日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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ISSN-L : 0387-1207
28 巻, 6 号
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  • 伊藤 忠彦, 相部 剛, 吉田 智治, 野口 隆義, 大谷 達夫, 藤村 寛, 西村 滋生, 宮崎 誠司, 河原 清博, 平田 牧三, 岡崎 ...
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1193-1201
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     主に電子リニア走査式超音波内視鏡(周波数5MHz)を用いて,食道癌の深達度診断およびリンパ節転移の有無について検討した.癌深達度診断については,術前で70%,摘出標本で90%の正診率であった.リンパ節転移については,リンパ節の内部エコーの性状からだけでは転移の有無の判定は困難であった.そのため,摘出リンパ節を組織学的に検討した結果,長径10mm以上で"円形"のリンパ節の転移率は約半数であり,長径5mm未満のリンパ節には転移はみられなかった.一方,超音波内視鏡によるリンパ節の描出率は,長径10mm以上で約60%という結果を得た.リンパ節の描出率および転移の有無の判定の精度を向上させる目的で,oil in water型emulsion経口投与法を超音波内視鏡検査に導入した結果,その有用性が期待された.
  • 長谷部 千登美, 関谷 千尋, 石川 裕司, 奥野 一嘉, 小野 稔, 佐藤 仁志, 高橋 篤, 矢崎 康幸, 並木 正義
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1202-1213
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     非B型慢性肝炎(NBCH)では,B型慢性肝炎(BCH)とはやや異なる赤色紋理(RM)の出現することが,たびたび報告されている.そこで,NBCHの腹腔鏡所見の特徴と肝炎進展との関連性につき,BCHと比較検討した.RMの形態についてみると,BCHではperiportal RMが主体であるのに対し,NBCHではlocalized multilobular RM(われわれの報告した"非定型赤色斑。)を高頻度に認めた.また,RMを呈した例は肝炎の活動性が強く,その後も進展しやすい傾向があった.BCHでRMを呈した例は,斑紋を伴って肝硬変へ進展し,RMは間質部の発赤として残存するという画一的な進展を示した.それに対しNBCHでは斑紋の出現は稀であり,溝状陥凹の形成や微細で不規則な凹凸の出現,白色紋理の増強などを呈し,多彩な進展様式を示した.このようにNBCHでは,肝細胞障害の範囲や分布によって多様な所見を呈し,部位差の大きい肝表面像の形成につながるものと思われた.
  • ―非血便群の重要性―
    長廻 紘, 長谷川 かをり, 飯塚 文瑛, 屋代 庫人, 野口 友義, 相原 玲子
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1215-1223
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Colonoscopyの適応として血便の重要性は確立されている.血便以外の症状のColonoscopyにおける意義をみるために自験例をもとに検討を行った.1982年から1984年までの3年間に消化器病センターを訪れてcolono-scopyを行った新患2,151人を対象とした.方法は患者の訴え(colonoscopyのきっかけとなった症状),年齢と診断された疾患との関係をみることによった.それにより次のような結果が得られた.(1)40歳以下の若年者では腫瘍は稀で炎症が多いので,血便患者のみが対象になり,観察は左結腸のみでよい.(2)50歳以上の高齢者は癌・腺腫が主要疾患であるので,血便・非血便を問わずあらゆる症状がcolonoscopyの適応となり,かつtotal colono-scopyが望ましい.(3)40歳代は高齢者に準ずる. 高齢者における血便以外の症状がcolonoscopyの適応として無視し得ないことを強調したい.
  • V.P. Strekalovsky, T.S. Odaryuki, V.V. Veselov
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1224-1230_1
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Creeping villous neoplasms of the colon were removed together with the mucosa by means of endoscopic electroresection. In 15 patients tumors were located in the rectum and in 11 patients in the colon. In 19 patients tumors affected a half or more of the colonic circumference and had an extension of 3-5 to 8 cm. Endoscopic procedures in 16 patients resulted in complete recovery. Two patients were not examined due to a short period of follow up, and in 8 patients central recurrent tumor were detected and could be removed by repeated procedures. It is concluded that endoscopic electroresection of the colonic mucosae with tumors has proved to be a radical operative procedure in 15 patients with malignant villous neoplasm.
  • 岡野 均, 西田 博, 今村 政之, 内田 秀一, 堀口 雄一, 佐藤 達之, 大石 亨, 丸山 恭平, 児玉 正, 瀧野 辰郎
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1233-1236_1
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     上部消化管出血病変に対して多くの内視鏡的方法が試みられている.今回,エトキシスクレロール(R)を用い,内視鏡下に上部消化管出血を治療する方法を報告する.エトキシスクレロールは食道静脈瘤硬化療法の硬化剤として一般的であるが上部消化管出血の止血に際して応用してみた.最初にエトキシスクレロール(R)の局注の基礎的効果を犬を用いて検討した.早期止血作用は間質の浮腫に伴う血管への圧迫と血栓形成,後期止血作用として血管内膜炎にもとつく血栓形成による止血作用が推測された.実際の臨床では,出血巣周囲に計3~4mlのエトキシスクレロールを局注した.14例中12例の症例で確実に有効であり,副作用はまったく経験しなかった.エトキシスクレロール局注法は,上部消化管出血に対する止血法として安全で有効な方法であると思われた.
  • ―遺残縫合糸との関係について―
    蜂矢 仁, 鈴木 敏行, 鈴木 邦彦, 小林 英治, 川村 益生, 中井 富夫, 村上 善正, 鈴木 貞輔
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1237-1245
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     切除残胃218例に内視鏡検査を施行し残胃癌25例を除く193例中34例(17.6%)に吻合部潰瘍を認めた.術式別による内訳は,Billroth I法(BI法)128例中17例(13.3%),BillrothII法(BII法)65例中17例(26.2%)であった.吻合部潰瘍34例のうち,遺残縫合糸の露出部に発生した吻合部潰瘍が6例(17.6%)に認められた.BI法吻合部潰瘍17例中15例(88.2%)は吻合線上に存在し,そのうち6例(40.0%)は遺残縫合糸の露:出部に発生した潰瘍であった.一方BII法吻合部潰瘍17例中13例(76.5%)が空腸側に存在し,遺残縫合糸の露出部に発生した潰瘍は認めなかった.このことからBII法では,吻合部潰瘍のほとんどが純然たる消化性潰瘍と考えられるのに比し,BI法では,遺残縫合糸が潰瘍の発生に関与する場合が多いと推察された.吻合部潰瘍の診断においては注意深い内視鏡観察による遺残縫合糸の有無の確認が重要であり,遺残縫合糸が存在した場合は,内視鏡下の縫合糸抜去が有用な治療法であると考えられた.
  • ―とくに内視鏡的栓塞療法を中心に―
    小林 幸雄, 高瀬 靖広, 近森 文夫, 折居 和雄, 岩崎 洋治, 福富 久之
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1246-1253
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは食道静脈瘤症例に対し,1977年10月から,1985年3月までに,内視鏡的栓塞療法による内視鏡的硬化療法を336例に施行した.施行336例について,主要合併症発生例は,12例(3.6%)で,その内容は,食道狭窄3例,食道胃接合部びらん出血2例,腎機能障害2例,血性胸水1例,食道びらん出血1例,血圧低下1例,食道静脈瘤出血1例,食道穿孔1例であった.そして,これらの合併症の原因のほとんどは,技術的要因によると思われた.しかし,主要合併症発生例は,いずれも保存的治療法により治癒退院しているので,本治療法では手技を正しく施行し,また合併症に対する対応を適確に行えば,合併症による死亡例を,極めて低くおさえることができると思われた.
  • 鈴木 邦夫, 郡 大裕, 加藤 卓次, 多田 利男, 野村 元積, 木下 晴生, 中永 昌夫, 浅田 尚紀, 山下 敬司, 浜中 大三郎
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1254-1261
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     スコープ先端部に超小型固体撮像素子であるCCD(Chargecoupleddevice)を内蔵した,従来のファイバースコープとは全く異なる映像伝導システムを有する米国Welch-Allyn社製Video Endoscope system(WAVE system)を上部消化管内視鏡検査に使用した.本システムにおいて将来最も期待されるのは,RGB(Red,Green,Blue)信号を利用したコンピューターによる内視鏡像の画像処理,画像解析の可能性であろう. 今回,画像を明瞭化する処理法として高周波成分を強調した処理画像,赤の成分を微分処理した画像を供覧し,またRGBの成分比率により画像解析を行なう方法を呈示した. 画像処理および解析法には種々の方法があり,今後多数の症例について試行錯誤することにより,臨床上有用な画像処理システムを確立したい.
  • ―緊急内視鏡検査を主に―
    佐々木 英, 池田 英雄, 日高 令一郎, 前川 隆一郎, 鴨井 三朗, 犬丸 雅比古, 上田 隆, 池園 洋, 下河辺 正行, 宮園 一博 ...
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1262-1271
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去3年間の下部消化管出血78症例を対象として大腸内視鏡検査の意義を検討した. 一般外来,救急外来に分けて検討すると内視鏡検査時の確診ないし疑診例はそれぞれ28例(66%)29例(80%)であり全症例で57例(73%)であった. 出血より7日以内に内視鏡検査が行なわれた症例をみると早期に施行した症例が最終診断確診率が高い傾向にあった. 内視鏡検査時に出血部位未到達例では,大量出血の場合は,選択的上腸間膜動脈造影検査が,少量の場合は同日大腸X線検査が診断に有用であった. 今回の検討では,出血部位からみると血液が腸管内に残存していれば内視鏡の挿入は脾彎曲部まで行なえば85%が診断可能と思われた.
  • 河島 祥彦, 北尾 優子, 奥野 裕康, 渡辺 敏彦, 松本 利彦, 野中 恒幸, 奥平 勝, 久保田 佳嗣, 立岩 二朗, 平松 新, 水 ...
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1272-1280_1
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     食道扁平上皮乳頭腫は極めて稀な疾患である.本邦では,1934年種村らが報告して以来自験:例を含め25例にすぎない.最近著者らは,相次いで生検及びポリペクトミーによって確診した3例を経験した.症例1は65歳,男性.胃透視で食道下部に15mm大の透亮像を指摘され内視鏡検査施行,下部食道右背側に表面発赤の強い桑実様の有茎性腫瘤を認め,ポリペクトミーを行った.大きさは16×13×5mm,組織学的には著明な乳頭状増殖を伴う扁平上皮細胞の増生と表層の一部に角化傾向を認め,扁平上皮乳頭腫と診断した.症例2は71歳,男性.甲状腺機能低下症で入院中,便潜血反応陽性のため内視鏡を行ったところ,下部食道腹側に5mm大のやや白っぽい扁平な小隆起性病変を認めた.生検では症例1と同様の組織像で,扁平上皮乳頭腫と診断した.症例3は64歳,男性,心窩部痛のため胃透視施行したところ,食道下部に隆起性病変を認めた.内視鏡で同部に桑実様の有茎性腫瘤があり,ポリペクトミーを行った.大きさは7×5×5mmで,扁平上皮乳頭腫であった.
  • 吉井 由利, 小林 世美, 杉浦 弘, 篠田 雅幸, 高木 巌, 鈴木 亮而
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1281-1286_1
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     最近panendoscopyで発見し,生検でほとんど癌病巣が摘除されたと考え得る極めて微小な食道癌を2例経験した.第1例は74歳男性で,某病院に肺炎で入院中,たまたま消化管X線検査で中部食道に憩室を認め,GIFにて憩室近くにわずかな平板状小隆起を認めた.ルゴール染色により不染色域を呈したので2個生検を採取し,その1個に癌(約0.3cm)を認め,当院で切除した.第2例は63歳男性で,全身皮膚の色素沈着と胃の異常を指摘して紹介された.当院でのGIFで中部食道に小さい不整な発赤を認め,生検4個中1個に癌を認めた.同部はルゴール染色で明瞭な不染色域を呈し,再度の生検2個にも癌を認めたので切除し,肉眼で0.6×0.45cmの浅い陥凹を認めた.これら2例の切除標本を詳細に検索したものの癌は認められず,再生上皮をみるのみであった.以上2例とも食道X線検査で病巣の描出が困難であり,panendoscopyによる注意深い観察が,微小食道癌の発見に有用である.
  • 大沢 佳之, 鈴木 俊太郎, 伊藤 万寿雄, 五十嵐 潔, 島 仁, 千葉 満郎, 長崎 明男, 荒川 弘道, 正宗 研
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1289-1294_1
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的およびX線的に消化管病変を確認し,さらに経過を観察記録し得た成人のSchoenlein-Henoch紫斑病(以下SHPと略す)の1症例について報告した.症例は20歳男性,60年2月上旬に上腹部痛,嘔気,嘔吐で発症し,その経過中に下腿部の紫斑,消化管病変およびIgA腎症類似の腎病変を確認した.消化管病変として,十二指腸下行脚に暗赤色でわずかに隆起した,中心に白苔をもつ多発性のびらんが内視鏡で確認された.また小腸X線検査で空回腸にスキップした狭窄像が多発し,特に空腸では約9cmの長さにわたって粘膜ひだの浮腫状変化,一部に嚢状拡張を伴う不整狭窄像がみられた.十二指腸,空回腸の病変はそれぞれ2週,4週で治癒した.7週後紫斑と十二指腸病変が再発したが速やかに消退した.臨床症状が改善したため退院したが,退院3日後に下腿紫斑を伴って上腹部痛が再発し再入院.その際の内視鏡検査で胃前底部にAGML類似の多発性潰瘍がみられ,Histamine H2 receptor antagonistで治癒した.
  • ―本症の発生現況を含めて―
    石川 裕司, 関谷 千尋, 矢崎 康幸, 高橋 篤, 佐藤 仁志, 小野 稔, 長谷部 千登美, 奥野 一嘉, 山田 政孝, 並木 正義
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1295-1303_1
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     礼文島に居住し,兄弟で多包性肝エキノコックス症に罹患した2症例について報告した.兄は35歳の時,上腹部の緊満感を主訴として,また弟は52歳時,上腹部痛を主症状として発症した.両者共に初診時,上腹部に非常に硬い凹凸不整な肝腫瘤を触知したが,全身状態は良好であり,血液の生化学的検査所見でもほとんど異常を認めなかった.しかし,エキノコックスに対する免疫血清学的試験は2例とも陽性であった.腹腔鏡検査でも両者は類似の所見を示し,右葉方形葉から左葉全体にかけて,多包性肝エキノコックス症に典形的な灰白色の硬い腫瘤を認め,生検組織像でも特有なキチン膜で囲まれたcystを認めた.その他肝シンチグラム,ECHO,CT,血管像影でも特徴的所見が得られた.両者は発症年齢に差はあるが,臨床所見や病変の性状がよく似ている.兄は発症後8年間肝機能はほぼ正常値を示していたが,結局は肝不全で死亡した.弟は現在腹痛も軽快し,漁業に従事しており,定期的に経過を観察中である.
  • 中嶋 和幸, 樋渡 信夫, 今野 保敏, 小林 和人, 江川 春延, 浅木 茂, 後藤 由夫, 白根 昭男, 八木田 旭邦
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1304-1308_1
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     クローン病の家族内発生は,欧米では10%前後と報告されているが,本邦では2家系の報告があるのみである.著者らは67例中2家系(兄弟例,母子例)を経験している.今回は母子例を報告する. 母親は48歳.昭和50年春頃より下痢が出現,52年に微熱,55年より臍周囲~回盲部痛,及び肛門部痛も伴うようになった.58年9月より,再び回盲部痛が出現,12月より症状悪化し,59年春当科に入院した.小腸大腸に縦走潰瘍,敷石像を認め,生検にて肉芽腫も認め,クローン病と確診した.次男は18歳.59年3月より空腹時心窩部痛が出現し,9月頃よりアフタ様口内炎,1日3~4行の下痢も伴うようになり,当科へ入院した.精査により,十二指腸潰瘍,回腸末端部の縦走潰瘍,敷石像,下部大腸にアフタ様潰瘍を認め,肉芽腫も証明された.本家系のHLAの検索では,母親にBW61,DR4,次男にBW61が認められた.
  • 田中 実, 天津 孝, 正木 秀博, 安藤 三男, 森田 邦夫, 白木 正裕, 大柴 三郎
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1309-1315
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は47歳女性.発熱,下痢を主訴として入院し潰瘍性大腸炎の診断のもとに加療中であったが,入院約3カ月目より右上腹部痛を訴えるようになった.血液生化学的検査においてγ-GTPが上昇しており,ERCでは総胆管内に小隆起性病変が描出された.胆汁細胞診においては腺癌細胞が認められた.手術の結果,腫瘍は総胆管壁内に留まっており,いわゆる早期総胆管癌と診断した. わが国では,潰瘍性大腸炎における悪性腫瘍の合併は稀であるが,今後潰瘍性大腸炎症例の増加に伴いその頻度も増すものと考えられる. 早期胆道癌は,近年画像診断の発達とともにその報告をみるようになったが未だ少なく,その発見のためにはγ-GTPなどの胆道系酵素の上昇などに注目し,ERCを積極的に行う必要があると考える.
  • 坂戸 政彦, 白井 忠, 嶋倉 勝秀, 山口 孝太郎, 赤松 泰次, 仲間 秀典, 滋野 俊, 上條 登, 古田 精市, 安達 亘, 拓植 ...
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1316-1321_1
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は20歳男性,腹痛と下血を主訴に近医へ入院.その後約1カ月間にわたる慢性の腸閉塞症状がみられ精査目的で当科を紹介された.経口摂取可能であったため経口小腸造影を施行したところ,回腸の重積像および先進部に腫瘤像を認めた.イレウス管挿入後,オリンパスCF-IBWを用いて逆行性に回腸内視鏡検査を施行.先進部の腫瘤は発赤した平滑な粘膜に覆われ,一部では結節状を呈し,表面に潰瘍を認めたため,小腸粘膜下腫瘍による腸重積症と診断し,回腸部分切除術を施行した.切除標本の病理検査によりMeckel憩室の内翻による腸重積症と診断された.Meckel憩室の内翻による腸重積を術前に内視鏡的に観察しえた症例は調べ得た限りでは他に報告はみられなかった.Meckel憩室は合併症のため緊急手術が行われて診断されることが多いが,本症例のように待機的手術が可能な場合には,小腸X線検査や,内視鏡検査が診断上有用な方法になりうると考えられた.
  • ―内視鏡的ポリペクトミーの治療的意義の考察―
    辻 秀治, 佐藤 達之, 岡野 均, 大石 享, 丸山 恭平, 西田 博, 今村 政之, 内田 秀一, 堀口 雄一, 依岡 省三, 福田 新 ...
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1322-1329
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的ポリペクトミーにて直腸カルチノイドと診断し得た2症例を経験した.症例1は29歳女性,主訴は下腹部痛,大腸内視鏡検査で直腸に粘膜下腫瘍様病変を認めた.生検にては確定診断が得られなかったため,内視鏡的ポリペクトミーを施行した.切除腫瘍は5×5×5mmで組織学的にカルチノイドと診断した.腫瘍細胞は粘膜下層に限局し,切除断端への浸潤は認めなかった.追加切除は行なわず経過観察中である.症例2は54歳女性.主訴は下血,注腸X線検査および大腸内視鏡検査にて直腸に粘膜下腫瘍様病変を認め内視鏡的ポリペクトミーを施行した.切除腫瘍は14×14×10mmで組織学的にカルチノイドと診断した.腫瘍細胞は粘膜下層に限局していたが,切除断端付近まで浸潤を認めたため追加切除を施行した.腫瘍細胞の残存およびリンパ節転移は認めなかった.これら直腸カルチノイド2症例を若干の考察を加えて報告する.
  • 三宅 周, 庵谷 和夫, 安原 高士, 岩野 瑛二, 佐々木 俊輔, 河野 宏, 荒木 文雄
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1330-1334_1
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     横行結腸に限局した偽膜1生大腸炎(以下PMC)の1例を報告する.患者は53歳,女性で,膣炎および子宮内膜炎のために,1983年11月より某産婦科医院に通院している.11月11日よりアモキシシリン,18日から12月1日の朝までバカンピシリンを内服した,12月1日の午後より下痢,血便,嘔吐,腹痛,裏急後重が出現し,同日に入院した・第5病日の大腸内視鏡検査では横行結腸に限局して飴色,半球状の高度の偽膜形成をみとめたため・PMCと診断した・第2,7,8病日の便嫌気性培養は陰性であった.臨床経過は良好であり詩別の治療なく第6病日には軽快した・第8病日のバリウム注腸髄では,横行糸結腸の拡がりが不良で,肝彎曲部近くに微小隆起をみた・第19病日の大腸内視鏡検査はほぼ正常であった.横行結腸に限局したPMCの報告はみられず,極めて稀な症例であると考えられたので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 錦織 ルミ子, 油谷 令尹子, 旗手 裕, 今井 照彦, 西浦 公章, 高橋 仁志, 浜田 信夫
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1335-1343
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     上部消化管術後の合併症の1つである吻合部瘢痕性狭窄に,高周波電流装置を使用した内視鏡的切開術(一部の症例には食道拡張用バルーンカテーテルを併用)を14例に施行した.対象は男性11例,女性3例で平均年齢は50.6歳である.原疾患は,胃癌7例,AGML1例,食道癌5例,食道静脈瘤1例である.切開術を行った14例中,12例に良好な結果を得た.1~2回の切開術で効果が得られたのは14例中11例で,効果の発現が速やかであった.効果不良の2例は,いずれも原疾患が食道癌で,狭窄部が10mmを越え,吻合部は食道長軸に対して軸偏位の強い症例であった. 以上のことより,上部消化管吻合部狭窄に対して内視鏡的切開術による狭窄部拡張術は安全で速やかな効果が期待できる方法である.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1986 年 28 巻 6 号 p. 1344-1474
    発行日: 1986/06/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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