日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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ISSN-L : 0387-1207
30 巻, 11 号
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  • 山下 由起子
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2511-2525
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    IIb型早期胃癌の頻度は,内視鏡機器の発達,診断手技の向上に伴い増加してきたが,X線的,内視鏡的,さらに組織学的に表面平坦で,周囲正常粘膜との間に高低差を認めない,典型的なIIb病変の発見は,今だに少ない.そこで,これまで診断されているIIb16病巣の内視鏡像を検討した.表面平坦な凹凸のないIIb病変の内視鏡的特徴は,その色調変化にあり,大別すると発赤(赤色型),褪色(白色型)に分けられる.この色調変化を正確にとらえることがIIb病変の診断には,最も重要であることが判明した.つまり,胃粘膜の色調変化を,客観的に表現できれば,IIb病変を正確に把握できることになる。この観点から高速分光光度色差計を用いて,胃粘膜色調の波長分析を試みた. 胃粘膜の分光分布曲線は,基本的に500nmに第1のピークをもち,550nmで低下し,690nm~700nmで大きく上昇,第2のピークを形成する.検査症例は出血性胃潰瘍,IIc型早期胃癌,BorrmannIV型胃癌,IIb型早期胃癌(白色型)であり,IIb型早期胃癌では,明らかに周囲萎縮粘膜とは異なった曲線を呈し,内視鏡診断の困難さに比べ,容易に,しかも短時間での質的診断が可能なことを示した.操作上,精度上の改良の余地はあるが,胃粘膜色調の数値化は容易で,客観的評価が可能である.電子スコープの出現により,今まで考えられなかった不可視光線域の情報が得られることや,画像処理ができると共に,病変部のRGB成分の検討により色の客観化=再現化が容易となる.さらに胃粘膜の波長分析をかさねることにより,補助診断としてのみならず,コンピューターを導入し,応用し,自動診断能をもつ内視鏡の実現が可能である.
  • 中田 和孝
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2527-2536
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    著者は,胃潰瘍の治癒期間を予測する目的で,潰瘍が内視鏡的に赤色瘢痕期となるまでの期間と,超音波内視鏡所見との関係を重回帰分析を用いて検討した.その結果,検査時から赤色癒痕期までの予測治癒期間(Y)は,4つの所見を尺度化した数値に,次にしめす数値(重み)を乗じた計算式でしめされることが判明した.すなわち,Y(週)=0.9953×(内視鏡的ステージの尺度)+0.9593×(潰瘍の形態の尺度)+1.0429×(潰瘍深達度の尺度)+0.5326×(潰瘍底の断面積の尺度)-2.5847となった. この重回帰式による胃潰瘍の予測治癒期間と実際の治癒期間はきわめてよく相関したが,予測期間よりも治癒が遷延する傾向がみられた症例では,重症肝障害や外傷などの合併症を伴っていた.非手術例50例の予測治癒期間は平均6.3週,手術例5例では平均10.4週であり,胃潰瘍の手術適応の判定を行う場合に,この予測値が有用になると考えられた.さらに,治療薬剤の効果判定,よりよい治療法の選択に対しても本法の有用性が期待される.
  • ―組織像との対比検討を含めて―
    野口 隆義
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2537-2549
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    ERCPで診断された慢性膵炎52症例(I群40例,II群12例)に超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasono-graphy;以下,EUSと略す)を施行し,慢性膵炎診断におけるEUSの有用性について体外性USと比較し,さらに,慢性膵炎の超音波精査法としてのEUSの有用性について検討した. その結果,慢性膵炎I群において,EUSはUSよりもはるかに高い正診率をしめした.また,USによる慢性膵炎の診断基準では参考所見にとどまっている膵内部エコーの不均一像や膵辺縁の不整像は,EUSでは高率に描出された.すなわち,EUSでの慢性膵炎の膵内部エコーの特徴像としては,点状高エコー像,点状高エコーと斑状低エコーの混在像,およびびまん性低エコー像の3つのパターンに分類され,これらは加齢でみられる内部エコー像と異なっていた.また,膵辺縁像からみた慢性膵炎の所見として,中等度以上の不整像をとるべきであると考えられた.EUSでは,現行のUSによる診断基準での確診所見を高率に描出できるとともに,EUSで描出される膵内部エコー像および膵辺縁像は,慢性膵炎の超音波診断における重要な所見となると考えられた. なお,剖検または手術で得られた膵標本11例において,水浸下超音波画像と病理組織像との対比を行った結果,慢性膵炎でしめされた膵内部エコー変化は小葉の線維化と小葉間脂肪織に一致した.また,加齢でみられた斑状高エコー像は小葉間脂肪織に,線状高エコーの集簇像は変形した分枝膵管に相当すると考えられた.
  • 大村 良介
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2550-2559
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎の治療が目指すものは,保存的治療,外科的治療をとわず,疼痛の除去と膵内外分泌機能の維持,あるいは改善にある.著者らは,この両方に有効であると考えている内視鏡的膵管口切開術と純粋膵液採取法を併用した内視鏡的治療を行ってきた. 今回,内視鏡的膵管口切開術を施行した症例のうち,純粋膵液採取法と血液生化学検査を用いて,十分な経過観察ができた7例を対象として,膵内外分泌機能の推移について検討した.その結果,膵内分泌機能については急激な増悪は認められず,膵外分泌機能については内視鏡的膵管口切開術施行前後で,液量,酵素量に有意の増加を認めたが,最高重炭酸濃度には有意差はなかった.さらに,膵腺房細胞は膵管上皮細胞より傷害を受け易いが,機能的再生能は高いこと,逆に後者は前者より傷害を受け難いが,機能的再生能は低いことが示唆された.
  • 佐々木 正孝, 吉田 茂昭, 山口 肇, 田尻 久雄, 斉藤 大三, 土方 淳, 吉本 一哉, 有村 明彦, 浅野 暁子, 正岡 一良, 三 ...
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2561-2566_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    未分化型腺癌で組織学的に病巣内潰瘍を併存しない早期胃癌の内視鏡的,臨床病理学的な特徴像.更にはこれらの初期像としての意義を明らかにすることを目的として以下の検討を行った.対象は当センターで外科的に切除された内視鏡写真の良好な単発性早期胃癌のうち,未分化型腺癌で組織学的にul(-)とされた20例,および内視鏡的にこれと鑑別し難いul(-)癌51例である.得られた主な結果をみると,ul(-)癌はul(+)癌と比し平均年齢が高く,男性の比率がやや高かった.癌の深達度および病巣の大きさには差を認めなかった.内視鏡所見ではul(-)癌は褪色を主体とするものが多かったが,悪性診断の難易度には差を認めなかった.このことから,現在発見されている症例を見るかぎり,胃の未分化型腺癌にul(-)癌の頻度が少ないことは,診断学的なバイアスに由来したものとは考え難かった.また,今回対象としたul(-)癌は,ul(+)癌に比して男性優位で平均年齢も高いことから現時点ではul(+)癌の一般的な初期像とは考え難く.ひとつの別な初期像である可能性が示唆された.
  • 平松 通徳, 酒井 正彦, 内野 治人, 三宅 健夫
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2567-2576_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    高分子デキストラン硫酸を連日ラットに経口投与することにより実験的潰瘍性大腸炎を作成して回腸終末より下行結腸までの腸管壁血流値を部位別にレーザー・ドップラー法で測定し,その発病過程における血流値の変化と病変の分布との相関を調べた.その結果にもとづき,従来明らかでなかった潰瘍性大腸炎における腸管壁血流値変化の病因的意義につき検討した.血流値はUI-IIの多発性潰瘍を伴う典型的病変完成の時期と部位とに一致して増加し,それ以前の病期や典型的病変を認めない部位では有意の増加を示さず,血流値の変化が病変形成に先行する傾向はみられなかった.この事実より,潰瘍性大腸炎発病期における腸管壁血流値の変化は,病変形成の原因である可能性は少なく,むしろ典型的病変に伴う結果であろうと思われた.
  • 山崎 敏浩, 島田 長樹, 杉本 元信
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2579-2587
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡検査時にindocyanine green(ICG)を大量に注射して肝表面を染色する方法は肝の形態的観察を容易にするが,この際の肝表面の着色状態が肝病変の重症度に反比例するか否かを知ることは重要である.そこで肝疾患患者153例のICG3mg/kg静注20分後の肝表面着色状態を,着色面積も考慮して1(最不良)から10(最良)までの10スコアで判定し,疾患別に比較し,各種肝機能検査,一部の患者では肝glutathione S-transferase(GST)活性,ICG血漿―肝移行率a,肝ICG分布容積VLなどとの相関を調べた.ICGスコアは肝の病変が軽微な(minimal change)群で最も高く,急性肝炎,慢性肝炎,脂肪肝,肝硬変の順に低下した.肝機能検査では,血清アルブミン,血清コリンエステラーゼ,ヘパプラスチンテスト,血漿遊離アミノ酸モル比とは正の相関を,ICG15分停滞率,血清総胆汁酸とは負の相関を示し,また肝GST活性およびaとVLとは正の相関を示した.すなわち,ICGの着色状態はかなりよく肝予備能を反映している.
  • 中村 宏, 下重 勝雄, 井上 晴洋, 竹下 公矢, 五関 謹秀, 延沢 進, 片桐 一, 野坂 俊壽, 遠藤 光夫, 河野 辰幸
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2588-2595_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に対する直達手術において,通常内視鏡観察に併せて,超音波内視鏡(EUS)を行い食道壁内外の血行の観察を行った.対象は経腹的直達手術を行った食道静脈瘤患者8例であり,EUS(7.5MHz,ラジアル型)を用い,手術経過毎に胃上部及び食道の超音波断層像を観察した.EUSはバルーン密着法で行い,術中の内視鏡とEUSの交換には,静脈瘤硬化療法用ガイドチューブを利用した. EUSにより,左胃静脈系,短胃静脈系の拡張した血管が胃の噴門部,穹窿部の静脈瘤に,食道壁外の静脈瘤が食道壁内静脈瘤に流入する様子が観察され,また拡張した奇静脈の断面像及び連続的な走行が容易に観察された.傍食道静脈瘤の分布は多くは門歯より33~41cmであった.血行郭清,食道離断により,胃上部及び傍食道静脈瘤の消失,食道壁内静脈瘤の消失が確認され,奇静脈ρ径の狭小化がVTR像の見直しで認められた. 術中EUSは,内視鏡による粘膜面からの観察で追求できない食道壁外血行の観察に優れており,術式の決定,手術効果判定などに有用と思われる.
  • 竹田 彬一, 辻 俊三, 福田 新一郎, 片岡 慶正, 岩井 眞樹, 園山 輝久, 能見 伸八郎, 中川 長雄, 郡 大裕, 川井 啓市
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2596-2602_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    高齢者早期胃癌例で,高齢ゆえ手術拒否例,または手術不能例6症例を検討し,高齢者早期胃癌の経過を検討した.胃癌確定診断時の年齢は76歳から87歳であった.化学療法はテガフールが1時期のみ,または,断続的に投与された.IIc型早期胃癌の4例は,最短19カ月から最長69カ月の経過にても,なお内視鏡所見はIIc様であった.一方IIa型早期胃癌の2例は,36カ月,56カ月でBorrmann II型胃癌となった.ただIIa型からIIa+IIc類似進行胃癌様となるまでは平均39カ月であったが,そこからBorrmann II型胃癌となるには平均8カ月であり,表在癌での時期は長いが深部浸潤すれぼ急速であった. 以上より高齢者早期胃癌の6例での経過は比較的緩慢であり,特に陥凹型胃癌では著明であった.胃癌の生長についてのdoubling timeを測定したIIcの1例ではtD=407日であった.内視鏡検診であれば,高齢者の場合2年以上に1回の検診で充分治癒切除可能であると推定された.
  • 梶村 幸三, 梶山 徹, 西尾 彰功, 高鍬 博, 山本 富一, 洲崎 剛, 兼松 雄象, 松未 智
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2605-2611
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    8例の胃悪性リンパ腫(GML)の診療における超音波内視鏡(EUS)の有用性を検討した.正常の胃壁層構造を基準に深達度を判定した.エコーレベルは梶山らの分類に準じて,無エコーをレベル0,胃壁第4層をレベル1,脾実質をレベル2,2と4の中間群をレベル3,胃壁第3層をレベル4とした.病変部は大部分レベル1の低エコーに描出され,一部レベル2の混在する例もあった.浸潤形式はEUS上第2または3層に限局するもの4例,全層に浸潤するもの3例,周囲臓器に浸潤するもの1例と3種類に分類し得た.4例で胃壁外にリンパ節と思われる低エコーの類円形腫瘤が描出された.根治的胃切除術の2例と剖検の2例においては,EUS上の所見と組織所見がよく一致していた.7例に化学療法が施行され2例の経過観察をしたが治療有効例ではEUS上腫瘤の縮小が認められ,エコーレベルが1から3に上昇した.超音波内視鏡は胃壁内のリンパ腫の広がりと壁外リンパ節腫大の評価だけでなく,化学療法の効果判定にも有用である可能性を示した.
  • ―本邦報告例の集計と考察―
    原口 増穂, 牧山 和也, 山川 正規, 山崎 和文, 岩永 整磨, 水田 陽平, 井手 孝, 小森 宗治, 田中 俊郎, 長部 雅之, 村 ...
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2612-2620
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的ポリペクトミーにて診断し,治療し得た直腸カルチノイドを6例経験した.診断の動機は,いずれも自覚症からではなく,人間ドックによる精査などで偶然に発見されたものであった.大きさは7mm~17mm,形状は平盤状あるいは亜有茎性で,組織学的にはすべてsm浸潤であった.ポリペクトミー後の観察期間は2~4年であるが,局所再発や遠隔転移は認めていない.カルチノイド腫瘍のポリペクトミーによる治療の可能性を検討するために,本邦報告例496例を文献的に検討した.その結果,2cm以下のものは258例あり,そのうち207例(80.2%)のほとんどが局所切除かポリペクトミーによって摘除されており,経過が確認できた症例では再発転移例は1例のみであった.また腫瘍の形状と浸潤度,銀反応,中心陥凹の有無を検討したが,大きさ以外に転移の有無を示唆する有意な因子はなかった.1cm以下のものでも7例の転移例があったことから,ポリペクトミー後も摘出標本の十分な検索と局所残存の有無を確かめて,その後の治療方針を決定すべきと考えられた.
  • 中村 正樹, 菊地 直人, 谷口 英人, 星野 清志, 小泉 浩一, 山本 仁志, 梅谷 薫, 大野 義一朗, 菅谷 秀夫, 梅田 宏, 上 ...
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2621-2627_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは1981年2月から消化性潰瘍からの出血に対する内視鏡的止血術として,HSE局注療法を実施し,1987年11月までに10症例のDieulafoy潰瘍を経験し,うち9症例に対して本法を実施し,8症例の永久止血に成功しており,必ずしも外科手術の適応はなかった.症例の内訳は,男8例,女2例で,年齢は34~82歳,平均57歳である.手術治療が困難と考えられる重篤な基礎疾患を有する症例は6例と多かった.潰瘍歴を有するものは4例で,内視鏡挿入時胃内に新鮮血が存在したものは6例である.出血型は拍動型・凝血付着型がともに1例,湧出型が2例で,露出血管型が4例である.局注回数は1~4回で,平均1.8回である.なおDieulafoy潰瘍の存在部位は胃体部が6例と多かった.一方,同期間にDieulafoy潰瘍を除く191例の消化性潰瘍に対してHSE局注療法を1例につき平均1.8回実施し,178例の永久止血に成功したが,これはDieulafoy潰瘍のそれと有意の差はない.従って,Dieulafoy潰瘍は他の出血性消化性潰瘍と同様に,内視鏡的止血法を第一選択とすべきといえる.
  • 古谷 慎一, 川本 克久, 渥美 正英, 胡井 智, 伊勢谷 和史, 小笠原 宏之, 小原 尚之, 高祖 均, 高顕 純平, 赤木 博, 布 ...
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2628-2632_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内視鏡的ポリペクトミーを施行した十二指腸隆起性病変につき報告した. 組織学的には腺腫5例,ブルンナー腺腫4例,過形成性ポリープ2例,線維腫,血管腫,早期十二指腸癌がそれぞれ1例であった.これら14例のうち10例は第1部に存在し,大きさは13例が長径10mm以上であった.術前・生検にて組織が確定しえたものは生検施行13例中5例と,生検診断能は低かった.以上のことから完全生検のための内視鏡的ポリペクトミーは重要な手技と考えられ,また大量出血例や早期悪性病変に対する内視鏡的ポリペクトミーは治療としても非常に有効な手段と考えられた.
  • 山田 至人, 大井田 正人, 小泉 和三郎, 西元寺 克禮, 岡部 治彌, 桑尾 定仁
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2633-2641
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胃を病変の主な場としたSchonlein-Henoch紫斑病で,しかもその再燃を内視鏡及びX線にて観察し得た1例について報告した.症例は16歳男性,昭和61年6月上旬上気道炎症状に続く腹痛,嘔吐にて来院.上部消化管造影,内視鏡にて全胃にわたる急性胃粘膜病変(以下AGMLと略す)を認めた.Schonlein-Henoch紫斑病を強く疑ったが安静とH2受容体拮抗剤を中心とする抗潰瘍療法にて約1カ月後軽快した.5カ月後上気道炎症状に続く腹痛,嘔吐に加え,下腿小出血斑を認め来院.Schonlein-Henoch紫斑病の再燃と診断し入院.上部消化管検索にて前回同様の病変を認めた.抗潰瘍療法施行するも腹部症状は軽減しなかった.このためステロイド療法を開始,胃病変は徐々に改善した.
  • 重松 忠, 福井 和彦, 前田 ひとみ, 田辺 昇, 鮫島 庸一, 立松 恵子, 春日井 達造, 西川 和久, 加藤 肇, 服部 和彦
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2642-2646
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は27歳の男性で上腹部痛を主訴に来院.胃X線検査で胃角の軽度の変形と不整型潰瘍が認められた.胃内視鏡検査では胃角に粘膜ヒダの集中を伴う不整型潰瘍を認め胃癌,胃悪性リンパ腫が疑われた.胃生検では非特異的慢性炎症を認めたが悪性所見は認められなかった.繰り返し施行した胃生検でも悪性所見は陰性で,梅毒血清反応が陽性であり,ソケイ部のリンパ節の腫大より胃梅毒を疑った.駆梅療法(penicillin)を施行したところ,すみやかな自覚症状,胃X線・内視鏡所見の改善が認められた.
  • 川崎 厚, 飯田 三雄, 興梠 憲男, 松井 敏幸, 藤島 正敏, 安達 洋祐, 木村 豊, 松坂 淳一
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2647-2651_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性.昭和60年12月食欲不振を主訴として近医受診し,胃X線および内視鏡検査の結果,胃癌と診断された.昭和61年1月手術目的にて入院した.近医での初回胃X線検査では,胃角から体中部にかけ小彎前壁を中心に丈の高い表面凹凸不整な隆起性病変(7×6cm)を認めた.内視鏡検査にても同様の所見を得,生検診断は中分化型腺癌であった.初回検査より約3週間後の胃X線および内視鏡検査では,前回認められた大きな隆起性病変は消失し,同部位に丈の低い扁平な隆起を認めるのみであった.以上より隆起型胃癌の主病巣は自然脱落したものと考えた.脱落部位からの生検診断は高分化型腺癌であった.胃全摘術施行し,胃体部小彎前壁に高分化型腺癌が確認された.その周囲には一部に癌細胞を含む著明な炎症細胞浸潤を認め,同部位での癌塊の脱落が示唆された.小さなポリープ癌の自然脱落,および抗癌剤投与後の胃癌の脱落の報告はあるが,本症例の如く比較的大きな隆起型胃癌の自然脱落例の報告は見られず,稀な症例と考えられる.
  • 水野 正巳, 幸田 弘信, 金井 賀子, 村住 和彦, 大田 人可, 上原 聡, 石川 裕司, 長谷部 千登美, 小野 稔, 矢崎 康幸, ...
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2652-2656_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性.第3子妊娠5カ月頃から全身掻痒感の出現をみたが,肝機能検査上異常はなく正常分娩で出産した.しかし,その後も掻痒感が持続し,出産1カ月後に初めて家族に黄疸を指摘され某医を受診した.高ビリルビン血症,胆道系酵素の著明な上昇,IgM高値,抗ミトコンドリア抗体陽性から原発性胆汁性肝硬変と診断された.その後も高ビリルビン血症の悪化をみたため出産6カ月目,9カ月目に血漿交換療法が行われた.しかし高ビリルビン血症は改善されず,かえって,11カ月目より増悪傾向を示したため精査の目的で当科に入院した.腹腔鏡直視下肝生検でChronic non-suppurative destructive cholangitisの所見を認め,組織学的に原発性胆汁性肝硬変,ScheuerII期と診断した.入院後保存的療法により高ビリルビン血症は改善に向かった.以上妊娠出産による女性ホルモンの変化がPBCの発症に関与したと思われる症例を報告した.
  • 渡 二郎, 男澤 伸一, 柴田 好, 黒川 洋, 吉田 礼, 竹村 清一, 鈴木 貴久, 小原 剛, 高井 幸裕, 長屋 英俊, 林 英樹, ...
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2659-2667
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的切除を行った十二指腸脂肪腫の4例につき報告した.症例は,74歳の男と64歳,68歳,75歳の女3例である.発生部位は,十二指腸球部が1例,下行脚が3例であり,発見のきっかけは腹部不定愁訴の精査で指摘されたものが多かった.これらは,X線検査で粘膜下腫瘍の所見を呈し,内視鏡検査では柔軟性に富む淡黄色の粘膜下腫瘤として観察された.2例に超音波内視鏡検査を行い,内部均一なisoechoicとhyperechoicの腫瘤としてとらえられ,CTスキャン所見ではfatty densityの腫瘤として描出された.超音波内視鏡検査とCTスキャン検査は,脂肪腫の診断に有用である.十二指腸脂肪腫に対する内視鏡的切除に関しては合併症の報告は見当たらず,処置用ファイバースコープによる2スネア方式によれば,安全かつ確実にポリペクトミーを行い得る.
  • 辻 邦彦, 渡 二郎, 山田 政孝, 鈴木 貴久, 浜田 弘巳, 澤谷 令児, 吉川 紀雄, 上村 友也, 矢崎 康幸, 関谷 千尋, 並木 ...
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2669-2672_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    注腸エックス線検査で,上行結腸に粘膜下腫瘍所見を呈した腸アニサキス症の1例を報告した.症例は67歳女性.下腹部痛を主訴として某医を受診し,精査のため当科を紹介された.入院時一般検査では,好酸球数の軽度増多をみたが,CRPや便潜血反応は陰性であり,血液生化学所見なども特に異常を認めなかった。しかし注腸エックス線検査で上行結腸腸間膜側に,長径3cmの辺縁明瞭,表面平滑な結節状隆起の所見がみられた.大腸内視鏡検査でも同部位に表面粘膜が正常で立ち上がりの不明瞭な隆起性病変を認めた.以上より,上行結腸粘膜下腫瘍と診断し手術を施行した.切除標本においては粘膜下に2.5×1.5cm大の腫瘤がみられた.組織学的には,線虫の虫体死骸と好酸球の浸潤を認める好酸球肉芽腫であった.免疫学的に患者の血清をOuchterlony法で検討した結果アニサキス抗体陽性を示したので,本症例の病態は上行結腸に刺入したアニサキスによるものと考えた.
  • 亀谷 さえ子, 野田 愛司, 玉田 元子, 加藤 仁, 堀田 茂樹, 磯部 恵里, 奥村 一郎, 渡辺 務
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2673-2677_1
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    従来高周波電流を用いた内視鏡的ポリペクトミーは禁忌とされてきたペースメーカー槙え込み患者に,内視鏡的大腸ポリペクトミーを無事施行し得たので報告した.症例は57歳女性で,主訴は血便.1985年3月に洞不全症候群のため,体内式ペースメーカー植え込み術を受けた.同年10月排便後出血があり,注腸造影,大腸内視鏡検査で,S状結腸に1.5cm径の分葉状の山田III型ポリープを認めた.ペースメーカーと高周波装置との距離高周波装置の出力に注意すること,モード変更をすることによって内視鏡的大腸ポリペクトミーを無事施行しえた.ペースメーカー植え込み患者においても適応を選択し,十分な術前検討を行えば,内視鏡的ポリペクトミーは可能である.
  • 碓井 芳樹, 松川 正明, 山田 聰, 根来 孝, 韓 東植, 吉田 邦夫, 近藤 健司, 大橋 泰之, 白壁 彦夫, 梁 承茂, 小沼 一 ...
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2678-2683
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    48歳の男子が,右下腹部痛と軟便傾向を主訴として来院.大腸X線・内視鏡検査で広範で多彩な潰瘍性病変を散在性に認め,クローン病を疑った.しかし,空洞をもち,痰中に結核菌の排菌をみる活動性肺結核症があり,大腸生検組織でも類上皮細胞肉芽腫を認めたので,続発性大腸結核症と分かった.治療のため清瀬東京病院へ転院としたが,治療3カ月後には,散在性に炎症性ポリープを認めるのみで,瘢痕を残さず,治癒した.なお,結核菌は痰・胃液・便培養の結果,ヒト型であった.はじめ,広範で多彩な病変に目を奪われ,腸結核と診断できなかったが,振り返ってみると結核の大腸病変として,十分合致する所見であった.これは頻度の少ない病態を示した大腸結核症であった.鑑別診断上,興味ある活動期と治癒期のX線・内視鏡所見を示した症例と思われたので報告した.
  • 日本消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2684-2712
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2713-2733
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2734-2751
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2752-2767
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2768-2772
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2772-2775
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2775-2780
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 日本消化器内視鏡学会
    1988 年 30 巻 11 号 p. 2781-2791
    発行日: 1988/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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