村田 一素, 金子 正大, 尾上 淑子, 小飯塚 仁彦, 今村 雅俊, 正木 尚彦, 石田 剛, 溝上 雅史, 上村 直実
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3394-3400
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    症例はC型慢性肝炎で外来通院中の82歳女性.著明な末梢血好酸球増多を伴う心窩部痛の精査目的で入院.上下部消化管内視鏡では診断に至らなかったが,カプセル内視鏡にて上部空腸に多発するびらんを認め,小腸内視鏡下生検にて粘膜内および粘膜下層血管周囲の好酸球浸潤を認めたことから,好酸球性腸炎と診断し得た.ステロイド著効後に施行したカプセル内視鏡にて上部空腸病変のほとんどが瘢痕化していた.
  • 平田 祐一, 影山 真理, 中瀬 浩二朗, 河村 卓二, 宮田 正年, 盛田 篤広, 田中 聖人, 宇野 耕治, 安田 健治朗, 桂 奏
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3401-3408
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.2000年より全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)で当院に通院中であり,7年以上にわたるプレドニゾロン(PSL)15mg/日の内服加療の後,2010年8月より12.5mg/日に減量した.その約1カ月後より下腹部痛,発熱,血便が出現し当院を受診した.下部消化管内視鏡検査では直腸に縦列傾向のある類円形の潰瘍を認めた.保存的加療で症状は改善し,2011年5月にはPSL 10mg/日に減量した.同年7月より下腹部痛,発熱,血便が再燃した.直腸には打ち抜き様の潰瘍が散在しており,潰瘍からの生検では血管炎の所見が得られた.SLEに伴う大腸多発潰瘍型ループス腸炎と診断し,PSL 20mg/日に増量した.その3カ月後に施行した内視鏡では直腸潰瘍の改善を認めた.
  • 下立 雄一, 高梨 訓博, 和賀 永里子, 藤田 朋紀, 勝木 伸一, 藤田 昌宏
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3409-3415
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.急性膵炎の診断で入院中に施行したスクリーニング目的の下部消化管内視鏡検査で盲腸に径20mm大のIIa+IIc病変を認めた.隆起部は鋸歯状の腺管開口部を認めるIIIH型pitと開大したII型pitが混在していた.陥凹辺縁部は正常粘膜で立ち上がり,陥凹内部のpitは辺縁不整かつ狭小化,輪郭不明瞭が見られVI高度不整と診断した.SM深部浸潤癌と診断して外科的治療を薦めたが,本人の強い希望でESDを施行した.病理組織結果はWell and focal moderately differentiated adenocarcinoma with mixed serrated polyp,SM(1,900μm),ly1,v0,HM0,VM0であり,後日追加腸切除を行ったが腫瘍の残存は認めなかった.癌部および鋸歯状病変部のムチンコア蛋白発現,遺伝子解析の結果から本症例の発育進展過程を考察した.
  • 正司 政寿, 芳炭 哲也, 根塚 秀昭, 江嵐 充治, 藤井 久丈
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3416-3421
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性.半年前に外傷性膵損傷に対して膵頭十二指腸切除術を施行された.タール便を主訴に受診し,上部下部消化管内視鏡検査を施行されたが明らかな出血源を特定できなかった.症状は自然に消失したため退院した.しかし,2週間後に再び症状が再燃した.再度上部消化管内視鏡検査を施行され,輸入脚からの出血が疑われた.ダブルバルーン内視鏡検査を施行したところ,膵管空腸吻合部静脈瘤を認めたためこれをクリッピングした.以後,4年6カ月経過したが症状の再燃は認めていない.膵頭十二指腸切除術後の膵管空腸吻合部静脈瘤に対してダブルバルーン内視鏡を用いた止血治療は有用と考えられた.
経験
  • 片倉 芳樹, 中原 一有, 足立 清太郎, 浅木 努史, 安田 伊久磨, 豊水 道史, 吹田 洋將
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3422-3426
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    [背景・目的]われわれは以前に総胆管結石症のドレナージチューブ先端から上流への逸脱防止の目的で,先端が立体的なspiral-cone型ENBDカテーテルを報告した.[方法]今回肝側がspiral-cone型,乳頭側がpigtail型のPlastic stentを製作し,総胆管結石症31例に用い,初期治療成績を評価した.[結果]全例で結石の上流への移動およびステントの脱落を認めず,ドレナージ効果は良好であった.また,挿入,留置および抜去に伴う合併症もなかった.[結論]総胆管結石例での短期間の胆道ドレナージにおいて,本ステントは適応可能と考えられた.
手技の解説
  • 堀田 欣一, 山口 裕一郎, 今井 健一郎, 小野 裕之
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3427-3434
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    大腸ESDは2009年8月から先進医療として行われていたが,2012年4月に保険収載された.本稿では大腸ESD初学者の内視鏡医を対象に,準備から手技の実際および工夫,偶発症の予防について詳細に解説した.手技については当院で現在行っている,ITknife nanoTMとDualKnifeTMをメインデバイスとして使用する方法を主体に解説した.大腸におけるITknife nanoTMの使用法は,確実に粘膜下層を視認しながら,ブラインド操作を避けることが重要であり,他の先端系デバイスによるESDと視野の確保などに関して大きな隔たりはない.ITknife nanoTMによる粘膜下層剥離により,偶発症の発生を増加させずに治療時間を短縮することが可能である.大腸ESDの初学者は自らのメインデバイスを定めて,じっくりと技術習得に努める姿勢が求められる.
資料
  • 前田 有紀, 平澤 大, 藤田 直孝, 鈴木 敬, 尾花 貴志, 菅原 俊樹, 大平 哲也, 原田 喜博, 野田 裕
    2013 年 55 巻 10 号 p. 3435-3442
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/31
    ジャーナル フリー
    【目的】食道ESD後に発生する縦隔気腫の頻度と臨床的意義を検討する.
    【方法】2004年3月~2009年4月に食道ESD後にCTで前向きに縦隔気腫の評価を行った105例を対象とした.CTでの縦隔気腫の程度を4段階に分類した.Grade-0,None;縦隔気腫なし.Grade-I,Bubble;食道周囲に限局した泡状の陰影を呈するもの.Grade-II,Localized;胸部大動脈周囲に及ぶ縦隔気腫.Grade-III,Diffuse;心周囲や頸部に及ぶ広範な気腫.Grade-IV,Extensive;気胸や皮下気腫への進展を伴うものとした.CT gradeと胸部単純X線(CXR),臨床症状について比較検討した.
    【結果】縦隔気腫はCXRで6.6%に認めた.CTでは63%(Grade 0/I/II/III/IV各々37.1/46.7/10.5/5.7/0%)で,多く(83.8%)はGrade-Iか0であった.CXRで認めた縦隔気腫はGrade II以上であった.Grade IIIの6例中1例はCXRで縦隔気腫を認めなかった.Grade II以上の縦隔気腫発生の危険因子は,筋層露出あり(p=0.008)と病変の局在(Lt,Ae)(p=0.03)であった.より高度の縦隔気腫群で37度以上の発熱期間が長く,CRPも高い傾向がみられた.
    【結語】食道ESD後の63%にCTで縦隔気腫を認めたが,多くは無症状であった.CTで高度の縦隔気腫を認めてもCXRでは描出されない症例もあり,注意が必要である.筋層露出と病変の局在が縦隔気腫発生の独立した危険因子であった.
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