日本消化器内視鏡学会雑誌
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34 巻, 7 号
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  • 佐藤 秀一
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1541-1547
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     コロノスコピーを行い,完全組織の得られた1,706個の腺腫と98個のm癌(全組織が癌であるもの)の部位と形態の関係につき検討した.腺腫のサイズと有茎率(腫瘍全体に占める有茎性腫瘍の率)の関係は,大きくなるにしたがい各部位で有茎率が増加した.5mm以下では部位間の差はなかったが,6mm以上では左側結腸,右側結腸,直腸の順に有茎率は高かった.m癌では,腺腫ほどではないが,各部位で大きくなるにしたがい有茎率が増加した.しかし,あらゆるサイズで部位間に差はなかった.以上より,1)大腸腫瘍は大きくなるにしたがい有茎率は増加した.2)腺腫の有茎率の増加傾向は部位により差があり,左側結腸,右側結腸,直腸の順に高い.3)m癌の有茎率の増加傾向は腺腫に比し低く,かつ大きくなっても部位間の差は認めない.大腸腫瘍の形態は,腺腫ではサイズの他に部位が関与し,m癌では部位は関与していない,と結論された.
  • 中村 常哉, 塚本 純久, 山中 敏広, 林 繁和
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1548-1555
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     活動期からプロトンポンプインヒビター(PPI)により治療され内視鏡で経過観察された消化性潰瘍のうち,内視鏡所見の見直しが可能であった52例(胃潰瘍40例,十二指腸潰瘍11例,吻合部潰瘍1例)を対象にPPI治療における消化性潰瘍治癒過程の内視鏡所見について,特に潰瘍底の白色隆起に着目して検討した.白色隆起は胃潰瘍で7例に平均4.6週でみられ,十二指腸潰瘍にはみられず,吻合部潰瘍は1例に2週でみられた.胃潰瘍例の3例は8週でS1となり白色隆起が消失し,1例は4週で白色隆起が出現したが8週で赤色隆起となり,残り3例では4週から8週で白色隆起が出現し,その後白色隆起は縮小したものの最終内視鏡検査時にまだ残存していた.白色隆起は再発潰瘍で胃体中部に多く認められた.その組織所見は著明な好中球,リンパ球浸潤を伴い,表層は壊死組織からなる肉芽所見で,炎症の消退とともに再生上皮が伸展し赤色隆起となり,次第に消失するものと考えられた.
  • 瓜田 純久, 石原 学, 尾崎 元信, 蜂矢 朗彦, 山田 秀一, 武藤 ます江, 中田 正幸, 大塚 幸雄, 町田 啓一
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1557-1563
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道静脈瘤硬化療法において,血管外注入された硬化剤の広がりを胸部CTで調べた.1%Aethoxysklerolを用いた血管内外注入法にて23例に硬化療法を行い,30分後に胸部CT検査を施行した.CT所見は以下のように分類された.(1)食道壁内の輪状の染まり,(2)食道壁外の輪状の染まり,(3)食道壁の限局した染まり,(4)壁側胸膜に及ぶ帯状の染まり.これらのCT所見は硬化剤の注入量とは関係なかった.Type(3)のように血管外へ注入された硬化剤が限局する場合,8例中7例に食道潰瘍が高率に形成された.胸水はtype(1)で2/18,type(2)で2/9,type(4)で1/14の症例に発生した.われわれはtype(4)の場合,胸水が発生しやすいと考えていたが,CT所見と胸水の発生には相関はなかった.発熱はtype(3)で2/8の症例に出現した.血管外に注入された硬化剤と合併症はさほど関係ないと思われた.以上から,硬化剤の食道壁内外への広がりは,必ずしも合併症の主因ではないと考えられた.
  • 金子 栄蔵, 伊藤 剛, 花島 一哲, 三木 一正, 清水 浩明, 菊地 正悟
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1564-1568
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃集検で発見された十二指腸潰瘍(DU)390例を未治療のまま半年毎の内視鏡検査で2年間追跡し,その間の潰瘍の活動性,潰瘍の形態,喫煙などと血清PGとの関連を,300例の健常コントロールとも対比検討した.DU全体の血清PGIは69.7ng/mlでコントロール57.7ng/mlより有意に高値であった.これを経過観察期間の潰瘍の活動性との関連でみると,経過中オープン潰瘍となったもののPGI値はコントロールと較べ有意に高かったが,瘢痕が持続したものではコントロールと差がなかった.多発・線状潰瘍の血清PGI値は単発潰瘍のそれに較べ有意に高値であった.喫煙者は非喫煙者と較べ血清PGI値が高値であったが,PGI値は潰瘍の活動性とより強く相関していた.以上の結果から,血清PGI値はDUのハイリスクだけでなく,その経過を予測する一因となると考えられる.
  • 長谷部 修, 清沢 研道, 松田 至晃, 嶋倉 勝秀, 武川 建二, 赤松 泰次, 中野 善之, 袖山 健, 古田 精市, 梶川 昌二, 堀 ...
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1569-1579
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     肝動脈内抗癌剤動注療法および肝動脈塞栓療法(TAE)が施行された原発性肝癌10例に対して術後ERCを施行し,3例に広範かつ高度な肝内胆管壊死を認めた.胆管像の特徴は肝門部から末梢胆管に至る高度の不整狭窄像が主体で,原発性硬化性胆管炎の胆管像に類似していた.3例とも胆嚢壊死・肝梗塞を合併しており,胆管壊死の原因として肝動脈末梢から類洞に至る虚血が考えられた.虚血の原因に関してはいずれも塞栓物質はgelfoam particleを用い,リピオドールの使用量も少なく,またCisplatin(CDDP)動注のみで発生している症例もあることから,TAEそのものの関与よりもむしろ動注抗癌剤,特にCDDPの血管障害(血栓症)によるものと推察された.
  • ―胆管拡張・非拡張例別の検討―
    松本 伸二, 田中 雅夫, 池田 靖洋, 吉本 英夫
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1580-1583
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     透視下の内視鏡的乳頭括約筋圧測定により,膵胆管合流異常症における乳頭機能を胆管拡張群・非拡張群・コントロール群別に検討した.(1)共通管の長さは拡張群16.5±3.1mm・非拡張群24.6±2.0mmで,非拡張群が長い傾向にあった.乳頭括約筋波は乳頭開口部から拡張群で11.6±1.2mm・非拡張群で12.4±1.5mmまでみられ,1例を除き合流部には乳頭括約筋波はみられなかった.この乳頭括約筋の長さは両群間さらにコントロール群(10±1.5mm)との間に有意差を認めなかった.(2)乳頭括約筋圧は拡張群とコントロール群の収縮期圧にのみ有意差を認めた(105.7±13.6vs55.2±4.3mmHg,p<0.005).(3)塩酸モルヒネ投与により合流異常においてもコントロール群と同様の反応がみられたが,1例で急性膵炎が発生した.合流異常では乳頭括約筋の収縮が合流部におよばないため,膵液と胆汁の相互混入がおこり,胆道・膵に種々の病態がひきおこされると考えられる.
  • 小山 洋, 岩井 淳浩, 岩下 悦郎, 徳永 徹二, 笹木 淳司, 松田 浩二, 下屋 正則, 川口 淳, 永尾 重昭, 宮原 透, 日野 ...
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1584-1593
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)投与による実験的大腸炎モデル(5%SS投与による急性群並びに2%DSS投与による慢性群)を作成し,その継時的内視鏡所見並びに組織学的検討,糞便の検索を行った.その結果急性群においては7日目の内視鏡所見にて直腸に出血,潰瘍が認められた,病理組織学的には,直腸に著明な炎症が認められそれより口側の大腸においては炎症の程度はより軽度であった.慢性群については,内視鏡所見及び病理学的所見ともに急性群に比して所見の程度は,軽度であった.われわれの用いたDSSによる大腸炎モデルは従来のモデルより深部大腸に比し直腸に強い炎症がみられた.このことは,実際の潰瘍性大腸炎も直腸より病変が始まることから,われわれのモデルはより潰瘍性大腸炎に近い病態であると考えられた.
  • 鈴木 雅貴, 松田 徹, 外田 博貴, 深瀬 和利, 奥山 芳見, 堺 順一, 山科 昭夫, 斉藤 博, 佐藤 信一郎, 水戸 省吾
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1594-1600_1
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去10年間に山形県立中央病院において術前に診断可能であった平坦陥凹型微小胃癌41例及び小胃癌114例の肉眼形態と組織学的所見について検討を加えた.癌の組織型については分化型腺癌(tub1+tub2),低分化型腺癌,印環細胞癌の3型にわけて検討した.癌の深達度をみると低分化型腺癌でsm癌が多かった.粘膜内における癌の浸潤状態は分化型腺癌,低分化型腺癌では微小胃癌の時からすでに全層型の発育を示すものが多いのに対し,印環細胞癌では中層中心のものが多く全層型は1例も無かった.内視鏡所見では分化型腺癌の微小胃癌では不整発赤を示すものが最も多く,ついで白苔周囲不整発赤が多かった.低分化型腺癌も分化型腺癌と同様の内視鏡所見を示したが,印環細胞癌では,退色内発赤を示すものが75.0%を占めた.このように同じ未分化型癌として議論されがちな低分化型腺癌と印環細胞癌にはいくつかの相違点があることがあきらかになった.
  • 山中 桓夫
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1601-1610
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     超音波マイクロプローブ(外径2.4mm)は,ルチン検査で通常用いられる内視鏡の鉗子口に挿入可能である.今回,15MHz超音波マイクロプローブを用い,胆管内走査を行い本プローブの胆管描写能について検討した.基礎的検討としてマウス胃壁の描写を行ったところ,約0.5mmのマウス胃壁が3ないし5層に描写された.ヒト胆管では,Oddi括約筋,胆管壁3層構造が明瞭に描出され,同時に胆管に隣接する門脈,動脈,膵管が描写された.また,慢性胆管炎は微細線状高エコーが多層に分布する均一な壁肥厚像として,胆管癌は低エコーの不均一な壁肥厚像として描写された.ただし,本プローブの有効描写範囲は,プローブ表面周囲約5mm以内と考えられた.以上より,本機器超音波マイクロプローブは,胆管小病変の存在範囲判定,慢性胆管炎と胆管癌の鑑別を可能にし,胆管病変の超音波診断法として高い有用性を発揮すると推察された.
  • 渡邊 雅男, 政氏 伸夫, 松浦 淳, 田中 淳司, 木山 善雄, 武田 宏司, 直原 徹, 比嘉 敏夫, 笠井 正晴
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1611-1616_1
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は81歳,男性.食欲不振,上腹部不快感を主訴に当科受診し,上部消化管造影および内視鏡検査にて体下部~前庭部に表面粗大結節状ないし乳頭状に発育した巨大隆起性病変を認めた.生検にて胃癌が疑われ,胃亜全摘術施行,腫瘍は12.8×9.2cmで,口側は比較的丈が高く表面が絨毛状で一部結節状となっており,肛側では相対的に丈が低く粗大胃小区状を呈していた.病理組織学的には高分化型の腺癌であったがいずれも粘膜上皮内に限局していた.隆起型の胃癌では最大径と深達度は相関するとされており,本症例は極めて稀な症例と考えられるのでここに報告する.
  • 野口 秀哉, 平井 賢治, 立石 秀夫, 小野 尚文, 坂田 研二, 青木 義憲, 吉武 正男, 神代 龍吉, 豊永 純, 安倍 弘彦, 谷 ...
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1618-1625_1
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2012/02/13
    ジャーナル フリー
     肝不全の急性期からMRI,CTにて経時的観察を行った馬鈴薯肝の1例を経験した.44歳,女性.肝不全で入院.腹腔鏡検査で,馬鈴薯肝と診断.腹部MRI,CTを発症1,2,3,22カ月目に施行.単純CTで肝内にまだら状に認めた低吸収域は,造影CTで濃染され,MRI,T2強調像で高信号を呈した.この領域は,徐々に縮小化し,壊死,瘢痕部が反映されていると思われた.MRIは,重症肝障害に伴う肝の壊死と再生を把握する有用な一方法と思われた.
  • 野口 秀哉, 平井 賢治, 立石 秀夫, 小野 尚文, 坂田 研二, 青木 義憲, 吉武 正男, 神代 龍吉, 豊永 純, 安倍 弘彦, 谷 ...
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1619-1625_1
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/19
    ジャーナル フリー
     肝不全の急性期からMRI,CTにて経時的観察を行った馬鈴薯肝の1例を経験した.44歳,女性.肝不全で入院.腹腔鏡検査で,馬鈴薯肝と診断.腹部MRI,CTを発症1,2,3,22カ月目に施行.単純CTで肝内にまだら状に認めた低吸収域は,造影CTで濃染され,MRI,T2強調像で高信号を呈した.この領域は,徐々に縮小化し,壊死,瘢痕部が反映されていると思われた.MRIは,重症肝障害に伴う肝の壊死と再生を把握する有用な一方法と思われた.
  • 中野 和夫, 市場 俊雄, 加藤 寿一, 大久保 啓二, 道堯 浩二郎, 恩地 森一, 田中 昭, 太田 康幸
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1626-1630_1
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は71歳の女性.主訴は腹部腫瘤の精査目的.入院時臨床検査ではGOTの軽度上昇を認めた以外異常所見は認められなかった.腹部超音波検査及び腹部CTでは肥大した左葉を認めたが右葉は認めなかった.腹部血管造影では肝動脈右葉枝は造影されず肝右葉欠損症が疑われたため腹腔鏡を施行した.同検査にて肝右葉は認めず肥大した左葉を認めた.肝左葉表面には被膜の白濁化を認めた.組織所見は慢性肝炎及び肝硬変の所見はなく非特異的変化のみであった.以上より肝右葉欠損症と診断した.左葉欠損に比し,右葉欠損は極めて稀であり報告した.
  • 高谷 昌宏, 渡辺 正博, 竹林 治朗, 葉久 貴司, 村上 充, 坂本 幸裕
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1631-1637
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     46歳男性の門脈圧亢進症を呈した全身性アミロイドーシス患者の腹腔鏡検査で,肝表面は,黄褐色調で陥凹があり,拡大してみると白色網目状構造と異常な走行の細動脈がみられ,脾腫,腹水を認めた.肝組織では陥凹部は肝細胞が脱落し,門脈域に拡張した門脈と動脈が多数見られた.門脈域の動脈壁にアミロイドA蛋白が沈着していたが,類洞などにはない稀な一例を報告した.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1992 年 34 巻 7 号 p. 1638-1779
    発行日: 1992/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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