日本消化器内視鏡学会雑誌
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57 巻, 12 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
総説
  • 竹内 洋司, 花房 正雄, 上堂 文也, 石原 立, 飯石 浩康
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2623-2632
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    高確信度の内視鏡診断に基づきポリープの取り扱いを決定し病理診断を省略する“Resect and Discard” strategyは,不要なポリープ摘除に伴う有害事象とコストの低減,及び10mm未満のポリープ摘除後の組織診断に関わるコストと労力の削減につながる魅力的な提案である.しかし,その実践には1)腫瘍・非腫瘍の高い鑑別能,と2)浸潤癌の正確な診断,が必須となる.米国消化器内視鏡学会は5mm以下のポリープを対象とすること,及び,1)90%以上の次回検査間隔の正診割合と2)90%以上の直腸S状結腸の腫瘍性ポリープに対する陰性適中割合の2つの閾値を満たすような技術で行うことを提唱している.
    今後は,教育システムなど解決すべき問題が山積しているものの,病理診断に近づくことを目標としてきた内視鏡診断にとって,“Resect and Discard” strategyは実践されるだけの十分な理由があり,今後の動向に注視する必要がある.
症例
  • 高橋 和人, 須藤 弘之, 尾崎 嘉彦, 内藤 達志, 大藤 和也, 松田 秀岳, 大谷 昌弘, 平松 活志, 根本 朋幸, 中本 安成
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2633-2638
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.表在型食道癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後に瘢痕狭窄を生じた.2回の内視鏡的食道拡張術を施行後6日目に左手のしびれと麻痺を主訴に受診した.頭部CT,造影MRIにて脳膿瘍と診断した.抗生剤の投与にても改善せず,当院脳神経外科にて開頭ドレナージ術を施行した.膿汁培養検査の結果,起炎菌はα-streptococcusであった.食道拡張術を契機に脳膿瘍を発症した一例を,本邦におけるまれな偶発症を生じた貴重な症例として報告する.
  • 磯野 功明, 馬場 洋一郎, 田中 宏樹, 向 克巳, 佐瀬 友博, 齊藤 知規, 岡野 宏, 松崎 晋平, 熊澤 広明, 渡辺 玄
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2639-2646
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.7年前に胃癌に対しESDが施行され,H.pylori除菌後,経過観察中であった.5年前の上部内視鏡検査において,胃体下部大彎前壁に3mmの白色粘膜領域が確認されたが,4年前の鉗子生検では確定診断に至らなかった.3カ月前の上部内視鏡検査での鉗子生検において,胃底腺型胃癌を疑われESDが施行された.病変の病理組織診断は胃粘膜内に限局する胃底腺型胃癌と診断された.免疫組織化学的検討ではペプシノーゲンIが部分的に弱陽性,MUC6がびまん性陽性で,Ki67 indexは3%以下であった.本疾患は近年定義された新しい疾患概念であり,微小病変を長期に観察し得た本症例は稀と考えここに報告する.
  • 杉浦 香織, 下立 雄一, 三谷 洋介, 濱口 京子, 土井 顕, 西村 直之, 毛利 裕一, 松枝 和宏, 山本 博, 奥村 明
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2647-2652
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    56歳男性.倦怠感と食欲不振を主訴に前医を受診し,Hb 3.2g/dlと著明な貧血を指摘され当院紹介となった.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に潰瘍を認めたため,緊急入院し保存的加療となった.入院第8病日の内視鏡施行時に上十二指腸角の潰瘍から噴出性出血を認め,内視鏡的止血術で止血が得られた.同日造影CT施行し胃十二指腸動脈瘤を認め,保存的に加療していたが,第10病日に再出血したため,内視鏡的止血が困難と判断し,胃十二指腸動脈瘤に対し動脈塞栓術を施行し止血を得た.胃十二指腸動脈瘤の十二指腸穿破は,内視鏡的止血術が困難とされており,本疾患が疑われた際には,内視鏡治療に固執せず手術や動脈塞栓術へ移行することが重要である.
  • 有塚 敦史, 平松 活志, 大野 崇, 大藤 和也, 松田 秀岳, 大谷 昌弘, 根本 朋幸, 須藤 弘之, 今村 好章, 中本 安成
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2653-2659
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    58歳男性.心房細動に対する抗血栓療法中に血便を伴う出血性ショックにて救急搬送された.腹部造影CT検査にて空腸からの出血が疑われ,緊急に経口小腸内視鏡検査を施行したところ上部空腸に2cm大の2型腫瘍を認めた.生検にて中~高分化型管状腺癌と診断され,小腸部分切除術及び周囲リンパ節郭清が施行された.術後3年の経過で再発を認めていない.小腸癌は稀な腫瘍であり,比較的早期に診断することは容易ではない.本症例は,腫瘍径が小さいにも関わらず,抗血栓療法中に出血性ショックをきたしたことが契機となり,小腸内視鏡検査により診断が可能であった.
  • 石田 正也, 石川 茂直, 稲葉 知己, 榊原 一郎, 山本 久美子, 泉川 孝一, 高橋 索真, 松浦 美穂子, 和唐 正樹, 蓮井 利実
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2660-2666
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.肝機能異常の精査目的に施行した腹部CTで骨盤内に25mm大の腫瘍を指摘された.CTおよびMRIで,病変は直腸前壁に接しており,直腸壁への浸潤に関しては判断困難であった.PET-CTではFDG集積は軽度であった.EUSでは,ほぼ均一な低エコーな腫瘍として描出され,直腸とは離れており,体位変換による可動性が確認された.デスモイド腫瘍を疑い,EUS所見にて,予定していた直腸低位前方切除術からより低侵襲の経会陰式腫瘍切除術へ変更した.病変は完全切除され,病理組織診断はデスモイド腫瘍であった.EUSが術前診断と適切な術式選択に有用であった.
経験
  • 安部 真, 中川 昌浩, 東 玲治, 平尾 謙, 小川 恒由, 大江 啓常, 高田 晋一, 松浦 博夫, 水野 元夫
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2667-2673
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pylori非感染の萎縮のない背景粘膜から発生する胃底腺型胃癌が注目されている.胃底腺型胃癌は腫瘍径が小さくても粘膜下層浸潤を高率に認める.今回われわれは,粘膜表層に腫瘍の露出を認めなかった胃底腺型胃癌6例を経験したので報告する.平均腫瘍径は6mm,2例で粘膜下層浸潤を認めたが,全例が内視鏡治療適応,または適応拡大病変であった.6例中5例(83%)が表面は正常胃底腺粘膜構造を示す発赤調(50%)もしくは褪色調(50%)の胃底腺ポリープ(33%)もしくは粘膜下腫瘍様(50%)の隆起性病変であったが,表面に拡張した血管が目立ち(83%),早期の胃底腺型胃癌の特徴的な内視鏡像と考えられた.
注目の画像
資料
  • 中村 昌太郎, 松本 主之, 杉森 宏, 江崎 幹宏, 北園 孝成, 橋爪 誠
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2676-2684
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    目的:急性消化管出血患者におけるリスクスコア(Glasgow-BlatchfordスコアおよびAIMS65スコア)を含む予後因子を評価すること.
    方法:過去5年間に消化管出血が疑われ,緊急内視鏡検査を受けた患者192例に対する内視鏡検査232件(上部内視鏡130件,下部内視鏡102件)を対象とし,その診療録を遡及的に解析した.
    結果:対象患者の年齢中央値は66歳で,男性が64%を占めた.内視鏡で出血源が同定できた者は173例(腫瘍性病変に対する内視鏡治療後36例,大腸憩室34例,胃十二指腸潰瘍29例,胃びらん15例,血管拡張14例,生検後出血13例,悪性腫瘍10例,炎症性疾患9例,食道胃静脈瘤5例,マロリー・ワイス裂創4例,鼻出血3例,ブリスターパックによる傷害1例)であった.輸血を97例(51%),内視鏡的止血を97例(51%)に施行した.経過観察中に49例(26%)で再出血を認め,このうち7例でinterventional radiologyを行った.種々の原因疾患により39例(20%)が死亡した.3年および5年生存率は各々71%および67%であった.Cox多変量解析の結果,輸血,内視鏡的止血およびAIMS65高スコアが独立した予後不良因子であった.
    結論:AIMS65スコアは急性消化管出血患者の予後予測に有用である.
ガイドライン
  • 山本 博徳, 緒方 晴彦, 松本 主之, 大宮 直木, 大塚 和朗, 渡辺 憲治, 矢野 智則, 松井 敏幸, 樋口 和秀, 中村 哲也, ...
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2685-2720
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    カプセル内視鏡・バルーン内視鏡の開発・普及により,小腸領域においても内視鏡が疾患の診断・治療に重要な役割を果たすようになった.小腸内視鏡の適応として最も頻度が高いのは,いわゆる原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding:OGIB)である.その他には小腸狭窄,腫瘍,炎症性腸疾患などにおいて小腸内視鏡の有用性が確認されている.小腸内視鏡の有用性が認識された今,臨床現場で安全かつ効率的に使用し,最大限の効果を得るためには一定の指針が必要となる.そこで,日本消化器内視鏡学会では,日本消化器病学会,日本消化管学会,日本カプセル内視鏡学会の協力を得て,現時点で得られるだけのエビデンスに基づく「小腸内視鏡診療ガイドライン」を作成した.しかし,まだ比較的新しい内視鏡手技であり,エビデンスが不十分な部分に関しては専門家のコンセンサスに基づき推奨度を決定した.本ガイドラインは小腸疾患診療のガイドラインとしての疾患中心のまとめではなく,小腸内視鏡というモダリティを中心としたガイドラインとして作成し,小腸内視鏡としては臨床現場の実情に即して小腸カプセル内視鏡とバルーン内視鏡に絞り,指針を作成した.
  • 良沢 昭銘, 糸井 隆夫, 潟沼 朗生, 岡部 義信, 加藤 博也, 洞口 淳, 藤田 直孝, 安田 健治朗, 露口 利夫, 藤本 一眞
    2015 年 57 巻 12 号 p. 2721-2759
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/25
    ジャーナル フリー
    日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「EST診療ガイドライン」を作成した.本ガイドラインにおける手技の具体的な手順や機器,デバイスの種類や使用法など実臨床的な部分については,すでに日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会編「消化器内視鏡ハンドブック」が2015年5月に刊行されているので,可能な限り重複を避けた.また,本診療ガイドラインでは膵管口切開術,EPBD,EPLBDについては取り上げない.「EPLBD診療ガイドライン」については,別途作成される予定である.この分野においてはエビデンスレベルが低いものが多く,専門家のコンセンサスに基づき推奨の強さを決定しなければならないものが多かった.適応,手技,特殊な症例への対処,偶発症,治療成績,術後経過観察の6つの項目に分け,現時点での指針とした.
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