多くの内視鏡医は,これまで,上部消化管内視鏡検査において,頭頸部領域を詳細に観察し,「頭頸部癌の早期診断する」と言う概念を持っていなかった.しかしながら,頭頸部癌は患者背景やリスクファクターが食道癌に類似しており,臨床上頭頸部・食道重複癌が問題になることも少なくない.さらに,近年開発された狭帯域内視鏡(Narrow Band Imaging:NBI)を用いることで,いままで発見が困難だった中下咽頭の上皮内癌を見つけられることが報告されている.中下咽頭癌を早期診断できれば,内視鏡治療も可能であり,失声や嚥下障害を伴う咽喉頭全摘術を回避することができ,臓器温存や患者のQOL向上の観点から,極めて重要である.
実際の上部消化管内視鏡検査の際には,消化管での観察同様,見落としの無いよう口腔内から食道入口部かけて系統だった観察が必要である.さらに,容易に嚥下反射が誘発され,観察が困難になるため,愛護的な操作が必要である.頭頸部表在癌の診断には,NBIが有用であり,NBIを用いた頭頸部表在癌の現時点での診断基準は,境界明瞭なbrownish area及び病変内の拡大観察で拡張した異型血管の増生を認めることである.
本稿では,消化器内視鏡医が知っておくべき上部消化管内視鏡検査における,頭頸部領域観察手技の実際と癌の早期診断を中心に解説する.
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