日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
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56 巻, 4 号
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総説
原著
  • 西村 智子, 石川 剛, 児玉 万実, 西村 敏, 岡山 哲也, 吉田 直久, 堅田 和弘, 鎌田 和浩, 内山 和彦, 高木 智久, 半田 ...
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1520-1526
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    【目的】胃瘻は長期栄養管理法として優れており嚥下訓練を進めやすく,経口摂取が可能となる症例も経験する.当院でのこれらの症例のPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)前の臨床背景を解析しPEG後の摂食機能改善症例の予測可能性について検討した.【方法】当院でPEGを施行し経過を追跡し得た85例を対象とし,PEG後経口摂取が改善した18例(改善群)と,改善のみられなかった67例(非改善群)の臨床背景を比較検討した.【成績】単変量解析では改善群でPEG前嚥下機能が有意に良好でアルブミン値・総コレステロール値が有意に高値であった.また改善群は有意に若く,非改善群は肺炎の既往を持つ症例が有意に多かった.多変量解析を行うと,術前の嚥下機能が術後経口摂取改善の独立した予測因子であった.【結論】術前嚥下機能評価により嚥下機能が高い症例を抽出し術後嚥下訓練などの介入を行うことで,さらに摂食機能改善が図りうると期待される.
症例
  • 小熊 潤也, 岩崎 靖士, 清水 壮一, 高橋 伸
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1527-1531
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性で,あら汁を摂取した際に魚骨を飲み込み,以降つかえ感が持続し,症状が改善せず3日後に当院を受診した.胸部CT上食道内に高吸収域を認め,魚骨と判断した.穿孔を疑わせる所見はなく,上部消化管内視鏡を施行し,食道壁に扁平な魚骨の辺縁が刺入していたことを確認した.CTで骨の形状は概ね把握できていたため,内視鏡的に摘出することができた.刺入部は潰瘍を形成していたが,明らかな穿孔はないと判断し,その後は保存的治療にて軽快した.食道壁に刺入した魚骨に対しては,事前にCTを行ってその形状を確認し,可能であれば内視鏡的に摘出することが望ましいと考える.
  • 西尾 仁, 石後岡 正弘, 樫山 基矢, 澤崎 兵庫, 浅沼 和樹, 後藤 哲, 森田 康太郎, 高木 秀雄, 森園 竜太郎, 古山 準一
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1532-1538
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は58歳男性.上腹部痛,体重減少を主訴に当院を受診した.緊急上部消化管内視鏡検査では胃体部後壁に活動期潰瘍性病変が認められた.プロトンポンプ阻害薬による保存的加療が開始され,second lookのために内視鏡検査を施行したところ,潰瘍底中央に結腸が突出しているのが確認され,胃結腸瘻の診断となった.栄養状態を十分に改善した後に腹腔鏡下手術が施行され,胃および結腸を切除すること無く,瘻孔部を切離し得た.良性胃潰瘍穿通を原因とした胃結腸瘻は極めて稀である.瘻孔形成初期を画像として捉え,その形成機序を推察する上で有用な所見であったため報告する.
  • 植田 剛, 藤井 久男, 小山 文一, 中川 正, 中村 信治, 錦織 直人, 井上 隆, 川崎 敬次郎, 尾原 伸作, 中島 祥介
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1539-1549
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.両下肢紫斑と腎機能障害にて入院後に消化管出血が出現し当科紹介となった.小腸内視鏡検査にて回腸遠位に多発性潰瘍を認めたため,血管炎症候群を疑ってステロイド治療を開始した.出血が続いたため,腹部血管造影も行ったが出血は制御できず,小腸造影検査にて病変範囲を同定したうえで回腸150cm切除を含めた回盲部切除術を施行した.切除標本で中型動脈主体の壊死性血管炎を認め,結節性多発動脈炎と診断した.診断・治療に難渋する消化管出血の際は本症の可能性を念頭に置き,内視鏡を主体とした早期診断が肝要であるが,一方で手術が必要な際は範囲診断に小腸造影検査が有用であることを再確認されられたと思われる.
  • 笹井 保孝, 松田 高明, 坂谷 彰彦, 西田 直浩, 阪本 めぐみ, 上ノ山 直人, 土井 喜宣, 有馬 良一
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1550-1555
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    症例は60歳台,男性.血液透析中の血圧低下後に出現した腹痛を主訴に当院を受診した.下部消化管内視鏡検査では全結腸にわたり非連続性に縦走潰瘍を認め,潰瘍辺縁には敷石状結節を伴っていた.抗生剤投与,5-ASAの内服,栄養療法等行ったが十分な症状の改善は得られなかった.その後の下部消化管内視鏡検査,消化管造影検査にて回腸末端とS状結腸に狭窄を認めたため手術を施行した.切除標本の病理組織学的所見などから透析中の血圧低下に起因した非閉塞性腸間膜虚血症と診断した.
  • 佐々木 善浩, 市原 明比古, 古閑 千裕, 岩崎 智仁, 三原 通晴, 豊住 康夫, 有馬 信之, 上市 英雄, 平田 啓一, 川村 紀夫
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1556-1562
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    60歳男性.上部消化管内視鏡検査で,十二指腸副乳頭部に10mmの隆起性病変を認め,生検での病理組織検査から神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor)と診断した.ERCP検査で膵管非癒合の合併を認めた.CT検査で遠隔転移を認めないため,膵頭十二指腸切除術を施行した.病理診断で病変は5mm,深達度は粘膜下層で,リンパ節転移は認めなかった.副乳頭神経内分泌腫瘍は稀であるが,本症例のように膵管非癒合との合併が高率に報告されている.
経験
  • 松原 悠, 太田 智之, 前本 篤男, 巽 亮二, 好崎 浩司, 坂本 淳, 佐藤 龍, 網塚 久人, 木村 圭介, 蘆田 知史
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1563-1569
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    慢性下痢患者への大腸内視鏡検査所見が非特異的で正常に近い場合,内視鏡所見のみでは原因疾患の診断が困難な場合がありうる.われわれは2007年11月から2012年2月までの期間,非血性慢性下痢患者の原因検索目的で大腸内視鏡検査を施行し,内視鏡所見が非特異的な95症例を対象に,上行結腸,横行結腸,直腸の3カ所からランダムに生検を行った.その結果器質的疾患としてcollagenous colitisが6例(6.3%),腸管スピロヘータが2例(2.1%)診断された.その病理学的特徴からも,慢性下痢の診断のためには内視鏡施行時に生検を行うことが重要であると考えた.
注目の画像
新しい手法・処置具・機器
手技の解説
  • 岩瀬 弘明
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1574-1588
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤に対しては,硬化剤(5%EOI)を静脈瘤からすだれ状血管網,供血路まで注入する透視下EISは,止血効果,静脈瘤消失に最も有効な内視鏡的治療である.ハイフロー注入可能な25G鈍針を使用し静脈瘤と平行にして頂部を刺入,硬化剤を供血路全体に注入すれば1回の穿刺で静脈瘤はほぼ消失する.通常の穿刺部位では供血路まで注入できない治療抵抗例,巨木型静脈瘤も食道胃接合部近傍の静脈瘤穿刺で供血路まで治療可能となる.EVLは合併症が少なく手技も容易であり,重症例,活動性出血時には適切な治療法である.EVLのみでは完全消失困難例も多く,再出血リスクも高いため,安全に食道静脈瘤をコントロールするにはEISの追加治療が必要である.またEISにて十分供血路まで治療しても完全消失しない食道静脈瘤は供血路として左胃動脈,脾臓が考えられるため脾摘,Hassabの追加手術を考慮する.10年以上の長期生存を期待するには静脈瘤治療と共に肝がんの早期発見,早期治療,肝機能改善のため薬物治療,栄養を含めた生活指導,インターフェロン,抗ウイルス剤治療,脾摘,肝移植を含めた集学的治療が求められる.
資料
  • 田中 未生, 岩切 龍一, 藤本 一眞, 藤原 靖弘, 稲森 正彦, 田中 淳二, 島谷 智彦, 秋山 純一, 安藤 貴志, 眞部 紀明, ...
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1589-1596
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    【目的】FSSG質問票による胃食道逆流症の臨床症状評価がプロトンポンプ阻害薬(PPI)での治療評価に有用であるか調査した.
    【方法】内視鏡検査で胃食道逆流症と診断した日本人患者185人(男性88人,女性97人,平均55.7±16.1歳)を,FSSG質問票でスコア8以上の自覚症状の多い群と7以下の少ない群に分りつけた.生活の質はSF-8質問票で評価した.全患者はPPI(ラベプラゾール,10mg/day)内服治療を8週間受け,治療効果を質問表で評価した.
    【結果】症状の多い逆流性食道炎(reflux esophagitis,RE)患者(n=92,49.7%),症状の少ない逆流性食道炎患者(n=17,9.2%),症状の多い非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease, NERD)患者(n=66,35.7%),症状の少ないNERD患者(n=10,5.4%)の4群に分類した.症状の多いNERD患者は,症状の多い逆流性食道炎患者と比較して,FSSGの消化管運動不全スコアが有意に高かった(9.1±0.5 vs 6.8±0.5,P<0.05).PPI治療後,症状の多い群においては,逆流性食道炎群とNERD群の両方でFSSGと生活の質のスコアが有意に改善した.症状の少ない群においては,逆流性食道炎群では酸逆流スコアのみ改善したが,NERD群では治療効果は観察されなかった.
    【結論】FSSG質問表は,スコアの高い胃食道逆流症患者ではPPI治療の優良な指標となるが,スコアの低い患者においては限度がある可能性がある.
ガイドライン
  • 田中 信治, 樫田 博史, 斎藤 豊, 矢作 直久, 山野 泰穂, 斎藤 彰一, 久部 高司, 八尾 隆史, 渡邊 昌彦, 吉田 雅博, 工 ...
    2014 年 56 巻 4 号 p. 1598-1617
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/03
    ジャーナル フリー
    大腸領域においてもESDの安全性と有効性が明らかになり,2012年4月にはESDが保険適用となった.大腸腫瘍の内視鏡治療の適応病変として,早期大腸癌のみでなく前癌病変としての腺腫性病変も多く存在し,大腸EMRとESDの棲み分け,そのための術前診断,実際の内視鏡治療の有効性と安全性を第一線の臨床現場で確保するための指針が重要である.そこで,日本消化器内視鏡学会では,大腸癌研究会,日本大腸肛門病学会,日本消化器病学会の協力を得て,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として「大腸ESD/EMRガイドライン」を作成した.本ガイドラインにおける手技の具体的な手順や機器,デバイス,薬剤の種類や使用法など実臨床的な部分については,すでに日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編「消化器内視鏡ハンドブック」が2012年5月に刊行されているので,技術的内容に関しては可能な限り重複を避けた.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,専門家のコンセンサスに基づき推奨度を決定しなければならないものが多かったが,適応・術前診断・手技・根治性の評価・偶発症・術後長期予後・病理診断などの広範囲な領域を簡潔にまとめ,現時点での最大公約数的指針を作成した.
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