日本消化器内視鏡学会雑誌
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50 巻, 7 号
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  • 丹羽 寛文
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1557-1574
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     早期胃癌の日本消化器内視鏡学会分類は,現在広く用いられているが,その成立の経緯を詳しく述べてみた.早期胃癌の定義並びにその分類は昭和37年の第4回日本内視鏡学会総会に際し,会長であった田坂の宿題報告として発表された.この報告の為に村上を長とした多くの専門家から構成された委員会が作られ,全国主要施設より提供された早期の癌と思われる症例の摘出標本の肉眼所見,術前の胃カメラ像,X線像を詳細に検討し,厳しい討議を経て早期胃癌の定義が決定され,さらに分類が出来上がった.当初は隆起型,表面陥凹型,陥凹型という表現を主体にしたが,これらの用語は将来変更の可能性もあることから,同時に符号I,II,III型が付加された.しかしこれが便利だった為検討が進むにつれ,この用語が多用され現在に至っている. 早期胃癌の定義としては東大第2外科で根治手術が行われた連続202例の胃癌症例について,その組織所見と遠隔成績を詳細に検討した佐伯の論文をより所とし,それを元に全国から寄せられた症例を詳細に検討し,粘膜,粘膜下層までの浸潤度の胃癌を早期胃癌とすることが決められ,その様相が明らかにされた.さらに個々の症例の胃カメラ像を詳細に検討し,各型特にIICの内視鏡的特長を明らかにし,早期胃癌の胃カメラ診断の基礎が築かれた.
  • 工藤 進英, 竹村 織江, 樫田 博史, 池原 伸直, 蟹江 浩
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1575-1580
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     側方発育型腫瘍とは10mm以上の側方発育を主体とする病変であり,顆粒型と非顆粒型に分類される.顆粒型は顆粒均一型と結節混在型に,非顆粒型は平坦隆起型と偽陥凹型にそれぞれ亜分類される.腫瘍径のわりにSM癌率の低いのが特徴で,従来は外科的治療が行われてきたような腫瘍径の大きい病変も,近年の内視鏡の進歩と技術の向上とともに大部分が内視鏡治療の適応の範疇に入ってきた.しかし,亜分類別で病理学的特徴やSM癌率が異なり,特に偽陥凹型では高率にSM浸潤をきたす.色素撒布を併用した詳細な内視鏡観察は存在診断のみならず,形態診断,範囲診断に重要である.また,拡大内視鏡を用いたpit pattern診断は,深達度診断に基づいた治療法の選択にきわめて有用である.
  • 岩下 雅秀, 丹羽 優佳里, 西脇 伸二, 河口 順二, 川出 尚史, 小野 木啓人, 畠山 啓朗, 林 隆夫, 前田 晃男, 齋藤 公志郎
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1581-1586
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)後食道狭窄をきたした3例を経験した.1例はPEG施行時に,2例はPEG施行後に下部食道の全周性の潰瘍をきたした.3症例ともオメプラゾールの経静脈投与を行い,そのうち2例では胃瘻力テーテルの開放,排液を行った.いずれの症例も急速に潰瘍が瘢痕化し,最終的に全例下部食道が針穴状の狭窄をきたした.PEG施行後,重症逆流性食道炎に起因する高度の食道狭窄状態をきたしながら,安定した経腸栄養が可能であった症例を経験したので報告する.
  • 山本 章二朗, 岩切 久芳, 南 寛之, 早稲 田文子, 大地 哲史
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1587-1591
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は85歳,男性.吐血のため,上部消化管内視鏡検査を施行し,胃穹窿部にDieulafoy潰瘍からの出血を認め,内視鏡的に止血した.翌朝再出血し,内視鏡を施行し,止血した潰瘍からの出血はなかったが,胃穹窿部前壁と胃噴門近くの前壁に露出血管を伴う3箇所の潰瘍と胃体上部小彎に潰瘍面のない拍動性出血を認め,いずれもDieulafoy潰瘍と考え,内視鏡的に止血した.本例は1つのDieulafoy潰瘍治療後に,他部位にDieulafoy潰瘍が多発したという極めて稀な症例と考えられた.
  • 里村 仁志, 佐々木 欣郎, 深町 伸, 萩原 信悟, 円谷 美也子, 田口 泰三, 依田 紀仁, 宮地 和人, 砂川 正勝, 市川 一仁
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1592-1596
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は70歳,男性.貧血の精査のため行われた上部消化管内視鏡検査で,噴門部前壁に長径8cmの巨大な有茎性ポリープを認めた.生検組織診では過形成性ポリープの結果であった.貧血の原因と考えられ,一部の悪性化も否定できなかった.腫瘍径が大きく内視鏡的スネア切除も困難なため手術も考慮されたものの,ESDの手法にて切除が可能であった.病理組織学的には過形成性ポリープ(foveolar type)と診断された.
  • 岩岡 泰志, 山田 正美, 池松 禎人, 室久 剛, 影山 富士人, 竹平 安則, 小澤 享史, 林 輝義
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1597-1604
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃GISTに対する外科的治療として腹腔鏡下胃局所切除術が普及しているが,病変が噴門部に近接している症例では腹腔鏡下の処置が困難で噴門部胃切除術を余儀なくされる場合がある.今回われわれは胃噴門部の胃内発育型固有筋層由来GISTに対して,胃内視鏡下腫瘍全層切除と腹腔鏡下胃壁縫合閉鎖の併用により安全かつ低侵襲な内視鏡的切除を試みた2例を経験した.固有筋層由来のGISTに対して腹腔鏡と内視鏡併用による腫瘍縮小手術を行った本邦初の経験と思われる.本法は腹腔鏡単独で切除困難なGIST症例に対して,低侵襲かつ入院期間の短縮も期待できる方法と考えられた.
  • 谷口 和樹, 大野 玲, 石丸 神矢, 石田 孝雄
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1605-1608
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     心肺蘇生時に生じた胃裂傷に対し,緊急内視鏡止血術を行い良好な経過を辿った1例を経験したので報告する.症例は85歳,女性.心肺停止状態に対してバイスタンダーにより心肺蘇生術が施行された.蘇生後に新鮮血の嘔吐を認めたため,緊急内視鏡を施行した.出血を伴う胃裂傷を認めたため,止血術をおこなった.その後問題なく経過し退院となった.蘇生後胃裂傷に対する緊急内視鏡の症例は稀であり呈示する.
  • 竹下 宗範, 菊池 陽介, 津田 純郎, 原岡 誠司, 岩下 明徳, 櫻井 俊弘, 松井 敏幸
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1609-1614
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は,39歳男性.本症に特徴的な血尿や膀胱炎症状等はなく,S状結腸ポリープの治療目的で施行した大腸内視鏡検査にて,上行結腸から直腸に多発した小隆起を認めた.小隆起からの生検組織検査で,粘膜下層に肉芽腫性炎症像を認め,肉芽腫の中心壊死巣内に長楕円形の虫卵を認めた.虫卵の一端には,本症に特徴的なトゲ状の突起が認められビルハルツ住血吸虫症と診断した. ビルハルツ住血吸虫症の内視鏡像に加えて超音波内視鏡像および注腸X線像が得られた症例である.
  • 石橋 陽子, 西田 麗, 加藤 総介, 大平 浩司, 岡本 賢三
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1615-1619
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は62歳男性.約1カ月間の下痢があり,その後ショック状態となり入院した.1日に2~3Lの水様透明粘液性下痢の排泄があり,腎機能障害と電解質の著明な低下を呈していた。大腸内視鏡検査では直腸に全周性の絨毛性腫瘍を認め,Electrolyte depletion syndromeと診断した.外科手術を考慮していたが合併症のため死亡した.本症は慢性下痢の鑑別診断として考慮すべき疾患であると考えた.
  • 野中 康一, 角嶋 直美, 喜多 宏人
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1620-1621
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 河合 隆, 山岸 哲也, 酒井 義浩, 森安 史典
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1622-1634
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     細径経鼻内視鏡検査が日本において急速に普及している.検査中の苦痛も少なく患者の満足度は高く,心肺機能に及ぼす影響も少なく安全な検査である.スコープの細径化に伴い内視鏡のシャフトの反発力が低下しており,手元操作に対する先進部の追従性が悪い.さらに光量も少なく,画質も劣るため,粘膜を近接で観察する必要がある.しかしながら細径経鼻内視鏡検査による胃癌の発見率は高く,内視鏡検査としての有用性は確実にある.通常径経口内視鏡と比較するとその細さを追及するため,いずれかの機能・スペックを犠牲にしている.使用する機種の特徴をよく把握した上で検査を丁寧に行うべきである.細径経鼻内視鏡の出現は,上部内視鏡検査を受ける際の患者が選ぶ選択肢が増えたと受け止めるべきである.
  • 津村 剛彦, 圓尾 隆則, 辻賢 太郎, 大崎 往夫, 友野 尚美
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1635-1642
    発行日: 2008/07/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     「背景・目的」急性発症し重篤な内視鏡像を示す出血性びらん性食道炎症例の特徴を明らかにすることを目的とした.「方法」上部消化管出血を主訴とし,緊急内視鏡で下部食道全域以上の全周,びまん性粘膜障害を急性食道粘膜病変と定義し,その臨床的,内視鏡的特徴を検討した.「結果」共通の臨床的特徴を示す黒色食道炎と非黒色食道炎を6例ずつ経験した.典型例は比較的重篤な基礎疾患と食道裂孔ヘルニアを有する中年以上の男性で,コーヒー残渣様吐物等の上部消化管出血で発症していた.NSAIDs服用中や十二指腸粘膜病変を伴う症例が見られた.内視鏡的に下部食道の炎症が肛門側へ悪化しつつ連続し,扁平・円柱上皮接合部で明瞭に境界され途絶していた.PPI等の治療でほぼ全例速やかに軽快した.「結論」黒色および非黒色食道炎はともに共通の臨床的特徴を示し,同一の病態と考えられた.
  • 責任者:平田 信人,江原 正明
    平田 信人
    2008 年 50 巻 7 号 p. 1643-1645
    発行日: 2008年
    公開日: 2024/01/29
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