日本消化器内視鏡学会雑誌
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52 巻, 5 号
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総説
  • 千野 晶子, 菅沼 孝紀, 浦上 尚之, 岸原 輝仁, 小川 大志, 五十嵐 正広
    2010 年 52 巻 5 号 p. 1381-1392
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    前立腺癌や子宮癌において放射線治療が第一義的な治療となる例は多い.放射線照射により影響を受ける骨盤内組織や腸管に対する障害は,腸管運動の障害をはじめ,直腸およびS状結腸の出血性変化や潰瘍,狭窄,瘻孔形成,さらに小腸潰瘍などに及ぶ.放射線による障害は発症時期により早期障害と晩期障害に分けられ,両者の病態は病理学的にも違うため予後や対処方法は異なる.晩期障害の代表的症状は,血便が約8割を占め排便障害や肛門痛などがある.放射線性腸炎には経過別,重症度別,病理学的な分類があり,効率的な治療戦略をたてるため各分類の特徴を把握することが重要である.治療指針において未だ確立されたものはないが,頻度の高い出血例に対しては,内視鏡的止血術の施行例が増えており,なかでもアルゴンプラズマ凝固法は簡便かつ安全で有用である.しかし,潰瘍を伴うものは粘膜の脆弱性もあり内視鏡的治療に固執せず,出血と潰瘍両方の病態に効果がある薬物注腸療法を考慮すべきである.また,腸管穿孔や狭窄例においては高圧酸素療法も注目すべき治療と考えられる.狭窄や瘻孔例は,症状増悪を回避するために外科手術が適応される場合もあるが,術後の合併症の問題も多く慎重な検討が必要である.
原著
  • 鈴木 雅貴, 小野寺 博義, 鈴木 眞一, 虻江 誠, 野口 哲也, 内海 潔, 野村 栄樹
    2010 年 52 巻 5 号 p. 1393-1402
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    【背景・目的】胆管癌,膵管内乳頭状粘液性腫瘍(IPMN)は常に水平方向進展が問題となる.そこで非常に高い分解能を持つoptical coherence tomography(OCT)を用いて水平方向進展の描出能について検討した.【対象・方法】手術を施行した胆管癌2例,乳頭部癌4例,IPMN4例の計10例についてOCTと管腔内超音波検査法(IDUS)を施行し,病理組織標本と比較検討した.【結果】胆管では,非癌部の粘膜上皮,線維筋層,漿膜下層が境界明瞭に区別され,ルーペ像に近い画像が得られた.胆管粘膜肥厚部では癌の壁内進展と,炎症性肥厚との鑑別が可能であった.膵管では数十μm以下の粘膜肥厚の描出も可能であった.【結論】OCTはルーペ像に近い画像が得られ,IDUSでは描出不能であった微細な粘膜構造を捉えることができる.今後膵胆道腫瘍の水平方向進展度診断には非常に有用となる可能性が示唆された.
症例
  • 村脇 義之, 吉村 禎二, 三浦 将彦, 木科 学, 安積 貴年, 結城 崇史, 田中 新亮, 山田 稔, 吉田 学, 楠 龍策
    2010 年 52 巻 5 号 p. 1403-1407
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.静脈血栓症にて抗凝固療法中.上腹部痛と吐血にて受診.上部内視鏡検査で胃前庭部に巨大な粘膜下血腫と同部からの漏出性出血を認めた.保存的加療後,血腫は自壊し潰瘍を形成した.潰瘍辺縁から生検し病理組織でアミロイドの沈着を確認した.検索の結果,多発性骨髄腫による消化管アミロイドーシスと判明した.アミロイド沈着による組織学的脆弱性と抗凝固療法の出血助長が,粘膜下血腫を呈したと推察された.
  • 川久保 尚徳, 西条 寛平, 岡本 康治, 瀬尾 充, 一宮 仁, 松浦 隆志, 江口 孝志, 相島 慎一, 石川 剛
    2010 年 52 巻 5 号 p. 1408-1414
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    72歳男性.腹部膨満感のため近医で内視鏡検査を受け,胃前庭部大彎の隆起性病変からの生検で胃癌と診断.当院紹介され上部消化管内視鏡で,前庭部大彎に表面平滑な約10mm大の立ち上がりなだらかな隆起病変を認めた.病変は超音波内視鏡で第2~3層に局在している低エコー域として描出された.同部位の生検はGroup Iだった.その後2~6カ月毎に上部消化管内視鏡及び超音波内視鏡,生検にて計5回経過観察した.5回目に施行した内視鏡検査で粘膜下腫瘍様病変の頂部に陥凹が出現.生検で高分化腺癌と診断し,幽門側胃部分切除術を施行.病理組織は乳頭腺癌で粘膜下層を主座に発育していた.粘膜下腫瘍様形態を呈した早期胃癌を長期経過観察した例は稀であり報告する.
  • 山下 真幸, 足立 靖, 田中 浩紀, 安達 靖代, 明石 浩史, 佐々木 泰史, 加藤 康夫, 伊東 文生, 篠村 恭久, 遠藤 高夫
    2010 年 52 巻 5 号 p. 1415-1420
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy;PEG)は経口摂取困難な患者に対する栄養投与法として急速に普及し,標準的な治療法となりつつある.一方,PEGは消化器進行癌に対する症状緩和のためのドレナージにも積極的に利用されている.今回われわれは,幽門狭窄をきたした進行胃癌患者に対して,減圧と栄養・投薬を目的に小腸留置型ダブルルーメンチューブを用いてPEGの腸瘻化(percutaneous endoscopic gastrostomy-jejunostomy;PEG-J)を行った.その際,細径内視鏡を経胃瘻的に用いること(transgastrostomic endoscopy;TGE)で簡便に腸瘻化可能であった.ダブルルーメンチューブを用いたPEG-Jにより退院可能となり,中心静脈栄養と経鼻胃管による管理を回避でき,QOLが改善された.PEG-Jは切除不能胃癌の幽門狭窄例に対する緩和医療として,選択しうる治療法と考えられた.
  • 山田 真也, 平野 桂, 早稲田 洋平, 稲垣 聡子, 三輪 一博, 金子 佳史, 後藤 善則, 土山 寿志, 片柳 和義, 車谷 宏
    2010 年 52 巻 5 号 p. 1421-1425
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は73歳女性.直腸に広範囲な腫瘍性病変を認め,内視鏡的粘膜下層剥離術による切除を行った.腫瘍はRaからRsにかけて長径約9cm,約5/6周性であったため,ほぼ全周切除となった.術後経過は良好であったが,術後23日目に排便困難が出現した.内視鏡検査にて内視鏡切除部の狭窄を認めたために,内視鏡的バルーン拡張術を2度行った.以降,排便困難は認めていない.
  • 白下 英史, 田島 正晃, 板東 登志雄, 有田 毅, 首藤 充孝, 阿部 寿徳, 白石 憲男, 北野 正剛, 駄阿 勉
    2010 年 52 巻 5 号 p. 1426-1431
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性.大腸内視鏡検査にて,横行結腸に大きさ約1cmで黄白色調の,中心部に陥凹を有する粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡検査で,腫瘍は第2,3層に存在する内部不均一な低エコーとして認められた.カルチノイド腫瘍と診断し,腹腔鏡補助下結腸切除術を施行した.病理診断は,hamartomatous inverted polypであった.大腸の粘膜下腫瘍様病変の鑑別診断に本疾患も考慮する必要がある.
  • 小谷 晃平, 佐野 弘治, 田中 敏宏, 松井 佐織, 上田 渉, 木岡 清英, 西口 幸雄, 久保 勇記, 井上 健, 大川 清孝
    2010 年 52 巻 5 号 p. 1432-1437
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性.主訴は発熱と血便.下部消化管内視鏡検査にてRS部に低い隆起性病変があり,中心部から排膿が認められた.腹部CTにて骨盤内右側に膿瘍を認め,膿瘍の直腸穿破と考え手術を施行した.右卵巣は腫大し,虫垂・子宮・直腸の癒着を認めた.組織では右卵巣膿瘍・蜂窩織炎性虫垂炎の所見であり,虫垂炎が右卵巣に波及し膿瘍を形成したと考えられた.内視鏡的に直腸への排膿を観察し得た症例は稀と思われ報告した.
注目の画像
手技の解説
  • 矢野 友規, 金子 和弘, 三梨 桂子, 大津 敦
    2010 年 52 巻 5 号 p. 1440-1450
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/07
    ジャーナル フリー
    多くの内視鏡医は,これまで,上部消化管内視鏡検査において,頭頸部領域を詳細に観察し,「頭頸部癌の早期診断する」と言う概念を持っていなかった.しかしながら,頭頸部癌は患者背景やリスクファクターが食道癌に類似しており,臨床上頭頸部・食道重複癌が問題になることも少なくない.さらに,近年開発された狭帯域内視鏡(Narrow Band Imaging:NBI)を用いることで,いままで発見が困難だった中下咽頭の上皮内癌を見つけられることが報告されている.中下咽頭癌を早期診断できれば,内視鏡治療も可能であり,失声や嚥下障害を伴う咽喉頭全摘術を回避することができ,臓器温存や患者のQOL向上の観点から,極めて重要である.
    実際の上部消化管内視鏡検査の際には,消化管での観察同様,見落としの無いよう口腔内から食道入口部かけて系統だった観察が必要である.さらに,容易に嚥下反射が誘発され,観察が困難になるため,愛護的な操作が必要である.頭頸部表在癌の診断には,NBIが有用であり,NBIを用いた頭頸部表在癌の現時点での診断基準は,境界明瞭なbrownish area及び病変内の拡大観察で拡張した異型血管の増生を認めることである.
    本稿では,消化器内視鏡医が知っておくべき上部消化管内視鏡検査における,頭頸部領域観察手技の実際と癌の早期診断を中心に解説する.
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