日本消化器内視鏡学会雑誌
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29 巻, 6 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 奥島 憲彦
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1105-1115
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Photodynamic Therapy(PDTと略す)は,ヘマトポルフィリン誘導体(HpDと略す)が癌組織に特異的に取り込まれることを利用するレーザー治療法である。本法を食道癌治療において内視鏡下に応用するために基磯的,臨床的研究をおこなった. 基礎的検討では,波長630nmのアルゴン色素レーザーを照射するとHpDが励起され光化学反応をおこし,癌組織が壊死に陥った. 切除標本における癌部のHpD濃度測定の結果及び先端出力と組織学的効果の検討結果から,粘膜内癌の根治を目的に行う場合のPDTはHpD静注48時間後に先端出力300mWで1×1cm2あたり5分間照射するのが妥当な条件と考えられた. 臨床応用では,内視鏡的にほぼ粘膜内に病変がとどまると思われた食道表在癌7例にPDTを行った.9カ月から最長3年9カ月の経過観察で全例局所再発の所見がなく,良好な結果を得ており,食道表在癌の局所治療法としてPDTは一つの有効な治療法と言える.現在食道癌治療における根治を目的にしたPDTの適応は周在性が1/4~1/3周前後の粘膜内癌で,かつ諸検査で遠隔転移の明らかでないもの,内視鏡型が表在平坦型と凹凸の少ない表在びらん型の食道癌と考えられる.
  • 伊藤 忠彦, 相部 剛, 吉田 智治, 野口 隆義, 中田 和孝, 藤村 寛, 西村 滋生, 林 延彦, 宮崎 誠司, 野村 幸治, 岡崎 ...
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1117-1122
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    超音波内視鏡を用いて,食道癌症例の縦隔噴門領域のリンパ節の描出率およびリンパ節転移の有無の判定について検討した.リンパ節描出率については,長径5mm以上のものに限ってみると,通常の超音波内視鏡検査(EUS)では47.5%であったのに対し,すでにわれわれが報告しているoil in water型emulsion経口投与後のEUSでは66.7%に向上した.また,emulsion投与後のEUSによるリンパ節転移の正診案は87.0%であった.さらに,摘出リンパ節の大きさ・形と転移の有無との関係を検討した結果を含めたemulsion投与後のEUSによるリンパ節転移の有無の判定基準を設定したところ,正診率は91.3%という高い数値を得た.今後,改善しなければならない,いくつかの問題点はあるが,emulsion経口投与法を併用したEUSは食道癌症例のリンパ節転移の診断にきわめて有用であると考えられる.
  • 藤村 寛, 相部 剛, 伊藤 忠彦, 野口 隆義, 大谷 達夫, 中田 和孝, 富士 匡, 岡崎 幸紀, 竹本 忠良, 河村 奨, 有山 重 ...
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1123-1129
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは,胃癌リンパ節転移の有無を判定するために,10% oil in water型emulsion(以下10%o/w型emulsionと略す)を超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonograpgy;以下EUSと略す)に導入し,検討を行った.その結果10% o/w型emulsion投与は,検査2~3時間前に経口投与することがもっとも適当と考えた.また,臨床例7例におけるEUSによる1群リンパ節描出率は,リンパ節の大きさ3mm以上では69%,5mm以上では76%であった.なお,Emulsion経口投与後のリンパ節のenhancementの状況によって,転移リンパ節と非転移リンパ節の鑑別が可能で,3mm以上の大きさでは,感度92%,特異性100%,5mm以上では,感度91%,特異性100%であった.上記の結果から,超音波内視鏡は,胃癌リンパ節転移の診断法として有用と考えている.
  • 松田 和也, 有山 重美, 藤村 寛, 多田 正弘, 竹内 憲, 水町 宗治, 柳井 秀雄, 岡 紳爾, 岡崎 幸紀, 竹本 忠良
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1130-1141
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    経内視鏡的に胃粘膜電気インピーダンスを測定した.基礎的検討としてラット,犬にて胃粘膜インピーダンスを測定し,正しくCole-cole曲線が描かれ,偶発症も認めないことを確認した後,臨床応用としてヒト胃粘膜電気インピーダンスを内視鏡直視下に測定した.正常な食道,胃,十二指腸粘膜についてリアクタンスx=0点の周波数f(x=0)の比較を行い,食道と胃・十二指腸粘膜との間に有意差を認めた(p<0.01).胃癌症例と胃に限局性病変のない例との比較ではCole-Cole曲線に明らかな差異を認め,f(x=0)も胃癌症例で10.1±2.7kHz,限局性病変のない例で14.7±2.7kHzと有意な差を認めた(p<0.05).また,リアクタンスx=0点でのレジスタンスR(x=0),インピーダンスの大きさ|Z|も胃癌症例で正常例に比して低下傾向を示した.さらに同一胃癌症例において癌部と非癌部のインピーダンス測定を行い,R(x=0)が癌部で有意に低下していた(p<0.01).以上のことより胃粘膜電気インピーダンス測定法は,胃悪性腫瘍との鑑別診断に有効であると考えられた.
  • 池園 洋, 天野 育造, 鶴田 修, 大久保 和典, 前川 隆一郎, 鴨井 三朗, 大曲 和博, 井上 林太郎, 上田 隆, 宮園 一博, ...
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1142-1148_1
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    当科で施行された胃生検10,743例の中で胃癌生検診断における臨床病理学的検討を行った.発見胃癌は1,108個,生検数の10.3%であった.胃癌症例では初回生検偽陰性例は35例,3.2%であり,このうち病理診断的誤診は12例,1.1%,臨床的に癌細胞が採取されていなかったもの23例,2.1%であった.初回内視鏡診断においてむしろ良性疾患を疑われて生検施行された胃癌は120例,10.8%であった.術者の熟練度別に内視鏡生検誤診危険率を検討すると,有意に熟練者群に危険率は少なく,内視鏡生検診断における臨床的診断力の重要性が示唆された.
  • 藤巻 英二, 狩野 敦, 片山 佐登志, 寺崎 公二, 河田 孝彦, 栃内 秀貴, 斎藤 裕, 佐藤 俊一, 小豆島 正和, 藤沢 秀仁, ...
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1149-1156_1
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    下部消化管粘膜下腫瘍の内視鏡所見について,自験18例に文献的考察を加え報告した.大腸例では,カルチノイドは最も頻度が高く,黄色の無茎性隆起として直腸に認められ,鉗子触診上硬く,生検陽性率が高かった.リンパ管腫は透光性のある白色調の無茎性の軟らかな隆起で,生検時内容の流出を認めた.脂肪腫は黄色調で軟らかく,3例中2例が有茎性で,1例は臍窩を有する巨大な無茎性隆起であった.平滑筋腫は周囲粘膜と同様の色調の無茎性隆起で,比較的硬く,2例中1例に臍窩を認めた.血管腫はblue rubber bleb nevus syndromeに合併し,赤褐色の桑実状ないし球状の多発性病変で,下血後の観察では腫瘍が縮小していた.以上の大腸症例は,内視鏡的観察と鉗子触診により,粘膜下腫瘍の診断のみならず質的診断まで可能と思われた.終末回腸症例は,2例とも腸重積を起こしており,リンパ管腫は表面が発赤・顆粒状で,脂肪腫は広汎に潰瘍形成があり,上皮性腫瘍や悪性リンパ腫との鑑別は内視鏡のみでは困難であった.
  • 五十嵐 正広, 勝又 伴栄, 山本 佳正, 岡田 豊次, 三橋 利温, 瀬川 謙一, 三富 弘之, 岡部 治弥
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1159-1164_1
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    大腸早期癌98例104病変を検討し,腺腫を伴わない癌(D型癌)の内視鏡所見の特徴について検討し,以下の結果を得た.1)全大腸早期癌に対するD型癌の頻度は,17.3%(m癌4.4%,sm癌41.7%)であった.2)腺腫を伴う癌(非D型癌)と比較すると,年齢,病変分布,病変の大きさなどに差を認めなかった.3)D型癌には,他部位に腺腫や癌を伴わず孤立性に存在するものが55.6%と非D型癌(47.5%)に比し多い.4)内視鏡所見の比較では,IIc型の癌は,全例D型癌であり,隆起型においても無茎性でびらん,陥凹を伴うものが多い.一方,非D型癌では,隆起型の癌が大部分であり,非癌部には,比較的均一な表面模様が認められる.この模様はD型癌には認められず,腺腫の表面模様として観察されるものである.この模様を観察することは,腺腫成分の存在を証明することであり両者の内視鏡所見による鑑別の重要な所見である.
  • 岡野 均, 児玉 正, 丸山 恭平, 辻 秀治, 高升 正彦, 光藤 章二, 古谷 慎一, 西田 博, 佐藤 達之, 福田 新一郎, 瀧野 ...
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1165-1170_1
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    上部消化管止血法の1つとして開発された多凝固子(6端子双極凝固子="BICAP")を用いた経内視鏡的高周波電気凝固止血法の基礎的・臨床的検討を行った.犬胃を用いた検討で安全で有効な凝固条件は凝固ダイアル"7"の1秒で,この条件では固有筋層以下には凝固が及ばない事を確認した. 本法を上部消化管出血14例(胃潰瘍9例,胃ポリープ1例,十二指腸潰瘍2例,十二指腸のDieulafoy潰瘍1例,胃癌1例)に対して本法による止血を試みた.出血性胃潰瘍の1例を除き,13例(92%)に一時止血ないしは永続止血に成功した.本法に起因すると思われる合併症は1例もなかった.本法は,従来の双極凝固法に比し,いずれの方向からも止血処置が可能で,装置も軽量でベットサイドでも施行可能であり,有効で安全な止血法の1つと考えられた.
  • ―慢性胆嚢炎との比較を中心に―
    岡井 高, 中村 勇一, 渡辺 弘之, 太田 英樹, 里村 良威, 竹森 康弘, 澤武 紀雄, 若林 時夫, 杉岡 五郎, 熊谷 幹男
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1173-1180
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胆嚢腺筋腫症の超音波内視鏡(EUS)像の特徴を明らかにする目的で,胆嚢腺筋腫症3例(びまん型1例,分節型2例)のEUS像について,慢性胆嚢炎4例のEUS像と対比しながら検討を加えた.その結果,胆嚢腺筋腫症では,壁肥厚の主体が第2層の低エコーにあるのに対し,慢性胆嚢炎では第3層の高エコーにあり,病理組織像では,それぞれ肥厚した筋層,漿膜下層に一致した.また,胆嚢腺筋腫症では,第2低エコー内に小嚢胞状エコーを認め,さらにその内部に粒状の高エコーを認めた.前者は拡張したRokitansky-Aschoff sinus,後者は壁内結石に一致した.第2層と第3層の境界は,胆嚢腺筋腫症では波状不整を呈するのに対し,慢性胆嚢炎では比較的明瞭であった.このようにEUSは,胆嚢腺筋腫症の病理形態像を明確に反映する検査法であり,本症の質的診断に有用と思われる.
  • ―瘢痕形態と再発率について―
    布施 好信, 児玉 正, 高升 正彦, 光藤 章二, 辻 秀治, 古谷 慎一, 堀口 雄一, 西田 博, 佐藤 達之, 岡野 均, 丸山 恭 ...
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1181-1186_1
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    瘢痕期からの経過を1年以上にわたって追跡しえた十二指腸潰瘍患者122例(147病変)につき,瘢痕形態と再発との関連を検討した.経過追跡期間中,再発は約半数にみられ,非再発群との間に年齢差はみられなかった.瘢痕期stage別ではSIからの再発率が88.6%とS2からのそれ(32.0%)に比べ,有意に高かった.また瘢痕中心部の陥凹および周辺隆起の程度が強いものほど再発率が高く,これらの所見が高度なものは91%の再発率であった.一方,非再発群では経過中26.3%に,中心陥凹の改善・消失が認められた.瘢痕部の皺襞集中の程度と再発率との間には一定の関連はみられなかった.以上のことから赤色瘢痕(S1)と中心陥凹及び周辺隆起の強い瘢痕は,再発の危険性が大きいことが明らかとなり,再発を防止するためにはS2stageまで投薬を続けるとともに・瘢痕部の中心陥凹及び周辺隆起の強い例では内視鏡による定期的な経過観察が必要と考えられた.
  • ―大腸病変の経時的変化を主に―
    佐々木 英, 松隈 則人, 池田 英雄, 鴨井 三朗, 日高 令一郎, 井上 林太郎, 大曲 和博, 南 徹, 上田 隆, 池園 洋, 占部 ...
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1187-1195_1
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    5年以上経過の追えたクローン病12例を対象としてその大腸病変の経時的変化を検討した.初診時小潰瘍ないしアフター様潰瘍の多発を認めたものは,限局性に敷石像を呈した.初めに敷石像を認めたものは,治療により,しだいに隆起病変が粗となり改善を認めたが一部は狭窄を伴った密な炎症性polyposis像となった.縦走潰瘍を認めたものはほとんど変化ないか偏側性変形が著明となった.大腸の比較的早期の病変としては,小潰瘍ないしアフター様潰瘍の多発が示唆された.
  • 榎本 悟, 奈良 芳則, 大黒 善弥, 原 敬治, 岩渕 三哉, 渡辺 英伸
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1196-1203
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Stomal polypoid hypertrophic gastritis(SPHG)を母地として発生したと考えられる残胃癌の1例を経験したので報告する. 症例は43歳男性.19年前に十二指腸潰瘍にて胃切除術ならびに胃空腸吻合術(Billroth II法)を受けた.1981年10月腹部膨満感を主訴とし来院.胃X線および内視鏡検査ではSPHGと考えられたが,自覚症状を有することから,1982年1月再胃切除術を施行した.切除標本の胃空腸吻合部には全周性のイモ虫状隆起があり,その大彎部分には2個の小潰瘍がみられた.組織学的には,隆起は腺窩上皮の幼若化と過形成,胃底腺の萎縮,偽幽門腺化生および嚢胞化から成るSPHGであった.SPHGで囲まれた潰瘍部の深部には,高分化管状腺癌が認められた.癌は2×2×3cmで,固有筋層に達していたが,残胃内に限局していた.
  • 浅江 正純, 稲生 誠樹, 山本 誠己, 橋本 忠明, 児玉 , 坂口 雅宏, 青木 洋三, 勝見 正治
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1204-1209
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胆嚢結石を合併した原発性硬化性胆管炎(以下PSC)を経験した.症例は63歳女性で発熱,黄疸,全身倦怠感を主訴に来院した.腹部超音波検査にて胆嚢内に結石陰影を認め手術目的で入院した.術中胆道造影で総胆管に不整な多発性の狭窄像を認め,さらに左肝管の拡張および肝門部での狭窄像を認めた.肝生検による組織像はPSCを疑わしめる所見を示していた.術後に施行した内視鏡的逆行性胆管造影法では肝内外胆管でbeaded appearanceと称される不整な拡張と狭窄を示し,総胆管にはdiverticulum-like outpouchingと呼ばれる小憩室様の突出が数カ所認められPSCにみられる特徴的な所見を示していた.PSCの範疇内には従来胆石合併例は含まれないとされていたが,近年では胆嚢結石合併例も含めるとする報告が多くなってきている.本例は胆嚢結石を合併したPSCの典型例と考えられる.
  • 飯塚 昭男, 森瀬 公友, 古沢 敦, 恒川 洋, 加藤 肇
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1210-1216_1
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    小腸,大腸Crohn病の患者で十二指腸に狭窄をきたした症例を経験し,本邦報告例の文献的考察を加えて報告した. 患者は28歳の男性で,昭和57年に肛門周囲膿瘍の手術の既往があり,昭和58年4月右下腹部痛,腹部腫瘤,下痢を主訴に入院した.X線検査にて回腸末端には縦走潰瘍,狭窄,回盲部の圧排を認め,十二指腸には狭窄および小隆起性病変の多発を認めた.大腸の生検標本で非乾酪性肉芽腫が認められ,十二指腸,小腸,大腸Crohn病と診断した.初回入院時はprednisoloneにより症状は軽減し退院した.昭和59年3月に再燃したが,elementaldiet(ED)にて軽快した.昭和61年11月現在経口的ED療法にて外来で経過観察中である.本邦の微小病変を除いた胃,十二指腸Crohn病7例の検討では,自験例以外は全例手術を受けている.自験例は診断から3年後も経過良好であり,胃,十二指腸Crohn病も慎重に経過観察を行なえば内科的治療も可能であると考えられた.
  • 亀谷 さえ子, 野田 愛司, 玉田 元子, 渡辺 務
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1217-1225
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    十二指腸に隆起性病変を認め,生検組織診で異所性胃粘膜と診断した4例を経験した.症例は74歳男性,50歳女性,68歳男性,50歳女性で,発生部位は球部3例,球部から第2部にかけて1例であった.内視鏡所見は前者2例が多発性小隆起の集簇で,後者2例が孤立性隆起性病変であった.生検組織診でいずれも主細胞,壁細胞からなる胃底腺と胃型上皮がみられ,十二指腸異所性胃粘膜と診断した.前者2例は,生検組織診で採取された切片ではあるが大部分が胃粘膜からなっており,しかも,胃型上皮,胃底腺を含む完全なものであることから,迷入によるものと考えられた.後者2例は胃型上皮,胃底腺を有する胃粘膜であるが,十二指腸粘膜の中に島状にみられるにすぎず,迷入とは断定できなかった.また,両例とも孤立性隆起で頂点に潰瘍が存在しており,この部の再生過程に生じた化生の可能性が考えられた.
  • 三富 弘之, 一原 亮, 鈴木 裕, 岡田 豊次, 山本 佳正, 五十嵐 正広, 勝又 伴栄, 岡部 治弥, 高橋 俊毅, 中 英男
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1226-1231_1
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    27歳の男性で,反復するイレウス症状を呈し,術後の切除標本の病理組織学的検討で好酸球性腸炎と診断された1症例を経験した.入院時には末梢血で好酸球増多は認めず,病歴から症状を引き起こす特定食品は確認できなかった.また,各種アレルゲンによる皮内反応,RAST法はすべて陰性であった.病理組織学的には,筋層の肥厚と同部を中心とした著明な好酸球浸潤をみ,Kleinらのいうpredominant muscle layer diseaseに相当する所見であった.術後も3回のイレウス症状をみたが,いずれもステロイド剤の投与で症状は軽快した.最後の発症から18カ月目の現在,ステロイド剤に抗ヒスタミン剤を加え経過観察中である.
  • 那須 宏, 五十嵐 潔, 児玉 光, 千葉 満郎, 荒川 弘道, 正宗 研, 上坂 佳敬
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1232-1239
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    非特異性小腸潰瘍の2例を報告した. 症例1は58歳男性,既往歴に白斑症,肺結核,虹彩毛様体炎あり,昭和55年4月心窩部痛,回盲部痛で発症し,同年11月手術がなされ3個の潰瘍瘢痕を伴ったUl-IVの2個の潰瘍が回腸末端部に認められた.昭和60年3月前回手術時の吻合部に瘻孔を伴った潰瘍が再発し11月切除を受けた.手術2カ月後再び注腸造影,内視鏡検査で吻合部に再発が確認された. 症例2は44歳男性,31歳頃より易疲労感,口内炎が出没していた.41歳時タール便,42歳時血便が出現し,鉄剤の投与を受けた.昭和60年7月タール便が出現し当科受診,小腸X線検査で回腸に皺襞集中を伴う深い潰瘍が認められた.切除標本ではU1-IVの潰瘍3個とUl-IIIの潰瘍瘢痕2個を認めた.手術後再び下血が出現した.なお両者とも病理学的には潰瘍形成と慢性活動性の非特異的炎症所見を示した.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1987 年 29 巻 6 号 p. 1241-1357
    発行日: 1987/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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