当科では2チャンネルスコープを用い非局注法でEMRを施行してきた.1978年から2004年までEMRを施行した早期胃癌784例,842病変について偶発症を検討した.出血が28例,29病変(3.4%),穿孔が5例,5病変(0.6%)にみられ,偶発症発生率は4.0%であった.出血の高危険群はU領域病変,小彎病変,分割切除病変,慢性腎不全であった.唯一外科手術となった出血例は,吐血の症状発現から止血術までの対応の遅れた例であり,出血1時には可及的速やかに内視鏡的止血術を施行すべきである.穿孔の高危険群は体部大彎病変であった.穿孔5例中2例は内視鏡的クリッピングにより保存的に治癒した.穿孔時には内視鏡的クリッピングはまず試みられるべき手技である.当科における偶発症頻度は局注法を用いた他施設の成績と比較して遜色なく,2チャンネル法を用いた早期胃癌に対するEMRにおいては,粘膜下層への局注は必須ではないと考えられた.
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