日本消化器内視鏡学会雑誌
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54 巻, 10 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 楠瀬 寛顕, 大原 秀一, 浜田 史朗, 北川 靖, 前川 浩樹, 小島 康弘, 阿部 基, 齋藤 晃弘, 半田 朋子, 仲程 純, 玉渕 ...
    2012 年 54 巻 10 号 p. 3399-3407
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    好酸球性食道炎(EE)は,欧米においては報告例が漸増しつつあるが日本においてはいまだごく少数例のみの報告に過ぎない.今回食道生検にて確定診断(20個/HPF以上)された5例のEEの臨床像を中心に検討した.症例はすべて男性,年齢は20歳から61歳,主訴はつかえ感2例,心窩部痛1例で,2例は自制可の症状でドックにて発見された.内視鏡検査では,軽微な所見も含めれば,縦走溝100%,輪状溝80%,白色栓40%,粘膜の粗造白濁所見80%に認めた.末梢血好酸球は3例で上昇を認めた.治療はPPI 3例,ステロイド剤の局所療法1例で,うち経過観察可能であった3例は2カ月後には自覚症状,内視鏡所見,組織学的所見ともに消失した.無治療で経過観察とした1例も6カ月後には内視鏡所見,食道生検とも異常所見は消失していた.本症の原因や長期予後に関しては,さらに症例を蓄積し長期的な経過観察が必要である.
症例
  • 小澤 俊文, 和知 栄子
    2012 年 54 巻 10 号 p. 3408-3417
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は12歳,男性.区域性大腸炎型を呈する軽症の潰瘍性大腸炎と診断されて以降緩解を維持していたが,4カ月後に心窩部痛と嘔吐にて入院となった.内視鏡検査では胃全体に発赤と小白苔,自然出血する地割れ様のびらんをびまん性に認めた.十二指腸にも発赤や白苔,浮腫,絨毛腫大を認めた.生検では陰窩膿瘍類似で好中球主体の炎症細胞浸潤の所見を得た.H. pyloriや薬剤の関与は否定的であり潰瘍性大腸炎との関連が強く疑われた.prednisoloneと5-ASA製剤の粉末投与にて症状および内視鏡所見と組織学的所見は著明に改善した.自験例を除き軽症で区域性型潰瘍性大腸炎に上部消化管病変を伴った報告例はない.
  • 青木 敬則, 野村 昌史, 三井 慎也, 田沼 徳真, 金子 昌史, 村上 佳世, 山崎 大, 真口 宏介, 篠原 敏也, 菅井 有
    2012 年 54 巻 10 号 p. 3418-3425
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性.近医で施行した大腸内視鏡検査にて下行結腸に10mm大の陥凹性病変を認め,精査加療目的に当センターを紹介された.精査の結果,粘膜下層浅層までの浸潤癌と診断し,内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した.病理組織学的には,陥凹部に一致して粘膜下層へ浸潤する(腫瘍表層から1,500μm)低分化腺癌を認め,リンパ管侵襲陽性であった.外科的治療を追加したが,腫瘍遺残やリンパ節転移を認めなかった.IIc,10×10mm,por1>tub2,pSM(1,500μm),ly1,v0,pN0,StageIと最終診断した.早期大腸低分化腺癌の報告は少なく,特に左側大腸発生例は稀であり,貴重な症例と考えられた.
  • 釜谷 明美, 平田 一郎, 神谷 芳雄, 丸山 尚子, 鎌野 俊彰, 藤田 浩史, 長坂 光夫, 中川 義仁, 柴田 知行, 黒田 誠
    2012 年 54 巻 10 号 p. 3426-3432
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性.主訴は歩行時呼吸困難,下痢.既往歴に気管支喘息,肺炎.入院時現症で両下肢に紫斑と網状皮斑を認めた.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部にびらん,発赤,浮腫を認めた.下部消化管内視鏡検査で全結腸にアフタ様潰瘍が多発,S状結腸に不整形・地図状潰瘍も認められた.いずれの病変粘膜の生検組織でも粘膜下層に好酸球浸潤を認め,下肢の紫斑の生検組織では真皮内の小動脈壁にフィブリノイド壊死と内弾性板の破壊が認められた.これらよりアレルギー性肉芽腫性血管炎と診断しステロイドと免疫抑制薬による治療を開始.その後呼吸困難,下痢は改善し全結腸に認めたアフタ様潰瘍も消失,S状結腸の潰瘍も瘢痕化していた.
  • 西川 剛史, 冨樫 弘一, 木田 直也, 今枝 加奈子, 高島 英隆
    2012 年 54 巻 10 号 p. 3433-3439
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は60歳台,男性.多発性骨髄腫にて加療中.発熱,腹痛にて受診,腹部CTにてS状結腸憩室穿孔による腹腔内膿瘍と診断した.経皮的ドレナージが奏功するも腹痛は持続,人工肛門の適応と考えたが,全身状態から手術は困難であった.そこで,経皮的内視鏡的盲腸瘻造設術施行後,バルーン拡張を加え,瘻孔にシリコン性開創器を挿入し人工肛門の代替機能を有する盲腸瘻を作製した.一連の手技にて大きな合併症は認めず,一定の効果を得ることができた.
注目の画像
手技の解説
  • 峯 徹哉
    2012 年 54 巻 10 号 p. 3442-3445
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    ERCP後膵炎は未だに原因が明確ではなく,様々な要因が考えられている.その要因については(1)患者の因子,(2)術者の因子,(3)手技自体の因子に大きく分けられると思われる.ERCP後膵炎を予防するのに(1)原因である因子をみつけてその因子を排除すること(2)その因子と思われるものに対し予防的な処置を行うことが挙げられる.その原因の一つと考えられているERCP後の十二指腸主乳頭の浮腫状態を軽減するために行う膵管ステント留置術はその一つの対応策と考えられる.われわれの単施設でERCP後膵炎予防に対して膵管ステント留置術のRCTを行い,その有意性を証明し,その結果を組み込んだメタアナリシスを行い報告した.そのERCP後の膵管ステント留置術の施行技術を解説する.
資料
  • 布袋屋 修, 飯塚 敏郎, 山下 聡, 菊池 大輔, 中村 仁紀, 土門 薫, 松井 啓, 三谷 年史, 小川 修, 貝瀬 満, 矢作 直久
    2012 年 54 巻 10 号 p. 3446-3454
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/10/31
    ジャーナル フリー
    【目的】粘膜下層微小浸潤胃癌(SM1癌)に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の有用性とさらなる適応拡大の可能性につき検討した.
    【方法】ESDを施行した977病変855症例を対象に,病理組織学的に粘膜内癌(M癌)とSM1癌,SM深部浸潤癌(SM2癌)に分類し,SM1癌の短期成績(M癌と比較)と長期成績を検討した.さらにSM浸潤部の仮想体積(SM volume index)を計算し,脈管侵襲や予後との関連も分析した.
    【結果】M癌とSM1癌にESDの技術的な差異は認められず,適応拡大治癒切除に合致したSM1癌48例の長期予後も良好であった.局所完全切除にもかかわらず,適応外となったSM1癌の多く(72%)は大きさが30mmを超えるため非治癒切除と判定された病変であったが,これらのSM volume indexは比較的小さく,脈管侵襲や遠隔転移,リンパ節転移は認めなかった.
    【結論】SM1癌に対するESDは技術的な短期成績に問題なく,根治性については理論的にも適応拡大治癒切除基準は妥当であった.SM volume indexを指標とすることでSM1癌に対するさらなる適応拡大の可能性が示唆された.
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