日本消化器内視鏡学会雑誌
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38 巻, 6 号
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  • 中村 真一, 光永 篤, 村田 洋子, 鈴木 茂, 林 直諒
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1309-1321
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     クリッピングと5%ethanolamine oleate iopamido1(5%EO)による静脈瘤内注入硬化療法の併用療法を食道静脈瘤18例に施行し,その成績と有用性を検討した.平均の治療回数2.5±1.8回,使用クリップ数3.3±1.4個,5%EO注入量21.4±14.6mlによる治療で,18例全例(100%)がFIRC(-)以下に改善し,7例(38.9%)で完全消失を認めた.平均観察期間15.5±4.7カ月で,13例(72.2%)で治療効果を認め,7例(38.9%)で完全消失を維持できた.クリッピングの併用で硬化療法単独治療に比し治療回数が軽減でき,有意に少量の硬化剤で同等以上の治療効果を認めた.クリッピングは静脈瘤の形態変化が少なく,静脈瘤内注入硬化療法を併用する場合に適している.クリッピングで静脈瘤血流が遮断され硬化剤を効率よく注入でき,十分な供血路治療が可能である.食道静脈瘤造影が得られ,巨木型静脈瘤やシャントを有する治療難渋例にも対処でき,有用な治療法であると考える.
  • 松永 厚生, 望月 福治, 藤田 直孝, 安藤 正夫, 富永 現, 野村 美樹子, 野田 裕
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1322-1331
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     早期大腸癌65例を対象とし,細径超音波プローブ(MS)の病変描出能と深達度正診能を検討した.病変と近傍の壁構造が描出できたものを病変描出例とすると,早期癌全体の病変描出率は85%(55/65)で,1型65%(11/17),II型92%(36/39),結節集簇様病変89%(8/9)とI型での描出が困難であった.病変描出例での深達度正診率は早期癌全体では89%(49/55)で,1型82%(9/11),II型94%(34/36),結節集簇様病変75%(6/8)であった.また,sm1癌では20%(1/5)と低く,m癌と浅く診断される傾向にあった.m癌では91%(20/22),sm2,3癌では100%(28/28)と良好な深達度正診率であり,MSは内視鏡的切除術の適応判定に有用な診断法と考えられた.一方,腫瘍高別の病変描出率,深達度正診率は,II型では良好であったが,腫瘍高が11mm以上では超音波の減衰のため低下した.従って,MSの病変描出能,深達度正診能の向上には腫瘍高への対策とsm1癌の診断の確立が重要であると考えられた.
  • 天木 秀一, 茂木 積雄, 森山 光彦, 田中 直英, 椿 浩司, 大久保 仁, 石塚 英夫, 荒川 泰行
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1332-1339_1
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     自己抗体が陽性のC型慢性肝炎例の腹腔鏡所見について検討した.対象はC型慢性肝炎133例であり,B型慢性肝炎55例ならびにAIH19例と比較検討した.抗核抗体陽性率はC型で15%,B型では20%であり統計的有意差を認めなかった.B型とC型の腹腔鏡所見を比較するとC型では溝状陥凹,小陥凹を有する率が高かった(p< 0.05).またC型の赤色紋理はmultilobularな形態で,localizedな分布が特徴的であった(p< 0.05).C型慢性肝炎において抗核抗体陽性例は陰性例と比較して,特徴的な腹腔鏡所見は認めなかった.しかし,抗核抗体の抗体価が高く,高γグロブリン血症を呈する例ではステロイドが著効した.さらに今回抗LKM1抗体陽性C型慢性肝炎(AIHII型)2例を経験し腹腔鏡所見について検討したが,他のC型肝炎例との明かな相違は認められなかった.
  • 今津 博雄, 宮本 洋二, 河田 充弘, 中山 雅樹, 松井 勉, 北野 悟, 松村 雅彦, 福井 博, 辻井 正
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1341-1349_1
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれはF2,RC陽性以上の食道静脈瘤症例30例に対して内視鏡的治療の前後でMRAngiogram(MRA)を用いて門脈血行動態を観察し,Endoscopic variceal ligation(EVL)単独もしくはEVLとEndoscopic injection sclerotherapy(EIS)の併用療法の治療効果および治療後の予後について門脈血行動態との関連のもとに検討を加えた.EVL単独やEVLと1% Aethoxysklerolの血管外注入によるEISの併用では供血路が温存されるのに対し,EVLと5% ethanolamine oleateの血管内注入によるEISの併用では供血路が消失する傾向にあった.また治療後にMRAで供血路が残存していれば,RCsignが再発しやすい傾向が認められた.EISにEVLを併用すると硬化剤の使用量を減らすことができ有用であるが,特に再発予防の面からはEVLと供血路の栓塞が可能な血管内注入によるEISの併用が有用と思われた.
  • 河上 純彦, 杉山 敏郎, 淡川 照仁, 足立 靖, 今井 浩三, 矢花 剛, 柴田 香織, 山口 修史, 仲 紘嗣, 奥瀬 哲
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1350-1354
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     近年上部消化管内視鏡を介したHelicobacter pylori (H. pylori)感染が注目され,効果的な洗浄法が検討されている.検査後の洗浄には,より簡便で,迅速な消毒法が望まれる.本研究では,短時間ですぐれた殺菌消毒効果を持ち,生体に安全な消毒剤として注目されている強酸性電解生成水(以下強酸性水)を用いた簡易洗浄後のH. pyloriの残存をPCR法にて検討した.対象21症例中18症例に胃生検組織より,H. pyloriが迅速ウレアーゼ法,培養法で検出された.15症例(83.3%)に行った洗浄前の内視鏡よりH. pyloriが検出された.水道水洗浄後においては53.3%にH. pyloriが検出された.強酸性水洗浄後においては内視鏡からH. pyloriは一切検出されなかった.強酸性水を用いた簡易洗浄法は安全かっ,簡便に操作ができ,H. pylori感染予防に有用な方法であることが示唆された.
  • 岡田 真樹, 小西 文雄, 岡本 朋, 劉 慶華, 仙波 真吾, 小島 正幸, 富樫 一智, 佐藤 知行, 古田 一裕, 小澤 昭人, 柏木 ...
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1355-1362
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     超音波内視鏡検査(EUS)の深達度診断に基づく直腸癌治療方針の選択の妥当性について検討した.術前のEUSによる深達度にて,治療方針が異なるI群(M~SMslight),II群(SMmassive~MP),III群(SS,A1~)に分けた直腸癌94例の深達度診断能(正診率)は,I群88.2%,II群78.6%,III群79.6%であった.判定を誤った原因は,II群では6例全例でMPを越える微小浸潤をEUSで捉えられなかったためであり,III群では10例中4例で炎症性細胞浸潤を癌と判定したためであった.これらはEUSの診断限界と考えられた.EUSの深達度診断に従って治療した症例の累積無再発生存率はI群93.3%,II群94.4%,III群76.9%であり,局所再発はIII群の2例にのみ認めた(自律神経非温存術施行例).以上よりEUSの深達度診断に基づく直腸癌治療方針の選択は妥当であり,EUSの臨床的意義は充分にあると考えられた.
  • 丸山 茂雄, 大山 賢治, 小村 秀史, 松本 浩孝, 片山 俊介, 草壁 由香, 川崎 寛中
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1363-1367
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は44歳,女性.熱湯茶を飲んだ後,胸骨後部痛出現,翌日新鮮血を吐血したため当科受診した.内視鏡検査にて,食道入口部から下部食道に渡り,全周性に出血を伴ったびらんおよび水疱形成が認められた.食道炎の発生原因には種々あるが,本症例は熱湯茶による熱傷が原因と考えられた.原因不明の食道炎の中には,本症例のごとく,飲食物による食道炎も考えられ,注意深い問診と積極的な内視鏡検査の施行が必要であると考えた.
  • 牛谷 義秀, 長手 基義, 瀬下 明良, 牛谷 宏子, 山川 泰利
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1368-1372_1
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は26歳,男性.嘔気をともなう間欠的な臍周囲痛を主訴に緊急入院し,腹部超音波検査,腹部CT検査および注腸検査にて腸重積と判明,大腸内視鏡検査による生検にて上行結腸原発の悪性リンパ腫が疑われたが確定診断を得ることは困難であった.外科的切除後の病理組織学的検索にて大腸原発の悪性リンパ腫と判明し,術後化学療法にて順調な経過をたどっている症例を経験したので報告する.
  • 伊藤 聡, 大高 道郎, 奥山 厚, 神 万里夫, 大谷 節哉, 岩淵 朗, 笹原 秀明, 石岡 知憲, 正宗 研
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1373-1377
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Osler病で出血した胃毛細血管拡張の治療に,ヒータープローブ法が有効であった症例を報告する.77歳,女性.胃体上部後壁に易出血性の毛細血管拡張を認め,最初エタノールを2度にわたり注入,その後ヒータープローブで焼灼し潰瘍が瘢痕化した.他に胃内に4個の毛細血管拡張を認め,3個はヒータープローブ焼灼により瘢痕化したが,1個のみ2度のヒータープローブ焼灼後も毛細血管拡張が再出現した.貧血は改善しており経過観察中である.
  • 味村 俊樹, 倉本 秋, 永野 嘉昭, 橋本 政典, 小林 薫, 小林 正則, 酒井 滋, 上西 紀夫, 山川 満, 大原 毅
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1379-1383_1
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     直腸カルチノイドは大腸内視鏡検査(以下CF)の普及と共に症例数が増加しているが,本邦での多発例は1.4%と稀である.今回直腸に2個のカルチノイドを有する症例を経験した.症例は39歳女性.卵巣癌の術前検索のCFでRbに径8mm大のカルチノイドを認めた.卵巣癌の治療後,再度CFを施行すると既知の腫瘍の近傍に径5mm大の黄白色腫瘍を認め,多発カルチノイドと診断し,経仙骨式直腸楔状切除術を施行した.深達度は共にsmであった.
  • 小林 真哉, 神谷 泰隆, 星野 信, 早川 富博, 大原 弘隆, 田中 明隆, 山田 珠樹, 水野 清, 山田 尚史, 稲垣 孝憲, 中沢 ...
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1384-1389_1
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,56歳男性.主訴は肝機能異常の精査.腹部超音波検査,CT,経皮経肝胆道造影,血管造影の所見より,肝門部狭窄を伴う切除不能の肝内胆管癌と診断した.治療開始前より高値を示したALPおよびγ-GTPはともに低下傾向を示し,死亡直前まで黄疸も出現しなかった.胆管像および臨床経過より原発性硬化性胆管炎(PSC)も否定できず,ウルソデオキシコール酸,プレドニゾロンを投与したところ大量に貯留していた腹水はほぼ消失した.確定診断を得るために行った腹腔鏡では左葉全体が凹凸不整で血管新生が著明であり,生検では著明な繊維化を伴う低分化型腺癌であった.特異な経過を示し,PSCとの鑑別に難渋した胆管周囲増殖型肝内胆管癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 宇野 裕典, 樋口 和秀, 佐伯 善彦, 斯波 將次, 鈴木 典子, 山岡 加林, 清水 泰夫, 小畠 昭重, 福田 隆, 鎌田 悌輔, 荒 ...
    1996 年 38 巻 6 号 p. 1390-1397
    発行日: 1996/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     1992年7月より1994年12月までに食道静脈瘤患者60例に対し予防的あるいは待期的に内視鏡的食道静脈瘤結紮術(Endoscopic Variceal Ligation:EVL)を施行した.その中で,術後数日後に大量出血し,出血性ショックを呈した症例を4例(6.7%)経験した.これら術後出血例の術前の形態はいずれもF2RC++以上であり,比較的大きく発達したものであった.出血部位は結紮部の潰瘍辺縁,あるいは結紮を行えなかった他の静脈瘤からのものであった.また出血は,術後第6~10日目の食事後に起こり,O-ring脱落時期の経口摂取が誘因となる可能性も示唆された.治療には全例,食道静脈瘤硬化療法(Endoscopic Injection Sclerotherapy:EIS)による止血が必要であった.合併症が比較的少ないと言われているEVLではあるが,術後出血という重篤な合併症が起こりえることがあり,その施行には十分な注意が必要であると考えられた.
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