日本消化器内視鏡学会雑誌
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39 巻, 11 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 片岡 伸一, 大地 宏昭, 豊永 高史, 土細工 利夫, 牧本 伸一郎, 仲本 剛, 上江洲 朝弘, 廣岡 大司
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2245-2252
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     出血性胃潰瘍に対して,内視鏡的エタノール局注止血法を行った際の潰瘍の拡大(二次性の潰瘍形成)について,その発生率,発生因子,予後などを明らかにするために,過去5年間に当院で内視鏡的純工タノール局注法を行った上部消化管出血225例を対象に検討を行った.その結果二次性潰瘍形成は35%に認められ,その発生因子として,治療前の潰瘍が大きいか深いもの,中等大以上の露出血管を有するもの,露出血管が潰瘍の中央寄りに位置するもの,エタノール局注によって活動性の出血が誘発されたもの,1施行当りの局注回数が多いものなどが有意に関与していた.
  • 八尾 建史, 岩下 明徳, 八尾 恒良, 古川 尚志, 古川 敬一, 竹村 聰, 松井 敏幸
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2253-2263
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     電子内視鏡画像データを用い早期胃癌における粘膜ヘモグロビン量を定量化し,胃癌の分化度別に量・分布の特徴的パターンを求めた.早期胃癌17病変(分化型癌13病変,未分化型癌4病変)の電子内視鏡画像を対象とした.内視鏡画像で病変と正常粘膜を含む線分を,標本切り出し線と一致するように設定し線分上の各画素のヘモグロビン濃度指数(IHb)を,求めた.線分上のIHb分布をグラフ化し,類型化を行った.さらに病変部と非病変背景粘膜のIHbの平均値の比(L/B比)を算出した.分化型癌群のL/B比は,未分化型癌群と比較して有意に高値であり,L/B比は肉眼的色調とよく一致していた.IHbの分布パターンは,分化型癌はさざ波型,棘状型,山型に類型化でき,未分化型癌は腫瘍の粘膜内の厚みが増すにつれ波の高低差が背景胃粘膜のそれと比べて減少する傾向が顕著になった.IHbとその分布パターンは早期胃癌の内視鏡的色調を判定するうえで有用な指標と思われた.
  • 田中 優司, 安田 一朗, 冨田 栄一, 名倉 一夫, 松野 祥彦, 後藤 憲, 大西 隆哉, 浅野 寿夫, 西垣 洋一, 高橋 健, 若原 ...
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2264-2271
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は74歳,女性.貧血にて当科受診.上部消化管内視鏡検査にて胃幽門前庭部に放射状に縦走する拡張した毛細血管を認め,胃前庭部毛細血管拡張症(Gastric Antral Vascular Ectasia (GAVE))と診断した.朝日大学附属村上記念病院にて施行されていた10カ月前の内視鏡検査では同所見は認められず,比較的急性の発症と考えられた.また胃底腺領域を中心に著明な粘膜萎縮所見を認め,抗壁細胞抗体陽性,高ガストリン血症の存在から,A型胃炎に合併したGAVEと考えられた.治療はレーザー焼灼を施行し,拡張した毛細血管の消失と貧血の著明な改善が得られた.本邦におけるGAVE報告例48例の考察を含め報告した.
  • 日山 亨, 杉 桂二, 片岡 健, 春間 賢, 梶山 梧郎, 嶋本 文雄
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2272-2278
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は71歳男性.心窩部痛が増強したため,胃内視鏡検査が施行された.胃角部大轡に周堤を伴う不整な潰瘍性病変があり,生検で悪性リンパ腫と診断されたため,胃亜全摘術が施行された.組織学的にはびまん性リンパ腫大細胞型で,免疫組織学的検索にてUCHL-1陽性,L-26陰性であったため,T細胞性悪性リンパ腫と診断した.胃原発T細胞性悪性リンパ腫は極めて稀であり,本邦では本症例を含め9例が報告されているにすぎない.
  • 古川 剛, 大橋 計彦, 木本 昌子, 山尾 拓史, 新田 康夫, 伊藤 彰浩, 内藤 靖夫, 柳沢 昭夫
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2279-2285
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は66歳,男性.粘液産生膵腫瘍の経過観察中のERCPの際,十二指腸主乳頭部(以下,乳頭部)の開口部隆起に表面穎粒状の腫瘍を認め,生検で高度異型を伴う腺腫と診断した.ERCPで膵,胆管に異常は認めず.造影剤の副乳頭からの流出も認めず,EUSで辺縁不整の低エコーの広茎性の腫瘍を認め,十二指腸膵および主膵管,胆管への進展は認めなかった.IDUSでも胆膵管への進展および膵実質浸潤を認めず,乳頭部腺腫と診断し内視鏡的切除術を施行した.病理組織学的に,背景に中等度から高度異型を伴う腺管絨毛腺腫の一部に高分化腺癌を認めた.術後,高アミラーゼ血症を認めたが保存的治療にて寛解した.術後の色素散布による副乳頭は非開存例であった.術前,腺腫と診断され術後腺腫内癌と診断された十二指腸乳頭部腺腫内癌の1例を経験し,内視鏡的乳頭切開術42報告例の検討を含めて報告する.
  • 上田 祐二, 大串 文隆, 湊 義博
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2286-2291
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     消化器症状がなく,糞便検査にて結核菌陰性,潜血反応陰性の活動性肺結核患者6例を対象に全大腸内視鏡検査を行なった.その結果3例で回盲部に散在するアフタ様病変を認め,これらの病変は抗結核剤投与により治癒した.しかし糞便,生検組織からは特記すべき細菌は検出されず,組織学的には非乾酪性肉芽腫を1例に認めたのみだった.本症例におけるアフタ様病変の原因として腸結核を疑わせる臨床経過を示したが確診には至らなかった.
  • 米島 学, 竹内 正勇, 辻 宏和, 橋爪 泰夫
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2292-2298
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は75歳,男性.潰瘍性大腸炎(直腸・S状結腸)の経過観察のため施行した大腸内視鏡検査でS状結腸に径1cm程度の表面平滑,弾性軟の半球状隆起を多数認めた.腹部単純X線検査,注腸検査所見と合わせ,S状結腸腸管嚢胞様気腫と診断した.超音波内視鏡検査(EUS)では気腫は粘膜下層に限局していた.本例のPCIの成因,PCIと潰瘍性大腸炎との関連を考える上で,EUSによる気腫の大腸壁内存在部位診断は有用であった.
  • 藤澤 貴史, 黒田 信稔, 前田 哲男, 萩野 晴彦, 阪本 哲一, 坂下 正典, 中原 貴子, 前田 光雄, 西上 隆之
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2299-2306
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は74歳,女性で,進行大腸癌(por)および乳癌の既往がある.CEA軽度高値のため大腸内視鏡検査を施行,横行結腸に表面結節状のIIa様腫瘍を認めた.実体顕微鏡では正常pitの合間に散在性にIII Lpitを認めた.病理組織学的にはtub1が主体で,深達度はsm1であった.また腫瘍の辺縁部でsigが充実性に増殖しており,tub1からsigへの移行が疑われ,smへの微小浸潤とともにリンパ管侵襲も認めた.以上TypeIIa,tub1 >sig,sm1,ly1・v0,n0,15×10mmの早期大腸癌(非顆粒型側方発育型腫瘍)と診断した.自験例は印環細胞癌のsm初期浸潤例として,また高分化腺癌から印環細胞癌への組織変化を示した症例として貴重と考えられ,早期大腸印環細胞癌の本邦報告例13例の臨床病理学的検討を加えて報告する.
  • 依田 有生, 中川 宗一, 鈴木 岳, 大泉 弘子, 斉藤 雅雄, 政氏 伸夫, 小林 直樹, 小笠原 正浩, 木山 善雄, 直原 徹, 比 ...
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2307-2311
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は59歳男性,上腹部痛,黄疸の精査目的で紹介入院となる.ERCPではVater's乳頭開口部の口側に2つの瘻孔を認め,おのおのの孔から膵管が造影された.更に,その口側にも瘻孔を認め総胆管が造影され総胆管結石及び左肝内結石症を併発していた.瘻孔による胆管,膵管開口部異常は胆石の自然排石が主因と考えられた.肝内結石症に総胆管十二指腸瘻,及び膵管十二指腸瘻を伴う極めて稀な症例を報告した.
  • 久野 篤, 神谷 泰隆, 星野 信, 早川 富博, 伊藤 誠
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2312-2317
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は63歳男性.発熱と左季肋部痛のため入院.腹部超音波検査にて肝膿瘍と診断し経皮経肝的膿瘍ドレナージを施行した.チューブ造影にて下部で交通を有する2つの膿瘍腔を認め,経過中に一方の膿瘍腔と十二指腸との間に瘻孔を認めた.内視鏡検査では十二指腸球部に潰瘍を認めた.起炎菌は証明されなかったが臨床経過から嫌気性菌が疑われた.肝膿瘍の合併症として,消化管への穿通は極めて稀であるため報告した.
  • 篠原 靖, 糸井 隆夫, 武田 一弥, 武井 和夫, 中村 和人, 真田 淳, 堀部 俊哉, 斉藤 利彦
    1997 年 39 巻 11 号 p. 2318-2328
    発行日: 1997/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的乳頭括約筋切開術を施行せずに,生検チャンネルとアングル機構を兼備した経口胆道スコープを胆管内に挿入する目的で,亜硝酸製剤の胆管内投与を併用した内視鏡的乳頭拡張術による経口胆道内視鏡検査を施行した. 胆道スコープの胆管内挿入率は90%と比較的良好で,挿入不能例はいずれも乳頭との適切な距離を保ったまま乳頭を正面視し得なかった症例であった.内視鏡的乳頭拡張術後は全例で乳頭からの血液のoozingを認めたが,特に止血処置は必要とせず,さらに胆道スコープの挿入によりoozingが増悪することはなかった.合併症として15%に急性膵炎を認めたが,全例で保存的に軽快した.経口胆道内視鏡検査の施行目的は,あくまでも診断が主体であり,本来生体が保有する生理機構を破壊せずに施行可能であることが望ましい.亜硝酸製剤の胆管内投与を併用した内視鏡的乳頭拡張術は,直視下生検を含めた経口胆道内視鏡検査において有用な手段であると考えられた.
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