症例は62歳男性.肝胆道系酵素の上昇と肝内胆管拡張を指摘され,精査目的にて当科紹介入院となった.MRCP,ERCPでは膵頭部主膵管は狭細化し,分枝の拡張と尾側主膵管の軽度拡張を認めた.また,胆管は下部で狭窄し,肝内胆管にも右葉を中心に広範な多発性の狭窄・硬化像を認めた.膵管像からは自己免疫性膵炎が疑われたが,胆管像については原発性硬化性胆管炎の合併も疑われる所見であった.その後の精査にて,血清IgG4の上昇がみられ,さらに膵頭部に対してEUS-FNAを施行した結果,リンパ球・形質細胞を主とする炎症性細胞浸潤と線維化を認めた.自己免疫性膵炎と診断しステロイド投与を開始したところ,肝胆道系酵素,血清IgG,IgG4の上昇,ならびに画像所見においては膵管狭窄の改善のみならず胆管狭窄像の著明な改善を認めた.広範な胆管病変を伴う自己免疫性膵炎は,ときに原発性硬化性胆管炎との鑑別が困難な場合があるが,本症例は治療経過により最終的に鑑別可能であった.
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