【目的】粘膜下層微小浸潤胃癌(SM1癌)に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の有用性とさらなる適応拡大の可能性につき検討した.
【方法】ESDを施行した977病変855症例を対象に,病理組織学的に粘膜内癌(M癌)とSM1癌,SM深部浸潤癌(SM2癌)に分類し,SM1癌の短期成績(M癌と比較)と長期成績を検討した.さらにSM浸潤部の仮想体積(SM volume index)を計算し,脈管侵襲や予後との関連も分析した.
【結果】M癌とSM1癌にESDの技術的な差異は認められず,適応拡大治癒切除に合致したSM1癌48例の長期予後も良好であった.局所完全切除にもかかわらず,適応外となったSM1癌の多く(72%)は大きさが30mmを超えるため非治癒切除と判定された病変であったが,これらのSM volume indexは比較的小さく,脈管侵襲や遠隔転移,リンパ節転移は認めなかった.
【結論】SM1癌に対するESDは技術的な短期成績に問題なく,根治性については理論的にも適応拡大治癒切除基準は妥当であった.SM volume indexを指標とすることでSM1癌に対するさらなる適応拡大の可能性が示唆された.
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