日本消化器内視鏡学会雑誌
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46 巻, 7 号
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  • 大川 清孝, 佃 博, 青木 哲哉, 大平 美月, 青松 和輝, 佐野 弘治, 上田 渉, 加島 和俊, 井上 健, 追矢 秀人
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1323-1332
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     「背景・目的」虚血性大腸炎急性期の内視鏡診断は確立したものはなく,新しい分類を試みた.「方法」発症から3日以内に内視鏡観察できた81例を対象に内視鏡像とそれに対応する病理組織像を検討した.「結果」内視鏡像を血管拡張,うろこ模様,偽膜様所見,チアノーゼ所見の4つに分けて検討したが,うろこ模様が最も高率にみられた.また,それぞれに対応する生検病理組織像を対比すると,この順に病理学的に虚血の程度は重篤となり,この内視鏡分類の妥当性が証明された.また,拡大観察することにより,粘膜内出.血による小区の赤みと区画する白い無名溝によりうろこ模様が形成されていることが判明した.「結論」主病変が縦走性の偽膜様所見とその周囲のうろこ模様からなり,その周辺にうろこ模様からなる横走性病変あるいは斑状病変などの小病変がみられるのが虚血性大腸炎急性期の最も典型的な内視鏡像と考えられた.
  • 高木 忠之, 入澤 篤志, 小原 勝敏, 引地 拓人, 渋川 悟朗, 山本 豪, 若槻 尊, 佐藤 匡記, 佐藤 由紀夫
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1333-1339
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     「背景・目的」種々の膵疾患によりleft-sided portal hypertensionの病態を呈した場合,消化器静脈瘤を合併することがある.しかし,この病態についての血行動態も含めた臨床的特徴に関してはあまり検討されていない.今回我々は,膵疾患に伴う胃食道静脈瘤を経験したため,血行動態を含めた臨床的特徴について検討した.「方法」1993年から2003年8月まで当科にて診療を受けた急性膵炎を除く膵疾患症例105例のうち,上部消化管内視鏡検査にてF1以上の胃静脈瘤が認められた6症例を対象とした.膵疾患の診断には,腹部CT,MRI,ERCPなどの画像診断に加え,膵液吸引細胞診や擦過細胞診,またはEUS-FNAなどの病理学的診断も行った.また,静脈瘤血行動態の解析は,3D-CTを含む造影CT,または腹部血管造影にて行った.「結果」6症例いずれも膵疾患(慢性膵炎1例,膵癌4例,転移性膵腫瘍1例)のために脾静脈が閉塞しており,脾門部から閉塞部位の間で局所的に門脈系静脈圧の充進状態にあったものと考えられた.また,全症例で胃静脈瘤は胃噴門部ないし弩窪部から胃体部全体にかけて広範囲に存在する特徴を有していた.これは,高まった脾静脈圧の緩衝経路としての,短胃静脈から胃冠状静脈を介し門脈本幹へ流入する経路,および短胃静脈から胃大網静脈を介し門脈本幹へ流入する経路の2経路により胃静脈瘤が形成されたためと考えられた.また,肝硬変症を合併していた1例と幽門側胃切除の既往がある1例では経過観察中に食道胃静脈瘤の破裂が認められた.「結論」膵疾患に伴う局所性門脈圧充進症に伴った胃静脈瘤の内視鏡的特徴として,胃噴門部ないし宥薩部から胃体部全体におよぶ広範な胃静脈瘤であることが挙げられた.また,このような静脈瘤は,血行動態的に静脈瘤出血の危険性は必ずしも高くない可能性があるが,肝硬変などにより門脈圧充進状態が合併している場合は,静脈瘤出血の危険性を考える必要がある.
  • 塩飽 保博, 小出 一真, 栗岡 英明, 細川 洋平
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1340-1345
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は75歳女性.近医で便潜血陽性を指摘され,内視鏡検査にて腹部食道に腫瘤が認められた.食道癌の診断の下,手術を施行したが,多発性肝転移が認められた.手術は,腹部食道,噴門側胃切除術を施行した.食道腫瘤は直径1cmの丘状型で,深達度sm3の小細胞癌であった.カルボプラチンとエトポシドを用いた術後化学療法を行い,一旦は肝転移巣は消失したが,その後肝転移巣の急速な増大を認め,術後10カ月目に死亡した.
  • 榊原 敬, 神崎 剛志, 小林 敏成, 榊原 宣
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1346-1349
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大動脈瘤の食道穿破は稀とされ.消化管内視鏡検査に関する報告は少ない.今回73歳女性の胸腹部大動脈瘤破裂による食道瘻の1例を経験したので,報告する.胸部大動脈瘤破裂による食道穿破は診断しにくく,消化管内視鏡検査が重要である.これまで粘膜下腫瘍像に注目されてきたが,自験例のように隆起を伴わない症例もあり,その内視鏡像は多彩である.食道内に凝血塊が見れたときには,食道瘻に注意が必要である.こうした場合には,生検や止血操作は危険であると考えられる.
  • 野上 達也, 小尾 龍右, 堀 亮太, 柴原 直利, 嶋田 豊, 田中 三千雄
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1350-1354
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は33歳の女性.多発性硬化症による球麻痺のため経皮内視鏡的胃瘻造設術を施行した.8年後に胃内視鏡検査にて胃瘻内部バンパーに接触する胃粘膜面に胃過形成性ポリープを認めた.同ポリープ発生原因は胃瘻内部バンパーからの機械的刺激が重要なものであると考えた.胃過形成性ポリープの出血や癌化の可能性を考慮すると,胃瘻造設部位からの過形成性ポリープの発生は,胃瘻造設術の合併症として無視できないと考える.
  • 渋谷 和人, 坂東 正, 神山 公希, 橋本 伊佐也, 津田 祐子, 斎藤 文良, 塚田 一博, 清水 哲朗, 霜田 光義, 田中 三千雄
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1355-1359
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は54歳の女性.十二指腸ファーター乳頭腺腫にて外科的乳頭切除術を施行したが,約9カ月後に局所再発を認めた,再発に対する治療としてアルゴンプラズマ凝固法(以下APC)を用いた内視鏡的焼灼術を施行し,腫瘍を消失せしめた.その後2年以上再発はまったく認められていない.ファーター乳頭腺腫の切除後の再発例に対してAPCが有効であった症例は,これまで国外で2例の報告があるのみで,本邦での報告は本例が最初のものである.
  • 近藤 俊彦, 高橋 知秀, 重松 千普
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1360-1363
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は23歳の男性.急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行後,虫垂断端から生じた難治性腸瘻と診断された.保存的治療を行うも改善なく,内視鏡的虫垂口閉鎖術を施行したところ腸痩は閉鎖した.虫垂切除後合併症としての腸瘻は稀であり,再開腹による根治術を必要とすることが多い.今回施行した内視鏡的虫垂口閉鎖術は難治性腸瘻に対する治療法の一つとして有効であると考えられた.
  • 松原 寛, 中西 公王, 土居 万昭, 今岡 大也, 曽我 美子, 谷口 嘉康
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1364-1367
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は46歳女性.肺結核のため6カ月闘の抗結核剤(isoniazid 400mg/day, rilampicin 750mg/day,ethambutol 250mg/day)投与中に下痢,腹痛.血便が出現し,大腸内視鏡検査を施行た.直腸全周に偽膜が見られ,便培養では病原性菌陰性であったがClostridium difficile毒素は陽性を示し偽膜性大腸炎と診断した.抗結核剤投与を停止し,バンコマイシンおよび乳酸菌製剤の経口投与を行い症状軽快し,偽膜の消失を認めた.偽膜性大腸炎は抗生剤投与に起因することが一般に知られているが,抗結核剤によることは稀であるため報告する.
  • 木阪 吉保, 竹下 英次, 三宅 映己, 廣岡 昌史, 南 尚佳, 松井 秀隆, 池田 宜央, 道堯 浩二郎, 渡部 祐司, 恩地 森一
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1368-1372
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は20歳女性.約1カ月間持続する右上腹部痛と発熱を主訴として来院.血中Chlamydia trachomatis(以下クラミジア)抗体が陽性であったこと,腹部超音波検査(以下腹部エコー)で肝,胆,膵等に異常なく,肝と腹壁の間に層状の高エコー域が観察されたことより右上腹部痛の原因はFitz Hugh-Curtis症候群(以下FHCS)と考えた.抗生剤投与による保存的治療を開始し,発熱,炎症反応は軽快したが,右上腹部痛は軽快しなかった.右上腹部痛持続の原因検索,治療のため腹腔鏡検査を施行した.腹腔鏡検査で肝被膜の肥厚,肝右葉前面と腹膜の間に線維性癒着が観察された.腹腔鏡下に癒着を剥離し,術後腹痛は速やかに消失した.FHCSにおいて腹腔鏡検査は,その病態把握のみならず治療においても有用であった.
  • 平山 敦, 須賀 俊博, 藤永 明, 宮川 宏之, 長川 達哉, 阿部 環, 岡村 圭也, 細川 雅代, 田中 道寛, 野村 直弘
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1373-1379
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     〔目的〕十二指腸悪性狭窄に対するself-expandable metalic stent(SEMS)治療におけるSEMS留置成功率の改善,合併症の減少を目的とし,新しいステント挿入法を試みた.〔方法〕十二指腸悪性狭窄15例に対し,イレウスチューブ挿入用に開発されたイレウスエイドシステムの先端バルーン付きロングオーバーチューブ(住友べークライト社製)をステント挿入のガイドアシストとして併用,SEMS留置術を施行した.〔結果〕全例で留置に成功した.従来まで実施していた様々な方法の18例に比べ,SEMS留置成功率は向上し,挿入時間の著明な短縮が可能となった.従来見られた胃十二指腸のたわみによる挿入困難や,誤嚥性肺炎,穿孔,出血などの早期合併症は認められなかった.〔結論〕ロングオーバーチューブを用いた新しいSEMS挿入法は挿入困難例,早期合併症の減少をもたらすとともに,挿入時の苦痛も非常に少なく,極めて有用性が高いと考えられる.
  • 中村 雄太, 乾 和郎, 芳野 純治
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1380-1381
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 江口 貴子, 後藤 田卓志, 小田 一郎, 濱中 久尚, 蓮池 典明, 斉藤 大三
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1382-1387
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    背景:日本では,内視鏡的胃粘膜切除術は早期胃癌に対する侵襲の少ない治療法として標準化されつつある.しかし早期胃癌に対する標準的胃切除術による死亡率は極めて低いため,その適応は慎重に選別されなければならない.そこでわれわれは適応を拡大するにあたり,必要となる条件を検討した.方法:当院にて内視鏡的胃粘膜.切除術により切除された早期胃癌1101病変を対象とした.適応基準は日本胃癌学会ガイドラインと,当院の拡大適応基準を用いた.それぞれの群において評価不能切除率,治癒切除率と局所再発率を検討した.結果:再発率は,評価不能切除において,評価可能切除より有意に高かった.日本胃癌学会ガイドライン内病変と当院の拡大適応内病変では,評価不能切除率に有意差はなかったが,治癒切除率では後.者において有意に低かった.分割切除された群では,適応を拡大しても評価不能切除率に差はなかったが,一括切除された群では適応拡大群において有意に低かった.結論:評価不能切除率および再発率を下げることから,一括切除を早期胃癌に対する内視鏡的胃粘膜.切除術のgold standardとすべきである.
  • 豊田 敬生, 本田 浩仁, 久保 謙一郎, 中園 雅彦, 面家 敏宏, 稲山 久美, 鈴木 雅晴, 六車 直樹, 岡村 誠介, 清水 一朗, ...
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1388-1396
    発行日: 2004/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Helicobacter pylori(H.pylori)感染胃粘膜にみられるびまん発赤の客観的指標として,hemoglobin index(IHb)について検討した.H.pylori陽性例のIHbは平均70.0±10.0,H.pylori陰性例は平均54.3±4.7であり,有意にH.pylori陽性例のIHbが高かった(P<0.0001). 内視鏡像における肉眼的びまん発赤を指標にしたH.pylori感染診断の感度,特異度および正診率は,各々92.6%,66.6%および87.2%てあったが,IHbを用いたH.pylori感染診断の感度特異度および正診率はCut off値を60とした場合,それぞれ95.7%,82.4%および93.0%といずれも肉眼的びまん発赤を指標にした診断よりも高い診断率が得られた.また,肉眼的びまん発赤の有無よりもIHbを用いた方がより客観的に,炎症に伴う組織学的な変化を表していた. さらに,H.pylori除菌前後では,H.pylori除菌後にIHbの有意な低下が認められた.生検組織所見では,うっ血/充血の有意な改善,腺窩上皮(foveola)における赤血球数の有意な減少かみられ,それらはIHbと有意な正の相関関係が認められた. IHbの測定は,H.pylori感染胃粘膜の内視鏡診断および除菌前後の経過観察において,胃粘膜の炎症状態を示す有用な客観的指標になりうると考えられた.
  • 責任者:勝又 伴栄
    三浦 美保, 勝又 伴栄
    2004 年 46 巻 7 号 p. 1397-1400
    発行日: 2004年
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー
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