日本消化器内視鏡学会雑誌
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25 巻, 9 号
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  • 竜田 正晴, 奥田 茂
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1331-1336
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     十二指腸潰瘍の治癒・再発と酸分泌領域との関連および加齢による酸分泌領域の変化をCongo red testを用い検討した. 酸分泌領域の拡がりと十二指腸潰瘍の治癒・再発との間には密接な関連が認められ,酸分泌領域の広汎な十二指腸潰瘍では,治癒は遷延し,再発も多いが,酸分泌領域の少ないものでは治癒は容易で再発も少ない. 十二指腸潰瘍では健常者,胃潰瘍たくらべ酸分泌領域が広汎なものが多く,しかも広汎な酸分泌領域が健常者以上に長期にわたり維持されることが特徴的である.
  • 富永 吉春, 関谷 千尋, 矢崎 康幸, 高橋 篤, 大原 和明, 並木 正義
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1337-1346
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     同時期に行なった腹腔鏡所見と肝シンチグラム291例の肝疾患症例のうち,22例(7.6%)に横隔膜による肝圧痕がみとめられた.性別頻度では,男性5.5%,女性14.1%と女性に高い頻度を示した.年齢別では,高齢になるほど頻度が高く,70歳以上では30.1%と非常に高い頻度を示した.各疾患別頻度では,急性肝炎5.2%,慢性肝炎1.6%と頻度が低いのに対し,肝硬変では18.2%,脂肪肝では16.7%と肝腫大の強いものに,またそれが長期にわたるものに高い傾向を示した.この圧痕は,それ自体病的な意義はないと思われるが,臨床的には肝シンチグラムにて欠損像を呈するため他の限局性肝疾患と間違われることが多いため注意を要する.鑑別のポイントとしては,肝門部にそってhorizontalに走る索状の陰影欠損としてみられることであり,確診は腹腔鏡検査をすれば得られる.
  • 川本 博司, 山村 倫子, 竜田 正晴, 奥田 茂
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1347-1352
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Glucagonの胃運動抑制効果を基礎的および内視鏡的に検討した.Acetaminophenによる胃排出機能検査では服用後30分の血清acetaminophen濃度は対照群の24.8±3.7μg/mlに比し,glucagon処置群では7.8±2.1μg/mlと有意に低く胃排出は著明に抑制されていた.Glucagon処置群とbutropium bromide処置群との間には有意差をみとめなかった.Glucagonの胃蠕動抑制効果を内視鏡的に検討し,glucagon処置群は対照群に比較して有意に胃蠕動の抑制をみとめた.Glucagonのこの効果は内視鏡的にもbutropium bromideに匹敵していた.Glucagonはbutropium bromideに比して副作用がきわめて少なく,上述のすぐれた胃運動抑制効果ともあいまって,心疾患,前立腺肥大,緑内障など抗コリン剤禁忌例の上部消化管内視鏡検査時の前処置薬として使用しうる.
  • 金沢 秀典, 坂本 文夫, 牧野 隆光, 幸坂 宣俊, 堂園 孝史, 古川 陽太郎, 石田 博, 平川 恒久, 黒田 肇, 常岡 健二
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1353-1365
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃癌52例(進行癌43例,早期癌9例),胃肉腫8例(平滑筋肉腫6例,悪性リンパ腫2例)および空腸平滑筋肉腫2例の計62例に対し腹腔鏡検査を実施した. 胃癌52例中病変部が照診域に存在した症例は44例(進行癌36例,早期癌8例)であった.このうち胃切除可能であった33例について漿膜所見と切除標本での深達度を対比すると,早期癌7例の漿膜面には異常なく,早期癌1例・pm癌3例,ss癌3例では漿膜上に血管増生を認め,ss癌3例およびs(+)の16例では露出した腫瘍が観察された. 胃癌52例中手術を施行した41例について,術中所見と腹腔鏡所見を対比すると,小網・大網・腹膜・肝における癌の浸潤や転移は腹腔鏡にて良く観察されたが,膵・リンパ節の検索は不充分であった.一方,手術不能例では,高度の周辺浸潤や転移が観察され,手術適応の決定に有用であった. 肉腫10例中腫瘍を観察しえた例は,管外性発育を示した平滑筋肉腫7例と,壁内性発育を示した悪性リンパ腫の1例であった.平滑筋肉腫7例中6例に特徴のある腫瘍像が観察され,うち3例では生検併用にて確定診断を得た.管外性発育を示す上部消化管肉腫では,腹腔鏡検査は診断に有用と思われた.
  • 北野 寛
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1366-1373
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     昭和56年6月から57年9月迄の1年3カ月間の連続660例に対するOne man methodの成績は前・中・後期で盲腸到達率は96.5~97.2%と有意の差はなかったが,平均盲腸到達時間は約8分,7分,6分と短縮された.しかしながら,total colonoscopyの時間を盲腸到達時間の約2倍当てたにもかかわらず,スコープの観察死角と腸管内残渣による障害で,完全な検査をなしえたと判断可能なケースは1例もなかった.これを補うために,大腸精密検査法としてはバリウム注腸造影検査同日併用total colonoscopyを試みたところ,そのルーチン化が進むにつれ1度で精密検査を完了出来る場合が激増した. colonoscopy単独による全大腸の綿密なスクリーニングを可能とするには手技の進歩のみでは不充分であり,前処置や機器の性能に関しても解決すべき問題点が多々あることを指摘し,具体的対策について述べた.
  • 荻野 幸伸, 神津 照雄, 円山 正博, 山崎 義和, 高橋 敏信, 谷口 徹志, 久賀 克也, 佐藤 博
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1374-1381
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     町田製作所と東芝メディカル社の共同開発によるリニア電子走査式超音波内視鏡は,次第に機種の改良が進み現在の4号機でほぼ実用段階に至ったと考えられる.われわれは,1981年6月から1982年12月までの期間に計50例に本検査を行い,上腹部疾患における有用性を検討してきた.本稿では4号機症例を中心にリニア電子走査式超音波内視鏡の有用性を報告するとともに,われわれの使用している先端バルーンの有用性についても報告した.本検査により.食道癌・胃癌における深達度,浸潤範囲および転移リンパ節診断,粘膜下腫瘍の鑑別診断等が可能であり,膵疾患では腹壁・消化管ガスの影響のない明瞭な像を描出できた.今後本検査が,新しい超音波診断法として上腹部疾患に活用されることが十分に期待できる.
  • 松原 了, 神徳 純一, 加陽 直実
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1382-1387_1
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は69歳の男性で,嚥下障害を主訴とし,たまたま行った上部消化管造影で,上十二指腸角に50×42mmの平坦隆起型の腫瘍病変が見出された.内視鏡所見でも病変は境界明瞭な辺縁を有する平坦隆起型で,中心はやや陥凹し,その部の表面は粗大顆粒状で潰瘍形成はなかった.二度にわたる生検の結果腺腫と診断されたが,X線所見と内視鏡所見から悪性の可能性も否定できなかったため手術に踏み切った.肝硬変,低肺機能など全身状態が悪く,poorriskの患者であったため,手術は幽門側胃切除及び十二指腸楔状切除,ビルロートI法にとどめたが,残念ながら肺合併症のために救命できなかった.切除後の病理診断は,乳頭状増殖を示す高分化型高円柱腺癌で粘膜上皮内にとどまる早期癌であった.平坦隆起型の早期癌の報告は,本邦で3例のみで,診断・治療面でも多くの問題点を含むと考え,従来の早期十二指腸癌21例を併せて検討した.
  • 山本 耕二, 三木 保史, 江川 博, 尾野 光市, 勝見 正治
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1388-1391_1
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     十二指腸ポリープは比較的稀な疾患であったが,内視鏡技術の進歩により,その発見頻度は増加し,更に内視鏡的ポリペクトミーが広く行われる様になった.その症状の一つにポリープからの出血があるが,本邦では13例の出血症例の報告があるに過ぎない.今回わたしたちは十二指腸ポリープの出血症例を経験したので,文献的考察を加えて報告した.患者は44歳の女性で下血を主訴とし,内視鏡検査で十二指腸下行脚に有茎性のポリープからの出血を認め,後日内視鏡的ポリペクトミーの施行に成功した.切除ポリープは山田IV型で,大きさは20×15×10mmで組織学的には腺腫であった.
  • 林 繁和, 江崎 正則, 中村 常哉, 佐竹 立成
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1392-1399
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は56歳,男性で台湾出征時と復員後の昭和28年,30年に粘血便症状があり,その後の海外渡航歴はない.今回,昭和55年9月,粘血便にて当科を受診し,注腸造影で盲腸の変形,拡張不良を認めた.内視鏡検査で盲腸の虫垂開口部辺縁に浅い不整形の潰瘍性病変を認め,同部の生検組織より潰瘍底部の肉芽組織に混在して赤血球を貪食したアメーバ原虫を認めた. 本邦では稀な疾患となりつつあった赤痢アメーバ症はここ数年来,再び増加傾向にあり注目されている.最近10年間に本邦で報告された赤痢アメーバ症81例を集計し,最近における本症の現況についても考察を行った.検討した81例のうち大腸に病変を認めたものは64例で部位不明例を除いた48例のうち回盲部に限局した例は5例にすぎず,このうち内視鏡検査が施行され生検組織より診断し得たのは自験例のみであった.
  • 芦田 潔, 木津 稔, 高田 洋, 加藤 大典
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1400-1404_1
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     直腸のIIa+IIc型癌症例に対して,アルゴンレーザー光によるHpD光化学治療を行ない局所病変の完全治癒をえたので報告した.患者は直腸前壁にIIa+IIc型癌を有し,ポリペクトミーによる切除が困難であり,また無症候性の心筋硬塞を合併したためレーザー治療が行なわれた.ヘマトポルフィリン誘導体(HpD)3.0mg/kg静注後,アルゴンレーザー光を波長514.5nm,出力0.4Wで計25分間病変部に分割照射した.照射24時間後に,病巣は境界明瞭に壊死,潰瘍化し,6週間後には完全に治癒した.経時的生検で癌細胞を証明せず,また光過敏症を含めて本法による副作用は認められなかった. 本治療法は腫瘍親和性物質であるHpDをレーザー光により活性化させる分子レベルでの癌局所治療法であり,腸管穿孔などの偶発症のない極めて安全な方法である.今後,外科的治療にハイリスクを有したり,手術を拒否する消化管悪性腫瘍患者に積極的に応用されるべき治療法と考える.
  • 谷 ロベルト・ダニエル, 谷口 徹志, 神津 照雄, 高橋 敏信, 荻野 幸伸, 小野田 昌一, 磯野 可一, 佐藤 博
    1983 年 25 巻 9 号 p. 1407-1412_1
    発行日: 1983/09/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は45歳の女性,血便があり,近医で注腸造影,大腸内視鏡検査にて,S状結腸ポリープを指摘され,当科に紹介される.注腸造影ではS状結腸に直径1cmのポリープを認め,大腸鏡検査では肛門より28cmに上半分は白色苔があり,下半分は赤色調の粘膜で覆われた山田III型のポリープが認められた.生検像では一見肉芽腫を思わせたが,小血管からなり,間質に円型細胞浸潤を認め,悪性所見はみられなかった.しかし血便が主訴のため内視鏡的ポリペクトミーを施行した.術中,術後合併症はなく,剔出されたポリープは4×3×3mmで組織学的には海綿状血管腫であった.文献的に調べ得た消化管の血管腫272例では大腸におけるものが半数を占めているが,海綿状ポリープ型は少なく,本例のように内視鏡的に治療できた症例は非常に稀と思われた.
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