既報の「終末回腸のPeyer板に関する研究一第1報:内視鏡検査例および剖検例における粘膜表面形態および組織学的検討―」において,剖検例のPeyer板を,その粘膜表面形態および組織像から,「リンパ濾胞型(Lymph Follicle Type, LF型)」と「リンパ球集簇型(Lymphocyte Aggregation Type, LA型)」の2型に分類し,また生体下の内視鏡像からはLF型とLA型の中間に「境界型(Border Type, B型)」を設けて,計3型に分類した. 本稿においては,正常の内視鏡検査例および剖検例における終末回腸のPeyer板の出現率,型,性および年齢の状態について臨床統計学的に検討した.その結果,ほぼ全例の終末回腸にPeyer板が観察され,その内訳はLA型がLF型よりも高率であり,B型が最も低率であった. Peyer板の出現率,各型Peyer板の比率および平均年齢については,男女間に有意差を認めなかった.また,各型Peyer板の年齢分布の推移をみると,LF型Peyer板は10歳台に最も高率に分布し,その後は加齢とともに漸減した.一方,LA型Peyer板は,新生児期には高率に出現するが,10歳台に最低となり,その後は再び加齢とともに漸増した.B型Peyer板は20歳台から40歳台において分布し,幼年者,高齢者ではまれであった. 以上の成績とPeyer板の組織像とを併せて考察すると,新生児期のLA型Peyer板は腸管リンパ系組織(Gut-Associated Lymphatic Tissue, GALT)としての機能は未熟であり,幼年期に成熟してLF型Peyer板となる.その後は思春期を過ぎた頃から加齢とともに萎縮性変化を起こし,B型Peyer板を経てLA型Peyer板になると推測された.
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