日本消化器内視鏡学会雑誌
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48 巻, 11 号
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  • 三富 弘之, 大倉 康男, 金澤 秀紀, 佐田 美和, 五十嵐 正広
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2613-2625
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     鋸歯状腺腫(serratedadenoma,SA)は上皮の鋸歯状変化を特徴し,過形成性ポリープ(hyperplastic polyp, HP)から通常の腺腫(conventional adenoma,AD)に類似するものまで広いスペクトラムの病変を含み,大きさ0.5-1.0cmのポリープが多く,病変内癌合併率は2-15%である.SAの細胞増殖パターンは'bottom-up'typeを示し,ADの'top-down'typeと良く対比され,腺管表層~中層の細胞増殖活性を比較すると,SAはADより低く,HPより高い.SAの粘液形質発現をみるとMUC2+/MUC5AC+/HGM+の胃表層上皮及び腸上皮混合型を示す.SAをtraditional type SA(TSA)とsessile type SA(SSA)に亜分類すると,TSAは主に有茎性で,直腸・S状結腸に多いが,他の部位にも比較的均等に分布し,組織学的には絨毛状構造を示し,軽度の核の偽重層化を伴う好酸性上皮で構成される.SSAは広基性病変で,右半結腸に多く,腺底部での鋸歯状変化と内腔の拡張,粘液の過剰産生,軽度の核異型を組織学的特徴とする.SAではマイクロサテライト不安定性(microsatellite instability, MSI)やDNAミスマッチ修復遺伝子のメチレーションが高率に観察されることから,SAがMSI陽性非遺伝性大腸癌の前駆病変である可能性が指摘され(serrated neoplasia pathway),DNAミスマッチ修復遺伝子蛋白であるhMLH1及び0-6-methylguanine DNA methyltransferase発現低下がSSAの一部に観察される.SAの組織診断上の問題点として,TSAとSSAの組織亜分類の難しさ,広基性という肉眼形態を考慮したSSAの診断名に対する混乱,組織方向性の悪いものや表層のみが採取された生検材料では,SSAとHPの鑑別が難しいことなどが挙げられる.臨床的な取り扱いとして,SAの病変内癌合併率はADと同程度~低率で,大きさ1cm以上あるいは平坦型SAで癌合併率が高いことから,内視鏡下のポリペクトミーを中心としたADに準ずる治療法や経過観察法が選択されるべきである.一方,SSAでは存在部位を考慮した臨床的対応が望まれており,特に右半大腸の多発(20個以上)例,大きさ1cm以上,大腸癌やポリポーシスの家族歴を有する例では,病変の完全切除とともに右半結腸のMSI陽性の異時性大腸癌発生に関する1年毎の経過観察が必要である.
  • 綾田 穣, 中野 達徳, 堀田 直樹, 奥村 明彦, 石川 哲也, 大橋 知彦, 松本 英司, 伊藤 顕, 吉田 香果, 各務 伸一
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2626-2631
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は62歳の女性.特発性肺線維症の増悪のため入院中であった.黒色物を嘔吐したため,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃体上部大彎後壁よりに出血性vascular ectasiaを認めた.内視鏡的結紮術(EBL)を応用した1回の治療で完全に止血し,病変は消失した.特発性肺線維症の経過中に発症した出血性胃vascular ectasiaの報告はみられず,EBLが止血に有用と考えられたため報告する.
  • 菊地 徹, 野口 哲也, 萱場 佳郎, 鈴木 雅貴, 鈴木 眞一, 加賀谷 浩文, 立野 紘雄, 桑島 一郎, 小野寺 博義
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2632-2638
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は53歳男性.病変は,十二指腸球部,上十二指腸角の前壁上極寄りに位置する発赤陥凹を伴った隆起性病変であった.この隆起の近傍肛門側後壁ならびに口側前壁に1カ所ずつIIa病変を認めた.胃切除を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した.主病変部は,乳頭腺癌で深達度mp,IIa部分は,いずれも高分化腺癌で深達度mであった.病理組織学的にこれら3病変に連続性を認めなかった.さらに,粘液の免疫組織化学より,3病変はいずれも相異なる組織発生をした可能性が示唆された.本症例は,十二指腸球部に限局して3病変にわたって発症した同時性多発十二指腸癌であった.
  • 宮脇 喜一郎, 冨樫 弘一, 野村 悠, 金光 大石, 阿部 光将, 田中 新司
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2639-2644
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は72歳男性.主訴は食思不振.上部消化管内視鏡検査にて十二指腸上行部に不整形潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.小児用大腸内視鏡を用いて施行した生検で中分化型腺癌と診断し,外科的切除を施行した.術後診断は上行部原発十二指腸癌,StageIII(T3,N1,M0)であった.上行部原発十二指腸癌はその存在部位から,ルーチンの上部消化管内視鏡検査で発見された例は文献的にもほとんどなく,極めて稀な症例と考え報告する.
  • 三上 栄, 仲瀬 裕志, 桜井 孝規, 澤見 裕康, 千葉 勉
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2645-2650
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は43歳,女性.主訴は粘液性の下痢.大腸内視鏡検査では,粘膜の浮腫性変化をわずかに認めるのみであった.生検で粘膜直下に肥厚したコラーゲン帯を認めた.以上よりCollagenous colitisと診断した.約7年前にも同様の症状があり,そのときの生検でも同様の肥厚したコラーゲン帯を認めていた.長期の無症状期間を経て再発をきたした稀なCollagenous colitisを経験したので報告する.
  • 山口 加奈子, 岩切 龍一, 綱田 誠司, 雨森 貞浩, 坂田 資尚, 藤瀬 剛弘, 大谷 響, 下田 良, 坂田 祐之, 藤本 一眞
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2651-2655
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は88歳,女性.既往歴は高血圧.左大腿骨頚部骨折術後にて近医入院中であったが,突然大量の血便をきたし,ショック状態を呈して当院に救急搬送された.大腸内視鏡検査を行ったところ下部直腸(Rb)に噴出性の出血を伴う露出血管及び止血状態の露出血管2個を認めた.それぞれに対してクリッピングを行い止血しえた.多発する直腸Dieulafoy潰瘍で,クリッピングが有用であった症例を経験したので報告する.
  • 林 香月, 大原 弘隆, 喜多島 康弘, 田中 創始, 高田 博樹, 今井 英人, 安藤 朝章, 中沢 貴宏, 城 卓志
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2656-2661
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     内胆汁瘻は比較的稀な病態で,その中でも胆嚢結腸瘻は頻度が少ない.症例は82歳の男性で胆石胆嚢炎による胆嚢結腸瘻を認めたが,心肺機能不.良ため外科的治療が困難であった.そのため,大腸内視鏡下に瘻孔を確認し,クリップによる縫縮術を施行し閉鎖可能であった.一般に胆嚢結腸瘻は外科的治療が必要であるが,手術困難な場合は大腸内視鏡下の瘻孔縫縮術も考慮すべき治療と思われた.
  • 大屋 敏秀, 竹村 嘉人, 田妻 進
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2662-2663
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
  • 清水 誠治, 富岡 秀夫, 水野 成人, 多田 正大
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2664-2673
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     下部消化管超音波内視鏡は癌,粘膜下腫瘍,壁外病変,炎症性疾患などの診断に用いられている.超音波内視鏡専用機と細径プローブが用いられるが,直腸下端部病変,厚みのある腫瘍性病変,壁外病変を除き細径プローブで対応できることが多い.とくにEUSの施行頻度が最も高い早期大腸癌の深達度診断には細径プローブが有用である.観察方法として脱気水充満法を用いることが多いが,病変部が十分に浸水するよう適切な体位を選択し短時間で検査を行うことがこつである.様々な疾患における本法の長所短所を十分に理解した上で適用すれば診断能の向上を図ることができると考えられる.
  • 篠崎 大, 小金井 一隆, 福島 恒男
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2674-2681
    発行日: 2006/11/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     【背景と目的】回腸嚢炎は潰瘍性大腸炎(UC)に対する大腸全摘術後の晩期合併症の一つであり,排便回数の増加と相関している.この研究の目的は回腸嚢の内視鏡所見と排便回数の相関を明らかにすることである.【対象と方法】63例,100件における回腸嚢の口側,回腸嚢,残存直腸の内視鏡所見と組織学的所見をretrospectiveに解析した.【結果】28例中4例(14%)で回腸嚢の口側に炎症所見が認められた.回腸嚢には67%で異常所見が認められた.顆粒状変化,易出血性,粘液,発赤,びらんは排便回数と有意に関係していた.'Endoscopic pouch activity index'(EPAI)を全体的な発赤,粘液,易出血性,潰瘍,びらん,顆粒状変化の陽性因子数とすると,EPAIは排便回数と非常に強く相関した(p< 0.0001).内視鏡上で残存直腸に軽度または中等度の炎症が認められた症例は炎症のない症例より有意に排便回数が多かった(それぞれp=0.0294,0.0183).多変量解析ではEPAIと回腸嚢の組織学的炎症度が排便回数と有意に相関する因子であった(それぞれp=0.0004,p=0.0429).時間経過の検討ではEPAIと残存直腸の内視鏡上の炎症度が排便回数と有意に相関した(それぞれp=0.0120,0.0244).【結論】EPAIは回腸嚢の炎症を評価する上で有用と考えられる.
  • 責任者:荒川 哲男
    荒川 哲男
    2006 年 48 巻 11 号 p. 2682-2685
    発行日: 2006年
    公開日: 2024/01/29
    ジャーナル フリー
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