日本消化器内視鏡学会雑誌
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30 巻, 3 号
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  • 桑野 常文, 飯田 三雄, 渕上 忠彦, 岩下 明徳, 黒岩 重和, 藤島 正敏
    1988 年 30 巻 3 号 p. 513-518_1
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれが経験した食道乳頭腫19例,20病変について,その臨床像を検討した.症例は男性6例,女性13例で,年齢は40~83歳(平均63歳)であり,19例中9例は全く無症状であった.発見頻度はX線検査総数62,265例中0.027%,直視型内視鏡検査総数19,526例中0.097%であった.部位は上部食道4例,中部食道5例,下部食道10例で,18例は単発,1例は下部食道に2個発生していた.内視鏡所見はすべて亜有茎性ないし広基性の隆起として認められ,色調は白色調ないし褪色調あるいは周囲と不変であり,表面は分葉状ないし乳頭状あるいは平滑なものが多かった.また,従来の報告例にはみられない隆起表面にびらんを形成した症例が1例あった.19例中10例では1年から7年の経過が観察され,7例は隆起の形態,組織像共に変化がなかったが,3例では自然消失が確認された.経過中,悪性化したものはなかった.
  • 野口 隆義, 相部 剛, 中田 和孝, 藤村 寛, 播磨 健三, 伊藤 忠彦, 足立 佳世子, 田中 慎也, 佐々木 敏行, 大村 良介, ...
    1988 年 30 巻 3 号 p. 519-529
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは剖検例における正常乳頭部,および乳頭部癌切除例の水浸下超音波画像と組織像とを対比検討した.さらに,乳頭部癌7例と良性乳頭部狭窄1例の合計8例に超音波内視鏡検査(以下:EUSと略す)を施行し,乳頭部病変の診断とくに乳頭部癌の進展度診断におけるEUSの有用性について検討を加えた. 水浸下超音波画像と組織像との対比においては,正常乳頭部には総胆管,主膵管,共通管ならびに開口部が明瞭に描出され,十二指腸壁の層構造およびOddi氏筋も描出可能であった.一方,乳頭部癌例では,腫瘍像は十二指腸筋層よりもやや高いエコーレベルで描出され,腫瘍像と周囲組織との関係から癌の進展度診断が可能であった. 臨床例における検討では,乳頭部癌全例において腫瘍像が描出されたが,良性乳頭部狭窄では腫瘍像が描出されず,EUSで両者の鑑別が可能であった. 癌進展度診断においては,全例において十二指腸浸潤,総胆管浸潤,主膵管浸潤ならびに膵浸潤の有無はEUSで判定可能で,病理組織所見とも一致した.所属リンパ節については検索症例そのものが少ないため,今後の症例検討が必要と考えられた.
  • 藤村 寛, 相部 剛, 野口 隆義, 中田 和孝, 竹本 忠良, 河原 聖二, 神代 昭
    1988 年 30 巻 3 号 p. 530-537
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    われわれは,エマルジョン経口投与法を併用した超音波内視鏡検査による胃癌リンパ節転移(1群)の診断について報告してきた.今回,その診断能の向上をめざして,エコー輝度の高いエマルジョンを新たに開発した.エマルジョンの油性成分として,綿実油,ヒマシ油,リピオドール,ヤシ油,コーン油,ピーナツ油,ダイズ油,ゴマ油,ナタネ油,ヌカ油,オリーブ油,クロロフィル油の12種類の油を対象とし,界面活性剤としては,MGS-B, HCO-60, SPAN-20, SPAN-80, TWEEN-20, TWEEN-80の6種類の界面活性剤のうち2種類を組み合わせた.これらを用いて作製したエマルジョンを,それぞれ牛のリンパ節内に0.01ml注入し,そのエコー像を5MHZ電子リニア走査式超音波内視鏡を用いて観察し,エコー輝度消失dBを測定した.その結果,SPAN-80とTWEEN-20の界面活性剤を使用した40%オリーブoilinwater型エマルジョンがもっとも高いエコー輝度を示すことが判明した.今後,この新たなエマルジョンを臨床応用し,その有用性を明らかにする必要があると考えている.
  • ―EUSによる良・悪性の鑑別診断を含めて―
    長谷 智, 中澤 三郎, 芳野 純治, 小池 光正, 中村 常哉, 後藤 秀実, 山中 敏広, 福井 明, 高野 健市, 小島 洋二, 有沢 ...
    1988 年 30 巻 3 号 p. 538-546
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    胃筋原性腫瘍の良・悪性の鑑別を目的として,切除された胃平滑筋腫(以下,筋腫)16例,胃平滑筋肉腫(以下,筋肉腫)8例の臨床的事項および病理学的所見について検討し,その中でEUSを施行した10例(筋腫7例,筋肉腫3例)においてEUS像と病理組織標本を対比検討した.腫瘤の形状,潰瘍の有無でわずかな差をみるが,臨床的事項または肉眼所見から筋腫と筋肉腫を鑑別することは困難であった.病理標本で肉眼的に判別可能な腫瘍内部の壊死巣は筋腫2例(12.5%),筋肉腫6例(75.0%)と筋肉腫で高率に見られ,しかも広範囲であった.また,液化壊死巣は筋肉腫の3例にのみ認められた.一方,EUSにより固有筋層由来の筋原性腫瘍は第4層と連続する境界明瞭な低エコーの腫瘤として描出され,内部エコーの特徴から3型に分類された.病理標本と対比したところ,B typeの高エコー部分は硝子様変性の部分に,C typeの無エコー部分は液化壊死の部分に一致した.以上より,筋腫はA,Btypeに,筋肉腫はA,B,Ctypeに描出されるが,特に無エコー領域を有するCtypeは筋肉腫を強く疑うべき所見であるとの結論を得た.
  • 平井 信行, 田中 延善, 澤武 紀雄, 服部 信
    1988 年 30 巻 3 号 p. 547-553
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    H2受容体拮抗剤を用いた胃潰瘍の初期治療においてS2治癒をめざした場合の投与期間や投与量などを明らかにしようとして活動期潰瘍139例をA・Bの2群に分け,Cimetidine 800mg/日の投与を開始し,S1以降A群では同量を継続し,B群では半量に減量し,経時的に内視鏡的S2治癒率,およびS1よりS2治癒までの期間などを検討した.解析対象はA群56例・B群54例で,両群間の累積S2治癒率に有意な差は認めず,いずれも治療開始後10カ月,S1治癒後8カ月では85%以上に達した.S1治癒よりS2治癒への平均到達日数(±SE)はA群84.4±10.1日・B群100.0±12.1日であり両群間に有意な差はなかった.以上より,胃潰瘍に対するCimetidine療法では,S1以降S2治癒導入には400mg・眠前の減量投与を数カ月間持続するのが適当と考えられた.
  • 旗手 裕, 高橋 仁志, 吉本 正伸, 本田 泰啓, 居出 弘一, 筒井 重治, 今井 照彦, 西浦 公章, 錦織 ルミ子, 浜田 信夫
    1988 年 30 巻 3 号 p. 554-562
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    1年以上経過観察を行い得た単独胃潰瘍572症例および単独十二指腸潰瘍214症例を対象として経過観察中に発症した併存潰瘍について検討を加えた.1)経過観察中の併存潰瘍の発症頻度は12.5%であった.2)胃潰瘍から発症した併存潰瘍(以下D.G.U.)の発症頻度は7.3%,十二指腸潰瘍から発症した併存潰瘍(以下G.D.U.)の発症頻度は26.2%であり,両者ともに発症を認めたが,後者が有意に高率であった.3)D.G.U.は若年者,男性,多発潰瘍,胃角部より肛側の潰瘍に高率に発症した.4)G.D.U.では発症に特徴は認められなかったが,胃病変は胃角部,前庭部に好発する傾向を認めた.5)D.G.U.およびG.D.U.のいずれにおいても,胃潰瘍病変は胃角部および前庭部に大多数が存在した.6)以上の結果よりD.G.U.では攻撃因子の相対的亢進が,G.D.U.では攻撃因子の亢進および防御因子の経時的低下が併存潰瘍の発症に関係すると推測された.
  • 山雄 健次, 中澤 三郎, 内藤 靖夫, 木本 英三, 乾 和郎, 林 芳樹, 加納 潤一, 山田 昌弘, 三竹 正弘, 市川 和男, 大沼 ...
    1988 年 30 巻 3 号 p. 563-569_1
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    粘液産生膵腫瘍13例に対し,経口的膵管鏡(Peroral Transpapillary Pancreatoscopy : POPS)を試みた.本腫瘍は,乳頭開口部の開人が高率(84.6%)に認められ,また全例に主膵管の拡張が認められ,POPSの膵管内への挿入は13例中12例(92.3%)と高率に可能であった.また,本腫瘍は主膵管内に高率(69.2%)に腫瘍が存在し,これらの例ではPOPSにより膵管内に特徴的な"いくら状","木の葉状"の腫瘍,あるいは顆粒状の粗造な粘膜が観察された.主膵管に腫瘍の存在しなかった4例では,膵管像で見られた主膵管内の透亮像が膵管内の腫瘍でなく,粘液であることが証明された.さらに,本腫瘍の病理学的特徴の一つである主膵管内連続進展の診断にもPOPSは極めて有用であった.
  • ―特にX線所見と内視鏡所見について―
    村田 育夫, 牧山 和也, 今西 建夫, 原 耕平, 井上 健一郎, 松永 圭一郎, 椛島 淳, 津野 至孝, 村瀬 邦彦, 田中 義人, ...
    1988 年 30 巻 3 号 p. 570-581
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    小腸腫瘍はまれな疾患であり,緊急手術が行われることが多く,術前に診断されることは,極めてまれとされてきた.今回,自験例24例の診断過程を分析し,主に,X線所見と内視鏡所見について,文献的に考察を加えて検討した.24例中,術前に腫瘍の局在診断が得られたのは15例であった.小腸X線検査では12例,注腸造影では4例で腫瘍に関連ある所見が得られた.小腸内視鏡は,push式で6例に施行され,4例に腫瘍が観察された.大腸内視鏡では,2例に回腸結腸重積の先進部としての腫瘍が観察された.これらの例を検討した結果,小腸X線検査は,最も一般的で簡便であり,小腸腫瘍の診断に優れた検査法であると思われた.小腸内視鏡はいまだ一般化されていないが,脂肪腫や血管腫の一部のものは内視鏡像で確診が得られ,生検可能な場合は,癌や腺腫の診断に力を発揮すると考えられた.小腸腫瘍の発見には,症状の分析が最も重要な第一段階であると思われた.
  • 児島 辰也, 南 康平, 高山 欽哉, 川口 実, 斉藤 利彦, 芦沢 真六, 広田 映五
    1988 年 30 巻 3 号 p. 582-587_1
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.嚥下困難を主訴として来院.上部消化管造影にて食道上部に表面凹凸不整で急峻な立ち上がりを示す隆起性病変がみられた.内視鏡検査では門歯列より20cmの食道後壁に赤かっ色,亜有茎性でカリフラワー様の特異な外観を呈する腫瘤を認め,食道癌が疑われたため食道亜全剔術が施行された.摘出標本は6.0×5.5×2.0cm大であり,組織学的には良く分化した扁平上皮癌で,上皮が乳頭状の増殖を示し,腫瘍細胞の異型性は軽度で,基底膜を保持しながら周囲の結合織を圧排していた.以上の所見を総合しVerrucous Squamous Cell Carcinomaと診断した. 本腫瘍の食道発生例はきわめて稀であり,1986年末までに10例が報告されているにすぎない.本稿では自験例を加えた計11症例について文献的考察を行い,食道のVerrucous Squamous Cell Carcinomaの臨床的ならびに病理組織学的特徴について検討した.
  • 中田 薫, 関 俊夫, 近藤 祐一郎, 北浜 博之, 孫田 誠三, 本多 一義, 笹川 道三, 関口 忠司, 尾形 佳郎, 鈴木 恵子, 島 ...
    1988 年 30 巻 3 号 p. 588-591_1
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    adenoma,過形成性ポリープを合併し1回の内視鏡下生検にて消失した微小胃カルチノイドの1例を経験したので報告する. 症例は68歳の男性で胃部不快感を主訴に精査となり,内視鏡下生検にてカルチノイドと診断された.幽門側亜全摘術及びリンパ節郭清が施行されたが,手術材料の検索ではカルチノイドの遺残は認められず,結果的には内視鏡的治療にても十分に対応できた症例と思われた.また,生検組織切片上1.5mmと術前に確診された微小胃カルチノイドの中では最小径のものと考えられた.
  • 中浜 誠, 佐藤 博道, 加藤 啓一郎, 和田 明, 釈舎 龍三, 末宗 康宏, 山田 恵是, 小林 敏成, 吉岡 一由, 伊藤 慈秀, 平 ...
    1988 年 30 巻 3 号 p. 592-599
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性.胃集検で胃体部小彎に丘状の隆起を指摘され,内視鏡検査では中心が陥凹し,bridging foldsを伴う正常粘膜で覆われた隆起性病変を認めた.胃壁内での正確な局在を検討する目的で,粘膜下造影後CT法を試みた.その結果,粘膜下組織を中心に発育し,一部被覆粘膜と固有筋層へ波及した粘膜下腫瘤と診断できた.外科的切除を行い,組織学的に迷入膵であった.粘膜下造影法と比較して,本粘膜下造影後CT法では,粘膜下層での腫瘍の輪郭,大きさ,壁内占拠部位のすべてについてより良好な描写が得られ,これらの所見は切除標本と良く対応していた.胃粘膜下腫瘤の診断には,粘膜下造影法と本粘膜下造影後CT法の併用による観察が有用であると考えた.
  • 高木 均, 山田 昇司, 樋口 次男, 今 陽一, 小島 亨, 高山 尚, 斎藤 修一, 植原 政弘, 小林 節雄
    1988 年 30 巻 3 号 p. 600-605_1
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    ERBDにより10カ月生存し,経過中食道静脈瘤の出現と,腫瘍の直接浸潤による十二指腸出血をきたした69歳,女性の膵癌例を報告した.患者は贏痩を主訴に来院し,既に上腹部に鶏卵大の腫瘤を触知した.諸種画像診断にて手術不能膵癌と診断し,ERCPにて総胆管の狭窄を確認したため,黄疸の予防のためにERBDを施行した.以後の経過中はドレナージチューブのつまりで一過性の黄疸を来たしたが,それもチューブの追加挿入で消失し,癌死するまで黄疸は出現しなかった.また経過中,初診時には見られなかった食道静脈瘤が出現し,さらに腫瘍の直接浸潤による十二指腸下行脚よりの出血をきたした.膵癌の合併症としての門脈圧亢進症は,稀ではあるが,非侵襲的減黄術の進歩により長期生存例の増加が予想されるため,今後,念頭に置くべきものと思われた.また腫瘍の直接浸潤による消化管出血に対しては放射線照射が有用であり止血し得た.
  • 板野 聡, 寺田 紀彦, 橋本 修
    1988 年 30 巻 3 号 p. 606-611
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    要旨:患者は,数年前より続く心窩部痛と悪心を主訴とした56歳の男性である.術前の検査(超音波検査,ERCP)で,肝内,外の胆管に結石が認められた.また,内視鏡検査時に十二指腸球部に粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認めた.術中胆道造影によって重複胆管と右の副肝管の存在が診断された.主たる総胆管はファーター乳頭に開口し,副胆管は十二指腸球部に盲端に終わっていた.2本の胆管を切断し,結石を除去した.胃切除後,2本の胆管を十二指腸に吻合し,胃と空腸,空腸と空腸をそれぞれ吻合した.術後経過は良好である. 重複胆管の報告は48例にすぎず極めて稀な疾患と考えられる.原因としては,発生学的要因が考えられている.本症の術前の診断は困難で,正しく診断するためには本症に関する知識が必要となる.また,治療は,副胆管の切除もしくは重複胆管のreimplantationが望ましい.
  • 藤野 博也, 辻 秀治, 古谷 慎一, 光藤 章二, 高升 正彦, 時田 和彦, 川本 克久, 辰巳 嘉英, 西田 博, 福田 新一郎, 布 ...
    1988 年 30 巻 3 号 p. 612-616_1
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    近年の内視鏡器種の発達および補助器具の開発,改良により消化管異物を比較的容易に摘出できるようになり,その報告例が増加している.われわれは内視鏡的に摘出しえた十二指腸内異物の2例を経験したので報告する.症例1は24歳の女性で,十二指腸下行脚にティースプーンが嵌入し,症例2は26歳の男性で,十二指腸水車脚に歯科用リーマーが刺入していた.内視鏡にていずれも異物の摘出に成功した.術中および術後に何ら合併症を認めなかった.以上の自験例をもとに,従来内科的には摘出困難とされていた異物や十二指腸内異物に対する内視鏡的摘出術の有用性について若干の考察を加えた.
  • 河原 邦光, 吉川 宣輝, 山本 明弘, 村井 雅巳
    1988 年 30 巻 3 号 p. 617-620_1
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡検査により穿孔をきたした虫垂憩室の1例を報告する. 患者は右下腹部痛を主訴とする62歳女性.注腸X線検査にて,虫垂の中央部に2個の憩室および上行結腸に径2cmの亜有茎性ポリープを認めた.大腸内視鏡によるポリペクトミー施行後約12時間して急性腹膜炎症状が出現した.緊急手術にて開腹し,虫垂の先端から3の部位に穿孔を認め,虫垂切除術とドレナージ手術を施行した.組織学的に虫垂粘膜には炎症所見はなく,虫垂の漿膜側に組織球に貧食されたバリウムを認めた. 以上のことより本症例は,たびたび炎症をくり返していた虫垂憩室が注腸によって虫垂漿膜下に穿通し,さらに大腸内視鏡検査施行時に加わった空気圧により穿孔をきたしたものと考えられた.
  • 小長谷 稔, 原 雅文, 高安 博之, 武藤 信美, 鈴木 荘太郎, 三輪 剛, 野登 隆, 堤 寛
    1988 年 30 巻 3 号 p. 621-627
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,男性.主訴は下血.昭和61年5月より便秘が持続し,10月より少量の下血を認め当科受診.大腸X線検査では,S状結腸に約8cmにわたる伸展不良と壁の硬化を呈し,病変部やや口側に不整形隆起を伴い,周囲の粘膜は粗大顆粒状であった.大腸内視鏡像では,同部位に全周性狭窄を認め,粘膜面は粗大顆粒状で,一部が結節状に隆起しており,結節部からの生検では高分化型腺癌であった.びまん浸潤型大腸癌では印環細胞癌,低分化腺癌が多く,高分化型は少ない.しかし,肉眼的にはびまん浸潤型と診断し手術を施行した.病理組織所見では,癌細胞は隆起部のみに限局し,固有筋層への浸潤は認めずsm癌と診断した.隆起部および周囲の粘膜下層から漿膜にかけて,炎症性細胞がびまん性に浸潤しており,多数の泡沫細胞の巣状集簇が散見され,黄色肉芽腫と診断した.なお,Malakoplakiaに特徴的なMichaelis-Gutmann小体はみられなかった. 本症例は大腸sm癌に随伴した黄色肉芽腫により,びまん浸潤型大腸癌との鑑別が非常に困難であった稀な1例として報告した.
  • 金丸 洋, 高木 正人, 笠井 恵, 長廻 紘
    1988 年 30 巻 3 号 p. 628-633_1
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    27歳,男性,肛門部痛,肛門部腫瘤脱出,出血を主訴とし,直腸指診では前壁側に弾性硬の大小多数の腫瘤を触知,注腸X線検査は多数の隆起性陰影を示し,内視鏡検査で腫瘤表面粘膜の白色変化を認めるColitis Cystica Profundaの1例を経験した.本症は良性疾患であり,局所切除の適応であるが,生検により確定診断を得る事が難しく,悪性疾患として直腸切断術等の手術が施行される事もあり注意が必要である.paracancerous lesionとしての意義の有無について検討も必要と思われる.Colitis Cystica Profundaの報告は少なく,本邦報告例を含め報告した.
  • 切塚 敬治, 河野 厚, 古谷 裕道, 森 将晏, 原田 英雄
    1988 年 30 巻 3 号 p. 634-638_1
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    患者は49歳の男性.昭和61年7月,激しい下痢による脱水と血液電解質の異常(Na 134 mEq/l, K 1.8mEq/l, Cl 79 mEq/l)で入院した.下痢の性状は粘液と便汁がいりまじった水様性で,高濃度のカリウムを含む分泌性下痢であった.注腸造影および内視鏡検査で,多量の粘液が付着した腫瘤性病変を直腸全体に認めた.生検組織所見はvillous adenomaであった.保存的治療で下痢および電解質異常が十分に改善しなかったので,直腸腫瘤の外科的切除を施行した.組織検査で転移はなく,腫瘤のほとんどの部分はadenomaであったが,一部にadenocarcinoma(sm)を認めた.術後,下痢と電解質異常は改善した.大腸villous tumorは悪性の合併頻度が高く,また稀ではあるが多量の粘液と下痢便排出により血液電解質の異常をきたす例がある.Electrolyte depletion syndromeを呈したvillous tumorの本邦報告例は従来14例にすぎない.
  • 関野 晴夫, 赤池 信, 黒沢 輝司, 青山 法夫, 阿部 静夫, 鈴木 弘治, 鈴木 紳一郎, 南出 純二, 小泉 博義, 小沢 幸弘, ...
    1988 年 30 巻 3 号 p. 639-643
    発行日: 1988/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    町田製携帯用気管支内視鏡FLY-6Aシリーズの改良型として,新たに術後管理を主目的とするポータブルサクションファイバースコープ(FLY-6A4)を開発した.術後の喀痰吸引排出を主用途とし,食道癌術後,上腹部開腹術後,開胸術後患者に使用し,極めて有用であった.
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