日本消化器内視鏡学会雑誌
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55 巻, 2 号
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総説
  • 村山 洋子, 佐野村 珠奈, 篠村 恭久, 西林 宏之, 安永 祐一, 筒井 秀作
    2013 年 55 巻 2 号 p. 237-249
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    胃体部の皺襞肥大は,内視鏡検査や胃X線検査時にしばしば観察される.その大多数はHelicobacter pyloriH. pylori)感染により惹起される皺襞肥大型胃炎である.その特徴は,胃体部粘膜の腺窩上皮の過形成および高度の炎症を認め,胃酸分泌の低下を伴い,皺襞肥大の程度に従って胃癌のリスクが増加し,特に胃体部に未分化型胃癌が増加することである.H. pylori除菌により,これらの所見は改善し,胃体部の皺襞肥大はほぼ正常化し白濁した粘液の付着の消失を認めることで胃癌が発見しやすくなる.皺襞肥大型胃炎は,H. pylori感染者のなかでも胃癌発症のハイリスク群と考えられる.皺襞肥大型胃炎において,H. pyloriの除菌が胃癌発生の予防につながるかどうかは,今後明らかにする必要がある.
原著
  • 辻 剛俊, 大谷 節哉, 青木 隼人, 石井 元, 津田 聡子, 中根 邦夫, 小松 眞史, 提嶋 眞人
    2013 年 55 巻 2 号 p. 250-256
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    直腸粘膜脱症候群(mucosal prolapsed syndrome,以下MPS)は,慢性の便秘や排便時の過度の「いきみ」などの機械的な刺激が原因で直腸の粘膜脱を起こす疾患である.治療法は確立していないが,排便習慣を正常化することが原則であり,病変自体を切除する外科的療法も有効なことが多いが,内視鏡的粘膜切除が有効であったとの報告はない.今回われわれは,隆起型MPSに対し,病変の一括切除と線維化を伴う瘢痕化の形成目的に内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESD)を行い臨床症状の改善を認めた2症例を経験した.隆起型MPSの治療法としてESDは,保存的に改善しない症例において低侵襲で有効な治療になりうると考えられた.
症例
  • 葛西 恭一, 石田 恵梨, 小林 由佳, 曽我 幸一, 金光 大石, 坂本 京子, 竹中 信也, 柳田 國雄, 伊谷 賢次
    2013 年 55 巻 2 号 p. 257-261
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    症例1は75歳男性.心房細動にてダビガトラン220mg/日服用開始したところ,5日後より食道閉塞感,ゲップを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを継続しながらプロトンポンプ阻害剤(以下PPI)を服用したところ潰瘍は治癒した.症例2は68歳,女性.発作性心房細動に対しダビガトラン300mg/日服用開始77日後より胸焼けを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを中止しPPI投与したところ潰瘍は治癒した.ダビガトランは循環器領域で使用頻度が高まると予想される薬剤であり,薬剤性食道潰瘍の原因となり得ることを念頭に置く必要がある.
  • 江口 次郎
    2013 年 55 巻 2 号 p. 262-266
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は61歳 男性.誘因のない吃逆,嘔吐が突発性に出現した.咽頭痛,嚥下時胸部痛強く摂食不良となり当院受診した.逆流性食道炎を疑い投薬治療したが効果なく入院となった.食道透視検査で連珠状の所見が認められ,特発性びまん性食道痙攣と診断した.治療抵抗性であったが,星状神経節ブロックを施行し1時間後には症状の消失が得られた.翌日の食道透視検査では,造影剤の通過は良好で連珠状の所見も消失していた.特発性びまん性食道痙攣は稀な疾患であり難治性である.星状神経節ブロックが著効した貴重な症例のため報告する.
  • 望月 洋介, 斎藤 康晴, 稲富 理, 馬場 重樹, 石田 光明, 辻川 知之, 安藤 朗, 藤山 佳秀
    2013 年 55 巻 2 号 p. 267-274
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    頭部に皮膚腫瘍を認めた68歳男性.CT検査にて縦隔と肺門のリンパ節腫大,多発する肺結節,肝腫瘍を認め,上部消化管内視鏡検査にて咽頭・食道・胃・十二指腸に様々な形態を示す多発性の黒色調病変を認めた.生検にて悪性黒色腫と診断した.その後急速に全身状態が悪化し,初診から3週間後に永眠された.剖検の結果,両側肺門,縦隔リンパ節,両側鎖骨上リンパ節,右鎖骨下筋肉内,右第5肋骨,心臓,肺,胸膜,食道,胃,十二指腸,空腸,回腸,肝臓,膵臓,腎臓副腎,膀胱,および骨髄に転移を認めた.悪性黒色腫の消化管転移が生前に診断されることは少なく,また本例は食道・胃・十二指腸と複数の臓器における転移巣が小病変の状態で内視鏡観察できたきわめて稀な症例である.
  • 金光 大石, 葛西 恭一, 小林 由佳, 曽我 幸一, 稲垣 恭和, 坂本 京子, 竹中 信也, 柳田 國雄, 伊谷 賢次, 柳澤 昭夫
    2013 年 55 巻 2 号 p. 275-280
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.下腹部痛を主訴に受診した盲腸顆粒細胞腫の症例である.下部消化管内視鏡検査にて盲腸に最大径4mmで,やや黄白調で表面平滑な粘膜下隆起を指摘された.超音波内視鏡検査所見,生検の組織学的所見より顆粒細胞腫と診断し,腫瘍摘出目的で内視鏡的粘膜切除術を施行した.切除標本を病理組織学的に検討したところ,腫瘤は粘膜固有層深部から粘膜下層にかけて存在していた.切除後40カ月を経過した時点では,再発を認めていない.
  • 鈴木 憲次郎, 鈴木 敬, 藤田 直孝, 野田 裕, 平澤 大, 尾花 貴志, 菅原 俊樹, 大平 哲也, 原田 喜博, 前田 有紀
    2013 年 55 巻 2 号 p. 281-286
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は76歳女性.貧血精査に施行した下部消化管内視鏡検査で肛門管から直腸下部にかけて褪色調の扁平隆起性病変を認めた.腺腫または腺癌を否定できず,病変の局在から内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)での治療を行った.病理診断はCondyloma acuminatumであった.その後3カ月後の経過観察で微小再発病変を認め焼灼術を施行した.その後の再発は認めていない.肛門周囲には異常を認めず直腸下部,肛門管内のみに存在したCondyloma acuminatumを経験した.同病変に対するESDでの治療を行った報告例はなく貴重な症例と考え報告する.
  • 小林 正典, 小飯塚 仁彦, 青木 洋一郎, 尾上 淑子, 西村 崇, 矢田 智之, 酒匂 赤人, 池原 久朝, 石田 剛, 上村 直実
    2013 年 55 巻 2 号 p. 287-293
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,女性.右下腹部痛を主訴に来院し,腹部超音波・CT検査で大腸型腸重積を疑った.整復目的に大腸内視鏡検査を行い,上行結腸に盲腸の隆起性病変(腫瘤)を先進部とする腸重積を認めた.腫瘤は太い有径性で径20mm大,広範なびらんと粘液の付着があり若年性ポリープなどが疑われた.整復50日後,再評価目的で行った内視鏡検査では瘢痕を残して腫瘤は完全に消失し,重積時の虚血により自然脱落したと推測された.成人腸重積は稀だが悪性腫瘍が原因であることが多く,外科治療を行うことが多い.今回,腸重積を惹起したにも関わらず,内視鏡的整復のみで治療しえた大腸腫瘤を経験したため若干の文献的考察を加え報告する.
  • 楠本 智章, 大谷 英之, 浜本 哲郎, 堀 立明, 鶴原 一郎, 周防 武昭, 元井 信
    2013 年 55 巻 2 号 p. 294-299
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    ホスホマイシン(以下,FOM)は,多くの腸管感染症に対して投与される薬剤である.今回,FOMが起因薬剤と考えられた抗生物質起因性出血性大腸炎の1例を経験した.症例は30歳代の男性.腹痛と血便を主訴に来院.来院4日前に他院にてFOMを投与されていた.腹部CTにて盲腸~S状結腸にかけて壁肥厚を認め,大腸内視鏡検査では発赤を伴う浮腫状粘膜が広がっていた.便培養でKlebsiella oxytoca(以下,KO)を認め,DLST(drug-induced lymphocyte stimulation test)施行したところFOMにて陽性を示したため,FOMを起因薬剤とする抗生物質起因性出血性大腸炎と診断した.FOMを起因薬剤とする同疾患はまれであり貴重な症例と考えられた.
経験
注目の画像
手技の解説
  • 吉田 俊太郎, 伊佐山 浩通, 小池 和彦
    2013 年 55 巻 2 号 p. 306-315
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    大腸内視鏡を用いた悪性大腸閉塞に対するself-expanding metallic stent(SEMS)留置は,手術前の腸管減圧(Bridege to surgery,以降BTS)や緩和的外科治療が困難な患者の腸管減圧のための緩和的治療(Palliative therapy)として,海外では広く受け入れられた治療である.しかし,その手技は保険収載されておらず,臨床試験でのみSEMS留置は可能であった.2012年1月より,本邦でも同治療が保険収載され,今後その治療が広く行われることが予想される.しかし,同治療は腸管穿孔,stentの逸脱を含めた重篤な合併症をともなう手技であり,留置法については一定のかたちが必要であると考えられる.現在,内視鏡学会附置研究会の主導で前向き留置法についてのコンセンサス作りが進んでいるが,今回,承認されたstent(WallFlexTM Colonic Stent;Boston Scientific Corporation)の留置手技について,カニュレーションカテーテルの使用,ガイドワイヤーの選択,スコープ操作,狭窄原因や部位によるstent選択など,留置コツを紹介する.
  • 加藤 博也, 榊原 一郎, 岡田 裕之, 山本 和秀
    2013 年 55 巻 2 号 p. 316-328
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/05/21
    ジャーナル フリー
    胆管-胆管吻合による生体肝移植後(LDLT)の胆道合併症は重大な術後合併症の1つであり,患者の予後に関わるものである.なかでも術後の胆管狭窄は頻度も高く,そのマネージメントが重要である.LDLT後の胆管狭窄に対する内視鏡治療はまず行うべき治療であるが,その解剖学的な特徴から脳死肝移植後や通常の外科手術後の胆管狭窄に対する内視鏡治療と比較して手技的な難易度が高い.内視鏡治療は胆管造影から,ガイドワイヤーによる狭窄の突破,バルーン拡張,プラスチックステントの留置まで行うが,それぞれの段階でのポイントを理解しておく必要がある.また,LDLTでは移植肝のローテーションや肥大のために,胆管の走行の理解がしばしば困難となるため,内視鏡治療前の外科医からの情報や事前のMRCPなどの画像検査が重要である.各々の症例によって狭窄の程度や胆管の走行が異なるため,症例に応じた治療が重要であるのとともに,よりコンセンサスの得られた手技の確立が必要である.
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