日本消化器内視鏡学会雑誌
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55 巻, 11 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
総説
  • 倉 敏郎, 日下部 俊朗, 村松 博士
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3527-3547
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    PEGは1980年にPonsky,Gaudererらによって報告された内視鏡的手術である.その安全性と簡便性,経済性から今や脳血管障害等の疾患による経口摂取困難例に対する栄養瘻,あるいは悪性消化管閉塞に対する減圧瘻の第一選択として広く世界的に普及している.
    本邦においては,PEGの造設における新手技の開発,カテーテル交換における工夫,管理に対する全国的に行われるさまざまな啓発活動,また,時期を同じくするNST(栄養サポートチーム)の展開と普及による栄養管理のシステムの向上などの諸条件によって,患者のQOLの向上がもたらされ,世界に類を見ない優れた長期予後が達成されている.しかし一方で,終末期認知症などにおけるPEGの適応について,倫理的観点から見直しを検討する動きもみられ,更なる議論が必要と思われる.また,PEGの特殊性として主に造設を担当する消化器内視鏡医と,管理を担当する主治医が異なること点.造設する場所(急性期病院)と管理する場所(慢性期病院,老人保健施設,在宅など)が異なっておりトラブルの原因となりやすい.このため,多職種によるチーム医療,地域連携が重要となる.
原著
  • 山下 泰伸, 伊藤 啓, 藤田 直孝, 野田 裕, 小林 剛, 尾花 貴志, 洞口 淳, 越田 真介, 菅野 良秀, 小川 貴央, 枡 かお ...
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3548-3554
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(ERCP)後膵炎予防目的に蛋白分解酵素阻害剤が広く投与されている.少量では薬理学的効果が不明確で必要性をretrospectiveに検討した.【方法】NM投与せず施行した連続570例のうち未処置乳頭で膵炎の合併や胃切除の既往のない250例(A群)を対象とした.それ以前のNM 20mg/日を検査前投与した連続586例のうち未処置乳頭で膵炎の合併や胃切除の既往のない対象と同数の250例(B群)を対照とし,膵炎率,膵炎発症危険因子を検討した.【結果】膵炎率,高アミラーゼ血症の頻度は共に4%,18%で統計学的差はなかった.A群で3時間後のアミラーゼ値,臨床症状でのERCP後のNM追加投与は12%であった.多変量解析で危険因子は,45分以上の処置時間であった.【結論】MN 20mg/日の検査前投与ではERCP後膵炎発症率に影響を与えない可能性が示唆された.
症例
  • 朝山 直樹, 北台 靖彦, 永井 健太, 東山 真, 松尾 泰治, 佐野村 洋次, 岡 志郎, 吉田 成人, 上野 義隆, 伊藤 公訓, 田 ...
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3555-3561
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,女性.主訴は心窩部痛,下腿浮腫.初診時血液検査で末梢血好酸球分画の増加と低蛋白血症を認めた.上部消化管内視鏡検査では胃体部に発赤,腫大した皺襞,びらん,及び白色滲出物の付着を広範に認め,生検組織で粘膜内に多数の好酸球が浸潤していた.腹部超音波検査と腹部CT検査で層構造の保たれた胃壁の肥厚と少量の腹水を認めた.蛋白漏出シンチグラフィーより蛋白漏出性胃腸症を伴う好酸球性胃腸炎と診断した.本症例はステロイド剤を使用することなく,プロトンポンプ阻害剤と粘膜保護剤のみで症状,検査所見とも短期間で改善した.
  • 瀧川 英彦, 古土井 明, 菅 宏美, 野中 裕広, 藤本 佳史, 小松 弘尚, 徳毛 宏則, 石田 邦夫, 臺丸 裕
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3562-3567
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性.健診胃X線検査にて胃体部に6cm大の粘膜下腫瘍(submucosal tumor:SMT)様隆起を指摘され当院紹介受診した.上部消化管内視鏡検査でも,胃体部に頂部に潰瘍を伴うSMT様隆起を認めた.CT検査では,胃壁肥厚,両側卵巣表面の腫瘤形成および腹膜結節,ダグラス窩に4cm大の腫瘤形成を認めた.超音波内視鏡下穿刺術(Endosonography-guided fine needle aspiration:EUS-FNA)を施行し,腹膜癌の胃転移と診断した.Paclitaxelとcarboplatin(TC療法)での術前化学療法後に,腫瘍減量手術を施行した.
  • 赤松 拓司, 山下 幸孝, 松本 久和, 谷口 洋平, 中村 文保, 中谷 泰樹, 瀬田 剛史, 浦井 俊二, 上野山 義人, 小野 一雄
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3568-3572
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳男性.スクリーニングの下部消化管内視鏡検査にて,S状結腸に粘膜下腫瘍様の形態を呈する5mm大の病変を認めた.診断的治療目的にEMRを施行した.病理組織学的所見では,粘膜固有層主体に異型の乏しい紡錘形細胞の増殖が見られた.免疫染色ではvimentinが強陽性,epithelial membrane antigen,α-smooth muscle actin,desmin,S-100,c-Kit,PDGFは陰性,CD34は部分的に陽性を呈し,Ki-67陽性率は低かった.これらの所見からbenign fibroblastic polyp(BFP)と考えられた.BFPは比較的新しい呼称であり,現時点では疾患概念は確立していない.類似する形態を示す,平滑筋腫,gastrointestinal stromal tumors,神経線維腫,神経鞘腫,神経周膜腫,inflammatory fibroid polypなどを除外して診断されている.本症例が本邦初の報告と思われ,文献的考察を加えて報告する.
  • 松岡 順子, 松井 謙明, 田代 茂樹, 清水 聡孝, 澤村 紀子, 田中 宗浩, 居石 克夫
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3573-3579
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は22歳女性.下腹部痛,血便を主訴とし来院した.CT上腸重積の状態であり,入院となった.内視鏡時に肛門より観察される3cm大の腫瘤を認めた.用手的に直腸内に還納し,下部消化管内視鏡検査を行ったところ,腫瘤の本体は多結節状の頭部を有するIpポリープであった.ポリープを還納した後より腹痛は軽快し,ポリープを先進部とする腸重積の状態であったと考えられた.待機的に内視鏡的ポリープ切除術を行い,その後症状の再燃なく経過している.成人でのS状結腸ポリープによる腸重積症の報告は少なく,貴重な症例と考えられた.成人の腸重積を来す病変の中には内視鏡治療が可能な大腸ポリープが存在することが示唆された.原因であるポリープを内視鏡切除し得た初めての報告であり,文献的考察を併せて報告する.
  • 矢花 崇, 後藤 啓, 安達 雄哉, 内藤 崇史, 三橋 慧, 鈴木 隆, 近藤 吉宏, 笠井 潔, 篠村 恭久
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3580-3588
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    患者は88歳.体重減少を主訴に来院.CTにて上行結腸癌およびDouglas窩転移が疑われた.大腸内視鏡では直腸S状結腸部に通過不能の狭窄を認めた.Self-expandable metallic stent(SEMS)を挿入し,内視鏡にてSEMS内を通過,上行結腸癌を確認した.さらに通過不能の同部位にSEMSを挿入した.本症例では肛門側の狭窄にSEMSを留置することにより,口側病変の組織診断が可能となった.また,SEMSにて2カ所の大腸悪性狭窄を解除し,外科手術を回避,良好なQOLを得ることが出来た.閉塞を伴う治癒切除不能大腸癌に対する緩和的SEMSについて文献的考察を含めて報告する.
  • 齋藤 大祐, 林田 真理, 三浦 みき, 櫻庭 彰人, 奥山 秀平, 山田 雄二, 徳永 健吾, 小山 元一, 川村 直弘, 高橋 信一
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3589-3593
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    ソラフェニブ投与開始後,消化管に潰瘍性病変を認めた進行肝細胞癌の2例について文献的考察を加え報告する.症例1はソラフェニブ投与開始50日後より食思不振が出現,上部消化管内視鏡検査にて胃体上部後壁に浅い不整形の潰瘍性病変を認めた.症例2はソラフェニブ投与開始60日後に血便が出現し,下部消化管内視鏡検査にてS状結腸に縦走する浅い潰瘍性病変を認めた.いずれの症例も,潰瘍性病変の形態からその原因にソラフェニブによる血流障害が疑われ,休薬により症状は改善した.また大腸の病変に関しては,休薬後に内視鏡を再検し潰瘍の瘢痕化が確認出来た.
  • 棚橋 仁, 沖本 忠義, 児玉 雅明, 村上 和成, 藤岡 利生
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3594-3597
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    透析患者に生じたセフトリアキソンによる胆嚢総胆管偽結石の1例を報告する.54歳の女性が大腸憩室炎を発症し,セフトリアキソンが投与された.第13病日に右季肋部痛が出現し,肝胆道系酵素の上昇とCTで胆嚢・総胆管内に高吸収構造物を認めた.入院時のCTでは指摘できず,同薬剤による偽結石と考えられた.内視鏡的胆道ドレナージを行い,第33病日に胆嚢・総胆管内の高吸収構造物は消失した.セフトリアキソンによる偽結石は比較的短期間に自然消失すると報告されているが,胆道閉塞を生じた場合や消失に時間を要する場合は,胆道ドレナージを考慮すべきである.
  • 加藤 功大, 峯松 秀樹, 真喜志 知子, 千代田 啓志, 大城 拓巳, 羽根田 賢一, 大中 祐太郎
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3598-3604
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性.急性化膿性胆管炎を発症し胆管ドレナージ目的の胆管ステント留置術を施行し,ERCP後膵炎を予防するために膵管ステントを留置した.後日,腹部CTにて膵体部に膵管ステントが迷入していることが判明した.このため,膵管ステント抜去術を施行した.膵管径が小さく,内視鏡処置に苦慮することが予想され,血管内処置具であるGooseNeckTM Microsnareを使用し回収することができた.2012年より内視鏡的膵管ステント留置術が保険収載となり,今後こうした症例が増えてくる可能性がある.今回デバイスを工夫することで比較的容易に抜去し得た症例を経験したため報告する.
経験
  • 山田 真也, 竹村 健一, 土山 寿志
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3605-3608
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    2010年10月に改良されたムコゼクトーム(Pentax社製)が発売された.改良型は回転性能が大幅に向上.また,ハンドルとデバイスが一体化され,裏側マーカーの視認性も向上した.2011年1月~12月までに大腸腫瘍23例(平均腫瘍径33.6mm)ESDを行った.結果,術時間平均54分,一括切除率100%,穿孔0,後出血1例と安全に使用可能であった.ニードルナイフを除くディスポーザブルナイフ使用は平均1.13本で,術中止血回数は2.4回と従来の方法(フラッシュナイフでは4.5回)に比べると少なく,安全性の面からも,また医療経済的な面からも優れた処置具であると考えられた.
手技の解説
  • 山本 安則, 池田 宜央, 阿部 雅則, 日浅 陽一
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3609-3616
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    食事由来の脂質の中で,特に飽和脂肪酸は,動脈硬化性疾患,非アルコール性脂肪肝炎,種々の癌腫の発癌において重要な危険因子である.飽和脂肪酸は,食事中の中性脂肪が膵リパーゼなど消化酵素により脂肪酸の状態まで加水分解された後,主に上部空腸粘膜より吸収される.安定性・非放射性同位元素13C標識脂肪酸試薬を用いた13C呼気ガス診断は,小腸の脂肪酸吸収能を評価することができるが,従来からこの試験は経口投与で行われており,胃の排出時間の差がその結果の評価を困難にしていた.そこで,上部消化管内視鏡下に胃を介さず十二指腸に直接試薬を散布する方法を開発した.飽和脂肪酸は,常温で固形,水に不溶であるため,内視鏡投与のためには飽和脂肪酸を液状化する技術が必要だが,それは経腸栄養剤ラコールの乳化作用を利用することで可能である.この内視鏡アプローチ法によってより正確な小腸脂肪酸吸収能を評価することができる.
  • 遠藤 克哉, 志賀 永嗣, 黒羽 正剛, 下瀬川 徹
    2013 年 55 巻 11 号 p. 3617-3623
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/30
    ジャーナル フリー
    内視鏡的バルーン拡張術は,低侵襲で簡便かつ安全に狭窄解除が得られ,外科的手術によるQOLの低下を阻止しうる優れた治療手技である.バルーン式小腸内視鏡の登場により,現在は深部小腸を含めた全消化管の狭窄に対して施行可能な手技となっている.拡張用バルーンには,through-the-scope(TTS)バルーンとover-the-wire(OTW)バルーンの2種があるが,近年は,手技が簡便で治療中に拡張部位を視認できるTTSバルーンの使用が一般化している.本稿では,TTSバルーンによる腸管狭窄に対するバルーン拡張術の適応,手技の実際とコツ,合併症について解説した.さらに,本分野における最近のトピックスであるクローン病の腸管狭窄に対する有用性についても解説した.バルーン拡張術成功の鍵は,適切な症例選択と過度の拡張の回避がポイントである.
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