日本消化器内視鏡学会雑誌
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50 巻, 3 号
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  • 丹羽 寛文
    2008 年 50 巻 3 号 p. 323-348
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     電子スコープは,その開発以来,次々と改良が加えられ,各種の画像解析,画像処理,通信機能,ファイリング機能など従来の内視鏡には無い機能が実用化され,消化管内視鏡は完全に電子スコープの時代となった. 当然ながら電子スコープは放送用のテレビジョンの発展があって,初めて実用になったものである.まず始めに放送用テレビジョンの発展を概説した.内視鏡へのテレビジョンの導入は,ファイバースコープ接眼部に撮像管を取り付け,その画像をテレビモニターに映すことに始まったが,テレビカメラを胃の中に直接挿入出来る様になったのは,固体撮像素子(電荷結合素子CCD)が開発され,その小型化をまって初めて行われたことである.最初の電子スコープは,1983年(昭和58年)にアメリカで発表されたが,その後国内各社でも開発が始まり,現在では多種多様の電子スコープが市販されている. 電子スコープの原理,理論を概説し,各種機能の内で最も期待されている画像処理,画像解析について述べてみた.さらに赤外線電子スコープの臨床面への応用,最近話題となっているNarrow Band Imaging(NBD),AIF(Auto-fluorescence Imaging)についても,その理論,臨床的意義を説明した.またこれに関連して特殊光という用語が不適切に拡大解釈されていることを指摘し,新たに内視鏡観察法の目的別分類(丹羽,田尻)を提案した.またIDTV, EDTV(クリアビジョン),ハイビジョン等についても触れ,CRTに代わる液晶ディスプレイ,投射型テレビについても述べてみた。
  • 五十嵐 正広 , 浦上 尚之 , 千野 晶子
    2008 年 50 巻 3 号 p. 349-358
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     小腸・大腸のvascular ectasiaは消化管出血の原因疾患として認識されている.しかし,用語が一定せず混乱しているのが現状である.内視鏡学会用語集では,後天的な限局性の血管拡張はvascular ectasiaないしangiectasiaとし,先天性な異常によるものをangiodysplasiaやvascular malformationとし, telan giectasiaは遺伝的な疾患として区別している.診断は,強い発赤斑やクモ状血管腫様の形態を呈するものや太く蛇行した拡張した血管を伴うものなどが一般的である.小腸では,カプセル内視鏡,バルーン付き内視鏡の出現によって活動性出血を契機に診断される機会が多くなっている.治療は,無症状では積極的な治療は必要なく,出血例では,クリップや高周波電流,ヒータープローブなどの凝固法が有効であり,病変の消退を期待するにはAPCによる凝固法が有用である.また,出血量が大量な場合,出血源不明な場合,内視鏡検査が困難な際には血管造影も有用である.
  • 萩原 誠也, 平山 眞章, 佐々木 清貴, 碇 修二, 加藤 貴司, 町田 卓郎, 黒瀬 龍彦, 中村 英明, 加賀谷 英俊, 目黒 高志, ...
    2008 年 50 巻 3 号 p. 359-368
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     【目的】近年,苦痛軽減を目的として経鼻的ルートで挿入することができる極細径内視鏡が開発されている.今回われわれは極細径内視鏡の安全性を評価すると共に,同一個体で経鼻的挿入と経口的挿入の受容性の差を検討した.【方法】無作為に各65名(1)通常内視鏡を用いた経口的挿入例(2)極細径内視鏡を用いた経口的挿入例(3)経鼻的挿入例に振分け心肺系パラメーター及び嘔吐反射回数,検査所要時間を比較検討した.また,健常成人37名に対し経口的及び経鼻的挿入先行群に無作為に振分けて同一被検者に両挿入法を行い交差比較することで受容性を分析した.【結果・結論】心肺系パラメーターの検討では(2)群では血圧及び脈拍数上昇度と嘔吐回数が有意に少なかった.交差比較では,挿入時と検査中におけるギャギング(gagging:ゲーゲーする感じ),窒息感及び総合的評価において経鼻的挿入が良好であった.現時点では経鼻内視鏡が最も受容性に優れていると考えられた.
  • 太田 正穂, 中村 務, 林 和彦, 内田 数海, 成宮 孝祐, 大木 岳志, 佐藤 拓也, 山本 雅一
    2008 年 50 巻 3 号 p. 369-373
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    〈目的〉食道異型上皮,表在癌に対するアルゴンプラズマ凝固法(APC)単独治療の有用性につき検討した.〈対象〉APC単独治療を施行した前治療のない食道表在扁平上皮癌,異型上皮29例31病変.〈方法〉通常観察後ヨード染色にて病変範囲を確認し,マーキングした後にAPCを行った.深達度診断長径の測定は通常観察所見に基づいた。経過観察の内視鏡検査で病変の残存・再発があれば遺残・再発症例として再度焼灼を行った.〈結果〉癌症例は21例でm1 13例, m2 7例, m3 1例,異型上皮例は10例であった.病変の平均長径は17.4mm(5~40mm).1病変あたりの平均APC施行回数は1.3回(1~4回)で重篤な偶発症の発生はなかった.平均経過観察期間は17.4カ月で病変の遺残・再発が5病変(16%)にみられたが再度APCを行いコントロールされた.6例(19%)が外来で施行された.〈結語〉APCは安全性が高い治療法と思われた.遺残例もあり経過観察が欠かせないが,複数回の施行が可能であり症例の選択により有効性が期待されると考えた.
  • 小松 英嗣, 鈴木 雅之, 落合 康利, 後藤 庸子, 渡邊 慶太, 古宮 憲一, 金子 博, 箭頭 正徳, 小田 義英, 田中 伸, 鈴木 ...
    2008 年 50 巻 3 号 p. 374-379
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は74歳男性.近医で異型リンパ球を伴う胃びらんを指摘された.当科での内視鏡検査では胃体部大弯に同様な所見を認めるも病理検査ではH.pylori感染を伴う慢性胃炎と診断し,除菌治療を施行した.2カ月後には同部に不整な潰瘍が見られ,さらに3カ月後に2型様病変へと増悪していた.免疫組織化学においてCD30陽性の中~ 大型の異型リンパ球の集積を伴うAnaplastic large cell lymphoma(ALCL)と診断した.消化管原発のALCLは極めて稀な疾患であり報告する.
  • 小熊 潤也, 青木 真彦, 細田 桂, 城戸 啓, 夏 錦言, 田村 光, 雨宮 哲
    2008 年 50 巻 3 号 p. 380-384
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     50歳の男性で頸椎損傷のため近医に入院し,タール便を認めた.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行部潰瘍からの出血を認め,止血できず当院紹介となった.動脈塞栓術を施行したが,直後の内視鏡検査で同部位から噴水状出血を認め,クリッピングを行った.しかしその後も貧血が進行し,再度の内視鏡検査で潰瘍底の露出血管にクリッピングを追加した.出血性十二指腸下行部潰瘍に対しては各症例に応じた治療法の選択が重要と考える.
  • 橋本 健一, 伊藤 康文, 橋本 慎介, 吉田 健一郎
    2008 年 50 巻 3 号 p. 385-391
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は61歳男性,飲酒後から続く腹痛を主訴に来院し重症急性膵炎の診断で入院した.第35病日から腹痛の再燃と頻回の嘔吐を自覚しイレウスと診断した.第56病日に行った内視鏡検査で約3cm長の横行結腸狭窄を認めた.内視鏡の通過は困難であり,粘膜は浮腫状で発赤を認めたが,びらんや潰瘍は認めなかった.膵炎は緩解増悪を繰り返し入院から5カ月後に軽快した.膵炎改善後第158,165病日にアカラシア用バルーンダイレーターで内視鏡的バルーン拡張術を2回施行し大腸狭窄部は改善した.膵炎後にイレウスを併発した大腸狭窄の既報告例はすべて外科的治療を要していたが,バルーン拡張術も有効と考えられる.
  • 本田 悌一朗, 牧野 直彦, 白幡 名香雄, 戸沢 智浩, 今泉 和臣, 河田 純男
    2008 年 50 巻 3 号 p. 392-399
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は56歳,男性.前医で慢性膵炎の経過観察中に急性増悪を繰り返したため,当科を紹介され入院した.内視鏡的膵管造影検査で主乳頭より出血を認め,副膵管破綻部と仮性嚢胞との交通を確認した.経副乳頭的に5Fr経鼻膵管ドレナージチューブを尾側膵管へ留置したところ,径40mmの仮性嚢胞は著明に縮小した.第28病日に7Fr 5cm膵管ステントへ交換し,仮性嚢胞の縮小と貧血の改善を認め,第39病日に退院した.64例Multidetector-row CTにて仮性動脈瘤を認めない出血性膵仮性嚢胞に対し,外科的治療の前に試みる価値がある方法と考える.
  • 小山内 学, 真口 宏介, 高橋 邦幸, 潟沼 朗生, 中原 和之, 浦田 孝広, 松崎 晋平, 岩野 博俊, 篠原 敏也
    2008 年 50 巻 3 号 p. 400-405
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     【目的】通常型膵管癌診断における内視鏡的膵生検(EPB) ,ブラッシング細胞診の癌陽性率および偶発症率についてretrospectiveに検討した.【対象】主膵管狭窄または閉塞所見を呈する膵癌症例のうち,EPB,ブラッシング細胞診のいずれか,または両者を施行した163例を対象とした.【結果】癌陽性率は,EPBで32%(46/145),ブラッシング細胞診65%(48/74)であった.最終的にEPBまたはブラッシング細胞診により癌陽性が得られたのは48%(79/163)であった.また,細胞検査士による迅速細胞診を始めてからのブラッシング細胞診の癌陽性率は72%(33/46)と向上した.偶発症は,膵炎を9%(15/163)に認めたが,軽症14,中等症1例で全例保存的加療にて軽快した.【結論】経乳頭的生検・細胞診は重篤な偶発症がなく施行可能であるが,現状では満足のいく癌陽性率は得られなかった.今回の検討では,ブラッシング細胞診がEPBより検体採取率が高かったものの,prospectiveな検討が必要である.
  • 野中 康一, 北田 英貴, 川口 哲
    2008 年 50 巻 3 号 p. 406-407
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 宇野 良治, 長岡 康裕, 白井 剛志
    2008 年 50 巻 3 号 p. 408-416
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     イレウスに対する経皮内視鏡的盲腸瘻造設(Percutaneous Endoscopic Cecostomy;PEC)の治療目的はドレナージである.高齢者での主なPECの適応は急性偽性腸閉塞,慢性偽性腸閉塞や巨大結腸症を来たした場合や,開腹手術ができない状態の悪性腫瘍による狭窄である.PECの技術と原理は開腹手術による盲腸へのカテーテル留置法と経皮内視鏡的胃瘻造設術に基づいている.PECの造設方法にはintroducer法とpull法がある.ドレナージと順行性浣腸を併用する場合にはintroducer法で15フレンチのカテーテルを使用する.早急なドレナージが必要なケースではpull法で20French以上太いカテーテルを用いる.PECの造設方法はPEGと同様であるが, PEGよりも安全に施行しなければならない.そのため, introducer法とpull法にかかわらず,壁固定具で3-4箇所の固定を適切な間隔で施行し,その中央にチューブを留置する.主な合併症は出血と不良肉芽である.
  • 堅田 親利, 田辺 聡, 小泉 和三郎, 樋口 勝彦, 佐々木 徹, 正來 隆, 竹田 昌彦, 中山 明仁, 岡本 牧人, 西元寺 克禮
    2008 年 50 巻 3 号 p. 417-426
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     これまで口腔,中・下咽頭,喉頭の癌は,消化器内視鏡にて観察が可能であるにもかかわらず,自覚症状を伴って進行癌で発見されることが多く,表在性の癌の発見は極めて困難であった.近年,Narrow band imaging(NBl)の登場と応用によって,微細血管構造観察による新しい内視鏡診断学が普及しはじめ,ヨード色素内視鏡検査がおこなえない頭頸部領域でも表在性の癌の発見が報告されるようになった.今後,消化器内視鏡医による頭頸部領域の内視鏡観察が効果的に実施され,表在性の癌がより多く発見できるようになれば,頭頸部領域の癌の予後が改善される可能性がある.さらに,治療侵襲の軽減によって声を失ったり,嚥下障害で苦しむ患者さんが減少し,QOLは改善されることも期待できるため,患者利益に直結するものと考えられるが,内視鏡観察をおこなうには解剖学的な亜部位や咽喉頭反射等の頭頸部領域特有の特徴を理解していなければならない.本稿では,これまで消化器内視鏡検査時にはあまり注目されてこなかった頭頸部領域における内視鏡観察のコツについて解説し,具体的な症例を提示する.
  • 石原 立, 上堂 文也, 飯石 浩康, 荻山 秀治, 山田 拓哉, 東野 晃治, 楢原 啓之, 竜田 正晴, 井関 和成, 石黒 信吾
    2008 年 50 巻 3 号 p. 427-431
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     背景・目的:赤外線内視鏡検査は白色光よりも組織透過性のよい近赤外光を光源に用いることで,通常観察では見えない粘膜の下の血管をとらえ消化管癌の深達度や拡がり診断を行うものである.今回われわれは2波長赤外線内視鏡を用いて胃癌に対する診断能を検討した. 対象と方法:当センターで外科手術もしくはEMRを行った早期癌病型の陥凹型胃癌30例を対象とした.これらに2波長赤外線内視鏡検査を行い,病巣部が染まらない“不染所見” もしくは病巣全体が淡く均一に染まる“淡染所見” を呈するもの,ICGが病巣周囲に点状に貯留する“pooling所見” を呈するもの,病巣の一部に濃く貯留する“ 濃染所見” を呈するものに分類し,癌の深達度との関連を検討した. 結果:2波長赤外線内視鏡検査で“ 不染所見”,“ 淡染所見” が得られた23例中21例(91%)がmもしくはsm 1,000mより浅いsm癌で,“pooling所見”,“ 濃染所見” が得られた7例中7例がsm 1,000mより深いsm癌であり,その正診率は93%であった.特に通常内視鏡検査やEUSでの診断が困難とされているUI(+)の病巣でも95%(18/19例)の病巣で深達度を正診できた. 結語:赤外線電子内視鏡はUlの有無に関わらず,陥凹型早期胃癌の診断に有効と考えられた.
  • 責任者:前谷 容
    前谷 容
    2008 年 50 巻 3 号 p. 432-434
    発行日: 2008年
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    2008 年 50 巻 3 号 p. 439-441
    発行日: 2008/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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